ブログ 品質コンプライアンスとは?規制遵守との違いや製造業の違反事例、重要性を解説

品質コンプライアンスとは?規制遵守との違いや製造業の違反事例、重要性を解説

2026年1月7日 PLMお問い合わせ

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

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製造業において、製品の信頼性を支える「品質保持」は経営の根幹です。しかし、近年の複雑なサプライチェーンや厳格化する法規制の中で、品質コンプライアンスと規制遵守をいかに両立させるか、多くの企業が課題を抱えています。

本記事では、品質コンプライアンスの定義や重要性はもちろん、規制遵守との具体的な違い、万が一違反が発生した際のリスクと過去の事例までを多角的に解説します。

また、コンプライアンス対応を効率化する製品コンプライアンスソフトウェアとしての機能を備えた PLM の活用法と、実際の導入事例も併せてご紹介します。

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品質コンプライアンスとは?規制遵守との違い

品質コンプライアンスとは、主に製造業において企業が提供する製品やサービスが、顧客の期待する品質基準を満たし、それを長期間にわたって安定的に提供(品質保持)し続けるための取り組みを指します。

これは法令とは異なり、顧客との約束(契約)、製品の仕様書、あるいはそれらを上回る厳しい「社内基準」などに基づいた自発的な活動です。単に「不良品を出さない」だけでなく、設計から製造、出荷後のサポートに至るまで一貫して高い水準を保つ品質保持は、顧客満足度やブランド信頼性に直結する重要な要素とされ、企業の持続的な成長に欠かせない視点でもあります。

一方で、規制遵守(コンプライアンス・法規制遵守)は、安全性や環境保護、倫理といった観点から、政府機関や地方自治体、業界団体が定めた「法的要件」を厳格に満たすことを意味します。

比較表:品質コンプライアンスと規制遵守(法規制遵守)

項目 品質コンプライアンス 規制遵守(法規制遵守)
主な目的 顧客満足度の向上・ブランド信頼の獲得 市場参入の許可・法的リスクの回避
基準の性格 自発的(顧客との約束・社内基準) 強制的(法令・規制・国際規格)
対象範囲 製品仕様、使いやすさ、品質保持 安全基準、環境規制、輸出管理等

 

 

どちらも製品の「品質」を確保し、企業への信頼を高めるうえで欠かせない取り組みですが、品質コンプライアンスが顧客の期待に応える「攻め」の側面を持つのに対し、規制遵守は市場で事業を継続するための「最低限のルール(守り)」という側面を持ちます。

現代の製造業では、これら両面を高度な次元で統合し、管理していく体制が求められています。

品質コンプライアンス違反のリスクと製造業の事例

品質コンプライアンスや規制遵守の徹底は、単なる「ルール守り」ではありません。万が一違反が発生した場合、製造業の企業は存続を揺るがすほどの甚大なリスクを負うことになります。

違反に伴う3つの大きなリスク

  1. 経済的損失:大規模なリコール費用の発生、数千億円規模の制裁金、株価の下落。
  2. 法的・行政的リスク:JIS 認証の取消、製造停止命令、海外(FDA 等)からの厳しい制裁措置。
  3. 社会的信用の失墜:ブランドイメージの悪化による顧客離れ、グローバルサプライチェーンからの除外。

製造業における品質コンプライアンス違反の事例

近年、日本を代表するメーカーにおいても、長年にわたる検査データの改ざんや不適切な品質管理が発覚する事例が相次いでいます。

事例1:自動車業界における型式指定申請の不正(2024年〜2025年)

自動車業界において、量産に必要な「型式指定」の認証を得るための試験データで不適切な行為が発覚しました。衝突試験でのデータ加工や、試験条件の意図的な変更などが、大手複数社で相次いで報告されています。

  • 違反の性質:これは「品質(製品の安全性)」の懸念のみならず、国が定めた法的要件である「規制遵守」に対する重大な違反です。
  • 影響:対象車種の生産・出荷停止命令が下され、サプライチェーン全体を含む数兆円規模の経済的損失を招きました。また、企業の型式指定そのものの取り消しに発展したケースもあり、事業継続に致命的なダメージを与えています。

事例2:健康食品における品質管理・報告の不備(2024年〜2025年)

ある大手製薬メーカーの機能性表示食品において、意図しない成分(不純物)の混入により深刻な健康被害が発生しました。製品そのものの品質管理(品質コンプライアンス)の不備に加え、被害発覚から公表・回収までの大幅な遅れにより、厳しい批判を浴びました。

  • 違反の性質:未知の不純物を検知・排除できなかった「品質管理の限界」と、行政への報告を怠った「法規制遵守」の欠如が重なった事例です。
  • 影響:該当製品の回収だけでなく、全製品の販売自粛や、長年築いたブランドの崩壊、多額の賠償金支払いが発生しました。

