製品技術事業部 CAD 技術本部
本部長 執行役員
2000 年の入社以来 CAD/PDM 製品のプリセールス・コンサルティングとして国内の幅広い顧客をサポート。担当した製品は 2D CAD に始まり、3D ダイレクト、3D パラメトリック、SaaS 型等 多岐にわたる。2018 年より CAD 技術本部長に就任し、CAD 製品のエンジニアを統括する。
※本ブログは、Creo Chapter Webinarシリーズをもとに編集・再構成しています。
「日々の設計業務をもっと効率化できないか?」
「複合材や電動化といった新たな設計要件に、現在のツールで対応しきれているだろうか?」
「シミュレーションやモデルベース定義 (MBD) を導入したいが、何から手をつければいいか分からない。」
製品の複雑化や開発サイクルの短縮化が進む現代の製造業において、設計現場が抱える課題はますます多様化しています。これらの課題を解決し、競争力を維持するためには、設計ツールそのものの進化が欠かせません。
本記事では、こうした設計・開発の課題を根本から解決するソリューションとして、PTC の最新 3D CAD「Creo 12」の新機能を徹底解説します。SaaS ファーストのアプローチで継続的に強化された250以上の新機能は、「生産性と使いやすさの向上」はもちろんのこと、「複合材」「電動化」「シミュレーション」「MBD」「製造」といった最先端のテーマを網羅しています。
これまで当たり前だと思っていた非効率な作業をなくし、設計品質の向上と開発プロセス全体の高速化を実現するためのヒントがここにあります。ぜひご一読ください。
Creo についての詳細はこちら
Creo の最新バージョンである Creo 12 についてご紹介します。
昨年 Creo 11 をリリースしてからの1年間で、PTC は新しいリリースサイクルを導入しました。SaaS ファーストのアプローチにより、SaaS 版の Creo+ では四半期ごとに新しいバージョン(12.0、12.1、12.2、12.3)を計4回リリースしてきました。
そして今回、これらの新機能を全て盛り込んだオンプレミス版のバージョンとして Creo 12.4 をリリースしました。バージョン名が「12.4」となっていますが、これは従来の「11.0」リリースに相当するものです。今後、メンテナンスリリースは12.4.1、12.4.2という形で提供されます。
Creo+ も、継続的な機能強化を行っています。
まず、昨年9月のアップデートではコンフィギュレーション管理機能が追加されました。これにより、標準環境だけでなく、Creo のコンフィグレーションも集中配信できるようになっています。
次に、12月のリリースでは、サービスプリンシパル機能が導入されました。これは、バッチ処理で Creo を動作させるために、ワーカーのようなサービスを利用できるようになるものです。
その後の機能強化では、部品の再生範囲を制限する機能が加わり、コラボレーション作業時の再生速度が向上しました。
最新バージョンでは、パフォーマンスの向上に加え、増分アップデート機能が導入されています。これにより、新しいバージョンがリリースされた際のインストール時間が約75% 短縮されるなど、大幅な効率化が図られています。
また、コラボレーション機能も強化されました。コメントとマークアップの追加機能が実装され、より円滑な共同作業が可能になっています。これは、コラボレーションにおいて特に評価の高い機能です。
【製品情報】クラウドで設計を加速する SaaS 版 3D CAD「Creo+」
本記事で紹介した「Creo+」を活用したリアルタイムの共同設計、シンプルなライセンス管理、常に最新の機能が使えるクラウドならではのメリットを詳しく解説します。
Creo のパワーと SaaS の柔軟性を両立させた次世代の設計環境がここにあります。
詳細はこちらCreo 12には、お客様からのご要望に基づいた250を超える新機能が搭載されています。これらの機能は、主に6つの開発テーマに沿って強化されました。
1. 生産性と使いやすさの向上
最初のテーマは、生産性と使いやすさの向上です。これは、エンジニアの皆さんが日々作業にかける時間を節約するための機能であり、全てのお客様にとって非常に役立つものです。今回、この分野で多くの新機能が追加されました。
2. 複合材(コンポジット)設計の強化
