ブログ 誤解を解く: トポロジー最適化は真のジェネレーティブデザインではない

誤解を解く: トポロジー最適化は真のジェネレーティブデザインではない

2019年5月21日

製品の設計や開発のために CAD ソフトウェア使用している方なら、恐らくトポロジー最適化をよくご存じでしょう。これは、機能面での複数の目的を達成するために形状を最適化する手法です。

トポロジー最適化は 3D 設計空間内で材料を少しずつそぎ落とし、最も効率的な設計を実現します。この手法では、通常の設計段階で使用されるデザイン性や伝統的なアプローチなどの制約条件を一切考慮しません。代わりに、利用できる設計空間のみによって制約された部品またはシステムの単一の最適な形状を生成します。

しかし、トポロジー最適化は新しいコンセプトではありません。もう何年間も、エンジニアたちはこの手法を使って 3D モデル内の材料の最適な分布を特定し、質量の削減、共鳴モードの回避、熱応力や変形の最小化など、それぞれの目標を満たしてきました。

では、2019 年の工業設計をけん引する企業は、より迅速でスマートな製品設計をどのように実現しているのでしょうか?こうした企業は、トポロジー最適化を基盤とした新しいテクノロジーに目を向け、未来の製品を設計しています。

それが、ジェネレーティブデザインです。

ジェネレーティブデザインは、一連のシステム設計要件から最適な設計を自律的に生成する手法です。ジェネレーティブデザインでは、エンジニアが設計の機能面での要件や目標(優先材料、製造プロセスなど)をインタラクティブに指定すると、すぐに製造に移行できる設計が自動的に生成されます。結果的に、このテクノロジーを活用できれば、優れた設計や革新的な製品を短期間で実現できることになります。

トポロジー最適化とジェネレーティブデザインは製造および設計コミュニティでバズワードとなりましたが、市場ではこれら 2 つが同義語であるというよくある誤解が存在しています。これらの用語はよく同じ意味で使用されるため、混乱と曖昧さが生じています。

トポロジー最適化とジェネレーティブデザインの違いについて、詳しく見ていきましょう。

トポロジー最適化は基盤となるテクノロジーである

1990 年代に誕生したトポロジー最適化は、それ以降、機能面での特定の使用条件下における設計の最適な材料分布を実現するために利用されてきました。既存のオブジェクトの材料を削減するアルゴリズムを用いて、元の設計意図どおりにオブジェクトを機能させ続けることが可能です。常に、設計者ではなく、設計チームの応力解析担当者が使用するツールでした。

それよりもずっと新しいコンセプトであるジェネレーティブデザインでは、トポロジー最適化を含むテクノロジーを利用して、可能性の範囲を押し広げます。ジェネレーティブデザインを利用する設計者は、トポロジー最適化などのさまざまなテクノロジーを活用できます。ジェネレーティブデザインでは、想像上の設計の要件を指定すると、ソフトウェアが指定された要件を満たす設計候補をすべて計算します。

簡単に言えば、トポロジー最適化は、機能面での目的、制約、荷重のみに基づいた単一のソリューションを導き出します。つまり、一度に 1 つのソリューションしか得られません。しかしジェネレーティブデザインは複数のソリューションを同時に検討し、機能面での要件と設計以外での要件の両方に基づいて最良のソリューションのセットを導き出します。

その意味では、トポロジー最適化はジェネレーティブデザインの基盤となるテクノロジーです。製品の設計と開発にコンピューターを利用するエンジニアが増加する中、トポロジー最適化はジェネレーティブデザインにより設計を最適な形で即座に具現化するための「足がかり」となります。ジェネレーティブデザインにとって不可欠な構成要素です。

ジェネレーティブデザインは次世代 CAD 設計を支援する

デジタル化が進むエコシステムを進化させるには、革新的なテクノロジーに投資し、成功に欠かせないビジネス成果を促進する必要があります。これには、エンジニアリングエクセレンス(技術力の高さ)、製造効率、製品とサービスのイノベーションが含まれ、PTC ではこれらをデジタルトランスフォーメーションの 3 本柱と呼んでいます。

ジェネレーティブデザインが設計にもたらす影響は計り知れません。製品に対する顧客のニーズを最初から正確に満たすことで、製品の成功率を高め、市場投入期間を短縮し、迅速に収益を上げることができます。

つまり、ジェネレーティブデザインは次世代の製品設計を刷新しているのです。

PTC の場合、ジェネレーティブデザインソリューションの AI コンポーネントにより、ほぼこれが達成されています。AI は、人間の理性に基づく設計能力を進化させ、究極的には拡張して、ジェネレーティブデザインプロセスを支援します。その例は以下のとおりです。

  • 設計の早期段階で設計者に貴重なフィードバックを提供する
  • あらゆるレベルのエンジニアが迅速に優れたソリューションを見つけることができるため、生産性が向上する
  • 人間の設計者が簡単には真似できない方法で、効率と製造の可能性を考慮して最適化された設計を生成する

最終目標は、AI 主体のジェネレーティブデザインによる人間をベースとした拡張製品設計を実現し、かつては手が届かなかった高度に差別化されたソリューションにエンジニアが到達できるようにすることです。

まとめ

トポロジー最適化とジェネレーティブデザインは同じ目標(特定の要件に応じて、最適な設計を提供する)を掲げていますが、これら 2 つのテクノロジーには明確な違いがあります。

ジェネレーティブデザインでは、トポロジー最適化を土台として、よりスマートで革新的なソリューションを迅速に見つけることができます。簡単に言えば、現在の可能性の範囲を押し広げ、すぐに製造に移行できる高性能な設計を実現可能であるということです。

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Jesse Coors-Blankenship

Jesse Coors-Blankenship is the Senior Vice President of Technology at PTC. Former CEO of Frustum, Jesse pioneered generative design technology, utilizing artificial intelligence and new mathematical representations of geometry to make generative design functional. At PTC, he leads the effort to bring Frustum’s pioneering work in generative design to market in the CREO CAD platform. Together Frustum and PTC will transform how products are designed for a higher complexity future.

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