ブログ EBOM、MBOM、SBOM の違いとは?設計・製造 BOM の連携とPLM 活用の重要性

EBOM、MBOM、SBOM の違いとは?設計・製造 BOM の連携とPLM 活用の重要性

2025年12月8日 PLMお問い合わせ

Mark Taber is Vice President of Marketing. In his current role, Mark is focused on helping manufacturers drive digital transformation, with a foundation of PLM and the digital thread, within the enterprise and across enterprises.

Mark has more than 30 years of experience working in the areas of process automation, application integration, cyber security, and development. Prior to PTC, Mark was CEO of Active Endpoints (acquired by Informatica), a process automation firm. A graduate of the Wharton School, Mark currently lives in Raleigh, North Carolina.

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企業が競争優位性を保つためには、品質を維持しながら優れた製品を迅速かつ大量に市場へ投入する必要があります。しかし、製品開発が複雑化する現代において、設計・製造・サービスといった各部門が利用するデータはサイロ化(分断)しやすく、これが手戻りや遅延の大きな原因となっています。

特に重要となるのが、設計部品表 (EBOM)、製造部品表 (MBOM)、サービス部品表 (SBOM) という異なる種類の BOM(部品表)の管理です。それぞれの BOM は異なる目的と構造を持っていますが、これらが整合性を保ち、連携していなければ、製品ライフサイクル全体での効率化は実現できません。

本記事では、混同されがちな EBOM、MBOM、SBOM の具体的な「違い」を比較解説するとともに、PLM(製品ライフサイクル管理)システムを活用してこれらをシームレスに連携させる重要性とメリットについて解説します。

▼BOM の基礎知識についてはこちら

サマリー型・ストラクチャー型などのデータ構造や、BOM 管理システムの基本的な機能・導入メリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。 BOM管理システムとは?基礎知識と種類、導入メリットを解説

EBOM(設計)、MBOM(製造)、SBOM(サービス)の違いと役割

製品ライフサイクルには、各フェーズの目的に応じて複数の BOM(部品表)が存在します。

「同じ製品なのだから BOM は1つで良いのではないか?」と思われるかもしれませんが、設計部門と製造部門では「製品を見る視点」が根本的に異なります。そのため、設計 BOM (EBOM) と製造 BOM (MBOM) の違い、さらには保守のためのサービス BOM (SBOM) それぞれの役割を正しく理解し、適切に使い分けることが重要です。

以下に、主要な3つの BOM の違いを一覧表にまとめました。

BOMの種類と比較表

 

特徴 EBOM(設計部品表) MBOM(製造部品表) SBOM(サービス部品表)
正式名称 Engineering BOM Manufacturing BOM Service BOM
主な利用者 設計・開発部門 生産技術・製造部門 アフターサービス部門
視点(役割) 「機能」重視
(どんな機能の製品か)
「工程・組立」重視
(どうやって作るか)
「保守・交換」重視
(どう修理するか)
構成要素 機能部品、図面、仕様書
3Dモデル、ファームウェア
組立順序、中間品、梱包材
治具、副資材
交換用キット、スペアパーツ
マニュアル、サービス区分

 

 

EBOM(Engineering BOM:設計部品表)とは

EBOM(イーボム)は、設計部門が製品の「機能」を定義するために作成する部品表です。

CAD (Computer Aided Design) や EDA ツールなどで作成された図面や 3D モデルをベースに、その製品が「どのような部品で構成されているか」という仕様情報を管理します。あくまで「設計上の構成 (As-Designed)」であるため、製造工程での組み立て順序などは考慮されておらず、機能単位のユニットで階層化されているのが特徴です。

MBOM(Manufacturing BOM:製造部品表)とは

MBOM(エムボム)は、EBOM をもとに生産技術や製造部門が作成する、製品の「作り方」を定義するための部品表です。

設計 BOM と製造 BOM の違いにおける最大のポイントは、「組み立て順序」や「調達単位」が含まれるかどうかです。MBOM には、EBOM にある部品情報に加え、製造ラインでの組み立てプロセス、中間組立品(ファントム)、梱包材、塗料などの副資材といった「製造に必要なすべての要素 (As-Built)」が含まれます。

