Howden 社、混乱の中でもデジタルトランスフォーメーションを推進
どのようなビジネス計画も健全なものに思えるものです - 予想外の事態が発生するまでは。画期的なテクノロジーが市場の競争を一変させる場合でも、外部的な要因によって市場が揺さぶられる場合でも、それによって生じる混乱がビジネスの試金石となります。Howden 社はサービスを改善し世界中の顧客のサポートを向上させることを目指していましたが、同社の戦略とテクノロジーは新型コロナウイルスが世界に及ぼした影響によって想定よりも早く試されることになりました。ここでは、Howden 社が混乱の中でいかにしてその取り組みを推進したかをご紹介します。
Howden 社は卓越したカスタマーサービスの提供に尽力
スコットランドのグラスゴーに拠点を置く Howden 社は、顧客に工業製品を提供するグローバルエンジニアリング企業です。質の高い空気およびガス処理ソリューションに焦点を当てている同社の製品は、発電、廃水、金属、採鉱、運輸、石油およびガスなどの複数の分野を対象としています。160 年に及ぶ経験に支えられた Howden 社の幅広い回転装置は、非常に困難なアプリケーションエンジニアリングの課題の解決に役立っています。
Howden 社のミッションは、すべてのソリューションに関して、すべての地域のすべての顧客に卓越したサービスを提供することです。ビジネスと顧客ベースが拡大し、サービスモデルが新型コロナウイルスによって発生したリモートアシスタンスおよびサポートに対するニーズを突き付けられた Howden 社は、効率的に独自のサービスを拡張し専門知識を伝達するための手法を見いださなければなりませんでした。
Howden 社は Data-Driven Advantage イニシアチブ改善の機会を特定
新型コロナウイルスによる混乱が発生する前から、Howden 社は「お客様のサポートを改善し、組織を次のレベルへと高める方法は何だろうか?」と自問していました。その結果 Howden 社が取り組みを開始したのが、エンドユーザーの顧客の機械と装置のサービスを改善する Data-Driven Advantage (DDA) イニシアチブでした。この大規模なデジタルトランスフォーメーションへの取り組みは軌道に乗り、拡張現実 (AR) やモノのインターネット (IoT) といった新しいテクノロジーの導入によりさらに加速しました。
同社の DDA 戦略は、コネクティッド・プロダクツおよびオペレーションを介して、自社とその顧客に明確な競争上の優位性をもたらしました。最初に DDA チームが目指したのは、パフォーマンスの最適化を推進するデジタルソリューションを介して、顧客が自社の装置の状態をよりよく把握できるようにすることでした。そして 2 番目は、Howden 社の専門知識を伝達する機能を改善するために、グローバルサービスチームおよびカスタマーサポートの機動力を高めることでした。最後は、技能伝承と営業プロセスを促進するために、詳細な社内トレーニングと営業デモのリモート提供に取り組みました。
DDA イニシアチブにはほかの主要な戦略目標も含まれていました。たとえば、現場では事故のリスクが常にあります。熟練スタッフがプロセス全体で技術者を手ほどきすれば、ミスの危険性が減り安全性が向上します。また、過剰な出張を制限することで、Howden 社はその持続可能性の目標も押し進めることができます。結局のところ、このデジタルトランスフォーメーションイニシアチブは同社のビジネスのあらゆる側面に影響を及ぼすものでした。
Howden 社は PTC との連携により適切なテクノロジーを導入
Howden 社のエンジニアは、160 年に及ぶ回転装置関連の経験と知識を活かし、顧客が自社の装置のパフォーマンスとプロセスを最適化することを可能にするソリューションを編み出しました。PTC の導入チームおよびカスタマーサクセスチームと連携して開発した Howden Uptime です。これは、総体的なアプローチで回転装置のデータを収集、解釈、分析する産業 IoT ベースのプラットフォームです。現在では、Howden 社のデジタルシステムがデータを顧客にとって有用な情報に変換することで、顧客が運用中の装置に関する決定を効率的に下し、総所有コストを削減できるようになりました。
