産業用拡張現実 (AR) ソリューションの導入
AR プロジェクトを計画、実行し、成功へ導くための実践ガイド
拡張現実 (AR) を導入し、従来のトレーニングや作業手順書を、より効率的な没入型のコンテンツに置き換えることで、作業員のスキル向上を支援します。世界中の多くの企業、特に複数の地域にまたがって事業展開している企業では、AR を活用し、これまで以上に賢く、より早く、効率的な業務環境へと急速に移行しています。
Technavio 社は、2020 年から 2025 年にかけて拡張現実 (AR) 市場の成長率が 1,085 億 7,000 万ドルに及ぶと予測しています1。
AR ソリューションの導入には、自社のニーズに最も適した技術を選定し、それを既存のプロセス、ワークフロー、システムに取り入れる方法を検討するなど、綿密な計画が必要です。ほかの最新の運用技術に比べ、AR は価値実現までの時間が非常に短く、ソリューションによってはプログラミングの知識はほとんど必要ありません。しかし、その他の産業技術と同様、AR の導入を成功させるには包括的な実装が必要です。このガイドでは、概念実証 (PoC) やパイロットでの機能テストから、拡張性に優れたソリューションの本格導入まで、AR プロジェクトの責任者が産業用拡張現実 (AR) を導入し、高水準の ROI を最短期間で実現するために必要なステップを詳しくご紹介します。
ステップ 1:
ビジネスケースの特定
すでに AR を導入している企業は、トレーニング、製造、サービス、販売、マーケティングなど、複数の事業分野で測定可能な ROI を確認しています。ベテラン作業員の退職に加え、非効率的でコストのかかるトレーニング資料やサービス関連のドキュメントは、作業効率の低下につながる共通の課題です。AR を適切に導入し、まるで同じ場所にいるかのようにサポートを受けられるリモートガイダンス、製品を実物大で視覚化するバーチャルデモ、段階的な手順説明や指示などの機能を提供することで、これらの課題を解決できます。
現在のビジネスで AR を最大限に活用できる部分を見極めるには、まず、一番の問題点を明らかにする必要があります。
1.Technavio 社『Augmented Reality (AR) Market by Application and Geography - Forecast and Analysis 2021-2025』
共通の課題
高いスキルを持つ作業員の不足: ベテラン作業員の退職、離職率の上昇、作業員数の減少が続く一方で、作業員の新規採用が難しい
起こり得る状況
- 安定した人材を確保できなければ、専門技術を維持し、活用していくのが難しい
- 新しい作業員を採用してスキルを向上させるには費用と時間がかかるため、ROI の伸びが鈍化する
- 顧客の期待やサービス品質保証契約 (SLA) を満たすのが難しい
- 新しい作業員のトレーニング時に生産プロセスが頻繁に中断される
AR にできること
- AR は、知識の伝達を円滑にし、新しい作業員のトレーニング期間を短縮することでスキルギャップを解消します。
- AR を活用したリモートガイダンスにより、ベテラン作業員が隣にいるかのようなサポートを実現することで、機動性が高まり、仕事への満足度が向上します。さらに企業は、長年培ってきたスキルやノウハウを維持できます。
- AR を導入している企業は、顧客のニーズや優先事項の変化に迅速に対応できる俊敏性を獲得しています。
トレーニングが不十分で、コミュニケーション方法に問題がある
起こり得る状況
- トレーニングプログラムおよびサービス資料の作成と管理に膨大な時間を要する
- 印刷された技術資料の管理と配布に多くのコストがかかる
- 作業員の利用するサービス情報が不正確でわかりにくい
- 新しい作業員を募集しても反応が薄い
- 新しい従業員に対して安全性の懸念が高まっている
AR にできること
- トレーニング、メンテナンス、サービスに AR を取り入れることで、作業員は製品に関する技術情報を効率的に習得できるようになります。