次に、複合材(コンポジット)に関する機能強化です。複合材を使用するお客様が増加していることを受け、Creo 10 でリリースされた複合材設計機能がさらに進化しました。業界をリードする水準に達しており、他社製品と比較しても自信を持って提供できる機能となっています。
3. 電動化のための設計機能
電動化のための設計機能も今回の大幅な強化点です。特に、大規模なハーネスをアセンブリとして扱う機能が充実しており、これについては後ほど詳しくご紹介します。
4. シミュレーション機能の拡充
シミュレーション機能も強化されています。Ansys との連携によるパワフルなシミュレーション機能や、ジェネレーティブデザイン機能がさらに充実しました。
5. モデルベース定義 (MBD) の進化
モデルベース定義 (MBD) も重要なテーマです。Creo の 3D アノテーション機能は競合他社と比較しても高く評価されていますが、今回は特にエクスポートにおける再利用性が強化されました。
6. 製造機能の追加
もちろん、Creo の製造機能も進化しています。高速マシニングに対応するアンダーカット加工といった機能のほか、3D プリント用の機能なども追加されています。
Creo 12の生産性と使いやすさに関する新機能をご紹介します。
1. フィーチャープリセット
フィーチャープリセット機能では、フィーチャーの初期設定を保存・適用できるツールが追加されました。これにより、頻繁に使用する設定を効率的に再利用できます。
2. モデルツリーの改良
モデルツリーは、表示内容の増加や多様な表示モードに対応するため、ツールの統合が行われました。また、レイヤー機能の右クリックメニューなどが最新化され、ツリーの展開・折りたたみ時の表示パフォーマンスも向上しています。
3. 画面表示とツールの改善
画面の表示ステート(モデルの表示・非表示)を素早く切り替えるため、「イングラフィックツールバー」に新しいアイコンが追加されました。さらに、強化されたツールヒントが導入され、新しいユーザーでも分かりやすく操作できる点が特徴です。
新機能ハイライト機能も搭載されており、見落としがちな新機能も視覚的に分かりやすく表示されます。
Creo 12では、マルチボディ機能がさらに進化しました。今回の主な強化点は以下の通りです。
1. マルチボディ部品からのフラットアセンブリ作成
構想モデルのように、1つの部品ファイルで複数のボディに分かれた設計を開始し、その後詳細設計段階でそれらを個別の部品として扱うことが以前よりも容易になりました。これまでは各ボディを個別に部品ファイルとして保存する必要がありましたが、今回から一括でアセンブリとしてコピーを作成できる機能が追加されました。これにより、フラットなアセンブリ内に複数のボディをまとめて配置できるようになり、構想設計の効率が大幅に向上しています。
2. STEP インポートの改善
STEP ファイルのインポート機能も改善されました。取引先から提供されたデータやウェブからダウンロードした STEP ファイルは、アセンブリ形式になっていることが多いです。しかし、ユーザー側が部品表 (BOM) を作成する際に単一の部品として扱いたい場合、最初からマルチボディ部品として1つの部品に取り込むことが可能になりました。
3. 板金マルチボディとシュリンクラップの強化
板金モジュールにおいては、スイープフランジを分割した後でもベンド解除が可能になりました。また、アセンブリを1つのマルチボディとして取り込むシュリンクラップ機能も強化されており、より柔軟なモデリングが可能です。
【技術ブログ】Creo でマルチボディを使いこなす:メリット、操作手順、活用法を紹介
単一部品ファイル内で複数ソリッドを扱う「マルチボディ設計」。その基本操作から、トップダウン設計やインポートデータ編集を効率化する応用テクニックまでを網羅的に解説します。
Creo 12では、既存の製品機能、特にフィーチャーの強化を通じて、さらなる生産性と使いやすさを追求しています。ここでは、板金機能を中心にいくつかの改善点をご紹介します。
1. 板金機能の強化
完全な依存ミラーのサポート:
板金のフィーチャー、例えば曲げやリリーフ、継ぎ目といった様々な要素が、完全にミラーコピーに対応するようになりました。これにより、設計期間の大幅な短縮が期待できます。
ウォールの結合機能:
従来は長めに作成したウォールをトリムして結合していましたが、今回からはエッジを選択するだけで、自動的にウォールが延長されて結合されます。これにより、不必要に大きなものを作成する必要がなくなり、結合方法も詳細に調整できるため、生産性向上が見込めます。
