ブログ 品質コンプライアンスとは?規制遵守との違いや重要性を解説

品質コンプライアンスとは?規制遵守との違いや重要性を解説

2025年5月2日 PLM お問い合わせ

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

この筆者の記事一覧を見る

EBITDA、ROI、ROA といった一般的なビジネス指標だけでは、企業の実態を十分に把握することはできません。メーカーは品質コンプライアンスや規制遵守がこうした指標に与える影響を理解し、事業運営に欠かせない取り組みとして的確に対応していく必要があります。
今回は品質コンプライアンスおよび規制遵守の基本的な定義や規制遵守との比較、それらが重要な理由について詳しく解説します。
記事の最後で PLM のお客様導入事例もご紹介しておりますので、ご興味ある方はぜひ最後までご覧ください。
PLMに関する詳細はこちら

品質コンプライアンスとは?規制遵守との違い

品質コンプライアンスとは企業が提供する製品やサービスに対して、顧客が期待する品質基準を満たすよう取り組むことを指します。これは法令とは異なり、あくまで顧客との約束や製品仕様、社内基準などに基づいた自発的な取り組みです。顧客満足度やブランド信頼性に直結する重要な要素とされ、企業の持続的な成長に欠かせない視点でもあります。
品質コンプライアンスは、製品やサービスに対する顧客の期待に企業が応えることに重点を置いています。規制遵守(コンプライアンス)は、安全性や環境保護といった観点から政府機関や地方自治体、業界団体が定めた法的要件を満たすことを意味します。どちらも製品の品質を確保し、企業への信頼を高めるうえで欠かせない取り組みです。

品質コンプライアンスと規制遵守の比較

品質コンプライアンスが購入意思決定と収益性に与える影響

品質コンプライアンスの観点から見ても、製品が最低限の機能を満たすことは重要です。工業製品や商用製品、消費者向け製品は、あらかじめ約束された機能を確実に提供する必要があります。たとえば 米国では材料や技術の不具合に対して明示的な保証が設けられているのが一般的です。これにより製品の基本的な機能に対する購入者の期待が保護されています。明示的な保証がない場合でも、製品が正常に機能することを前提とした黙示的な保証が適用されることがあります。
さらに基本的な機能に加えて、追加機能や使いやすさ、信頼性、サービス性、耐用年数といった品質面の要素も顧客の購入判断に大きく影響します。これらの要素は、一般的に製品価格に比例し、高価格な製品ほど高品質であると判断される傾向にあります。知識や経験のある購入者ほど、こうした品質と価格のバランスを理解し、納得したうえで製品を選択しています。

規制遵守は事業運営に不可欠な取り組み

規制遵守はトレードオフの余地がない分野です。製品やその製造プロセスが市場における法的要件を満たしていなければ、製品や販売そのものが認められません。市場投入にあたっては、認定機関による厳格な適合性評価とその結果の文書化が求められます。
さらに作業員の安全や環境保全、サステナビリティなどに関する要件も含まれます。特に食品、医薬品、医療関連製品、原子力といった高リスク業界では、原料から完成品に至るまでのトレーサビリティが求められ、製造プロセスそのものも検証の対象となります。加えて製造プロセスや関連ソフトウェアを大幅に修正する場合は再認証が必要になるなど、対応には多くのコストと時間を要する点も特徴です。また複数の業界に適用されている製品識別関連の規制により、製品の構成や製造国、安全性、手入れ方法などを明記したラベルやタグの添付が義務付けられている場合もあります。

品質コンプライアンスと規制遵守が重要である理由

品質コンプライアンスは、顧客満足度の向上や返品コストの削減といった観点から、企業にとって重要な取り組みです。顧客の期待を上回る品質を提供できれば、リピート購入や好意的なレビュー、口コミによる評価の拡大も期待できます。一方で期待を裏切った場合には、ブランドイメージや売上に悪影響を及ぼす可能性があります。
規制遵守に関しては、法的要件を満たさなければ市場で製品を流通させることができません。違反があった場合には罰金など罰則を受けるリスクもあり、企業の収益に深刻な損失をもたらす可能性があります。