- 新人研修に AR を取り入れている企業は、ベテラン作業員とのスムーズな連携により、経験の浅い作業員や臨時の作業員を短期間でスキルアップしています。
- その結果、AR を使用する企業は、デジタル技術を活用した学習に慣れている新しい作業員を採用しやすくなり、定着率も向上します。
複雑化する製品
起こり得る状況
- イベントやショールームで物理的な製品デモを実施するのが難しく、費用もかかる
- カスタム構成の製品を受注生産するため、販売サイクルが長い
- 世界中に顧客がいるため、製品の配送コストが増大している
- 新たな販売機会を見出すのが難しい
AR にできること
- デジタル技術を取り入れることで、大型で重量のある複雑な受注生産製品でも、容易かつ費用対効果に優れた方法でプレビューやデモを実施できます。
- 一方、顧客は、場所や環境を問わず、AR コンテンツを通してインタラクティブな実物大のデジタル製品デモを体験できます。
- メーカーは、AR を活用して販売サイクルを短縮し、収益増加や顧客満足度の向上を実現できます。
このうちいずれかの課題に直面している企業では、思ったより簡単に AR を導入できる可能性があります。ビジネス戦略に適した AR の活用方法を見極めるには、まず、最適なパイロットのビジネスケースと、ROI の評価に役立つ KPI(トレーニング時間の削減、初回修理完了率や顧客満足度の向上など)を特定する必要があります。高い効果を期待できるユースケースを 1 つ選択し、「計画外ダウンタイム時間を前年比で 25% 削減する」といった具体的な目標を設定します。目標設定により、自社のビジネス課題を解決する革新的なソリューションとして AR を位置付けつつ、期待値を定めることができます。目標設定により、自社のビジネス課題を解決する革新的なソリューションとして AR を位置付け、期待値を定めることができます。
ステップ 2:
:スムーズな連携とコミュニケーションによる成果の最大化
成功する AR ソリューションには、時間の節約と成果向上につながる方法で、適切なユーザーに適切なコンテンツを提供しているという共通点があります。自社のコンテンツに精通している専門家と連携することで、効果的な AR ソリューションを確実に構築できます。AR のパイロットプロジェクトを進めるときは、連携体制のもとで、導入、品質管理、プロセス開発、プロジェクト評価を行うことが重要です。AR の目標を理解している信頼できるチームでプロジェクトに取り組めば、必要なサポートを提供しながら潜在的な障害を特定して克服できます。そのため、必要なリソースを確保し、優先順位や関係者の変動からプロジェクトを守ることができる経営幹部など、適切な人材に早期から頻繁に関与してもらうことが重要です。
現場のユーザーとコンテンツ提供者を特定
ビジネス向けの AR コンテンツを作成する場合、プロジェクトの責任者は、利用者や各分野の専門家を含め、企業のあらゆる関係者の意見を得る必要があります。現場のユーザーとしては、メンテナンスエンジニア、サービス技術者、オペレーター、見習い作業員などが考えられます。プロジェクトの初期段階でコンテンツの有用性をテストおよび評価するときは、これらのチームメンバーの意見が参考になります。一方、プロセスエンジニアリング、ドキュメント作成、トレーニング、イノベーション、製品開発、R&D、IT などの分野の専門家は、各自が持っている深い知識や専門技術をカリキュラムの作成と改善に役立てることができます。
AR プロジェクトに関与するメンバーは、自分の役割と実行すべきタスクを理解し、作業スケジュールを厳守するとともに、適宜フィードバックを提供する必要があります。社内リソースだけでなく、外部のパートナーやコンサルタントの意見も聞きましょう。AR で改善しようとしているプロセスやワークフローに関して、貴重な情報やアイデアが得られます。
「拡張現実 (AR) のメリットを最大限に引き出すには、導入プロセスのあらゆる段階で実際のユーザーに関与してもらう必要があります」Aberdeen Market Intelligence 社、リサーチアナリスト、Tom Paquin 氏
