今回は品質管理の基本的な概念、品質保証との違い、PLM との統合によるメリット、業務や手法について詳しく解説します。
記事の最後で PLM のお客様導入事例もご紹介しておりますので、ご興味ある方はぜひ最後までご覧ください。
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品質管理とは
品質管理とは 製品やサービスを一定の品質で顧客の下に届けるための取り組みです。品質管理は「品質 (Quality):高品質で」「コスト (Cost):最適な(あるいは安価な)価格で」「納期 (Delivery):なるべく早く」という 3 つの指標 (QCD) のバランスを取りながら行われます。競争の激しい市場で勝つためにはこれらの指標を妥協せずに達成することが求められ、品質管理部門には非常に大きなプレッシャーがかかります。
品質管理と品質保証の違い
品質管理と品質保証は「製品の品質向上」という共通の目的を持ちながらも、業務内容やかかわるプロセスが異なります。
- 品質管理 (Quality Control):QC
製品を製造し市場に送り出すまでの品質確保や向上のための検査や改善などにかかわります。
- 品質保証 (Quality Assurance):QA
「Assurance」は「保証」と訳されます。製品設計から製造、市場に出た際のクレーム対応や対策、監査に至るまで、製品やサービスの品質向上を担保します。品質保証は、製品ライフサイクル全体においてシステマチックに品質を高めていく概念です。欧州製造業が発端で日本はこれに倣って品質保証の概念を取り入れました。
日本の製造業では企業によって品質保証と品質管理で担当者や部署が分かれていたり、同一の担当者や部署で行われたりするなど、企業規模や考え方によりさまざまです。
国際標準化機構 (ISO) による規格「ISO 9000 シリーズ」に、「品質マネジメント (Quality Management : QM)」という言葉が登場します。「マネジメント (Management)」という英語が「管理」と訳されることもあり、QM と QC は同義ではありません。QM には、上記で述べた QC と QA の考え方が含まれています。
品質管理の業務内容
品質管理は、製品品質を確保するために製品の製造ラインでの手順改善に取り組んだり、市場に送り出す前の製品を検査したりする業務を行います。また、製造現場の作業手順作成や作業担当者の教育も品質管理の業務範囲に含まれます。品質管理の業務は、主に「工程管理」「品質保証」「品質改善」の 3 つに大別できます。
工程管理
工程管理では 生産計画に基づいて製品の生産進捗を管理し、要求される品質要件を満たした製品を決められた納期内で一定の数量を確保することを目指します。
品質検証
品質検証(品質検査)では 顧客に出荷する前に完成した製品が要求されている品質要件を満たしているかどうかの検査を行います。品質検証には完成品すべてを検査する「全数検査」と、ロットごとの一部を抽出して検査する「抜取検査」があります。また完成品の検査だけではなく、製品を生産する工程や使用している素材・原料などが品質に与える影響も検証します。
品質改善
品質改善では 生産過程で発生した不良品や不具合の原因を追及し、対策を実施します。その際安全分析手法の「FTA (Fault Tree Analysis)」を使用することもあります。さらに不良品や不具合の発生を未然に防ぐために、「FMEA (Failure Mode and Effect Analysis)」を実施することもあります。
品質管理のフレームワーク
品質管理の代表的なフレームワークには「PDCA サイクル」「SQC」「QC 7つ道具」があります。
PDCA サイクル
PDCA サイクルは下記の4つのステップを繰り返し実行する品質管理手法です。
- Plan=計画:品質改善や向上のための目標と計画を立てる。
- Do=実行:計画に基づいて実行する。
- Check=評価:実行結果を振り返り、評価を行う。
- Action=改善:評価に基づき、計画を改善する。
上記 4 つのプロセスを継続的に繰り返すことで、品質改善や向上を目指します。なお、PDCA サイクルは、製造業の品質管理以外にもさまざまな分野で適用されています。
SQC
統計的品質管理 (Statistical Quality Control : SQC) とは、統計的な手法を用いて品質管理や工程改善を推進するフレームワークです。少数のサンプルや限定的なデータでも、過去のデータを基に高精度な計算を行うことができます。全数検査が現実的ではない時や、品質問題を早期発見したい時に役立ちます。
QC 7つ道具とは
QC 7つ道具には下記があります。
グラフ
ここでいう「グラフ」は棒グラフや折れ線グラフ、円グラフなどの一般的なグラフ(散布図やパレート図を除く)を指します。
チェックシート
チェックシートは点検やデータ収集時などに使用するもので、必要な作業やデータの抜け漏れを防ぐのに役立ちます。
パレート図
パレート図は数値が大きな順にプロットされた「棒グラフ」と、その累積構成比を表す「折れ線グラフ」を組み合わせた複合グラフです。
ヒストグラム
ヒストグラムは データを階級(区間)に分けて、それぞれの度数(データ数)を示すグラフの一種です。横軸がデータの階級、縦軸が各階級の度数を表します。
