製品の高性能化や小型化に伴い、熱対策は設計の初期段階で非常に重要な要素となっています。しかし、「試作品ができてから熱問題が発覚し、大幅な手戻りが発生した」「解析を外部や専門部署に依頼すると時間がかかる」といった課題を抱えてはいないでしょうか。
本記事では、3D CAD ソフト「Creo」上で、設計者自身が手軽に解析できる「熱伝導解析 (Creo Simulate)」と「熱流体解析 (Creo Flow Analysis)」の違いや、具体的な操作手順を詳しく解説します。
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熱流体解析と熱伝導解析の違いとは?
まず、設計者 CAE における代表的な解析手法である、熱流体解析と熱伝導解析の基本的な違いを理解しましょう。どちらの解析を選ぶべきかは、知りたいこと(目的)によって決まります。
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そもそも CAE とは何か、その基本や種類について詳しく知りたい方は、こちらの解説記事も併せてご覧ください。
【基礎編】CAE とは?意味や必要性・メリットなどを解説
熱伝導(伝熱)解析とは
熱伝導解析とは、熱源で発生した熱が固体の中をどのように伝わるかを解析する手法です。固体から周囲の流体(空気など)への熱の逃げやすさは「熱伝達係数」という固定値で設定するため、計算が高速な点が特長です。
熱伝導解析の場合、解析対象は固体のみになります。解析時間が短いため、部品単体や、内部の熱分布を素早く確認したい場合に適しています。
熱流体解析とは
熱流体解析とは、固体内の熱の伝わりに加え、周囲の流体(空気や水など)の流れによる熱の移動までを同時に計算する、より現実に近い解析手法です。ファンの送風による冷却効果や、筐体内部の空気のよどみなども考慮できます。
熱流体解析の場合、解析対象は固体と流体になります。より高精度で、実際の製品環境に近い状態をシミュレーション可能です。特に、空冷や水冷など、流体の影響が大きい製品の評価に適しています。
【比較表】熱伝導解析と熱流体解析の使い分け
熱伝導解析と熱流体解析の主な違いは、以下のとおりです。
| 項目 | 熱伝導解析 (Creo Simulate) | 熱流体解析 (Creo Flow Analysis) |
| 主な目的 | 固体内部の温度分布を素早く把握 | 流体の流れを含む、より現実的な熱移動を評価 |
| 解析対象 | 固体のみ | 固体と流体 |
| 計算速度 | 速い | 時間がかかる |
| 得意な製品例 | ヒートシンク単体、電子部品単体など | 電子機器の筐体全体、エンジン、ファン、熱交換器など |
なぜ「設計者」が 3D CAD ソフトで熱伝導解析や熱流体解析を行うべきなのか?
専門家でなくても、設計者が 3D CAD ソフトという使い慣れたツールで熱伝導解析や熱流体解析を行うことには、大きなメリットがあります。
・設計初期での問題発見:試作前に熱の問題点を発見し、設計品質を向上させます。
・手戻りの大幅削減:設計段階で熱の問題点を解消できるため、後工程である試作や製造での大規模な手戻りを未然に防ぎます。
・コストと時間の削減:解析専任者への依頼コストや待ち時間を削減し、開発サイクルを高速化します。
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なお、より設計の初期段階で、リアルタイムに結果を確認しながら手戻りをさらに削減したい場合は「Creo Simulation Live」も有効です。リアルタイムシミュレーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。
なぜ Creo はリアルタイムシミュレーションで選ばれるのか?機能・連携・最新動向を完全解説
これまで、熱に関する解析は CAE の専門家に依頼し、高価な専用ソフトで検証するのが当たり前でした。しかし、その常識は変わりつつあります。設計者自身が、普段から使い慣れた 3D CAD の画面上で、設計と解析をシームレスに行う環境が整ったのです。
特に Creo は解析(計算)そのものが高速であり、他社 CAD では数時間かかることもある解析が、Creo では数分で完了します。また、シングルデータベースを基盤としているため、設計変更の内容が解析モデルへも自動で反映されます。これにより、データの再設定や変換といった手間も不要になり、設計から検証までのサイクル全体を大幅に短縮できます。設計から解析までを、本当の意味でスピーディーに一気通貫で行えます。
この強力な「設計者 CAE」を Creo で実現するのが、次にご紹介する「Creo Simulate」と「Creo Flow Analysis」です。
