新型コロナウイルスの感染が広がり、新しい生活様式が始まってから 1 年が経ちました。
自宅でリモートワークをする人も増えているでしょう。都会のオフィスに通うために満員の通勤電車に閉じ込められることも無く、自宅で仕事に励むことができることはなんとなく良いように見えます。しかし、落とし穴がありました。少なくとも筆者の家には。
一般に換気不足から二酸化炭素濃度が上昇すると、頭痛や体調不良の原因になるとされています。そのため厚生労働省や東京都では、オフィスや商業施設での二酸化炭素濃度の基準を 1,000 ppm 以下と定めています。自宅の場合は若干緩められて 1,500 ppm 以下が望ましい基準とされています。ちなみに外気では 400 ppm 程度です。
オフィスは従業員が集まって仕事をする場所なので、空調には力が入っています。近代的なオフィスビルでは窓を開閉できないため、良く調整された空調装置により快適な温度、湿度、そして二酸化炭素濃度を保つように空気が調整されます。
その一方で自宅、今回で言えば筆者の家では問題があります。冬の寒さをしのぐために稼働しているガスファンヒーター、これが二酸化炭素濃度を高める副作用があるのです。
※ 決してガスファンヒーターを悪者にする意図はございません。急速に部屋を暖めることができ、冬場は大変助かっております。適切な換気を呼びかける目的で記載しております。
さて、二酸化炭素濃度が高くなるなら適切に換気をすれば良いのです。幸い、高級タワーマンションでもなんでもない家なので、窓を開ければ良いだけです。問題は、いつ、どのくらいの時間開ければ良いのか、というところです。これ、どこかで聞いたことがある課題ですね。そう
IoT による可視化です。せっかく IoT プラットフォーム
ThingWorx を利用できる環境があるので、実装してみました。
何はさておき二酸化炭素濃度センサーがないと始まりません。今回はそれほどの精度を必要としませんので、電子部品の通信販売サイトから ”MH-Z19B”(最近はMH-Z19C)という NDIR(非分散型赤外線吸収法)方式の CO2 センサーを選択しました。センサーの測定値を取り出し ThingWorx に送るためのマイコンは、M5Stack 社の M5StickC PLUS を使います。ついでに温度と湿度のセンサーもつけておきました。
実装の詳細は省きますが部品が揃ってから、仕事の合間に作業することおよそ 1 週間で、二酸化炭素濃度、温度と湿度を測定し時系列に表示する IoT のソリューションを構築できました。モニタリングを始めると自宅の二酸化炭素濃度は予想以上に高く、こまめな窓開けが必要ということがわかりました。比較のためオフィスにも同じセンサー機器を配置しましたが、ほぼ外気とおなじ 400 ppm から 450 ppm を保っていました。オフィスでの仕事が快適なのは、空調が整っているからかもしれません。
せっかくなので社内の有志数名にもセンサー機器を配り、自宅に設置してもらいました。
川崎さん は得意の
AR 技術を活かして二酸化炭素濃度が 1,000 ppm を超えると知らせてくれる AR アプリを作成してくれました。センサーと IoT のソリューションから AR まで展開できるのが ThingWorx の良いところです。
まとめ
自宅でのリモートワークでの換気は、実は以前から提唱している産業 IoT に必要な要素がつまっていました。まず目的と KPI が明確です。つまり換気による適切な空調が目的であり、その KPI は二酸化炭素濃度です。そして手段としてのセンサーやマイコン、IoT プラットフォームをそろえて二酸化炭素濃度、温度や湿度を時系列でモニタリングする IoT アプリを構築しました。KPI である二酸化炭素濃度が 1,000 ppm を超えたら窓を開けて換気をする、というアクションにつながります。
一見大変そうに見える産業 IoT ですが、このような例でやってみると意外と身近にとらえられるのではないでしょうか。身の回りで気になることを題材にして、取り組んでみてはいかがでしょうか?
参考に
PTC では産業 IoT 、とりわけ製造設備メーカーの DX に関するオンデマンド Web セミナーを提供しています。こちら からご参加ください。
産業 IoT におけるデータの可視化に関する Web ページ「
IoT データの可視化」、またデータ分析について紹介する Web ページ「
IoT Analytics: データを価値あるインサイトに変える」を提供しています。どちらも合わせてご参照ください。
関連情報
建築物衛生管理検討会報告書 平成 14 年 7 月
厚生労働省による商業施設等の管理権限者の皆様へ
東京都による室内空気環境の管理(家庭向け)
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