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Creoで幾何公差

2025年7月16日 お問い合わせ Creo 無償試用版はこちら

製品技術事業部 CAD 技術本部
本部長 執行役員

2000 年の入社以来 CAD/PDM 製品のプリセールス・コンサルティングとして国内の幅広い顧客をサポート。担当した製品は 2D CAD に始まり、3D ダイレクト、3D パラメトリック、SaaS 型等 多岐にわたる。2018 年より CAD 技術本部長に就任し、CAD 製品のエンジニアを統括する。

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①幾何公差 概要

1.JISの変化

まず、幾何公差を取り巻く現状として、JISの変化について説明します。JIS B 0420:2016「製品の幾何公差仕様―GPS(幾何学的製品仕様)―寸法の公差表示方式―第1部:長さに関わるサイズ」において、これまでの「寸法」という言葉が「サイズ」に変更されました。これは、日本が欧米諸国のGPS概念に追従する必要があるため、JISもこのような変更を行いました。

次に、JIS B 0401:2016「製品の幾何公差仕様―長さに関するサイズ公差のISOコード方式」では、一般的に「はめあい公差」に関する内容が記述されています。数値自体の中身は変わっていませんが、その表現方法が「寸法公差中心」から「幾何公差」へと変更されています。

このように、馴染みのある部分にも変更が加えられているため、日本も欧米諸国に遅れをとらないよう、幾何公差を積極的に活用していく必要があります。そうでなければ、国際的な通用性を持つ図面を作成することが難しくなります。

2.幾何公差の現状

Importance-of-geometric-tolerancing

幾何公差がなぜ必要なのかについて説明します。これまで幾何公差を記載していなくても問題が発生しなかった、とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

ここにスロット形状があり、L字型の部品がその中を上下に動く例を挙げます。もしこのスロットが直線ではなく、わずかに円弧状になっていたとします。従来のサイズ表記では、各部分の幅がXプラスマイナスXの範囲内であれば合格と判断されます。この表記では、スロットがどれほど直線であるべきかという指示がないため、もしこのような形状の製品が出来上がったとしても、図面に記載がないことを理由に相手を責めることはできません。

日本では、長年の取引があるメーカーが図面から製品の用途を解釈し、問題のないものを作ってくれる場合があります。しかし、海外では状況が異なります。海外のメーカーは、図面に記載された指示は厳守しますが、図面に「直線でなくても良い」と解釈できる箇所があれば、コスト削減のためにその部分の精度を落として製造することがあります。

つまり、図面に記載された通りの製品が出来上がってくるため、設計者は意図を明確に指示する必要があるのです。

3.JIS B 0060

JIS-B-0060-standard-for-3D-annotation-models-and-CAD-support-overview

幾何公差は、3次元モデルに直接入力することで、より迅速に設定できます。3次元アノテーションの規格であるJIS B 0060は、Creo、CATIA、NXといったCADベンダーも協力しながら策定されている規格です。

このように、3次元モデルへの幾何公差の付与に関する規格も確立されつつあります。

4.設計DXのための3D正

Transition-from-2D-drawings-to-annotated-3D-CAD-models-for-design-DX-and-MBD

現在、デジタルトランスフォーメーションの推進により、デジタルデータの整備を進めている企業が多く見られます。設計プロセスにおいては、2次元図面から3次元モデルへの移行が進んでおり、さらに3次元モデルから2次元図面を作成する段階にあります。

しかし、これからは情報を可能な限り3次元モデルに集約し、その豊富な情報を持つ3次元モデルを様々な用途で活用していく流れが進んでいます。日本では「3DAモデル」などと表現されますが、海外では「モデルベースディフィニッション(MBD)」と呼ばれ、この動きが非常に活発になっています。

②Creo GD&T Advisor Extension

1.Creo GD&T Advisor Extensionとは

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本日「幾何公差」というテーマで、Creoにおける幾何公差の入力方法について、Creo GD&T Advisor Extensionを改めてご紹介します。