2. 境界ボリュームの最適化
梱包箱の作成などで使用する境界ボリューム機能が最適化され、方向の指定などがより簡単になりました。以前はオプションが必要だった機能も、より使いやすく改善されています。
3. スポット溶接機能の強化
スポット溶接機能では、表示の改善が行われました。さらに、オフラインのロボット溶接出力において、新たにグループ溶接や突合せ溶接が追加され、より多様な溶接形式に対応できるようになりました。
【技術ブログ】機械設計の必須スキル!板金設計のミスを防ぐには?Creo の 3D 板金機能でリードタイムを短縮
正確な展開図の作成、自己交差の防止、後工程の CAM との連携など、Creo の板金専用機能がもたらす設計品質とリードタイム短縮への貢献を、薄板ソリッドでの設計と比較しながら解説します。
Creo 12では、サーフェス機能が大幅に強化されました。特に以下の点が改善されています。
1. 参照の編集と置き換えの効率化
スタイルサーフェスにおける参照の置き換えや編集が、スタイルフィーチャー内から直接行えるようになりました。これまでは一度スタイル環境から出る必要がありましたが、この改善により作業効率が向上しています。
2. フリースタイルおよび境界ブレンドの品質向上
スタイルのフリースタイル機能では、ハンドルの操作性が最新化されました。また、境界ブレンドにおける点通過カーブの強化により、従来は不自然に仕上がりがちだった部分が、より滑らかで美しい形状に作成できるようになりました。
3. 新コマンド「近似サーフェス」の追加
新たに「近似サーフェス」コマンドが追加されました。この機能は、特にインポートデータにおいて、複数のサーフェスで構成されている形状を単一のパッチにまとめることが可能です。これにより、細かく分断されたサーフェスを一枚のサーフェスとして統合できるようになり、データの整理や後処理が非常に効率的になります。
次に、Windchill との連携機能について説明します。今回は主に2つの点が強化されました。
1. 材料管理
一つ目は材料管理機能です。これはサステナビリティ対応の一環でもあります。Creo 内で材料を割り当てることで、正確な重量計算や解析パラメータの適用が可能になります。さらに、この材料情報は Windchill 側の部品表と連携し、使用材料の種類や量が把握できるようになりました。
2. 部分オープンサブセット
もう一つは部分オープンサブセット機能です。これはパフォーマンス向上に寄与します。例えば、スーパー BOM(部品表)を使用する際に、フィルターで絞り込んだサブセットをワークスペースに追加すると、そのサブセットを Creo で簡略表示として直接開けるようになりました。この機能は、特にバリエーション設計を行っているお客様にとって非常に有効で、Windchill と Creo 間の連携がさらに高度化しています。
【製品情報】設計から製造までを繋ぐ PLM「Windchill」
本記事で紹介した材料情報や BOM 連携は、Windchill が持つ機能のほんの一部です。製品ライフサイクル全体にわたるデータの一元管理、BOM 管理、設計変更プロセスなどを通じて、部門間の連携を促進し、デジタルスレッドの中核を担う PLM ソリューションの詳細をご覧ください。
デジタルスレッドの中核をなす Windchill の機能とメリットをご紹介します。
詳細はこちら
次に、今回の Creo 12で特に強化された複合材(コンポジット)機能について説明します。
1. ソリッド形状の正確な作成
まず、複雑なソリッド形状を正確に作成できるようになりました。複雑な形状も、Creo の標準機能であるオフセット機能の強化などを最大限に活用することで、非常に迅速かつ高精度にソリッドモデルを生成できます。
2. 関連製造モデルの作成
現在画面に表示されているように、関連製造モデルの作成機能も追加されました。これは、設計モデル(コンポジット)を基に、製造工程で必要となる分割や継ぎ目などを製造モデル側で作成し、これらがお互いにリンクするような連携を可能にするものです。
3. 操作性の向上とドレーピング機能の強化
操作性も向上しています。「ゾーン」機能で一度に多数のプライを作成した後、複数のエリアをマージして効率的なコンポジット構造を構築できます。また、プライ間の遷移部分のユーザーインタフェースが強化され、ドラッグ操作で編集できるようになりました。さらに、ドレーピング機能も強化されています。