SBOM(Service BOM:サービス部品表)とは

SBOM(エスボム)は、製品出荷後のアフターサービスやメンテナンス業務で使用される部品表です。

顧客が製品を長く使用できるよう、修理や点検に必要な「交換可能な部品 (As-Maintained)」を定義します。例えば、製造時にはバラバラの部品であっても、修理時には「交換用キット」としてアセンブリ単位で扱われる場合、SBOM ではそれを一つの品目として管理します。これにより、フィールドサービス部門は迅速な部品特定や発注が可能になります。

※ご注意:SBOM (Software BOM) との混同について
近年、サイバーセキュリティの文脈で「SBOM(エスボム)」という言葉が注目されていますが、これは Software Bill of Materials(ソフトウェア部品表)を指し、製品に含まれるソフトウェアコンポーネントや脆弱性情報を管理するものです。

本記事で解説しているのは「Service BOM(サービス部品表)」ですが、近年の高度な PLM システムでは、メカ (Service BOM) とソフト (Software BOM) の両方を包括的に管理・連携することが可能になっています。

関連用語:PBOM・BOPとMBOM の関係

製造の現場においては、部品のリスト (MBOM) があるだけでは製品を完成させることはできません。「どの部品を (MBOM)」使うかに加え、「どの順序で、どの設備を使って加工するか(プロセス)」という情報が不可欠だからです。

ここで重要になるのが、PBOM (Process BOM) や BOP (Bill of Process) といった概念です。企業によって定義が異なる場合もありますが、一般的に EBOM・MBOM・BOP は以下のような関係性にあります。

PBOM (Process BOM) とは

PBOM(ピーボム)は、製造工程の流れに合わせて構成された部品表を指します。

広義には MBOM と同義として扱われることもありますが、狭義には「MBOM の情報に、工程順序や工区(ショップ)の情報を付加したもの」として区別される場合があります。中間品の管理など、製造ラインの物流管理において重要な役割を果たします。

BOP(Bill of Process:工程表)とは

BOP(ビーオーピー)は、製品の「製造工程(プロセス)」を定義するリストです。

MBOM と BOP の違いは、「モノ」か「コト」かにあります。

  • MBOM(モノ): 部品、構成、数量、材料
  • BOP(コト): 作業手順、使用設備、治具、標準作業時間(工数)、作業要領書

MBOM と BOP の連携がなぜ重要か

近年の製造 DX においては、「MBOM(部品構成)」と「BOP(工程情報)」を個別に管理するのではなく、相互に紐づけて管理することが求められています。

例えば、「ある部品の設計変更(EBOM 変更)」が発生した際、それが「MBOM(製造部品)」に反映されるだけでなく、「BOP(どの工程の作業手順や設備に影響するか)」まで即座に特定できなければ、製造ラインでの不具合や手戻りを防ぐことはできません。

PLM システムを活用することで、これら EBOM、MBOM、PBOM、BOP をデジタルスレッドとして繋ぎ、設計変更の影響範囲を瞬時に把握することが可能になります。

EBOM と MBOM の連携(トランスフォーメーション)における課題

前述の通り、設計部門と製造部門では BOM に求める視点が異なります。そのため、製品開発の現場では、設計された EBOM をもとに、製造ラインに適した MBOM へと作り変える変換作業(BOM トランスフォーメーション)が必要になります。

しかし、多くの企業において EBOM と MBOM の連携(ebom mbom 連携)はスムーズにいかず、以下のような深刻な課題を抱えています。

構造の違いにより「単純コピー」ができない

EBOM と MBOM の違いは、単なる項目の有無だけではありません。階層構造そのものが異なるため、単純なデータのコピー&ペーストでは対応できません。

例えば、EBOM では「1つのユニット」として定義されていても、製造現場 (MBOM)では「内作部品」と「購入部品」に分かれたり、組み立ての都合上で「中間組立品(ファントム)」を仮想的に定義したりする必要があります。この構造変換を、Excel 等の手作業で行うには限界があります。