ユーザーにメリットを伝えるときは、AR プロジェクトを変革プログラムとして位置付けましょう。これにより、賛同してくれた従業員から、ユーザーにとって何が本当に重要かを聞き出すと同時に、企業にとっての AR の価値について有益な情報を得られる可能性が高まります。
スポンサーの賛同を得る
さらにプロジェクトの責任者は、AR ソリューションの価値について、主要な意思決定者に明確に説明できるよう準備しておく必要があります。意思決定者の興味をかきたて、関心を誘うには、パイロットプロジェクトのメリットをわかりやすく伝える、シンプルで印象的なデモが必要です。その際、特にほかの部署や関係者にとっての価値を明確にすることが重要です。AR 導入の第 1 段階に必要な資金と支援を確実に得るため、投資に伴うコストとリターンをすべて明らかにしましょう。このような初期段階のステップは、今後実施する、より大規模なデジタルトランスフォーメーション (DX) に影響を与える可能性があるので、その点を考慮して進めてください。
イノベーションの有力な支持者を見つけてください。イノベーションリーダーは重要な役割を果たします。たとえ 100 人に否定されても、実現可能であることを示し、前進し続けなければなりません」PTC Augmented Reality CoE、シニアディレクター、Chad Crandell
ステップ 3:
小さく始めて、短期間な成果を積み重ねる
調査業界トップの IDC 社の調査によると、企業が AR を利用する一番の理由は、従業員がより効率的に作業できる環境を整えて、生産プロセス全体の効率を高めることです2。そのためには、シンプルで使いやすく、ユーザーに役立つ AR コンテンツが必要です。実際のユーザーを対象とするテストを繰り返しながら、AR コンテンツのわかりにくい部分や不明瞭な部分を微調整していきます。その都度新たな試みを取り入れ、目に見える成果を確認しながら段階的に進めることが重要です。
実用最小限な製品の構築
トレーニングや教育を目的とする最初の AR コンテンツを作成する場合、シンプルで直接的な目標を立てることが大切です。例えば、製品の組み立て時間を短縮する、機械が繰り返し故障する原因となっている部品を特定して交換するなど、明確で測定可能な問題の解決に焦点を当てます。このように目標が小さいほど、テスト、評価、改善が容易で、目指す成果を達成しやすくなります。この方法は、今後、より複雑な AR プロジェクトを開発するときにも役立ちます。
「ビジネスに真の価値と成果をもたらすシンプルな目標を見つけることが重要です。数個の部品で構成された基本的な製品から始めてください」
AGCO Grain and Protein 社、グローバルラーニング・開発ディレクター、Lance Cummins-Brown 氏
余分な要素を省き、ユーザーが AR コンテンツの主要な目的や効果に集中できるようにしましょう。目の前の作業に不可欠なグラフィック、機能、サウンド、指示、アニメーションのみを含めます。簡単に作成されたシンプルな AR コンテンツは、価値を生み出すまでの時間が短く、使い方も簡単です。作業員が危険な環境で作業する場合は、この点が特に重要になります。
コラボレーション重視の AR アプリケーション
AR コンテンツの対象ユーザーや作成者に加え、そのコンテンツ自体も直接的なコラボレーションによる効果が得られるかを検討します。たとえば、ビュー体験の共有を可能にする AR アプリケーションでは、2 人のユーザーが連携して作業できます。また、メンテナンス、修理、見直しの作業に AR を導入すれば、製品知識や実務経験が不足している技術者が現場に出たとき、離れた場所にいるベテラン技術者から、まるで同じ場所にいるかのように視覚的なサポートを受けることができます。AR を利用した拡張ガイダンスを構築する場合は、対象となる製品や機械の修理方法に精通しており、この新しいタイプのサポートソリューションが各自の役割に与える影響をよく理解しているベテラン作業員をあらかじめ選定しておく必要があります。AR プロジェクトの成功には、これらのベテラン作業員の存在が欠かせません。AR 統括チームにおけるベテラン作業員の役割を検討し、新たな役割の中で彼らに何を期待するかを明確にします。