Creo 10 から導入された複合材機能ですが、私たちはこの分野に非常に力を入れています。
電動化のための設計機能についてご紹介します。2025年の後半にリリースされる予定のメンテナンスリリースでは、アセンブリとしてのハーネス機能が追加されます。従来のケーブリング機能は引き続き利用できますのでご安心ください。
1. アセンブリとしてのハーネス機能
ハーネスをアセンブリとして扱うことには、いくつかのメリットがあります。例えば、Windchill でケーブルアセンブリに含まれる部品を正確に部品表として出力したり、アセンブリの部分的な開きに対応したり、複数のメンバーとの協調設計をサポートしたりすることが可能になります。これにより、従来の Creo アセンブリでできていたことがハーネス設計にも適用され、ハーネス機能が大幅に強化されます。
近年、ハーネス設計を CAD 内で完結させたいというお客様からの要望が増加しています。もし現在の機能でパフォーマンスに懸念があったり、複雑なハーネスを分割して作業しづらいと感じていたりする場合は、この新しい機能をご活用いただければと思います。
2. ECAD プリント基板インポートの改善
ECAD プリント基板のインポート機能も強化されています。特に IDX インポートにおいては、ここ2~3回のリリースで取り込める情報が大幅に増え、見た目の再現性も向上しています。
具体的には、ユーザー定義属性の読み込みが可能になったほか、アルファベット順に並べ替えるオプションも追加されました。これにより、同じ部品を検索する際の効率が大幅に向上しています。
Creo 12では、Ansys ベースの解析機能が大きく強化されました。
1. Ansys ベースの解析結果表示
まず、全ての構造解析と流体解析の結果において、方向フィールドとベクトルがサポートされるようになりました。これにより、力がどの方向に作用しているのかといった傾向が非常に視覚的に捉えやすくなります。流体解析では、流線や粒子の表示がサポートされ、結果がより明確かつ分かりやすくなりました。Ansys ソルバーも最新版の25 R1 に更新され、パフォーマンスや機能が向上しています。
また、Creo の通常の断面機能を使って解析結果を表示できるようになりました。これは Ansys Power Simulation の大きなメリットの一つですが、Creo の標準断面をそのまま活用できるようになったことで、結果の視認性や使い勝手が大幅に向上しています。
2. ファスナーボルト構造と接着・接触の強化
お客様から多くの要望があったファスナーボルト構造については、初期荷重を考慮したシミュレーションが Creo Simulate Live と Ansys Simulation の両方でサポートされました。
Creo Simulate では、主に溶接解析で用いられる接着・接触機能が改善されています。さらに、Pro / ANALYSIS も機能改善が施されました。
また、Creo のシミュレーション機能全般についてさらに詳しく知りたい方は、
「なぜ Creo はリアルタイムシミュレーションで選ばれるのか?機能・連携・最新動向を完全解説」もあわせてご覧ください。
3. ジェネレーティブデザインの最適化機能拡張
ジェネレーティブデザインにおいては、今回から熱検討の最適化が可能になりました。これまでは静解析や固有値解析のみでしたが、熱伝導解析もサポートされたことで、より多様な設計最適化が行えます。この機能については、後ほど詳しくご紹介します。
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Creo 12 では、モデルベース定義 (MBD) 機能が「共有と再利用」をテーマに強化されました。
1. アノテーションの再利用性向上
まず、アノテーションの再利用性が向上しました。あるモデルのアノテーションをコピーし、別のモデルに適用する際、元のモデルを画面で参照しながら簡単に参照を割り当てられます。これにより、他のモデルで類似のアノテーションを使いたい場合に、非常に効率的な作業が可能になります。
2. データエクスポート機能の強化
モデルベース定義で付与された情報を、セマンティックな形式で他のソフトウェアへエクスポートし活用できるよう、STEP AP - 242 エクスポートが強化され、Edition 3 をサポートしています。また、今後のメンテナンスリリースでは、3D PDF への対応も強化される予定です。
3. 標準規格対応と操作性の改善