Creo GD&T Advisor Extensionは、Creo Parametricのオプション機能として、幾何公差の適用と検証に関して専門的なガイダンスを提供します。

2.Creo GD&T Advisor Extensionの必要性

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現在、図面作成に携わる方々で幾何公差を目にしたことがない、という方はほとんどいらっしゃらないと思います。私も過去に設計者として勤務しておりましたが、幾何公差の必要性は理解していました。しかし、近年では「寸法はサイズがわかる箇所のみに限定する」という傾向があり、その結果として多くの幾何公差を適用する必要があるため、戸惑いを感じる方も少なくないのではないでしょうか。

実際に、規格は毎年整備されており、お客様からはMBD(モデルベース定義)規格の採用や準拠に苦労しているという声も聞かれます。

次に、生産性と効率の低下という課題があります。幾何公差を含む図面のレビューには非常に時間がかかり、「これが正しく適用されているか」という検証に手間がかかるためです。

さらに、製造コストの増加も問題となります。幾何公差を正しく適用すれば、厳しくしなくても良い箇所にはある程度の余裕を持たせた製造が可能になります。しかし、その意図を正しく読み取れないと、結果的に過度に厳しい公差で製造してしまい、コストが高騰したり、読み間違いによって使えない部品を製造してしまったりといった無駄が発生します。

3.Creo GD&T Advisor Extensionの機能

Creo-GDandT-Advisor-extension-overview-for-creating-validating-and-learning-geometric-tolerances

無駄な出費を避けるためには、幾何公差を正しく入力し、検証し、理解することが不可欠です。これらはGD&T Advisorの3つの主要な特徴となります。

幾何公差の作成、検証、そして教育という点で、皆様が幾何公差を設定する作業を非常に迅速に行うことが可能になります。

4.作成

GD&T Advisorでは、主に幾何公差の作成が可能です。ウィザード形式のダッシュボードを通じて、必要な情報に集中して入力できます。

また、入力内容に問題がある場合、例えば公差値が間違っているといった際には、ツリー表示の箇所に警告が表示され、問題点を知らせてくれます。

5.検証

次に、GD&T Advisorを使用した幾何公差の作成機能について説明します。幾何公差を作成する際、システムは適用可能なオプションのみを表示し、さらに最も推奨されるものをデフォルトで選択します。これにより、誤った幾何公差の入力を防ぐことが可能です。

また、モデルツリーの下にあるGD&T Advisorツリーには、現在発生している問題が表示され、そこから関連するヘルプ情報へジャンプできます。拘束状態は凡例として色分け表示され、完全に幾何公差で拘束されている形状、部分的にのみ拘束されている形状、そしてまだ幾何公差が適用されていない箇所を視覚的に確認できます。

このルールセットは、資料には2012年版とありますが、常に新しい規格に対応しています。

6.教育

この機能は、後ほどデモンストレーションで詳しくご紹介しますが、ヘルプ機能と連携しています。アドバイザーの表示画面から、公差値などの値を直接修正したり、関連するヘルプ情報にジャンプしたりすることが可能です。

7.Creo GD&T Advisorの特徴

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GD&T Advisorは、幾何公差の正しい適用に関する専門的なガイダンスを提供するソフトウェアツールです。

8.Creo GD&T Advisor 比較表

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GD&T Advisorには、ベーシック版とアドバンスド版の2種類があります。大きな違いとして、CreoにはGD&Tアドバイザーを使用しなくても幾何公差を入力する機能がありますが、標準モードで入力した幾何公差が正しく適用されているかを検証し、再利用する機能はアドバンスド版(旧GD&Tアドバイザープラス)に搭載されています。

また、アセンブリに対する幾何公差の対応も、GD&T Advisorのアドバンスド版のみとなります。このように2種類のバージョンを用意しています。確実性を求めるならアドバンスド版が推奨されますが、常にGD&Tアドバイザーをオンにして幾何公差を入力し、かつアセンブリでの対応が不要であれば、ベーシック版でも十分対応可能です。

