ブログ 品質コンプライアンスと規制遵守の概要

品質コンプライアンスと規制遵守の概要

2024年2月21日

EBITDA、ROI、ROA などの一般的なビジネス指標だけでは、企業の全体像を把握できません。メーカーは、品質コンプライアンスと規制遵守の両方が最終的にこれらの指標に及ぼす影響を把握し、これらが事業運営に不可欠な取り組みであることを理解した上で、効果的に対応する必要があります。

品質コンプライアンスと規制遵守の定義

品質コンプライアンスは、主に購入者の基本的な期待に応えることに関連しています。これに対して規制遵守は、安全要件や環境要件など、地方機関、政府、業界団体によって定められた各種要件を満たすことに関連しています。いずれも複数の要素で構成されています。

品質コンプライアンスと規制遵守の比較

品質コンプライアンスは購入に関する意思決定と最終的な収益性に影響を及ぼす

工業製品、商用製品、消費者製品は少なくとも、事前に約束した機能を提供しなければなりません。米国などの地域では一般的に、特定の期間にわたって最小限の機能を利用できることを請け合う、材料や技術の欠陥に関する明示的な保証が用意されており、機能に対する購入者の期待が保護されています。明示的な保証がない場合、製品が想定どおりに機能することを示す黙示的な保証が用意されることもあります。

明示的または黙示的な保証によって約束された基本的な機能に加え、さらに品質指標を強化できれば、顧客の意思決定に大きな影響を与えることができます。たとえば、追加機能、使いやすさ、信頼性、サービス性、耐用年数などがこれに該当します。品質に関してどの程度のパラメーターが追加されるかは、通常、その製品の購入価格に比例します。購入者の多くは、高価な製品の方が、安価な製品よりも多くの機能を備え、使いやすさ、信頼性、サービス性、製品寿命の面で優れているのではないかと考えます。知識の豊富な購入者ほど、このようなトレードオフを理解し、受け入れる用意があります。

規制遵守は事業運営に不可欠な取り組み

規制遵守はまったく別のトピックです。この場合、トレードオフの余地はほとんどありません。製品とプロセスは、政府や業界が定める規制に従わなければなりません。規制遵守が徹底されていない場合、規制対象の市場で製品を製造することも、販売することもできません。製品または製品ファミリーを市場に投入する前に、認定機関による厳格な適合性テストと認証を実施し、文書化する必要があることも珍しくありません。多くの場合、作業員の安全、環境、サステナビリティなどに関する規制も遵守する必要があります。

飲食料品、製薬、医療関連製品、原子力などの高リスク業界では、原料から完成品までの安全性に関するトレーサビリティを求められることが多く、製造プロセス自体も検証しなければなりません。製造プロセスと関連ソフトウェアを大幅に修正する場合やアップグレードする場合、多くのコストと時間がかかる再検証が必要になります。また、複数の業界に適用されている製品識別関連の規制により、製品の構成、製造国、安全性、手入れ方法などを明記したラベルやタグの添付が義務付けられている場合もあります。

品質コンプライアンスと規制遵守が重要である理由

品質コンプライアンスは、顧客満足度の面でも、明示的な保証や黙示的な保証に違反したことによる製品の返品にかかるコストを最小化するという目的でも重要です。製品の品質が購入者の期待を超えることが理想的ですが、もし期待に応えることができない場合、その購入者がリピーターになったり、好意的なオンラインレビューを投稿したり、その企業の製品やサービスを他者に勧めたりする可能性はほぼありません。品質に対する購入者の期待を満たすことができない企業にとって、長期的に利益を上げ、成功を手にすることは非常に困難です。
これに対して、規制遵守は事業運営に不可欠な取り組みです。特定の地域や国で採用されている多種多様な規制を遵守していない場合、それらの場所で製品を合法的に製造し、販売することはできません。規制に著しく違反した場合、通常は罰金などの罰則が科されるため、メーカーの収益に深刻な影響が及ぶ可能性が高くなります。

品質コンプライアンスと規制遵守への対応方法

品質コンプライアンスと規制遵守に効果的に対応するには、まず経営陣をトップに据える必要があります。可能であれば、経営陣の直属として専任の品質コンプライアンス/規制遵守担当者を割り当て、部門を越えて活動するチームを管理する権限をその担当者に付与するとよいでしょう。これらの専任チームだけでなく、すべての従業員が個人の行動が及ぼす影響と個人の関与について認識しなければならず、それらについて理解を深めるためのトレーニングを受講する必要があります。