品質コンプライアンスと規制遵守のビジネスへの影響

品質コンプライアンスと規制遵守は、いずれも「品質」を核とした取り組みですが、企業経営に与える影響の性質が異なります。

品質コンプライアンスが購入意思決定と収益性に与える影響

品質コンプライアンスにおいて、製品が約束された機能を確実に提供することは最低限の条件です。製造業における工業製品や商用製品、消費者向け製品は、あらかじめ合意された仕様や機能を安定して発揮(品質保持)し続けなければなりません。

たとえば、米国では材料や技術の不具合に対して「明示的な保証」を設けるのが一般的であり、これにより製品の基本的な機能に対する購入者の期待が保護されています。明示的な保証がない場合でも、製品が正常に機能することを前提とした黙示的な保証が適用されることがあります。

さらに基本的な機能に加えて、「追加機能」「使いやすさ」「信頼性」「サービス性」「耐用年数」といった品質面の付加価値は、顧客の購入判断に大きく影響します。これらの要素は、一般的に製品価格に比例し、高価格な製品ほど高品質であると判断される傾向にあります。高い品質を維持し続ける品質保持の姿勢は、高価格な製品やブランドプレミアムの価値を担保し、企業の長期的な収益性に大きく寄与します。

規制遵守(法規制遵守)は事業運営に不可欠な取り組み

一方、規制遵守(法規制遵守)はトレードオフの余地がない「守り」の分野です。製品や製造プロセスが市場における法的要件を満たしていなければ、製品や販売そのものが認められません。市場投入にあたっては、認定機関による厳格な適合性評価とその結果の文書化が必須となります。

特に食品、医薬品、医療関連製品、原子力といった高リスク業界では、原料から完成品に至るまでの厳格なトレーサビリティ(追跡可能性)が求められ、製造プロセスそのものも検証の対象となります。製造プロセスや関連ソフトウェアを大幅に修正する場合は再認証が必要になるなど、対応には多くのコストと時間を要します。

また、複数の業界に適用されている製品識別関連の規制により、製品の構成や製造国、安全性、手入れ方法などを明記したラベルやタグの添付が義務付けられている場合もあります。これら法規制遵守への対応は、事業継続における「市場参入の切符」と言えるでしょう。

このように、品質保持と規制遵守を同時に成立させるには、部門を跨いだデータ連携が不可欠です。具体的な解決策として、多くの製造業が導入している『品質管理を製品ライフサイクルに統合する手法(クローズドループ型)』については、以下の詳細ページでご確認いただけます。

【製造業向け】法規制遵守のサイクルタイムを最大35%削減するには?

品質保持とコンプライアンス対応を効率化する「クローズドループ型」の管理手法を詳しく解説。

品質管理プロセスの最適化について詳しく見る

国際基準に基づいた品質コンプライアンスと規制遵守の重要性

なぜ、品質コンプライアンスと規制遵守を徹底することが、これほどまでに重要視されているのでしょうか。それは、これらが企業の収益性と市場での生存に直結するからです。

ビジネスインパクトと重要性

品質コンプライアンスは、顧客満足度の向上や返品コストの削減といった観点から、企業にとって重要な取り組みです。顧客の期待を上回る品質を提供できれば、リピート購入や好意的なレビュー、口コミによる評価の拡大も期待できます。一方で期待を裏切った場合には、ブランドイメージや売上に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、規制遵守(法規制遵守)に関しては、法的要件を満たさなければ市場で製品を流通させることができません。違反があった場合には罰金など罰則を受けるリスクもあり、企業の収益に深刻な損失をもたらす可能性があります。

品質管理の土台となる主要な「規制遵守」の基準

これらの重要性を踏まえた上で、製造業や医療機器メーカーが具体的に遵守すべき「基盤」となるのが、以下の国際基準です。

品質コンプライアンスと規制遵守への対応方法

製造業が品質コンプライアンスや法規制遵守への対応を徹底するためには、経営陣による主導と、組織全体を支える IT 基盤の両立が不可欠です。具体的な方法は大きく3つのフェーズに分かれます。

1. 経営陣が主導する組織体制の整備

経営陣の直属組織として品質コンプライアンスおよび規制遵守の専任担当者を配置し、部門を横断して管理・統括できる権限を付与することが望ましいと言えます。

2. 継続的な品質コンプライアンス教育(トレーニング)

全従業員が、品質や規制に関する自身の役割や影響を正しく理解するためのトレーニング、すなわち継続的な品質コンプライアンス教育が不可欠です。これが長期的な品質保持の基盤となります。

3. 適切なプロセス構築とシステムへの投資 (QMS/PLM)

品質コンプライアンスや規制遵守の取り組みは、場当たり的な対応では機能しません。適切なプロセスやシステムを整備・改善し、人的リソースと技術の両方へ継続的に投資する必要があります。

多くの企業では、品質管理システム (QMS) を導入しています。さらに、複雑化する規制への対応を効率化する手段として、製品コンプライアンス ソフトウェアとしての機能を備えた PLM(製品ライフサイクル管理)の活用が注目されています。

これにより、設計段階から品質を考慮できるだけでなく、製品やプロセス、さらにはサプライヤー、外部パートナーに対しても一貫した品質要求を適用することが可能になります。また、万が一リコールが発生した場合でも、迅速な特定や分析、対応が行えます。