PTC と Howden 社の最初のパートナーシップから拡張現実 (AR) ソリューションが生まれたのは、自然な流れでした。Howden 社はこれらのソリューションにより、アフターマーケットサービスを改善するための戦略を検討できるようになりました。Howden 社の装置を所有する価値をさらに高めるために、同社のエンジニアは顧客のエンジニアが回転装置を操作しながら使用できるインタフェースとアプリを設計しました。Howden 社は PTC のカスタマーサクセスチームと連携し、Vuforia Studio を利用して没入型のカスタマーセルフサービスエクスペリエンスを開発しました。Vuforia Studio は、既存の 3D CAD モデルを利用し ThingWorx から IoT データを取り込む、効率的な拡張現実 (AR) オーサリングおよびパブリッシングソリューションです。
Howden 社は Vuforia Studio を利用して、Microsoft の HoloLens 2 向けの没入型複合現実エクスペリエンス(アニメーション化された修理手順や機械データのビジュアルオーバーレイなど)を開発しました。このような視覚面の強化により、装置の全体像を把握し、周辺環境の中での位置付けを知ることができると同時に主要なデータと傾向がリアルタイムで表示されるため、製造業のパフォーマンス改善が実現します。
Howden 社は新型コロナウイルスに対応して 2 つの拡張現実 (AR) ユースケースでデジタルトランスフォーメーションを促進
新型コロナウイルスが Howden 社の運営手法に短期間で変化を及ぼしたため、同社のデジタルトランスフォーメーションイニシアチブ、特に拡張現実 (AR) イニシアチブは新たな緊急性を帯びました。重要な事業運営を維持し、顧客に優れたサービスを提供し続けるために、Howden 社は拡張現実 (AR) が役立つと考えられる 2 つの主要なユースケースを特定しました。Howden 社は、PTC のテクノロジーを利用して、専門知識を現場に直接行かずにより広範囲に、つまり各地の技術者、営業チーム、製造チーム、最終顧客に対して提供できるようにすることを目指しました。PTC のカスタマーサクセスチームは、パイロット研究の調整を支援し、初期トレーニングを実施し、Howden 社と製品担当者やハードウェアサプライヤーを結び付けることで、これらのユースケースを成功させるうえでも一役買いました。
カスタマーサービスチームを対象としたリモートアシスタンス
Howden 社のポートフォリオは、世界中の製品部門が提供する多様なブランドや製品で構成されています。顧客にとって現地の部署が最初の問い合わせ先となりますが、離れた場所にいる Howden 社の製品担当者とエンジニアがこれらのチームを支援する必要があることも多く、必要に応じて顧客のサイトに出張することもあります。しかし、新型コロナウイルスによりこれがほぼ不可能となりました。
この混乱の中、Howden 社はリモートアシスタンスとコラボレーションを改善するための新たなソリューションを模索しました。この取り組みのために Howden 社が選んだのは Vuforia Chalk でした。これは、技術者と熟練スタッフを結びつける、拡張現実 (AR) ベースのリモートアシスタンスアプリケーションです。現在では、オフィスにいる Howden 社の熟練スタッフが、現地のフィールドサービス技術者に効率的で有用なサポートアセスメントを提供しています。Vuforia Chalk を利用する熟練スタッフと技術者は、現実の環境のビューをライブで共有し、そこにデジタルアノテーションを付けて、問題のトラブルシューティングを行ったり複数ステップの解決策を手ほどきしたりしています。Vuforia Chalk のデジタルアノテーションは技術者のビューに固定されるため、複数ステップの解決策でも簡単についていくことができ、間違いやミスコミュニケーションの危険性が大きく減少します。
その成果は大きなものでした。熟練スタッフが高度なトラブルシューティング、メンテナンス、サポートを世界中のチームに提供できるようになったのです。そして Howden 社は、自社が提供したサービスに顧客が満足しているという明確な手ごたえを感じています。
「自分たちが得意とすることに集中したいと考えていました。つまり、機器に関する専門知識の提供です。ソフトウェア開発を行ったり、ハードウェア要件について心配したりしたくはありませんでした」と話すのは、Howden 社の Data Driven Advantage 担当コマーシャルリードを務める Graeme Russell 氏です。このため、自分たちでインストールする必要さえない Vuforia Chalk のような製品の導入は魅力的でした。しかも、ビジネス内での拡張も非常に簡単です」
没入型のトレーニング、自習形式のトレーニング、営業デモ
