課題

製造業は、収益が少なく競争が激しいという困難な状況に直面しています。業界リーダーの地位を維持するために、製造にかかる時間を短縮し、収益を改善し、最高の品質基準を維持するための方法を常に探しています。

 

パンでもビスケットでも、美味しいお菓子を作るには細かい手順を守ることが大切です。適切なタイミング、適切な順序、適切な材料、適切な温度を守れば、「味のない何かの塊」が出来上がることはありません。このプロセスを企業内の製造全体で考えてみましょう。数百万もの焼き菓子を効率的に製造するには、複数の工場や数千人に及ぶ作業員の間で調整が必要です。

The Griffin’s Food Company はプロセスを改善するための手法を常に模索

ニュージーランドのオークランドを拠点とする The Griffin’s Food Company は、ニュージーランド最大の加工食品メーカーの 1 つです。150 年以上にわたってニュージーランドで愛されているビスケットやスナック類を製造しており、その名を聞けばすぐにわかるような有名ブランドの地位を確立しています。サウスオークランドに製造拠点が 2 カ所あります。主にビスケットとクラッカーを製造する工場と、ポテトチップやミューズリーバーなどのスナック類を製造する工場です。

The Griffin’s Food Company 自らのビジネスにプライドを持ち、常に業務を改善するための手法を模索しています。しかし、ほかの食品メーカーと同様、収益が少なく競争が激しいという困難な状況に直面しています。業界リーダーとしての位置づけを維持するために、製造にかかる時間を短縮して収益を改善する一方で、高い品質基準を維持するための方法を常に探しています。そして、ニュージーランドの人々のために美味しい食品を製造するという最も得意な分野に専念しながら、プロセスを改善したいと考え、インダストリー 4.0 テクノロジーを導入しました。

 

 
2020 年、The Griffin’s Food Company は製造拠点のペーパーレス化という初期目標を掲げたが、ビジョンが短期間で拡大

The Griffin’s Food Company のすべての製造ラインでは、品質チェック、安全チェック、レシピ、レシピ変更、レポート作成など、多くの作業が髪を使用して手作業で行われていました。加工食品メーカーであるため、厳格な規制に適合しなければならず、広範な監査証跡を残す必要があります。

このような紙ベースのプロセスでは業務に時間がかかり、人為的ミスが発生する危険性がありました。時には、報告するには問題が「小さすぎる」と判断されたシステム停止やパフォーマンスの問題を見逃してしまうこともありました。手動でのレポート作成ではパフォーマンスに関する情報と報告に遅延が生じ、重要な調整を翌日まで実行できないことすらありました。紙ベースのプロセスにデジタルのアプローチを取り入れることが、The Griffin’s Food Company のインダストリー 4.0 への取り組みの開始点となりました。

The Griffin’s Food Company では、オペレーションおよびサプライチェーン担当ディレクターの Peter Richardson 氏のサポートを受け、設備投資および継続的改善担当責任者の Vaibhav Tanksale 氏、電化および自動化担当プロジェクトマネージャーの Ramy Ragab 氏、プロセス改善担当マネージャー の Neil Broekhoven 氏率いる小規模な継続的改善チームがインダストリー 4.0 の導入担当となりました。デジタルトランスフォーメーション (DX) には、ペーパーレス化だけでなく、さらに大きな機会があることをチームはすぐに認識しました。そして、機械類をネットワーク化して主要なパフォーマンスデータを取り込み、統合ビューに表示することで、製造ラインをデジタル化することを提案しました。これにより、製造拠点全体で効果的に分析を行い、業務を改善するための機会がもたらされます。チームのアプローチは、まず小さく始め、明確なビジョンを維持し、短期間で拡張するというものでした。そして結果的に、より広範なデジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた体制を作り上げました。

Tanksale 氏のチームはビジネスケースを作成することから始めました。そのビジョンは、作業員とマネージャーのために、以前は紙ベースで渡されていた情報を表示するスクリーンとタブレット端末を装備し、工場の作業員がラインで作業しながら意思決定をスピードアップするために必要なリアルタイムのデータを得ることでした。さらに一歩先に進め、作業員とマネージャーが必要とする情報を、全ての製造ラインにリアルタイムで表示することも計画しました。

製造パフォーマンスを把握することで、スループット、品質、効率性を大幅に向上させる機会がもたらされます。たとえば、ビスケットは製造が難しい商品です。湿度と温度がわずかに変化しただけでも、無駄になることがあります。生地の重量、温度、湿度、原材料に関するデータをリアルタイムで確認できれば、生地が品質基準を満たしているか、または廃棄しなければならないか迅速に判断できます。作業員は、設備の状態、OE、計画外ダウンタイムをより詳細に把握することで、スループットを改善できます。また、何が適切に機能し、何が機能しないか把握できるため、マネージャーは十分な情報に基づいて迅速かつ効率的な意思決定が可能です。