それでは、GD&T Advisorのデモンストレーションをご覧いただきましょう。これは蓋のモデルになります。GD&T Advisorをオンにし、例えばアドバイザーツリーをクリックすると、ヘルプが表示されます。この下部にアドバイザーツリーが表示されます。

ここから幾何公差を入力していきます。まず、蓋の止まる面、つまり最も基本となる面を選択します。先ほど説明した通り、入力可能な幾何公差のみが選択肢として表示されます。ここで値を入力して実行すると、平面度とデータムAが同時に設定されます。

次に、蓋を固定するシャフトに対して幾何公差を設定します。シャフトが直角に立っていることと、シャフト自身のサイズ公差も考慮して設定します。これを実行すると、幾何公差、サイズ公差、そしてデータムBが適用されます。

さらに、蓋の回転を止めるためのスロット形状を指定し、同様に幾何公差を設定して作業を進めます。入力中にエラーがあった場合、例えばデータムを設定したが、まだどこからも参照されていないといった問題は、アドバイザーツリーに警告として表示されます。

凡例表示では、緑色が完全に拘束されているジオメトリを示します。また、一般輪郭度公差について、特に指示がない部分の輪郭度公差値を入力すると、それがスクリーンフラットアノテーションとして表示され、凡例表示(この場合は青色で表示されます)にも適用されていることが確認できます。

様々な情報を入力していくと、警告が表示されることがあります。例えば、公差値の大きさが原因で警告が出ている場合、それを編集し、下段の公差を厳しくすると、アドバイザーツリーからメッセージが消えます。このように、GD&T Advisorはルールに基づいて正確な幾何公差を設定することをサポートします。

GD&T Advisorで幾何公差を入力した後、それを2次元図面に落とすことが可能です。これまでは、3次元モデルにアノテーションを入力する際、モデルを回転させて面を選択するため、スピーディーではないと感じるお客様もいらっしゃったかもしれません。

しかし、3次元モデルで幾何公差を設定することには大きなメリットがあります。2次元図面では直線として表示される箇所であっても、3次元モデルでは個々のジオメトリに情報が付与されているため、その一つ一つのジオメトリを正確に定義できます。幾何公差を設定するのであれば、GD&Tアドバイザーを活用し、3次元で入力することをお勧めします。

③GD&T Advisorの、その先へ

1.アノテーション作成工数の削減

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GD&T Advisorを使用して幾何公差を設定する際、今後の発展性としていくつかの利点が挙げられます。

例えば、幾何公差を完全に適用することで、寸法の数、すなわちアノテーションの数を減らすことが可能です。理論的に正確な寸法などは、表示上省略しても良いとされているため、そのルールを適切に適用することでアノテーションを削減できます。示されている例は大幅な削減例ですが、GD&T Advisorを活用し3次元モデルに幾何公差を適用していくことで、アノテーション数を減らすことが可能になります。

また、アノテーションの自動化テンプレートも利用できます。図面テンプレートと同様に、3次元モデル側にもあらかじめステート(ビューの状態)や目次となるようなアノテーションを設定しておくことで、3次元注記が入力されたモデルを素早く定義できます。

2.マシーンリーダブルの活用例

Machine-readable-GDandT-usage-example-in-tolerance-analysis-and-automated-part-inspection

幾何公差を設定すると、その次に自然と行いたくなること、そして幾何公差の値をどのように決定するかという点で、公差解析は不可欠な要素です。公差解析を行いたいと希望されるお客様は非常に多く、特に海外で部品を製造し、組み立てる際に問題が発生しないかという懸念があります。

公差解析はExcelで行われることもありますが、CreoにはGD&Tアドバイザーと同じ開発元であるシグメトリクスのCetol 6σ(シートル6シグマ)というツールがあり、Creoの幾何公差情報を直接取り込んで精密な公差解析を実行できます。

また、モデルの面に全ての公差情報が入っているため、部品製造後のスキャナー測定や受け入れ検査、商品検査の準備にも役立ちます。この「セマンティックアノテーション」(意味を持つ注記)は、Creo内だけでなく、他のソフトウェアでも利用可能です。

