ブログ 製造向けコネクティッド・データの理解

製造向けコネクティッド・データの理解

2024年2月5日

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

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編集注記: この記事の初版が公開されたのは 2023 年 11 月です。2024 年 2 月に新たな情報を加筆し、更新しました。

コネクティッド・データとは

現代の製造業では、毎日毎時間、膨大なデータが生み出されています。しかし、ほとんどの製造業者は、それらのデータから十分な価値を引き出しているとは言えません。データの過負荷とサイロ化が進む一方です。そのため、データの関係性を明らかにして、実用的な情報を引き出すことが困難になっています。多くの製造業者はまた、現代のスマートデバイスやスマートマシンに蓄積された、潜在的価値の高いデータを見逃しています。ただ、製品ライフサイクル管理 (PLM)産業 IoT の最新世代のソリューションを含むコネクティッド・データ技術により、状況は変わりつつあります。このようなソリューションを活用することで、製造業者は、エンジニアリングと製造の効率性の向上、工場のパフォーマンスの強化、コスト削減、市場投入までの期間短縮、顧客満足度の向上を実現できます。

コネクティッド・データの仕組み

コネクティッド・データの目的は、オンプレミスとクラウドの両方を対象に、さまざまなデータ資産を結び付ける共通のデータエコシステムを構築し、データへのアクセスと検証、関係性のマッピング、(構造化、非構造化、半構造化)データの文脈化を簡単に行えるようにして、実用的な情報を引き出すことです。

コネクティッド・データのエコシステムは、さまざまなデータリポジトリ、ソフトウェアアプリケーション、分析ツールに及び、適切なデータ接続、関係性、分類、共通の構造を確立します。このため、正確、包括的、タイムリー、かつ文脈に即した知見が得られ、人間による意思決定の支援や、機械による自動化に役立てることができます。最良のケースでは、エンジニアリングから製造、サービス、最終的にエンドカスタマーに至るまで、デジタルスレッド全体に及ぶエコシステムが形成されます。

コネクティッド・データ技術の事例

商業、金融、医療、公共事業、産業などの各種分野でさまざまな事例が生まれています。製造分野では、コンピューター支援設計 (CAD)製品データ管理 (PDM)、IoT、ドキュメント管理、その他の PLM ソリューションを利用して、これまでサイロ化していたデータにアクセスし、設計、エンジニアリング、製造、品質管理、サプライチェーン、営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの組織間でデジタルスレッドを構築しています。エンジニアリングデータは、後工程の製造プロセスの向上で重要な役割を果たし、元の製品設計や作業指示への変更をシームレスに製造に反映できます。

Fresenius 社の事例では、PTC の Windchill PLM ソリューションを導入し、紙からデジタルに文書を移行して、エンジニアリング、製造、カスタマーサービスの各部門で部品中心のアプローチを実現しました。腎臓治療の世界的な大手プロバイダーである Fresenius 社は、このソリューションを活用してシステムのデジタルツインを作成しました。エンジニアリング、製造、カスタマーサービス間にデジタルスレッドを構築した結果、デジタルインテリジェンスによってエンジニアリングのイノベーションが促進され、世界中で使用されている多数の Fresenius 社製透析装置の品質、パフォーマンス、使いやすさ、稼働時間が最適化されました。個別の患者用透析装置をリモートで監視し、それらのデータを Windcill に取り込むことで、Fresenius 社は各装置の構成を正確に確認し、パフォーマンスと使いやすさを監視しています。また、看護師や、場合によっては透析患者自身もこの仕組みに組み込み、使いやすさに関するフィードバックをリアルタイムに収集しています。

Fresenius 社のデータソリューション担当バイスプレジデント Matthias Kuss 氏は、Windchill で扱うコネクティッド・データが業務とサービス提供に役立っていると語っています。詳細は次のビデオをご確認ください。

 

製造業の別の事例では、Volvo Construction Equipment 社が製品に関するコネクティッド・データに基づいてエンドツーエンドの製品開発プロセスを確立しました。このプロセスにより、業務を効率化し、ツールチェーンの統合とユーザーエクスペリエンスの両方を最適化できました。Volvo CE 社は、PTC の Windchill PLM ソリューションを採用し、人材、プロセス、情報、ビジネスシステムを統合しながら製品をライフサイクル全体で管理しています。また、産業 IoT プラットフォーム ThingWorx を活用して、複数のソフトウェアの情報(コンピューター支援設計 (CAD) イテレーション Creo、後工程向けの Windchill 製品ライフサイクル管理 (PLM)、その他の製造オペレーション技術やビジネスシステムから取得したエンジニアリングの最新情報)を統合し、リアルタイムにデータを同期できる体制を整備しました。Volvo CE 社は効率性と品質を強化して、情報の引き継ぎの際に生じるミスを削減し、顧客満足度を向上させることを目指しました。

その結果、次のような大きな成果を実現しました。

  • 後工程での手戻りが最大 50% 減少
  • 品質の問題によるコストを最大 30% 削減
  • 作業指示書の品質改善により効率性が最大 70% 向上
  • 変更管理を最大 30% 改善
  • 重複部品を最大 40% 削減
  • (人為的ミスによる)データ入力の不備を最大 30% 削減

コネクティッド・データが重要である理由

デジタルトランスフォーメーション (DX) の要はデータです。しかし、多くの場合、広く分散しているさまざまなデータ資産からデータを収集して検証し、関係性をマッピングして文脈化するメカニズムがなければ、製造業者はデータから価値を引き出すことができず、その膨大さに圧倒され続けることになります。

コネクティッド・データ技術により、製造業をはじめとするさまざまな企業は、既存のデータサイロの解消、運用およびビジネスプロセスの自動化、人間の意思決定支援の最適化、製品ライフサイクル全体の監視を実現できます。

コネクティッド・データの未来

今後に目を向けると、機械学習、機械推論、機械視覚などの AI 技術は、この分野でますます大きな役割を担うようになるでしょう。AI 技術により、製造業をはじめとするさまざまな企業は、膨大なデータセットを取得、クレンジング、集計、変換して、重要な関係性をマッピングし、実用的な情報を引き出すことができます。さらに、コネクティッド・データを使用して AI アルゴリズムをトレーニングすれば、より包括的なモデルを構築し、精度や信頼度を向上させることができます。まさに、共生的関係といえるでしょう。

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ジェフ・ゼムスキー(Jeff Zemsky)

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

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