さらに規制遵守の面では、事業を展開している、または販売を予定している地域の法令や要件を常に把握し、文書管理や変更管理、製品データ管理、二酸化炭素排出量のモニタリングなどに対応できる体制を整えておくことが重要です。

こうした複雑な工程管理や情報の分断を解消し、業務効率化と品質向上を両立させるための具体的な手法については、以下の資料も併せてご参照ください。

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情報のサイロ化を解消し、品質のトレーサビリティと業務効率化を両立させる方法について、成功事例を交えて解説しています。

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PLM が品質コンプライアンスと規制遵守に及ぼす影響

製造業における PLM(製品ライフサイクル管理)ソリューションは、品質管理を製品ライフサイクルのあらゆる段階に統合することで、高度な品質保持と設計段階での品質確保、製造後の修正回数の削減を可能にします。これにより、品質不良に伴う追加コストの発生や顧客満足度の低下を未然に防ぐことができます。

最新の PLM ソリューションは、デジタルスレッドを通じて開発プロセス全体を可視化し、リアルタイムかつ一元的に最新データへアクセスできる環境を提供します。このような基盤により、各部門からのフィードバックプロセスを考慮したクローズドループ型の品質管理と規制遵守の両方に対応できます。

たとえば PTC の Windchill PLM ソリューションは、米国の FDA CAPA (是正および予防処置) 関連業務に対応しています。医療機器業界の ISO 13485 や FDA 21 CFR Part 820、食品業界向け PLM の領域で重視される安全規格、ISO 9000、Six Sigma、APQP、CMMI といった各種国際基準への準拠を支援します。

このように、PLM が提供する正確なデータ基盤は、単なる管理の効率化に留まらず、企業がデジタルトランスフォーメーション (DX) を推進するための強力な武器となります。

【関連記事】品質管理のデジタル化から始まる「製造業 DX」の成功法則

こうした PLM による品質基盤の構築は、製造業における DX 成功の鍵である「デジタルスレッド」の第一歩でもあります。部門間の情報の壁を壊し、3D モデルデータを核として設計から製造までを一本の糸で繋ぐことで、品質保持の精度と業務効率はさらに劇的に向上します。

実際にデジタルスレッドを構築して変革を遂げた企業の成功事例や、具体的な推進ステップについては、以下の解説記事で詳しくご紹介しています。あわせてご参照ください。

製造業 DX の成功事例に学ぶ:3D モデルと PLM でつながるデジタルスレッド

品質コンプライアンスと規制遵守の未来:AIとデジタルスレッドの融合

紙ベースの記録に依存していたため、問題の発見が遅れる傾向にありました。しかし現在では 自動化検査システムや電子レポートの導入により、精度と効率の面で大きく改善が進んでいます。

さらに PLM を活用したデジタルスレッドによって、設計からサプライヤーの認定、完成品に至るまで、エンドツーエンドのトレーサビリティ(追跡可能性)が実現可能となっています。

今後は、産業デジタルトランスフォーメーション (DX) が進行する中で、人工知能 (AI) や産業 IoT 接続センサーを活用した予知保全、高度な仮想現実技術によるトラブル対応、さらには機械学習を活用したコンプライアンス対応の自律型エージェントが導入されていくものと考えられます。

将来的にこうしたエージェントは、品質コンプライアンスおよび規制遵守に関する作業を監視し必要な情報を提供するだけでなく、将来的には問題を自律的に解決し、規制レポートやコンプライアンスに必要な文書を自動で作成できるレベルに進化すると予想されます。

こうした進展により、品質コンプライアンスと規制遵守は、これまで以上に高度化・自動化され企業活動に一体化されていくでしょう。PLMツールの重要性も今後もますます増していくと予想されます。

PTC では デジタルスレッドとデジタルツインの概念を組み合わせた、製品ライフサイクル管理を実現するPLMソリューション「Windchill」を提供しています。

品質コンプライアンスを加速させるデジタル基盤「Windchill」

PTC の Windchill は、製品データと開発プロセスを一元管理し、設計・製造から品質管理に至るデジタルスレッドを構築する PLM ソフトウェアです。AI 活用の基盤となる「単一の情報源」を提供し、属人的な管理から脱却した高度な品質保持を実現します。

Windchill の導入によって期待される効果:

  • 低品質によるコストを 40% 削減
  • 製品開発のリードタイムを 50% 短縮
  • 研究開発の効率を 20% 向上

複雑な規制対応や品質管理の自動化、AI ベースの意思決定基盤の構築をご検討の方は、ぜひ詳細をご確認ください。

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Windchill PLM ソフトウェア

デジタルスレッドの中核をなす Windchill の機能とメリットをご紹介します。

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PLM お客様導入事例

以下に PTCのPLMツール「Windchill」 を活用し、品質保持と規制遵守を高いレベルで両立させ、製品ライフサイクル全体を最適化した企業の導入事例を紹介します。

【導入事例】

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ジェフ・ゼムスキー(Jeff Zemsky)

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

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