「この取り組みの第一歩は、工場全体をネットワークに接続し、データを一元化することでした。PTC のソリューションにより、工場の PLC とコントローラーに簡単にアクセスできました」

Ramy Ragab 氏
電化および自動化担当プロジェクトマネージャー

PTC と連携してコネクティビティと可視性を強化する柔軟な IoT ソリューションを導入

明確なビジネスケースを作成した後、継続的改善チームは、そのビジョンを実現するためのソリューションの特定を開始しました。チームがインダストリー 4.0 プロジェクトに最適なソリューションであると判断したのは、PTC の産業 IoT プラットフォーム ThingWorx でした。チームは PTC と連携し、製造ラインへの導入を開始しました。

The Griffin’s Food Company が ThingWorx を IoT ソリューションとして選択した理由はいくつかありますが、第一の理由は導入のスピードと使いやすさでした。小規模なチームでも、数カ月ではなく数週間で導入できるため、プロジェクトリーダーは短期間で価値を証明できます。Ragab 氏と継続的改善チームがさらに印象的だったのは、ThingWorx の導入に必要なスキルをすべて自分たちで学びながら進められたことです。

もう 1 つの主な要因は、ThingWorx によってもたらされる柔軟性とコネクティビティでした。The Griffin’s Food Company は、ThingWorx ソリューションをさまざまな PLC や旧式の機械に接続し、単一の統合ビューを実現しました。「この取り組みの第一歩は、工場全体をネットワークに接続し、データを一元化することでした。PTC のソリューションにより、工場の PLC とコントローラーに簡単にアクセスできました」と Ragab 氏は話します。

小さく始め、短期間で価値を証明

The Griffin’s Food Company によるデジタル化の取り組みは 1 台の機械から始まりました。Ragab 氏はまず、ThingWorx Manufacturing Apps をチョコレートミキサーの PLC に接続しました。このプロジェクトを促進するために、工場のさまざまな機械をネットワーク化し、製造のステータスとメンテナンスに関する問題を総合的なビューでリアルタイムに示す Manufacturing Apps の機能を活用しました。チームは短期間で、機械の動作、稼動時間、使用されていたレシピ、一定期間に使用された材料の分量などを正確に確認できるカスタムソリューションを導入できました。紙ベースのレポート作成からリアルタイムの詳細なデータフローへの移行は、素晴らしいものでした。

Ragab 氏が示したこの可視性により、作業員とリーダーからの支持を得ました。経営陣は、可能な限り最大の効果を上げられるよう、プロジェクトのさらなる拡張を支援しました。小さく始め、機械のパフォーマンスのモニタリングにより品質、効率性、スループットがいかに向上するか証明し、導入プロセスを成功に導いたチームは、この取り組みを短期間で製造ライン全体に拡張できました。

インダストリー 4.0 とは、人と文化を変化させることです。リーダーシップと工場の作業員の両方から支持を受けることは、このプロセスに不可欠なステップです。Ragab 氏と継続的改善チームが PoC 実証実験の価値を示したとき、重要な文化的変化と運用的変化に向けた体制が整ったと言えます。

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最初の成功を収めた後、The Griffin’s Food Company は取り組みの拡張を開始

 

The Griffin’s Food Company はほんの数カ月で最初の Manufacturing Apps の取り組みを成功させ、それを足掛かりに IoT プラットフォーム ThingWorx を 3 つのラインに拡張しました。残りの 4 つのラインについては、現在導入の計画中です。Ragab 氏はその後、工場の作業員とマネージャーが製造データにアクセスするための一元的なダッシュボードを作りました。

製造ラインは非常に長いため、チームは通常、製造設備の反対側で何が起こっているか把握できません。この状況を軽減するために、継続的改善チームは各製造ラインにモニターを設置し、製造設備があるフロアの作業員が製造データをリアルタイムで確認できるようにしました。

現在では、上流工程で何が起こっているか作業員が把握でき、ラインを下りてくる新しい製品の準備に必要な時間がわかるようになりました。最終的には、運用部門がそのデータを使用して、製造のパフォーマンスとスループットを追跡できます。

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作業員はタブレット端末を使用して、効率性に影響を及ぼすことなく、短時間の停止を含むすべての停止を追跡できます。ラインの停止が発生した場合、作業員に停止の理由を入力するように求めるメッセージが自動的に表示されます。停止は、機械の問題、品質の問題、または製品の問題に分類する必要があります。情報が入力されるまで、ラインを再開することはできません。ラインマネージャーはラインが停止している場所と理由を総合的に把握できるため、停止に対応して迅速に判断を下すか、必要に応じて問題をエスカレーションできます。