品質コンプライアンスと規制遵守への対応方法

品質コンプライアンスや規制遵守への対応を進めるうえで重要なのは、経営陣が主導する体制を整えることです。可能であれば、経営陣の直属組織として品質コンプライアンスおよび規制遵守の専任担当者を配置し、部門を横断して管理・統括できる権限を付与することが望ましいと言えるでしょう。
また全従業員が、品質や規制に関する自身の役割や影響を正しく理解するためのトレーニングも不可欠です。
品質コンプライアンスや規制遵守の取り組みは、場当たり的な対応では機能しません。適切なプロセスやシステムを整備・改善し、人的リソースと技術の両方へ継続的に投資する必要があります。
多くの企業では、品質管理システム (QMS) を導入しています。これにより、設計段階から品質を考慮できるだけでなく、製品やプロセス、さらにはサプライヤー、外部パートナーに対しても一貫した品質要求を適用することが可能になります。また、万が一リコールが発生した場合でも、迅速な特定や分析、対応が行えます。
さらに規制遵守の面では、事業を展開している、または販売を予定している地域の法令や要件を常に把握し、文書管理や変更管理、製品データ管理、二酸化炭素排出量のモニタリングなどに対応できる体制を整えておくことが重要です。

PLM が品質コンプライアンスと規制遵守に及ぼす影響

PLM(製品ライフサイクル管理)ソリューションは、品質管理を製品ライフサイクル全体に統合することで、設計段階での品質確保や製造後の修正回数の削減を可能にします。これにより、品質不良に伴う追加コストの発生や顧客満足度の低下を未然に防ぐことができます。最新の PLM ソリューションは、デジタルスレッドを通じて開発プロセス全体を可視化し、リアルタイムかつ一元的に最新データへアクセスできる環境を提供します。このような基盤により、各部門からのフィードバックプロセスを考慮したクローズドループ型の品質管理と規制遵守の両方に対応できます。
たとえば PTC の Windchill PLM ソリューションは、米国の FDA CAPA (是正および予防処置) 関連業務に対応しており、ISO 9000、Six Sigma、APQP、CMMI、FDA 21 CFR Part 820 といった各種国際基準への準拠を支援します。

品質コンプライアンスと規制遵守の未来

従来の品質コンプライアンスや規制遵守への取り組みは、手動による検査や紙ベースの記録に依存していたため、問題の発見が遅れる傾向にありました。しかし現在では 自動化検査システムや電子レポートの導入により、精度と効率の面で大きく改善が進んでいます。
さらにPLM を活用したデジタルスレッドによって、設計からサプライヤーの認定、完成品に至るまで、エンドツーエンドのトレーサビリティが実現可能となっています。今後は、産業デジタルトランスフォーメーション (DX) が進行する中で、人工知能 (AI) や産業 IoT 接続センサーを活用した予知保全、高度な仮想現実技術によるトラブル対応、さらには機械学習を活用したコンプライアンス対応の自律型エージェントが導入されていくものと考えられます。またこうしたエージェントは、品質コンプライアンスおよび規制遵守に関する作業を監視し必要な情報を提供するだけでなく、将来的には問題を自律的に解決し、規制レポートやコンプライアンスに必要な文書を自動で作成できるようになる可能性もあります。
こうした進展により、品質コンプライアンスと規制遵守は、これまで以上に高度化・自動化され企業活動に一体化されていくでしょう。PLMツールの重要性も今後もますます増していくと予想されます。
PTC では デジタルスレッドとデジタルツインの概念を組み合わせた、製品ライフサイクル管理を実現するPLMソリューション「Windchill」を提供しています。品質コンプライアンスと規制遵守の両方を効率的かつ効果的に推進できるPLMツールにご興味のある方は、こちらもご覧ください。

Automotive digital thread

製品データ管理: デジタルスレッドとデジタルツインの基盤

製品データ管理PLMソリューション”Windchill”を活用し、デジタルスレッドとデジタルツインを組み合わせた効率的で柔軟なシステム運用を実現しましょう。

詳細はこちら

PLM お客様導入事例

以下に PTCのPLMツール「Windchill」 を活用して製品ライフサイクル全体を最適化した企業の導入事例を紹介しますので、こちらもぜひご覧ください。

【導入事例】

PLM Windchill image

PLM お問い合わせ

 

詳細はこちら
CTA Image

製造エンジニアリング 4つの課題とその克服方法 ~PLMシステム・ERP ・MES の統合~

本eBook をDLして、製造におけるDX課題の見える化とその解決方法を ご確認ください。

eBook はこちら
ジェフ・ゼムスキー(Jeff Zemsky)

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

次のホワイトペーパー