標準的な規格への対応も進められています。例えば、軸平面に沿った非空洞直径寸法(図があればより分かりやすいですが)など、これまで不可能だった寸法設定が可能になりました。さらに、組み合わせステートの切り替え時のパフォーマンスが向上しています。
4. GD & T 機能の進化
GD & T(幾何公差)機能では、ダイナミックサーフェスやデータムフィーチャーのサポートが追加されました。これにより、Creo 設計者の設計意図をそのまま活用してサーフェスを選択し、セマンティックな参照を割り当てることが可能になります。これは、設計プロセスにおける精度と効率を大きく向上させる機能強化です。
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また、MBD の中核となる幾何公差の設定や、それを支援する「GD&T Advisor」については、下記の記事もあわせてご覧ください。
MBD と幾何公差の最適化を Creo が実現!JIS など規格準拠チェックも簡単に
最後に、Creo 12の製造機能についてご説明します。
1. 金型コンフォーマル冷却設計
現在ご覧いただいているのは、金型コンフォーマル冷却の機能です。近年、3Dプリンターを用いて最適な冷却構造を持つ金型を製造する事例が増加しています。これにより、金型の寿命延長、成形時間の短縮、そして品質向上が実現されます。Creo では、従来の機能で作成するのではなく、コンフォーマル冷却専用のコマンドを使用することで、最適な冷却形状を非常に迅速に設計できるようになりました。この機能は、金型設計モジュールに新たに追加されています。
2. アディティブマニュファクチャリング (AM) の強化
アディティブマニュファクチャリング(積層造形)の分野では、積層造形特有の格子構造(ラティス)を作成する機能が強化されました。これにより、格子のより詳細な制御が可能になり、解析ツールとの連携も強化されています。
3. Creo NC 機能の進化
Creo NC(数値制御)モジュールも進化を遂げています。高速マシニングにおいては、新たにアンダーカット加工が可能になり、高速加工機能も今回さらに強化されました。その他、NC 機能でのマルチボディサポートが実現されました。これにより、NC 作業でもマルチボディを効率的に活用できるようになり、外部から多くの部品ファイルを取り込む必要がなくなるなど、設計から製造までの連携がよりスムーズになります。
【技術ブログ】Creo で実現する金型設計のリードタイム短縮とコスト削減:CAD / CAM 連携や設計変更にも強い自動化の秘訣
製品モデルの解析から、キャビティ・コア分割、パーティングサーフェス作成、EMX を用いた型構造部の自動設計まで。Creo が提供する統合された金型設計プロセスの全貌をご紹介します。
Creo 12.0では、見た目に大きな変化はないかもしれませんが、250以上の新機能が搭載されています。まずは、フィーチャープリセット機能をご紹介します。
穴を作成する例で見てみましょう。通常、Creo では標準の M9.5 x 1.0穴をデフォルトで作成します。しかし、例えば「さら穴」にしたい場合、その直径を手動で入力する必要があります。これまでは、PTC が自動的にデフォルト値を決めていましたが、お客様によって最適なデフォルト値が異なるため、一律の対応は困難でした。
そこで、フィーチャープリセット機能が登場します。プリセットを開き、「+」マークをクリックすると、現在の穴の設定をプリセットとして保存できます。保存したプリセットには名前を付けることができ、これをデフォルト設定として適用することも可能です。これにより、PTC が決定するデフォルトではなく、ユーザーが定義したデフォルト設定を簡単に適用できるようになります。
例えば、別の場所に同じように穴を作成する場合、デフォルト設定として登録したプリセットが自動で適用されます。また、プリセットはエクスポートして別のファイルとして保存したり、インポートして再利用したりすることも可能です。これにより、頻繁に使用する穴のパターンなどをリスト化し、設計者が簡単に選択できるようになります。製造コストを考慮し、特定のピッチの穴を避けるといった場合にも、このリストから選択することで効率的な設計が可能になります。