これにより、単に3次元モデルに情報を入力するだけでなく、その活用範囲が広がります。かつては「図面からモデルへ、そして図面とモデルの併用」という流れがありましたが、今後は「3次元モデル中心」の設計へと移行していくことが大きなメリットとなります。

3.3DAの検図

Creo-View-MBD-Analysis-with-3D-annotation-check-and-view-state-compare

3次元モデルの活用が進むと、レビューも3次元モデル画面内で行えることが増えてきます。しかし、依然として紙に印刷して赤ペンで確認する方が良い、というケースもあるでしょう。そこで、3次元環境でもそれに近い感覚で検図できるCreo ViewのMBD Analysisというオプションがあります。

これを活用すると、3次元ビューワを用いた検図が可能です。例えば、モデルのアノテーションやモデル自体を選択し、「OK」や「NG」といった印を付けることができます。これにより、どのような印が付いているかが表示され、メモの追加も可能です。3次元モデル上で検図を行い、その結果を作成者にフィードバックするといった使い方ができます。これが「デザインチェック」機能です。初期段階ではアノテーションにのみ印を付けていましたが、モデル自体に印を付けることも可能です。

次に、View State Compare機能、すなわち3Dアノテーションのステート(状態)比較について説明します。これは、変更前と変更後のモデルを呼び出して、3Dアノテーションのレベルで比較する機能です。

変更前と変更後のモデルを並べて表示し、ビューの状態を比較できます。これにより、追加されたもの、なくなったもの、値が変わったもの、場所が変わったものなど、様々な変更箇所を順次ステート表示で確認できます。変更箇所を見逃すことなく、寸法を比較できるのがこの機能の強みです。

さらに、詳細な情報も確認できます。画面の下部には、例えば「値が変わっています」といった具体的な情報が表示されるため、変更内容を詳細に把握することが可能です。

4.アノテーションの伝達

WindchillとCreoを組み合わせて利用されているお客様は非常に多いです。多くのお客様は、まずWindchillをCADデータ管理から導入し、その後EBOMの管理へと進め、さらにMBOMやBOP(製造作業指示)など、Windchillで管理する情報を増やしていく傾向にあります。

その際、3次元モデル上で入力した情報、特に作業指示において重要な部分をアノテーション(注記)でマークすると、その情報が作業指示書にそのまま転送され、後工程で活用できるようになります。これにより、3次元モデルで定義したアノテーションの伝達が可能になります。

本日は幾何公差について説明しましたが、最近では溶接情報も全て3次元モデルに含められるようになっています。そのため、作業指示書に溶接情報がすべて表示され、活用できるようになっています。

このように、3次元モデルに入力された情報を、ビューワでの検図(レビュー)やWindchill内での活用といった形で、PTC製品全体で制御・連携する事例が増加しています。

④CreoにおけるMBDの進化

1.MBDの推進

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CreoにおけるMBD(モデルベース定義)機能の進化について説明します。

CreoのMBD機能は、バージョンアップごとに進化を続けています。最も大きな変化は、Creo 4でGD&T Advisorを初めてリリースした時からです。このバージョンから、幾何公差を正確に、かつセマンティックに(どのジオメトリにアノテーションが付与されているかを意味的に)定義する機能が始まりました。

その後、Creo 5ではそのアノテーションを問い合わせる(クエリする)機能が追加されました。また、アノテーションを入力するユーザーインターフェース(UI)の最新化など、多くの機能強化が図られています。

2.Creo10の新機能 ー 関連シンボル

現在最新版はCreo 11ですが、例えばCreo 10では、シンボルと表面仕上げにおいて、他のアノテーションに関連付ける機能が追加されました。これは、既存のアノテーションにシンボルを付加する機能です。

既存のアノテーションを選択することで、その向きなどの情報がそのまま引き継がれます。これにより、より複雑なアノテーションにも対応できるようになりました。この関連シンボル機能は、Creo 10で3Dアノテーションの新機能として提供されました。