品質コンプライアンスも規制遵守も、場当たり的に対応して成功することはありません。時間をかけて適切なプロセスとシステムを開発、サポート、改良し、人的リソースと実現技術の両方に相応の投資を行わなければなりません。大手のメーカーや組織は、品質に関する目標を達成し、規制遵守を確実なものにするために必要な個々のプロセス、手順、役割、責任を定義して文書化する、正式な品質管理システム (QMS) を導入しています。品質管理を効果的に行うことで、製品とプロセスの両方で設計段階から品質を考慮できるようになります。これがサプライヤーやその他の外部パートナーにも拡張されれば理想的です。効果的な品質管理によって、メーカーは問題を迅速に特定して取り込み、分析し、影響を受ける項目を追跡できるため、自発的なリコールや強制リコールが発生した場合も対応できます。

規制遵守については、メーカーやその他の組織が業務を展開している地域、または製品の市場投入を希望している地域の規制環境全般と具体的な規制要件を徹底的に把握し、それらに常に精通していることが不可欠です。文書管理、変更管理、製品データ管理、二酸化炭素排出モニタリングなどのシステムが必要となることも珍しくありません。

PLM が品質コンプライアンスと規制遵守に及ぼす影響

トップクラスの PLM サプライヤーは、品質管理を製品ライフサイクル管理プロセスに統合して、メーカーによる高品質な製品の設計と製造、ライフサイクルの早期段階での品質に関する問題の調整、後期段階での変更の削減、低品質に関連して発生することの多い大幅なコストの増加(金銭的な負担と顧客の認識への悪影響の両方)の最小化を可能にしています。現代の優れた PLM ソリューションは、製品ライフサイクル全体に広がるデジタルスレッドを実現し、製品開発プロセスを効率化するだけでなく、関係者全員が正確な最新のデータと単一の正しいリアルタイム情報源に簡単かつ安全にアクセスし、顧客のフィードバックを取り込めるようにしています。このデジタルスレッドでは、エンドツーエンドのトレーサビリティを介して、クローズドループ型の品質管理と規制遵守の両方に対応できます。

たとえば、規制の厳しい医療機器業界の場合、すべての故障を文書化、追跡、分析して原因を特定する必要があり、現在および未来の製品ではそれらを修正または回避しなければなりません。PTC の Windchill PLM ソリューションを利用すれば、米国の FDA CAPA (Corrective and Protective Actions) 関連業務に対応し、CAPA の基準に準拠できます。さらに医療機器メーカーは、ISO 9000、Six Sigma、APQP、CMMI、FDA 21 CFR Part 820 などの広範に及ぶ故障報告ベストプラクティスに従っていることを証明できます。

品質コンプライアンスと規制遵守の未来

以前の品質コンプライアンスは、ほぼ手動での事後的な品質検査に大きく依存することが珍しくありませんでした。その場合、仕様を満たさない構成部品や製品が大量に製造されるまで、欠陥が明らかになることはありませんでした。規制遵守は、古いデータ取得/レポートプロセスや技術、さらに非効率な紙資料の文書とレポートに大きく依存する傾向がありました。現在では、自動化された検査およびデータ取得システムならびに電子レポートメカニズムによりこれらのプロセスが効率化され、PLM を活用したデジタルスレッドで、基本製品設計からサプライヤーの認定、完成品まで、エンドツーエンドのトレーサビリティに対応できます。

将来的には、産業デジタルトランスフォーメーション (DX) が進行する中で、人工知能 (AI) や新しい産業 IoT 接続センサーおよびアプリケーションの利用が増加し、メーカーでの品質コンプライアンスと規制遵守がさらに簡素化されるでしょう。産業 IoT を基盤とする予知保全技術により、差し迫った機器の問題を特定し、担当者に対してアラートを発するだけでなく、高度な仮想現実技術を使用して迅速な修正を行うためのエキスパートによるガイダンスを参照できるようになる可能性もあります。また、機械学習や機械視覚システムなどの AI 技術により、メーカーが自律型エージェントを開発、導入することも考えられます。これらのエージェントは、品質コンプライアンス/規制遵守関連作業を監視し、エキスパートによるガイダンスを人間に提供するだけでなく、いずれは問題を自律的に解決して、規制レポートとコンプライアンスのために必要な文書を作成できるようになる可能性もあります。

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ジェフ・ゼムスキー(Jeff Zemsky)

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。

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