手動変換によるタイムラグと入力ミス

多くの現場では、EBOM の情報を見ながら、生産技術者が手入力で MBOM を作成・更新しています。このアナログなプロセスには常にリスクが伴います。

  • 転記ミス(ヒューマンエラー):品番や数量の間違いが、発注ミスや製造ラインの停止を招く。
  • 情報のタイムラグ:設計が完了してから MBOM が整備されるまでに時間がかかり、リードタイムが長期化する。

設計変更(設変)が正しく伝わらない「情報の分断」

最大の問題は、設計変更(エンジニアリング・チェンジ)への対応です。

設計部門が EBOM を更新しても、その変更内容がリアルタイムに製造部門へ通知されなければ、製造現場は「古い図面や MBOM」に基づいて製造を続けてしまいます。これは、大量の廃棄(スクラップ)や手戻り、最悪の場合は誤った製品の出荷に直結します。

このように、各部門のシステムやデータがバラバラに管理され、製品ライフサイクル全体の情報の流れ(デジタルスレッド)が分断されている状態こそが、製造業が解決すべき最大の課題と言えます。

PLM による BOM 統合管理のメリット

前述した「情報の分断」や「手動変換によるリスク」を解決する唯一の方法は、PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムによる BOM の統合管理です。

PTC の「Windchill」をはじめとする最新の PLM ソフトウェアを活用し、EBOM、MBOM、SBOM を単一のプラットフォーム上で連携させることで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。

世界中の製造業で採用されている PLM ソリューション「Windchill」の詳細機能や導入メリットについては、以下の製品ページをご覧ください。

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 EBOM から MBOM/SBOM への変換をシステム化

PLM を導入すれば、設計者が作成した EBOM のデータをドラッグ&ドロップのような直感的な操作で MBOM や SBOM へと変換(トランスフォーメーション)できます。

単なるコピーではなく、データ同士が「リンク(関連性)」を持った状態で変換されるため、構造の組み換えを行っても元の設計データとの繋がりは維持されます。これにより、手入力によるヒューマンエラーを無くし、BOM 作成工数を大幅に削減できます。

変更管理の一元化と「信頼できる唯一の情報源」

PLM 上で各 BOM がデジタルスレッドとして繋がることで、「信頼できる唯一の情報源 (Single Source of Truth)」 が確立されます。

設計部門が EBOM に変更(設変)を加えると、それに関連付いた MBOM や SBOM にも「変更が必要である」というアラートが即座に通知されます。製造やサービス部門は、常に最新の設計意図に基づいた正確な情報をリアルタイムに参照できるため、古い図面で製造してしまうリスクがなくなります。

QCD(品質・コスト・納期)への貢献

BOM 連携は、製造業の経営指標である QCD の向上に直結します。

  • 品質 (Quality):正しい部品、正しい工程情報の伝達により、製造品質が安定する。
  • コスト (Cost):手戻りや廃棄(スクラップ)、過剰在庫の削減により、無駄なコストを排除する。
  • 納期 (Delivery):BOM 変換の自動化と情報共有の迅速化により、リードタイムを短縮し、市場投入期間を早める。

PLM は単なるデータ管理ツールではなく、複雑化する EBOM、MBOM、SBOM の管理を適正化し、部門間の壁を取り払うための基盤システムなのです。

EBOM・MBOM・SBOMに関するよくある質問 (Q&A)

Q: EBOM(設計 BOM)と MBOM(製造 BOM)の最大の違いは何ですか?

A: 最大の違いは「視点」と「構成」です。EBOM は設計者が「機能」を定義するために作成し、MBOM は製造現場が「どう作るか(組み立て順序や工程)」を定義するために作成されます。そのため、同じ製品でも階層構造や含まれる品目(副資材の有無など)が異なります。

Q: SBOMには「サービス BOM」と「ソフトウェア BOM」の2種類があるのですか?