3.Creo10の新機能 ー GD&T Advisor

次に、Creo 10で強化されたGD&T Advisorの操作性向上について説明します。

GD&T Advisorモード内で不足している寸法を直接入力できるようになりました。また、一般輪郭度公差を適用する際の動作が改善され、一般輪郭度公差が設定された箇所でもセマンティッククエリ(意味に基づいた検索)が可能になっています。

さらに、Creo 10では新しい規格への対応も進められています。

4.Creo11の新機能 ー テーブル

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Creo 11では、テーブルを3Dアノテーションに挿入する機能が追加されました。この機能により、テーブル全体や個々のセル内の値がセマンティック参照に対応しており、意味を持つ参照情報を含む表を作成できます。

残念ながら、現在アセンブリのリピート領域にはまだ対応していませんが、このように表を挿入できるようになったことで、3Dアノテーション機能がさらに進化しています。

5.Creo11の新機能 ー GD&T Advisor

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Creo 11のGD&T Advisorでは、これまでANSI規格でサポートしていた一般輪郭度公差がISO規格でもサポートされるようになりました。この一般輪郭度公差のサポートに関して、JIS規格の最新の変更にも迅速に対応しています。PTCが規格対応に速い点は、お客様から高く評価されている部分です。

また、「複合簡略穴コールアウト」という機能も追加されました。これは、ザグリ穴などに対する注釈を、従来の多くの寸法を記入する方法ではなく、穴の深さを示す記号などを用いて簡略化して定義できるようにするものです。

通常の設定での入力も可能ですが、複合簡略穴コールアウトに切り替えることで、初期設定が自動で変更され、非常にすっきりと穴の注釈を入れることができます。

⑤導入事例

1.GE Appliances社

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海外では、お客様事例が着実に増加しています。既に大きく進展している事例もあれば、試行段階の事例も見られます。

GE Appliances社は家電メーカーで、以前からこの3Dアノテーションへの取り組みに非常に注力しています。同社は、当初「ヒューマンリーダブル」(人が見て理解できる)な3Dアノテーションからスタートし、その後「マシーンリーダブル」(機械が読み取れる)なアノテーションへと移行しました。成熟度マップも作成し、3Dアノテーションの取り組みを真剣に進めています。

2.CNH IndustrialとBlue Originの事例

MBD-case-studies-from-CNH-Industrial-and-Blue-Origin-showing-time-and-cost-reduction

モデルベース定義(MBD)の導入事例として、CNH Industrialのケースでは、図面ベースと比較して50%の時間短縮を実現しています。これは、2次元図面では理解が難しかった部分が3D化により非常に効率的になった一例です。

また、航空宇宙分野のBlue Originでは、打ち上げコスト削減のためにMBDを導入しています。MBDを実装するには、Creoの機能だけでなく、トレーニング、学習、そしてワークフローの理解が不可欠です。

3.ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所

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最後の事例は、大学の研究機関のものです。ここでは、コミュニケーションの側面においてもMBD(モデルベース定義)がやはり重要であると認識されています。MBDの価値を認める団体が、様々な分野で増加している状況です。 海外の事例では、MBDを他のソフトウェアや機械と連携させているケースも見られます。このようなMBDの導入事例が海外で着実に増えているため、日本のお客様にも同様の事例が増えることを期待しています。

⑥Q&A

Q: デザインチェックとビューステートコンペアについて、Creo Elements/Directから出された3Dドック付きのPVZファイルでも比較は可能か?また、Creoエレメントダイレクトだけで3D検図ができるかについて教えてください。

A: Creo Elements/Directから出された3Dドック付きのPVZファイルは、Creo Viewで比較が可能です。ただし、実際に試したことはないため、確認は必要ですが、比較機能自体は問題なく機能すると思われます。

また、3D検図についてですが、Creo Elements/Directでは、3Dドックを簡単に2次元図面に落とすことができ、2次元図面上で色分け表示を行う機能も最初から搭載されています。そのため、従来の検図方法で十分に対応できると思います。

Q: DRF(データム)の確立順序と生成されたデータムXYZの方向に関係はありますか?例えばデータムを作る際、触る順番でXYZの方向が決まる法則があるのでしょうか?