Creo Simulate による熱伝導解析の実施事例(基板モデル)
ここからは、電子部品が搭載された基板モデルを事例に、Creo の CAE 機能「Creo Simulate」による熱伝導解析の操作手順を解説します。なお、材質は、通常の Creo の部品と同じように Creo 側で定義しています。
1. 熱解析モードへの切り替えと結合条件の確認
上部タブ「アプリケーション」から「Simulate」を選択し、「Thermal モード」に切り替えます。その後、「AutoGEM」の「ジオメトリをレビュー」で、部品同士が正しく結合され、熱が伝わる状態になっているかを確認します。
この際、どこにも結合されていない部品があると、解析がエラーになります。
2. 熱源(発熱量)の指定
「ホーム」タブの「熱荷重」から、熱を発生する部品(例:チップ部品)を選択し、発熱量を入力します。例えば、「熱」の項目に「3W」を入力することで、「この部品から 3W の熱が発生する」という条件を設定できます。
3. 熱伝達条件(放熱条件)の指定
上部のメニューにある「境界条件」の「熱伝達条件」で、モデル表面からどれだけ熱が逃げるかを定義します。ここでは、熱が失われるサーフェス(面)を選択し、熱伝達係数(例:20)と雰囲気温度(例:27℃)を設定します。
「参照」の「サーフェス」では、緑色の基板と基板に接する面以外を選択します。これにより、「緑色の基板と基板に接する面以外のサーフェス(面)から、先ほど指定した熱伝達係数で周囲の流体に熱が失われていく」という条件を定義できます。
4. 解析の実行
「解析および検討」から「新規の定常熱伝導解析定義」を選択し、実行します。
5. 解析結果の確認
実行後、結果表示ウィンドウで全体の温度分布などを確認できます。また、「アニメーション」機能を使えば、温度分布をより視覚的に把握することもできます。
Creo Flow Analysis による熱流体解析の実施事例(ケーシングモデル)
次に、3D CAD における熱流体解析事例として、Creo の CAE 機能「Creo Flow Analysis」を使い、ケーシングに収められた基板モデルで、より現実に近い条件の熱解析を行う手順を解説します。
1. プロジェクトの作成と流体ドメインの定義
「アプリケーション」から「Flow Analysis」を起動し、「ウィザード」に従ってプロジェクトを新規作成します。
ここでは、例として下記のように設定します。
・物理モジュール:「流れ」「乱流」「熱」の 3 つを選択
・重力:「いいえ」を選択
・流体ドメインの作成:「はい」を選択
・流体ダイナミックの問題:「内部」を選択
ケーシング内部など、流体が存在する空間(流体ドメイン)を定義し、空気の出入り口となる開口部を指定します。流体ドメインとは、流体が存在する範囲を定義するものです。ケーシングの中の空間は Flow Analysis が自動的に認識します。
ただし、今回は開口部のみ手動で設定します。「シミュレーションに追加」にチェックを入れ、「開口」を選択し、「フェース」の枠をクリックします。「サーフェスセット」ウィンドウが開いた状態で、開口部があるサーフェスをすべてクリックし、「OK」を選択します。サーフェスを指定すると、穴は自動で指定されます。指定が完了したら、上部メニューからチェックマークを選択し、流体ドメインの作成画面を閉じます。
2. ソリッドドメイン(固体の部品)の追加
解析対象となる固体の部品(ケーシング、基板、電子部品など)をすべて選択します。
3. 境界条件の指定
開口部(入口と出口)の圧力や温度、流量などを設定します。入口境界と出口境界それぞれに、流体の出入りの条件を、指定圧力入口や指定温度、指定容積流束の値などで定義します。また、筐体の外側表面から一定の割合で熱が失われていくため、熱伝達係数を指定し、外部への放熱条件も定義します。
4. 熱源の指定
熱源となる部品(チップ部品など)を選択し、発熱量を設定します。今回は例として、合計熱源を「3W」、熱源は「定常」としました。
5. メッシュ生成と解析実行
メッシュパラメータを確認してメッシュを生成し、熱流体解析を実行します。Creo Flow Analysis ではウィザードというユーザインターフェースを使用し、対話形式で進められるため、初心者でも迷わず設定できます。
6. 解析結果の確認
XY プロットで温度や圧力の変化をグラフで確認したり、「断面ビュー」で筐体内部の空気の流れや温度分布を視覚的に評価したりできます。これにより、熱がよどむ箇所などを特定し、設計改善につなげられます。
なお、モデル上で結果を確認する際は、ケーシングの内部が見えるように、ケーシングの温度分布を非表示にしておきましょう。