A: はい、略称が同じであるため混同されやすいですが、文脈によって意味が異なります。製造業の PLM(製品ライフサイクル管理)分野では「Service BOM(保守部品表)」を指すことが一般的ですが、サイバーセキュリティ分野では「Software BOM(ソフトウェア部品表)」を指します。最新の PLM システムでは、これら両方を管理・連携させることが可能です。

Q: BOM の管理や連携は Excel(エクセル)でも可能ですか?

A: 製品構成が単純であれば可能ですが、推奨されません。Excel では EBOM とMBOM の複雑なリンク関係を維持したり、設計変更をリアルタイムに反映させたりすることが困難だからです。転記ミスや属人化を防ぐためにも、BOM 管理システムや PLM の導入が推奨されます。

Q: MBOM と BOP(工程表)の違いは何ですか?

A: MBOM は「何を使うか(部品リスト)」を定義するのに対し、BOP (Bill of Process)は「どう作業するか(作業手順、設備、標準時間)」を定義します。製造現場では、MBOM と BOP を組み合わせて使用することで、正確な製造指示が可能になります。

PLM導入事例(EBOM・MBOM 連携の成功例)

最後に、PTC の PLM ソフトウェア「Windchill」を活用して EBOM・MBOM をはじめとする製品データを統合管理し、劇的な成果を上げた企業の事例をご紹介します。

UD trucks 社:3D CAD と PLM で設計開発の QCD を向上

トラックなどの商用車は、顧客の要望に応じた多様なバリエーション(オプション)管理が必要であり、BOM の構造も極めて複雑です。

UD trucks 社は、3D CAD データと BOM を PLM 上で統合管理することで、設計情報の見える化を実現。設計段階からのフロントローディングを推進し、QCD(品質・コスト・納期)の大幅な向上を達成しました。

UD trucks 社の事例詳細はこちら

オムロン ヘルスケア:PLM で設計現場に意識改革を!

グローバルに製品を展開するオムロン ヘルスケアでは、拠点間でデータが分断されることによる非効率が課題でした。

PLM を導入し、設計 BOM (EBOM) を含む技術情報を「グローバル共有資産」として一元化。世界中のどの拠点からでも最新の正しい情報へアクセスできる環境を構築し、開発リードタイムの短縮とガバナンスの強化を実現しています。

オムロンヘルスケアの事例詳細はこちら

日本電産 (Nidec Corporation):PLM により市場投入までの期間が 48% 減少

世界No.1の総合モーターメーカーである日本電産様は、M&A による急成長に伴うシステム統合が課題でした。

Windchill を導入して製品開発プロセスを標準化し、設計から製造への情報伝達(BOM 連携)をシームレス化。結果として、製品の市場投入までの期間 (Time to Market) を 48% も短縮するという驚異的な成果を上げています。

日本電産 (Nidec Corporation) の事例詳細はこちら

まとめ:BOM 連携で製造 DX を加速させる

本記事では、設計部品表 (EBOM)、製造部品表 (MBOM)、サービス部品表 (SBOM) の違いと、それらを連携させる重要性について解説しました。

複雑化するものづくりの現場において、部門ごとに最適化された BOM を持つことは避けられません。しかし、それらが分断されたままでは、手戻りや品質低下といった大きなリスクを抱え続けることになります。

重要なのは、BOM を統一することではなく、PLM システムを通じて各 BOM を「デジタルスレッド」で繋ぎ、常に整合性が取れた状態を維持することです。

BOM の連携は、単なるデータ整理ではありません。部門間の壁を取り払い、リードタイム短縮と品質向上を実現する、「製造 DX(デジタルトランスフォーメーション)」 の確実な第一歩となります。

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Mark Taber

Mark Taber is Vice President of Marketing. In his current role, Mark is focused on helping manufacturers drive digital transformation, with a foundation of PLM and the digital thread, within the enterprise and across enterprises.

Mark has more than 30 years of experience working in the areas of process automation, application integration, cyber security, and development. Prior to PTC, Mark was CEO of Active Endpoints (acquired by Informatica), a process automation firm. A graduate of the Wharton School, Mark currently lives in Raleigh, North Carolina.

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