品質部門はタブレット端末を活用して、重要なメトリックスである重量、温度、湿度などを追跡し、レシピの品質チェックを迅速に実行できます。品質チェック中に問題が見つかった場合は過去にさかのぼり、レシピを調べて原材料がどのように使用されたかを確認できます。品質を継続的にテストし追跡することで、より早い段階で食品を廃棄物と分類できるようになり、時間と材料を節約できるだけでなく、品質に関する問題が顧客まで達する状況を回避できます。

マネージャーはデスクトップパソコンからすべての情報にアクセスできます。スループット、パフォーマンス、品質に関する理解度が深まり、チームに対するサポートを迅速に強化したり、プロセスを調整して効率性を改善したりできます。「工場にはスクリーンが 3 つあり、全作業員が使用しています。マネージャーが状況を把握するために使用するスクリーンは 4 つあります。このように可視性が向上したことを全員が前向きに捉えており、仕事の質も効率も向上しています」と Ragab 氏は話します。

「作業員がラインに流す生地やチョコレートの量が増えています。2 ~ 3 カ月間、作業員のモニタリングを行っていますが、次第によくなっています」

Ramy Ragab 氏
電化および自動化担当プロジェクトマネージャー

未来の成長とデジタルトランスフォーメーションを見据える The Griffin’s Food Company

インダストリー 4.0 を導入し、品質、効率性、スループットを改善するという継続的改善チームの取り組みが成功したことは明らかです。チームはビジネスケースを確立し、関係者に対して短期間で価値を証明し、自社のビジネスに有利に働くようにその IoT ユースケースを拡張しました。

価値を獲得するまでの期間は短いものでした。また、スループットと効率性の向上を示すさまざまなデータから、可視性の向上による効果はすでに明らかになっています。「目標達成が作業員のモチベーションとなっています。彼らがラインに流す生地やチョコレートの量が増えています。2 ~ 3 カ月間、作業員のモニタリングを行っていますが、次第によくなっています。さらにスピードも上がっています」と Ragab 氏は話します。

 

 
道のりは常にまっすぐであったわけではなく、The Griffin’s Food Company はその中で予想外の価値を見いだしました。たとえば、この取り組みにより部門間のコミュニケーションが増加しました。パフォーマンスを改善するにはどうすべきか自問したり他者に質問したりすることで、生産性と効率性が向上しました。「これらのシステムの優れている点は、改善するにはどうすべきかを各自が自問し始めたことです」と Ragab 氏は言います。「互いにコミュニケーションを取り、質問し、ライブデータに対して疑問を投げかけるようになりました」

The Griffin’s Food Company はすでに、製造ラインのパフォーマンス以外の領域にもユースケースを拡張する計画を立てています。メンテナンス部門が稼動時間を改善できるように、特定の機械の効率性だけでなく、全設備のパフォーマンスおよび状態を監視するための取り組みを検討しています。Ragab 氏によれば、彼のチームは、製造、品質、メンテナンスに関するデータを表示する工場ごとに標準化されたビューを作成しており、すべてのユーザーに必要なものを表示するウィンドウを提供している。

The Griffin’s Food Company では、可視性とパフォーマンスだけではなく、各部門が製造のさまざまな側面を直接制御できる未来も想定しています。運用部門がオーブンを制御し、生地の温度、湿度、色に基づいてパラメータを調整できるようにしたいと考えています。これにより手動で調整を行う必要性がなくなり、生地が焦げるようなミスを低減できます。また、商品開発担当者がレシピに関する分析データを受け取り、レシピを管理できるようにすることで、各レシピの原材料の使用を追跡し評価できます。また、作業員にレシピの変更や新しいレシピを伝えることもできます。このようにして、商品開発担当者は商品の品質と一貫性を改善し、廃棄物を削減できます。

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「改善が実現し、違いが生まれました」と Ragab 氏は言います。「まだやるべきことはありますが、正しい方向に向かっています」

The Griffin’s Food Company の場合、デジタルトランスフォーメーション (DX) を実現するために、思い切った行動をとったり大きなリスクを冒したりする必要はなく、適切な戦略が必要でした。影響力、スピード、規模に焦点を当てた The Griffin’s Food Company は、適切なデジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた取り組みへの準備を整えました。確固としたビジョン、明確なビジネスケース、短期間で価値を証明する能力があれば、デジタルトランスフォーメーション (DX) はどの製造業にも手が届くものです。