顧客とのリモートによる人的なつながりを促進することと同様に重要なのが、社内のチーム間にも同じようなつながりを実現する機会を用意することでした。Howden 社はヨーロッパとアジアでターボ送風機を設計し、世界中に流通させていました。同社のビジネスはグローバルに展開しているため、製品担当者は営業チームのトレーニングのために、また設計エンジニアと製造チームの間にサポートを提供するために、出張しなければならないことも多くありました。しかしリモートワークという環境とソーシャルディスタンスにより、専門知識の伝達が困難になりました。
Howden 社は Vuforia Studio を利用してトレーニングを拡張し、営業プロセスを促進しました。製品担当者は Vuforia Studio により、多様な業界標準デバイスを使っていつでもどこでも表示できる 3D の拡張現実 (AR) トレーニングエクスペリエンスを構築できます。さらに、Vuforia Studio は ThingWorx と統合しているため、取り込んだ設備データをビジュアルオーバーレイとして拡張現実 (AR) で表示し、トレーニングと技能伝承のプロセスを効率化することもできます。現在、Howden 社の製品部門が地域の営業チームやその他の社内チームに対して複雑な製品機能に関するトレーニングを行っていますが、分かりやすさが向上し、人材の維持にも役立っています。
Howden 社の営業チームも、これらの没入型かつ実物サイズの仮想製品エクスペリエンスを活用して営業プロセスの改善を図っています。仮想 3D 製品デモで、モバイルデバイスを使って表示可能な拡張現実 (AR) エクスペリエンスを提供することで、巨大なコンプレッサーのサイズ、規模、機能を顧客に見せることができます。新型コロナウイルスが原因で対面による営業ミーティングが不可能になっているため、これは特に有意義です。
Howden 社は激動の市場に適応し、将来の成長に備える
Howden 社は、ビジネスや顧客との関わり方に大きく影響する大規模なデジタルトランスフォーメーションを進めています。このトランスフォーメーション、そして特に Vuforia Chalk と Vuforia Studio が関連するそのユースケースが急がれるようになったのは、最近の出来事のためです。
「テクノロジーを分析してユースケースを調べ、どのように問題を解決できるのかを確認してきました。対応する際には、そういった点が非常に参考になります。当社には Vuforia Chalk の使用経験があり、テストも実施しており、非常に簡単に拡張できることがわかっていました」と Russell 氏は言います。
その影響は同社のビジネス目標すべてで感じられました。Howden 社は、サービスコストの削減、出張費の削減、従業員の効率向上、安全性と持続可能性の強化という目標を達成できました。また、顧客との関係にプラスの影響が及んだことも明らかです。
「これらのユースケースから、さらに仕事のリクエストがくるようになりました。トラブルシューティングに関する助言を求められ、Vuforia Chalk でそれを提供したりしています。両方のケースで、さらにアフターマーケットの仕事の見積もりを依頼されています」と、Russell 氏は言います。
Vuforia 製品で取り組みを続ける Howden 社にはすでに、別の複数のユースケースの計画があります。オランダの新しい製造ラインと設備のレイアウトを作成する際に、Vuforia Expert Capture を利用して、スクラップと手戻りを排除する標準化された繰り返し可能なプロセスを導入する予定です。同社が目指すのは継続的な改善であり、リスク、テスト歩留まり、注文から納品までにかかる期間、リードタイムの差異に関する指標を取り込んでいきます。
Howden 社は、顧客と社内チームの両方に対するサポートを改善することで、まったく新しいサービスモデルの基盤を構築すると同時に、卓越した成果を確実に上げ続けることができています。Howden 社のビジネスを根本から覆すような破壊的な変化があるとしても、同社はその先の見えない未来を楽しみにしています。
「自分たちが得意とすることに集中したいと考えていました。つまり、機器に関する専門知識の提供です。ソフトウェア開発を行ったり、ハードウェア要件について心配したりしたくはありませんでした」と話すのは、Howden 社の Data Driven Advantage 担当コマーシャルリードを務める Graeme Russell 氏です。「このため、自分たちでインストールする必要さえない Vuforia Chalk のような製品の導入は魅力的でした。しかも、ビジネス内での拡張も非常に簡単です」
Graeme Russell 氏、Data Driven Advantage 担当コマーシャルリード、Howden