課題
  • 限られたリソースと継続的な資金調達
  • エンジニアリング上の障壁
  • 高コストな製造環境への対応
  • 従来はレジャー用途が中心だった米国のオートバイ市場に、日常的な移動手段としての電動バイクを浸透させる必要性


オートバイがレジャー用の贅沢品とみなされがちな飽和市場において、Ryvid 社は電動バイクを実用的で持続可能な都市型モビリティに位置づけることで、独自の道を切り拓いてきました。

電動バイクのスタートアップ企業である Ryvid 社は、軽量なモジュール設計と無駄のないデジタルエンジニアリングにより都市の移動手段を再定義したことで知られています。迅速な試作、サステナブル・マニュファクチャリング、そして曲げ加工された板金製のシャシーにより、同社は優れたデザイン性と高い費用対効果を兼ね備えた、ガソリン車に代わる選択肢を提供しています。

Ryvid 社は、電動自転車と本格的なオートバイの中間層に属する都市部のライダー向けに製品を展開しています。スタイリッシュで維持管理が容易な移動手段を求める顧客の中には、都市部の通勤者のほか、シンガーソングライターのラナ・デル・レイや俳優のクリス・ヘムズワースといった著名人も含まれます。また Ryvid 社の活発なオンラインコミュニティと消費者への直接販売モデルは、顧客満足度を向上させ、より精度の高いフィードバックを得る重要な手段であり、顧客ロイヤルティとブランドの認知度を高めています。

CEO 兼共同創設者の Dong Tran 氏が率いる Ryvid 社の歩みは、俊敏性、イノベーション、デジタルトランスフォーメーション (DX) を取り入れることでゼロからビジネスを構築することの本質を体現しています。同社はわずか 8 カ月でコンセプトから生産に移行し、個人向け移動手段の製造、メンテナンス、マーケティングのあり方を再構築しました。

課題: 従来の慣習からの脱却

「電動バイクを都市部のライダーにとって身近で魅力的な存在にする」という Ryvid 社のビジョンは、大きな課題に直面していました。まず、スタートアップ企業として限られたリソースと継続的な資金調達の必要性が、あらゆる意思決定にプレッシャーを与えていました。また、エンジニアリング上の障壁にも直面していました。それは曲げ加工された特徴的な板金製のシャシーの開発から、コストの高いカリフォルニア州での生産環境の構築までと多岐にわたります。しかし何より重要だったのは、従来はレジャー用途が中心だった米国のオートバイ市場に、日常的な移動手段としての電動バイクを受け入れてもらう必要があったことです。

意欲的なエンジニアリング目標を掲げながらもリソースの限られたスタートアップ企業として、Ryvid 社は開発面でもいくつかの重要な課題に直面していました。それは、堅牢な構造と高い費用対効果を両立する電動バイク用シャシーを設計することと、時間のかかる従来の試作プロセスを排除しながら市場投入までの期間を短縮し、かつ従来の試作に頼ることなく製品品質の維持を実現することでした。

Tran 氏は次のように述べています。「シミュレーション主導の設計に移行する必要があると考えていました。手作業のワークフローや、シミュレーション機能が統合されていない CAD ツールに頼るという選択肢はありませんでした。従来のクレイ(粘土)モデルのようなモデリング工程を踏まずに、サーフェシングから応力解析までのすべてを単一のプラットフォームで効率化したいと考えていたからです」

チームが必要としていたのは、繰り返し作業を迅速に行い、デジタル上で設計を検証し、機械部門とサーフェス部門全体の開発工程を効率化する方法でした。速さと精度を優先することは、スタートアップ企業にとって必須の戦略でした。

Ryvid 社のイノベーション成功の鍵となったのは、設計の俊敏性でした。曲げ加工された板金製のシャシーは 2022 年の発表当時、業界初の事例でした。溶接鋼管に依存する従来のオートバイフレームと異なり、Ryvid 社は航空宇宙分野の設計原理に着想を得て、曲げ加工を施したステンレス鋼製のシャシーを開発しました。この革新的な手法により、溶接ではなく機械的なねじ締結体で組み立て可能な軽量のモジュール式フレームが実現。生産は大幅に簡素化され、人件費も削減できました。核心的なこのイノベーションにより、手頃な価格を維持しながら高い設計基準を満たすことができました。

ソリューション: Creo によるデジタルファーストのワークフロー

Ryvid 社の革新的な設計は斬新であるだけでなく、変革ももたらしました。これにより、90 分以内でフレーム一式を製造するという、当時のオートバイ設計では考えられなかったプロセスが可能になったのです。

Ryvid 社は当初からシミュレーション駆動の設計プロセスを採用していたため、CAD とシミュレーションの機能を備えた PTC Creo を選択しました。Creo 環境では従来の手順を踏まずにスケッチから直接試作を製作できるため、6 カ月で生産準備が整い、わずか 8 カ月で本格的な生産を開始できました。