また、方程式使用カーブについても同様です。毎回手動で方程式を入力するのは手間がかかりますが、これもプリセットとしてインポート・エクスポートできます。座標系を選択するだけで、設定が自動で適用されます。これは、複数のフィーチャーをまとめる UDF とは異なり、単一のフィーチャー内の設定を調整する機能です。フィーチャープリセットは非常に便利ですので、ぜひお試しください。
次に、ジェネレーティブデザイン機能をご紹介します。今回のアップデートではいくつかの機能が追加されましたが、特に注目すべきは熱伝導の最適化に対応したことです。これまでは構造解析や固有値解析のみでしたが、熱に関する検討も可能になりました。
熱の荷重や境界条件、例えば温度、熱伝達率、熱流束、熱生成といった設定が可能です。
実際の最適化プロセスは17分ほどかかりますが、簡潔にご説明します。最適化の設計ゴールとして、例えばピーク温度の最小化を設定できます。その際、初期ジオメトリの50% など、体積や質量で制約条件を設定できます。また、質量を最小化する場合には、ピーク温度の上限値を指定することも可能です。
今回追加された機能として、「保持されているボディとサーフェスを接続する」というオプションもあります。これにより、保持ジオメトリが境界条件によっては不要に見える場合でも、確実に接続を維持する設定が可能です。
現在、構造解析の最適化に加えて熱伝導解析も可能になりましたが、今後はこれらを連成解析できるよう開発を進める予定です。さらに、設計拘束だけでなく、製造拘束に関する機能も順次追加していく計画です。これがジェネレーティブデザインにおける解析の強化となります。
新しい機能には青いマークが付いており、機能が新しくなったことが一目で分かります。新機能を見つけたら、ぜひ実際に触って試してみてください。
【技術ブログ】Creo のジェネレーティブデザインとトポロジー最適化設計でここまでできる!事例と設計プロセスを紹介
設計要件を入力するだけで AI が最適な 3D 形状を自動生成。Creo が誇るトポロジー最適化 (GTO) と数値最適化 (BMX) の2つのアプローチを組み合わせ、設計プロセスを革新する方法を紹介します。
それでは、コンフォーマル冷却機能に入っていきましょう。
まず、金型だけを表示し、スライダーなどを非表示にします。コンフォーマル冷却は新しい機能であり、青いマークが付いているので分かりやすいと思います。
早速、冷却経路を作成します。既存のチェーンを選択し、直径を5に、半径関係を1.0に変更します。方向はオフセット5と設定します。
次に、投影するサーフェスを選択します。面を選択すると、その面から5オフセットされた位置に冷却経路が生成されます。パスが飛び出している部分もありますが、それを選択するとパスが曲がってくれます。これもメニューのオフセット機能です。このように、適切にオフセットされた形で経路が見えるため、3D プリンターで金型を作成する際に非常に効率的です。
出口と入口、カウンターボアなども設定できます。実際に 3D プリンターで金型を作成し、水穴にこの機能を利用しているお客様もいらっしゃいます。設定があれば、このように経路が自動で生成されます。螺旋状のタイプも、このコンフォーマル冷却機能で作成可能です。これは、中央の対象物を効率的に冷却するための螺旋状のパスを作成する機能です。
追加で、近似サーフェス機能をご紹介します。これは、フリースタイルで作成したような、複数の面で構成された複雑な形状を、一つの滑らかなパッチに統合できる機能です。例えば、いくつかの面に分かれているものを一つにしたい場合に非常に便利です。
近似サーフェスを選択し、面を選択すると、「置換」「コピーおよびトリム」「トリムなし」といったオプションが表示されます。「置換」を選択すると、複数の面が結合されて一つの綺麗な面になります。元の面が綺麗であれば問題なく統合されます。
また、この機能は、ある程度の公差を共有する形で、近接した面を統合することも可能です。元の面をそのまま残しつつ、より滑らかな面を作成したい場合には、「コピーおよびトリムなし」を選択することで、元の形状を保持したまま新しい面を作成できます。サーフェスを多用するユーザーにとって、非常に便利な機能となるでしょう。
Q: フィーチャープリセットはどのフィーチャーに対応していますか?
A: 現在、フィーチャープリセットは基本的なフィーチャーに対応しています。具体的には、穴、押し出し、回転、ラウンド、面取りなどが対応範囲です。これらは非常に便利に使える機能で、特に穴やラウンドが多くの場面で役立ちます。
Q: Creo Flow Analysis の新機能にはどんなものがありますか?
