製品技術事業部 CAD 技術本部
プリンシパル・ソリューション・コンサルタント
1997 年 PTC ジャパンに入社。CAD/CAM/CAE 製品の販促活動および導入支援に従事する。その後、販売代理店様の案件対応や代理店様エンジニアの Creo のスキルアップを支援。現在、直接販売や間接販売に関わらず販促活動に従事する。特に、CAE 領域においては大学卒論から前職でも主な業務として従事し、現職でも一貫してシミュレーション製品のスペシャリストである。
PTC の社名が以前はパラメトリック・テクノロジー・コーポレーションでした。それが今は、正式名称が PTC となっています。3D CAD も当初の Pro/ENGINEER から今は Creo に変更になっています。しかし、名前が変わったからと言って、Creo と Pro/ENGINEER は考え方やデータの仕様が大きく変わったわけではなく、連続した進化の範囲です。
Creo の特徴は今も変わらず下の 3 つです。
今回はこれらのうちの、パラメータ駆動に注目して、幾つかの機能とメリットを紹介します。
JIS B 0405 で指定された「面取り部分を除く長さ寸法に対する許容差」や「面取り部分の長さ寸法(かどの丸み及びかどの面取り寸法)に対する許容差」の公差テーブルを標準的に持っています。さらにそれに加えてJIS B 0401「はめあい公差」についても、英記号と数字(等級)で定義を行うことが可能で、JIS B 0405 と同様に寸法区分もシステムが自動的に判断するので、人為的なミスを排除することが可能です。
公差の指定は、これら公差テーブルを活用するものだけでなく、必要な箇所に個別に定義することが可能です。
公差を定義した箇所は下の図のように、その上下限と中央値、そして公称値に形状自体を変更できます。
上の図では、図の右側のコマンドメニューにあるように、「すべての設定」を「(寸法の)上限」に定義するように指示しています。その時の形状の測定結果が、3D 注記のように寸法が 300±0.5 で定義されている箇所は 300.5 に、100±0.3 の個所は 100.3 になっています。更に確認いただきたいのは寸法区分による公差が「0.5」「0.3」「0.2」と上述した JIS B 0405 に準拠した結果となっていることです。
必要な寸法を上限にしたり下限にしたり、個々の寸法に対する設定が可能なので、最大最小法だけになりますが、3 次元空間で公差込みの干渉チェックが可能です。
Creo が Pro/ENGINEER と呼ばれていた相当以前、私が Pro/ENGINEER を PTC で操作し始めた 25 年前の Pro/ENGINEER Version 16 のころには既にこの機能がありました。当時の私は非常に大きな驚きと先進の技術に触れて、とても嬉しかったことを強く記憶しています。
サイズ公差と幾何公差、古くから使われているのがサイズ公差(旧 寸法公差)で、上述している 100±0.5 という表記はサイズ公差です。最近では、サイズ公差と併記して幾何公差で指示されることも増えてきています。残念ながらサイズ公差だけでは形状を示すのに不十分であることが分かっています。
上の図のように、サイズ公差を満たしていても部品としても機能を満たさない場合もあります。サイズ公差では 2 点の距離のみを対象にしていますので、図のように 2 つの面が曲面であっても公差を満たします。しかしながらそれだけではなく、2 つの面は平行であると同時に平面である必要があります。
ここでサイズだけでなく、「平行」や「平面」という言葉が数学の幾何学的な言葉で、その許容範囲を示したものが幾何公差です。
Creo では、幾何公差の定義を支援する Creo GD&T Advisor という拡張機能があります。ユーザは、システムのガイドに従って幾何公差を定義できるため、抜け漏れや矛盾のない幾何公差を付加できます。
サイズ公差や幾何公差の話題の次は、やはり公差解析ですね。ここで紹介するのは、1D 公差解析の Creo EZ Tolerance Analysis Extension です。下の図が起動している状態です。
これは、Creo で作成したネイティブな 3D モデルだけでなく、STEP 形式などの様々な 3D CAD モデルを取り込んだ形状に対しても利用できる超簡単 1D 公差解析です。
実は、公差解析って簡単ではありません。仮に出来上がった部品でも、どのように組み付けるかで結果としてできるであろう「スキマ」は振る舞いが異なるのです。3 次元空間では 3 つの並進方向の自由度と 3 つの回転方向の自由度があり、これら 6 つの自由度が確定することで位置が決まります。
私自身、工場の製造ラインで経験したことですが、ある面を基準に組み付けると「スポっと」嵌まるのに、違う面を基準に組み付けると上手く組み付かないとか、或いは部品をクルクルと回転させると上手く組み付いたりします。このような現象を設計段階で意図しているか否かは定かではありませんが、現実に起こり得ることです。
本来であれば製品設計を完全に検討することができれば理想的なのですが、実際には分業化が進んでいて詳細な組付け検討は生産技術で担当する場合が多く見受けられます。だからと言って製品設計側で何も検討しないで良いとはいえず、せめて 3 つの並進自由度のうち 1 自由度ずつ独立して確認しておくことが推奨されます。そこで有効なのがここで紹介している Creo EZ Tolerance Analysis Extension です。
公差は、ものづくりをする上で非常に大切なことです。公差とは容認できる寸法の範囲で、これが零(ゼロ)という物はほぼ製作できません。仮に、完全な球体を作ろうとするとすればするほど甚大なコストがかかります。公差は、製品の性能に大きく影響するだけでなく、下手をすると壊れてしまいますし、作り易さにも影響しますので、よく検討しなければなりません。
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