A: DRF(データム)の確立において、XYZの方向はモデルの決定に基づいています。具体的には、デモで示した例では、蓋の面を最初に触り、次にシャフトの垂直方向を触り、最後に回転止めの方向を触るという順番でデータムを確立しましたが、この際に方向に特別な意識を持って操作することはありませんでした。

質問の意図が、面を3枚触る順番でXYZの方向が決まるかどうかということであれば、これについては意識していなかったため、今後確認してみる必要があります。

Q: 現状、面と軸にしか対応できていないと思うのですが、 GD&T Advisorで点データや球への対応はいつ頃になりますか?

A: 現在、GD&T Advisorは面と軸の対応に限られています。今後、Creo 12などの情報が更新される予定ですので、それに合わせて対応の拡充が進むかもしれません。詳細な情報は現在手元にないため、更新があり次第、改めてお知らせする予定です。

Q: Creo View MBD Analysisは、寸法に対するレビューだけでなく、モデル自体や形状に対するレビューもできますか?

A: Creo View MBD Analysisは主に寸法に対するレビューを行いますが、モデル自体のレビューや形状の比較も可能です。例えば、形状の変更を比較したい場合は、Creo ViewのM-CAD機能を使用して、モデル比較や図面比較を行うことができます。MBDアナリシスを使用する場合でも、Creo View M-CADは既に持っているので、形状の比較はその機能を活用できます。部品の追加や削除などの比較も可能で、アノテーション以外の情報も確認できます。

Q: Creo Viewのオプション機能としてレビューや差分表示機能があるが、これをCreo Parametricに一本化できるような展望はありますか?

A: 現在、Creo Viewは設計者ではなくレビュー担当者用のツールとして位置付けられています。そのため、設計者はCreo Parametricを使用し、レビュー担当者はCreo Viewを使うという分担があると考えられています。現時点では、レビュー機能をCreo Parametricに一本化する計画はありません。ただし、幾何公差の確認や抜け漏れの検証については、GD&T Advisorを使用することで非常に迅速に行うことができます。

Q: GD&T AdvisorとEZ Tolerance Analysis Extensionの違いは何ですか?

A: GD&T Advisorは、モデルに正しい幾何公差を設定するためのツールです。これに対して、EZ Tolerance Analysis Extensionは一次元の積み上げ公差解析を行うツールです。GD&T Advisorは、部品の幾何公差を詳細に設定し、設計精度を向上させることが目的です。一方、EZ Tolerance Analysis Extensionは公差解析を行い、部品ごとの積み上げ公差を計算するため、主に解析の目的で使用されます。両者は連携して使用することが可能ですが、それぞれの目的と機能は異なります。

Q: GD&T Advisorの有無の差は入力した幾何公差に対してのガイドがあるかないかでしょうか?GD&T Advisorなしで幾何公差を入れた場合にできないことは何ですか?

A: GD&T Advisorを使用しない場合でも、幾何公差の入力自体は可能です。しかし、GD&T Advisorを使用することで、入力時に迅速にアドバイスが得られ、検証が簡単になります。GD&T Advisorは、正しい公差設定を支援し、間違いを防ぐためのガイドを提供しますが、GD&T Advisorなしでも幾何公差は設定できます。つまり、GD&T Advisorを使わない場合でも公差の入力に制限はなく、標準機能で十分に設定は可能です。

財前 紀行

製品技術事業部 CAD 技術本部
本部長 執行役員

2000 年の入社以来 CAD/PDM 製品のプリセールス・コンサルティングとして国内の幅広い顧客をサポート。担当した製品は 2D CAD に始まり、3D ダイレクト、3D パラメトリック、SaaS 型等 多岐にわたる。2018 年より CAD 技術本部長に就任し、CAD 製品のエンジニアを統括する。

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