製品技術事業部
プラットフォーム技術本部
本部長 執行役員
2012年、PTCジャパンに入社。サービスライフサイクル管理(SLM)ソリューションの日本での事業開発担当として、自動車、重工業、ハイテク業界を中心に、製造業のサービス事業化(Servitization)を推進するための啓蒙活動やアセスメントなどを幅広く手がける。
2016年以降、ThingWorx や Vuforia などのPTC が買収した IoT / AR 製品群を用いたソリューション事業の新規展開を担当。
製品ライフサイクル管理(PLM)が進む現代において、「技術文書(テクニカルドキュメント)」は製品の設計から製造、アフターサービスまでをつなぐ重要な役割を担っています。この技術文書とは、製品の組み立て手順書やサービスマニュアルなど、製品にまつわるあらゆる技術情報を文書化したものです。
そこで今回は、技術文書(テクニカルドキュメント)作成の効率化や活用例、最新動向について詳しく解説します。
記事の最後で PLM のお客様導入事例もご紹介しておりますので、ご興味ある方はぜひ最後までご覧ください。
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外資系ソフトウェアベンダー業界には、1970 年代から 1980 年代にかけて多感な時期を過ごした層にはかなりの確率で「ガノタ(熱狂的なガンダムファン)」がいます。筆者自身はそれほど強い思い入れはありませんでしたが、仕事の会話を切り上げるときにはガンダムの名台詞を残して去る、という文化にどっぷり染まっておりました。
10 年近く前、筆者が前職を辞して会社を去るときに同僚たちが贈ってくれた餞別は、ガンダムのプラモデル(通称: ガンプラ)でした。各部のパーツにはメッセージが刻まれており、後日制作に取り掛かりましたが、組み立て説明書の細かさに苦労した経験があります。テクニカルドキュメントは、ガンプラの組み立て説明書のようなものだと思うと、わかりやすいかもしれません。次の章で詳しく説明していきます。
技術文書(テクニカルドキュメント)とは、画像と文書で構成されたモノの製造やメンテナンスの手順を記した文書のことを指します。
モノづくりには「組み立て手順書」が欠かせません。一人で規格から設計・生産の全てをやり遂げるなら話は別ですが、多くは設計者、製造者、組み立て担当者が分業します。こうした分業生産は、組み立て手順書なくして成り立ちません。
またアフターサービスでは製品の機能を維持するために「分解取り付け手順書」や「調整手順書」などのサービスマニュアルが必要です。こうしたモノの製造やメンテナンスの手順を記した文書が技術文書(テクニカルドキュメント)です。そういう意味では、ガンプラの組み立て説明書も立派な技術文書(テクニカルドキュメント)です。
かつて技術文書(テクニカルドキュメント)は、描画ソフトで作成した図形をワープロソフトや組版 (DTP) ソフトに取り込み、表や文章を付け加える手法が主流でした。しかし、メーカーが生産するモノの品種やバリエーションが増えたり、商品寿命が短くなって製品ライフサイクルが圧縮されたりするにつれ、下記のような課題が生じました。
こうした課題を解決すべく発明され広く採用されたのが「原稿のモジュール化」手法です。
原稿のモジュール化は、部品のモジュール化の考え方を文書作成に転用したものです。製品設計の現場では「部品のモジュール化」の取り組みとして、似たような機能を果たす部品を共通化しておき、新しい製品を設計する際には既存の部品を使い回しています。これにより、設計や生産に関わる時間を短縮し、部品点数を減らして生産効率を向上させることが可能です。同じように技術文書もモジュール化することで、効率的に作成・管理できます。
具体的には、技術文書を章や段落ごとの記述ブロックに分割して管理します。これにより、必要に応じてそのブロックを再利用したり、改定作業を効率化したりすることができます。また、モジュール化された文章は、特定の目的やターゲットに合わせて簡単に組み合わせることができ、異なる使用や言語に応じた文書を短時間で作成することが可能になります。
「原稿のモジュール化」の手法を支えるために、DITA や S1000D といった標準規格が登場しました。これらの規格は、技術文書作成時のガイドラインや管理方法を統一するもので、モジュール化された技術文書の一貫性と効率的な管理を推進します。現在では多くの企業で利用されており、原稿のモジュール化によって新規技術文書の執筆量を 8 割から 9 割削減する効果も期待できます。
文章をモジュール化するということは、細切れになった文章の断片が大量に存在するということです。モジュール化された断片的な文章は、数十から数百のファイルに分割されます。これらを適切に保存し、バージョンや、文書の構成情報を管理するためには、コンテンツ管理システム(CMS)や「コンテンツ管理サーバー」などのツールが不可欠です。
PTC では、このコンテンツ管理を効率・効果的に行えるPLMツールとして、生産工程向けには Windchill MPM Link、アフターサービス向けには Windchill Service Information Manager (Windchill SIM) という製品を提供しています。例えばWindchill Service Information Manager (Windchill SIM) の特長は、設計部門が持っている CAD や BOM のデータを最大限活用し、技術文書作成・管理を効率化できる点です。設計部隊が保持している資産を、生産やアフターサービスの領域でも利活用できるようにすることで、多くのお客様の課題を解決しています。Windchill SIM や Windchill MPM Link がどういった仕組みで、どのように課題を解決するのかご興味のある方は、ぜひこちらまでご相談ください。
従来の紙や PDF を基本とした二次元情報から一歩進み、3D CAD データを活用して立体的に見える技術文書「XR テクニカルコンテンツ」の開発が進んでいます。拡張現実 (AR) や仮想現実 (VR) 機能を結合した新世代の技術文書です。
「XR テクニカルコンテンツ」では、従来の技術文書にはない以下のような機構・機能を持たせることができます。
XR テクニカルコンテンツは、「動的」かつ「インタラクティブ」なものとなります。「動的」とは、あらかじめ執筆された情報だけではなく、その時・その場に応じた情報を都度表示できる能力を持つことをいいます。また、「インタラクティブ」とは執筆側から読者側への一方向の情報提供ではなく、利用者側からの情報入力も可能にすることをいいます。このようにユーザーの入力を受け付け、最適な情報をタイムリーに提供することで、作業品質・安全の向上や作業時間の平準化を実現します。
PLM の進展とともに、技術文書(テクニカルドキュメント)は単なる静的な組立手順書から進化し、効率的なモジュール化や最新の XR 技術を活用した動的コンテンツへと変貌と遂げています。これにより、設計や生産、アフターサービスの連携が強化され、製品ライフサイクル全体の品質と効率が大幅に向上することが期待されます。
PTC では、デジタルスレッドとデジタルツインの概念を組み合わせた、製品データ管理を実現するPLMソリューション「Windchill」を提供しています。Windchillは、ツールの導入を支援させていただくだけでなく、アセスメントシートを活用しお客様企業全体におけるDX課題の見える化とベストプラクティス(実際に効果があった事例)ベースでの解決策を提案と実行を支援します。これにより、お客様は最短で最適なソリューションにたどり着くことができます。ご興味のある方は、こちらもご覧ください。
PLM 向け製品データ管理ソリューション”Windchill”を活用し、デジタルスレッドとデジタルツインを組み合わせた効率的で柔軟なシステム運用を実現しましょう。
詳細はこちら以下に PTC の PLM ソフトウェア「Windchill」を活用して製品ライフサイクル全体を最適化した企業の導入事例を紹介しますので、こちらもぜひご覧ください。
【導入事例】
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