Creo の公差解析

執筆者: 端山 雅彦
  • 1/13/2022
  • 読み込み時間 : 5min
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1. 公差の積上げ計算について

設計において公差は重要で、設計者には重要な公差を正しく設定することが求められます。
公差を必要以上に緩く設定すると、製品が組み立てられない、想定した性能を発揮できない、などの不具合が発生します。
反対に公差を厳しく設定すると、製造や加工に高い精度が必要になり、製品のコストが上昇します。
アセンブリにおいては部品単体の公差だけでは無く、組み立てた状態を想定して複数の公差の積上げも検討する必要があります。


2. 公差計算の手法

公差の積上げ計算の方法として、一般的に次の 2 つが使われています。
ワーストケース
ワーストケースは寸法と公差の上限値/下限値をそのまま積み上げて計算します。
下の例で、部品を組み合わせた状態のワーストケースの寸法を検討します。
部品の寸法と公差をそれぞれ、20±0.3、10±0.1、15±0.2 と定義した場合、積み上げた寸法と公差は、45±0.6 となります。
つまり積上げ検討の結果は、
ワーストケース最大: 45.6
ワーストケース最小: 44.4
として扱います。

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二乗和平方根 (RSS)
寸法の公差が正規分布する場合、それを積上げた公差の累積も正規分布します(下図参照)。
図の赤い縦線は先程のワーストケースでの積上げ計算の最大/最小の範囲ですが、両端付近では発生する確率が低いことが解ります。
二乗和平方根の計算は、この確率の低い部分を切り捨てることで、ワーストケースの場合より公差の設定を緩くすることができます。

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先程の例の公差部分を二乗和平方根で計算すると以下の計算になります。

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つまり積上げ検討の結果は、
二乗和平方根 (RSS) 最大: 45.374
二乗和平方根 (RSS) 最小: 44.626
として扱います(上の正規分布曲線の黒い縦線の範囲)。


3. Creo EZ Tolerance Analysis について

煩雑な公差検討を手計算や Excel などの外部のツールで行っていると、計算ミスや転記ミスなどが発生することがあります。
Creo EZ Tolerance Analysis を使うと面倒な公差の積上げ計算を Creo の中で自動的に行うことができます。
それでは、下図のアセンブリの公差解析を行いながら Creo EZ Tolerance Analysis の機能を解説します。

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このアセンブリを構成する部品は以下の 4 点です。
  • REC-3PIN.PRT(青い部品)
  • PAN.PRT(板金部品)
  • PCB.PRT(基板)
  • STANDOFF.PRT(スペーサー)
右の断面に示す REC-3PIN.PRT(青い部品)と PAN.PRT(板金部品)の間のすきまを検証します。すきまが 0 以下では組立ができず、また、大きすぎると製品の見栄えが悪くなります。
先ず、Creo EZ Tolerance Analysis の中ですきまの上下の面を選択すると、関連する寸法と公差が自動的に作成されます(デフォルトの公差値はメニューで設定可能)。
寸法が足りない場合は手動で形体を追加し、対象となるすきまを取り囲む様に寸法が割り当てられた状態にします。
目標には自動的に仮の値が設定されますが、検討を進めるためには必要な値を任意に設定する必要があります。ここでは、目標を下限: 0mm 上限: 0.4mm に設定してみます。

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結果の表示で、目標と現状を比較することができます。「ワーストケース」の結果の評価では、すきまが、最小 -0.4mm 最大 0.8mm となり目標を大きく外れていることが判ります。

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次に「統計:∑」の結果を表示します。目標を ∑=3 以上に設定した場合、現状は ∑=2.4495 なので、こちらも精度が足りていないことが確認できました。
この「統計:∑」の結果で目標を達成できるように、個々の公差を調整してみます。
先ず、面1 と面9 に対して幾何公差の「面の輪郭度」を指定した場合をシミュレーションしてみます。
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∑=2.83 になり、かなり目標に近付きました。
さらに、STANDOFF.PRT(スペーサー)のサイズ公差 15±0.1 を 15±0.01 に変更してみます。

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これで、「統計:∑」での目標 ∑=3 以上が達成できたことが確認できました。
結果のサマリーには以下の様に表示されます。

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ひとつの設計に対して複数個所の公差検討を実施しますが、このサマリーを見れば現状で幾つの公差検討が目標に達しているか把握することができます。


4. まとめ

個々の公差検討は、それ程大変な作業では無いのですが、設計においては多くの部位の検討を行う必要があり、全体的にはかなりの工数を要していると思います。
従来の手計算や外部のツールを使う方法では、設計変更などの場合に、関連する全ての個所の公差検討をやり直さなければなりませんでした。
また、従来の方法では、公差検討の結果としての公差値は CAD モデルや図面上に残すことが出来ますが、公差検討そのものを CAD データに関連付けて残すことはできませんでした。
Creo EZ Tolerance Analysis は、これらの従来の方法による問題を解決するための有効なツールとしてお使いいただけると思います。


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執筆者について

端山 雅彦

製品技術事業部 CAD技術本部
シニア テクニカルスペシャリスト

元メカ設計者、1990 年から CAD 製品のエンジニアとして活動。以来、カスタマーサポート、教育、ローカライゼーション、などに従事する。現在は CAD 全般と CAE のプリセールスエンジニアとして活動している。