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Creo Flow Analysis の機能やパッケージ、より高度な解析事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。
設計者でも簡単!Creo Flow Analysis で始める熱流体解析:CAD 統合でフロントローディングを実現
まとめ:設計品質を革新する、Creo による熱解析
本記事では、設計現場が直面する熱問題という課題に対し、Creo の CAE 機能である「熱伝導解析 (Creo Simulate)」と「熱流体解析 (Creo Flow Analysis)」という 2 つの CAD 解析手法と、その具体的な操作手順を事例とともにご紹介しました。
これまで専門部署の領域だった熱伝導解析や熱流体解析を、設計者自身が使い慣れた 3D CAD のインターフェース上でシームレスに実行できること。これこそが、Creo が提供する「設計者 CAE」の最大の価値です。Creo の特長である解析(計算)の速さと、シングルデータベースによる設計変更の自動反映は、この価値を強力に後押しします。データの再設定や変換といった手間もなく、高速なトライ&エラーを繰り返すことで、勘や経験をデータで裏付けし、設計の初期段階で熱に関する品質を最大限に高めることができるのです。
「試作品を評価して初めて熱の問題がわかる」という状況から解放され、自信を持って設計を進めたい設計者の方にも、チーム全体の開発プロセスを革新し、コスト削減と競争力強化を実現したい管理職の方にも、Creo の熱解析機能は強力な一手となります。
よくあるご質問 (Q & A)
Q:解析の専門知識がない設計者でも使えますか?
A:はい、可能です。特に「Creo Flow Analysis」を使った熱流体解析は、ウィザード形式のインターフェースを採用しており、対話形式で設定を進められるため、CAE の利用経験が少ない設計者の方でも直感的に操作できます。
Q:この記事で紹介されている機能は、どの Creo ライセンスに含まれていますか?
A:熱伝導解析には「Creo Simulate」、熱流体解析には「Creo Flow Analysis」の機能が必要です。お使いのパッケージに含まれていない場合は、拡張機能として追加できます。お客様の現在の Creo のご契約状況や解決したい課題によって最適なプランや費用が異なりますので、まずはお気軽にこちらからお問い合わせください。
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この記事でご紹介した熱伝導解析 (Creo Simulate) や熱流体解析 (Creo Flow Analysis) がどのライセンスパッケージに含まれるのか、Creo のパッケージ全体像と各機能については、こちらの記事で詳しく解説しています。
3D CAD ソフト Creo パッケージ完全ガイド:コンカレントエンジニアリング/トップダウン設計、Ansys の最新解析、AI 設計機能まで
Q:より複雑な解析(例:回転するファンなど)もできますか?
A:はい、「Creo Flow Analysis」では、回転領域の設定など、より高度な熱流体解析にも対応しています。
Q:解析を実行するために、高性能の PC は必要ですか?
A:熱伝導解析 (Creo Simulate) は、Creo が動作する標準的な PC やワークステーションで快適にご利用いただけます。一方で、熱流体解析 (Creo Flow Analysis) はより多くの計算を必要としますが、設計者の方が日常的に使用することを想定して開発されているため、大規模な計算サーバーなどは不要です。より快適にご利用いただくためには、多くの CPU コアと十分なメモリーを搭載した PC を推奨します。詳細な推奨スペックについては、お気軽にこちらからお問い合わせください。
Creo Simulation 機能の全体像
この記事では熱解析に焦点を当てましたが、Creo の解析機能群「Creo Simulation」には、構造解析や振動解析など、ほかにも多くの機能が含まれています。全体像にご興味のある方は、ぜひ製品ページもご覧ください。
Creo Simulation:3D CAD 解析機能
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詳細はこちら参考動画:「3D CAD ソフト Creo の使い方」シリーズ
本記事の元となった動画「熱伝導解析と熱流体解析 | 3D CAD ソフト Creo の使い方」では、ご紹介した機能を実際の操作画面とともにより詳しく解説しています。テキストだけでは伝わりにくい機能の操作感などを、ぜひ動画でご確認ください。