デジタルファーストのワークフローに投資するという Ryvid 社の決断は極めて重要でした。Creo の柔軟性や Alias との緊密な統合、高度なシミュレーション機能は迅速な繰り返し作業を促進し、物理試作に代わって AR/VR ツールを視覚化や検証に活用することで、時間とコストの両方を削減できるようになりました。また応力や流体をリアルタイムに解析できるため、設計ミスを削減し、信頼性も向上しました。

「柔軟性、高度なサーフェシング、Alias との優れた統合性を兼ね備えていることから、私たちは Creo を選択しました」と Tran 氏は言います。「また、迅速な繰り返し作業とシミュレーションをサポートしている点も、当社のリーン開発モデルには不可欠でした。私たちにとって、Creo は単なる設計ツールではありません。開発を加速し、設計品質を向上させ、無駄を排除しながら革新性を追求する製品ライフサイクルを支える戦略的な推進力です。このシミュレーション主導のアプローチは、大きな転換点となりました」

PTC のソリューションは製品設計にとどまらず、Ryvid 社の運用の俊敏性とデータの連続性もサポートしています。カリフォルニア州での生産規模の拡大に伴い、現在は部門間の連携を強化し、重要な設計情報へのリアルタイムなアクセスを確実にするため、データ管理に PTC Windchill の検討を進めています。

また Alias や AR/VR ツールとの統合は、設計の柔軟性を高め、部門の垣根を越えた意思決定を促進しました。PTC のこのエコシステムにより、Ryvid 社は規制が厳しくコスト重視の環境においても、製造ワークフローの最適化、トレーサビリティの向上、品質維持を実現しながら、スピードと手頃な価格というブランドの約束を守ることができました。

Tran 氏は次のように述べています。「当社の現地生産は、迅速な繰り返し作業が可能です。工場の各作業ステーションには iPad を使用したデジタル版アッセンブリ作業指示書を導入しました。このシステムで組み立ての手順と作業時間を追跡することで、データに基づく最適化とトレーサビリティを実現しています。さらに、すべてのバイクは IoT による遠隔情報収集で追跡されており、ERP システムが部品のモニタリングや規制遵守をサポートしています」

結果: Ryvid 社の大胆な挑戦が奏功

リーンエンジニアリングとモジュール設計を重視することで、市場投入までの期間短縮、BOM(部品表)コストの削減、業務効率の向上、設計検証の精度向上、そしてユーザー中心の設計による顧客満足度向上といった目覚ましいビジネス成果がもたらされました。

「当社の内部 KPI では、ユーザビリティ、ツールの統合、コスト効率、ワークフローの簡素化、市場投入までの期間といったさまざまな指標で成功を測定しています」と Tran 氏は結びます。

持続可能性は製品の特性というだけでなく、Ryvid 社の製品ライフサイクル全体に組み込まれています。同社のバイクはエネルギー効率が約 95%(ガソリン車は約 30%)、テスラ社の Model 3 と比べても約 10 倍の効率を誇り、1 km あたり 約 1 円で走行できます。これは電動モビリティが持続可能であるだけでなく、経済的にも賢明な選択であることを示しています。

Ryvid 社はまた、モジュール単位のアップグレード、デジタル 3D カタログによる「修理する権利」への対応、分解が簡単でリサイクルしやすい部品構造をサポートしています。循環型経済の取り組みには、モデル間でのフレームの再利用やバッテリーの再利用も含まれます。

今後の展望: グローバル展開、AI、人型ロボット

Ryvid 社は現在、インドとベトナムに合弁会社を設立し、アジアのアッパーミドル向けの都市型市場に進出する準備を進めています。その際プラットフォームを共有することで、コストと品質を両立させたまま事業規模を拡大できます。またマイクロアプリによる顧客管理や部品管理など、社内業務の効率化に向けた AI の活用も検討しています。さらに、サブアッセンブリ用の人型ロボットの導入も視野に入れています。これは、CAD や組立データにリアルタイムにアクセスできるデジタルスレッドシステムを活用することで実現できます。

このようなデジタル統合は、機械、電気、ソフトウェアの各部門間のサイロを解消する上で、重要な役割を果たしています。共有プラットフォームと視覚的な設計ツールが部門間の連携を促進し、無駄のない意思決定が実行のスピードと俊敏性を確実なものにしているのです。

「イノベーション、デジタルツール、市場への認識を適切に融合することで、私たちは業界の常識に挑戦し、打ち破ることができました」と Tran 氏は述べています。「シャシーの設計から製造ワークフローにいたるまで、あらゆる工程をゼロから見直すことで、電動モビリティが洗練された外観と手頃な価格を両立できることを証明しています」

急速な変革の時代において、Ryvid 社はバイクを構築しているだけではありません。彼らは未来のスタンダードを築いているのです。

会社概要

本社: 米国カリフォルニア州アーバイン
業界: 自動車
導入した PTC 製品: Creo
従業員: 40 名以上
Web サイト: ryvid.com