特性要因図
特性要因図は 結果(特性)と要因の関係を系統的に線で結び、分かりやすく整理した図です。要因の中で、結果に影響を及ぼすものを原因として示します。この図の見かけが魚の骨に似ていることから、「魚の骨図(フィッシュボーン図)」と呼ばれます。
散布図
散布図は 縦軸と横軸に量や大きさについて異なる項目を設け、対応する個所に点を打ってデータ分布を示す図です。
管理図
管理図は 品質や工程の状態のばらつきを折れ線で示した図です。目標値を示す中心線 (CL) の上下に、上方管理限界線 (UCL) と下方管理限界線 (LCL) を配置し、公差を示します。これらの限界線を超える場合、異常値として警告されます。
品質管理の手法
品質管理を行う上で重要な手法や考え方としては、「IE」「5S」「4M」「TQC」「TQM」などが挙げられます。
IE
IE(Industrial Engineering:産業工学または生産工学)は品質管理手法の一種で、製造工程や作業を客観的かつ定量的に分析します。IE による分析では以下の「3 ム」に着目し、工程を最適化して付加価値を生む方法を検討します。
- ムリ:能力に対する目標が高すぎる。過剰な作業。
- ムラ:能力や作業量などに ばらつきがある。
- ムダ:能力に対する目標が低すぎる。高い付加価値が生めない作業。
工程の分析では 加工作業や組み立て、物流(運搬)、検査などの工程を記号と図表で可視化し、改善点を洗い出します。また作業者のスケジュールや配置、作業手順の分析も実施します。
5S
5S(ゴ・エス)とは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字(S)を表したものです。これらを日々徹底することで職場を改善し、安全性や効率性の向上、従業員のモラル醸成、さらには製品の品質向上へとつながります。
4M
品質管理における 4M(ヨン・エム)は、「Man(人、作業者)」「Machine(機械、設備)」「Material(材料)」「Method(方法、手順)」の頭文字 (M) を表し、製品の品質を決定づける重要な要素です。この 4M を書き出して可視化し、生産性や安全性などに関して分析します。4M 分析では担当変更や設備の入れ替えなどが工程にどのように影響するか検討し、考えられる問題への対策などを行います。
TQC
TQC (Total Quality Control) は QC(品質管理)の拡大版で製造工程に限定せず、マーケティングや、設計、調達、営業、販売、保守など製品ライフサイクル全体にわたる品質管理を行います。
TQM
TQM (Total Quality Management)は、「Management」を「管理」ではなく「経営」と訳し、「品質経営」として位置づけられます。TQC の活動や考えを自社の経営戦略の一環として、経営者がトップダウンで実施することを示します。
品質管理と PLM を統合するメリット
品質管理システムを PLM のプロセスに統合することで、以下のメリットが得られます。
リアルタイムの可視性の向上
一元管理された製品ライフサイクルに関連するデータの最新情報に、いつでもリアルタイムでアクセスできます。そのような環境では可視化や分析、情報共有がスムーズに行えます。
品質データの統合
品質管理にかかわる全ての情報を 1 カ所に集約し、デジタルスレッドによる統合管理を可能にします。
コラボレーションの効率化
設計や製造、保守などの部門間のコミュニケーションを効率よく素早く行えます。誰もが常に同じ情報を参照できることで、正確で建設的な議論がしやすくなり意思決定もスムーズに進みます。
PTC の品質管理ソリューション
Windchill、Windchill+(SaaS 版)
品質や、信頼性、安全性、プロセスの管理を製品ライフサイクルのあらゆる段階に組み込むことができ、製品開発における効率を向上させることが可能です。
品質管理の基盤として開発情報の集約管理とプロセスの一元化により、作業効率や設計品質の向上が見込めます。さらにより厳格な品質管理プロセスを適用することで、一貫性のあるデータとプロセスを利用して製品開発を進める事ができます。また要件管理やリスク分析などを用いた継続的な品質改善の取り組みを全社的に再定義する事も重要です。
まとめ
製品やサービスを一定の品質で顧客に届けるため、QCD(品質、コスト、納期)のバランスを取りながらさまざまな施策を行うのが品質管理です。今日の複雑化した市場かつ厳しい条件における「ものづくり」業界において、QCD の最適化は困難を極めています。また日本国内では働き手不足が深刻化しており、限られた時間と人員で品質問題への対応を行うことがますます厳しくなっています。そこでPLM のデジタル技術を活用し、データ探索やコミュニケーションの行き違いで無駄に費やされる時間を減らすことが重要です。これにより人々が創造性を発揮するべき業務に十分に時間が割けるよう、業務環境を整えることが求められます。
このような業務環境を整えるためには、品質管理だけでなく部品管理の効率化も重要です。以下の資料では、PLM が部品管理の効率化にどう貢献するのかを解説しています。ご興味のある方はこちらもご覧ください。
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