A: 新機能として、音響シミュレーションと電場解析が追加されました。これまで CAD ソフトでは音響解析が難しいとされてきましたが、Creo Flow Analysis では音響シミュレーションが可能となり、解析の幅が広がりました。また、ダイナミック流線機能が強化され、ユーザーが特定の点を選択するとその部分の流線を表示することができ、結果をより分かりやすく表示できるようになっています。
さらに、シミュレーションウィザードや結果表示の改善も行われ、使い勝手が向上しました。これにより、フロー解析の精度や操作性が向上しています。
Q: ジェネレーティブデザインで熱検討以外に新しい機能はありますか?
A: 新しい機能として、保持ジオメトリを接続する機能が追加されました。以前は保持ジオメトリが外れていることがありましたが、今回のアップデートで、それらをきちんと接続することができるようになりました。また、保持ジオメトリをそのまま維持するのではなく、オフセットした形状として保持することも可能になっています。これにより、ジオメトリ解析や測定などがより正確に行えるようになりました。
さらに、アセンブリシミュレーションの意味合いで、オフセットしたジオメトリや除外ジオメトリを扱う機能も強化され、クリアランスを考慮した設計がしやすくなりました。このように、モデルの取り扱いや解析機能が向上しました。
Q: モールドコンフォーマル冷却を使用するにはどのライセンスが必要ですか?
A: モールドコンフォーマル冷却を使用するには、通常「ツールデザイン」オプションが必要です。金型を設計するためには、このオプションが必須となります。このオプションをお持ちのお客様は、モールドコンフォーマル冷却機能を利用できます。
Q: シュリンクラップは従来と比べて何が改善されていますか?
A: シュリンクラップ機能は、マルチボディの機能強化により改善されています。例えば、アセンブリをシュリンクラップに変換し、1つのマルチボディから複数のマルチボディ部品を作成できるようになっています。また、作図ボディを除外できるオプションが追加され、さらに便利になりました。この機能強化により、部品をアセンブリし、両方を予約できるようになり、マルチボディ機能が完成した形になります。
Q: 生成AIを使用したモデル化などの新機能はありますか?
A: 現在、PTC 全体で AI を活用した取り組みが進められています。ジェネレーティブデザインに関しては既に話がありましたが、それに留まらず、CAD を含むすべての製品に AI 技術が取り入れられています。今後、開発は加速していく予定で、AI を活用した新しい機能が紹介できるタイミングが来れば、すぐにお知らせできるよう体制を整えています。
Q: Creo Elements / Direct の新機能はありますか?
A: Creo Elements/Direct は、12.4と同時に20.8という新バージョンがリリースされ、いくつかの機能強化が行われています。これにより、Creo Parametric ユーザーには馴染みのある機能が Elements / Direct にも追加されました。
また、ドラフティング機能にも改善があり、以前は存在しなかった「マルチシート」機能が追加され、より効率的な作業が可能になりました。これらの新機能は、20.8バージョンに含まれています。
本記事では、PTC の最新 3D CADソフトウェア「Creo 12」が提供する250以上の新機能についてご紹介しました。日々の業務を加速させる生産性の向上から、複合材や電動化といった最先端テーマへの対応、そして AI を活用したジェネレーティブデザインによる設計品質の向上まで、Creo 12はあらゆる設計課題に対する明確なソリューションを提供します。
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【導入事例】
本記事の元となったウェビナー「日本語で解説する最新版 Creo12」では、ご紹介した新機能を実際の操作画面とともにより詳しく解説しています。テキストだけでは伝わりにくい機能の操作感などを、ぜひ動画でご確認ください。
【関連動画】
Creo の特定の機能について、さらに詳しく知りたい方は以下の動画もおすすめです。
本記事でも注目した AI 設計の実際の動きを動画でご覧いただけます。
MBD の中核となる幾何公差を、ツールを使って効率的に設定する様子を紹介します。
コンフォーマル冷却だけでなく、Creo の金型設計プロセス全体の流れを解説します。
高度なサーフェスモデリングに興味がある方向けの専門的な内容です。