適切なハードウェアの選択
作成した AR コンテンツにユーザーがどのようにアクセスし、どのように操作するか、ハードウェアを含めて考える必要があります。Microsoft HoloLens 2 などのウェアラブルヘッドセットは没入型のあるハンズフリー体験を提供しますが、作業環境によっては、単純なパイロットプログラムに適さない場合があります。一方、タブレット端末やモバイルデバイスは、価格が手頃で作業員が入手しやすいというメリットがありますが、ハンズフリー作業が必要な環境では効果的ではない場合もあります。AR コンテンツを作成する前に適切なハードウェアを決定することで、ユースケースや操作環境に適さないプラットフォームでの不要な開発サイクルを最小限に抑えることができます。AR プログラムが解決するビジネス課題が明らかになれば、作業員が」必要とするハードウェアがわかります。低価格の AR 表示デバイスほど ROI は高く、世界各国の作業員に配布しやすくなります。企業が迅速かつ容易に拡張できる AR コンテンツを作成するには、ハードウェアから AR コンテンツまでのすべてがシンプルであり、目標に即していることが重要です。パイロットプロジェクトは本格的な導入に影響を与えることも多いため、ハードウェアとソフトウェアの互換性を検証する際には、長期的な要件も考慮する必要があります。
ステップ 4:
:AR の知識を集約する
AR を活用したオンラインのトレーニングとチュートリアルをチームメンバーと共有することで、ユースケースの定義、アイデア創出、コンテンツ開発を促進できます。また、講義形式の対面トレーニングやリモートでのオンライントレーニングにより、AR に関する社内の専門知識を高めることもできます。無料のオンライン Vuforia Studio トレーニング、オンラインヘルプコミュニティ、誰でも無料で利用できるさまざまなチュートリアルやサンプルプロジェクトなど、PTC には多数のリソースが用意されています。企業の変革を数多く手掛けている AR ソリューションプロバイダーは、AR を活用してコストを削減し、生産性を高め、新しい作業員と既存の作業員のトレーニングを改善してスキルアップを図る方法とその機会を正確に把握しています。これらのプロバイダーのブログを読み、ビデオを視聴し、さらにはエキスパートに問い合わせて、どのようなソリューションが自社のビジネスニーズに適しているかご確認ください。PTC などのテクノロジープロバイダーは専任のカスタマーサクセスチームを設け、詳細なガイダンスやサポートを提供しています。
戦略的パートナーを見つけて連携する
産業用拡張現実 (AR) を企業全体に導入するには、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせる必要があります。短期間で価値を実現できる、既成の総合ソリューションを導入する場合は、業界をリードするテクノロジー企業と強力かつ安定した戦略的パートナーシップを結んでいる AR サプライヤーを探しましょう。たとえば、PTC は Microsoft 社とパートナーシップを結び、Microsoft Azure IoT クラウドプラットフォームに加え、Microsoft HoloLens および Microsoft HoloLens 2 のサポートを Vuforia のローコード AR 開発ソフトウェアに組み込むことで、完全なエンドツーエンドのエンタープライズ向け AR ソリューションを提供しています。
適切なパートナーの選択は、専門知識のギャップを埋め、詳細なガイダンスを得ることにもつながります。AR のパイロットにとどまらず、自社のビジネス戦略、および今後のデジタルトランスフォーメーション (DX) の計画全体をサポートできるパートナーを選択してください。
他社の事例を参考にする
AR パイロットの成功へ向けて計画を立てる際、他社の AR プログラムの事例が参考になります。イノベーション、ブランド、テクノロジーのグローバルリーダーである Henkel 社は、Vuforia の拡張現実 (AR) ソリューションを利用して遠隔支援と知識の伝達を促進し、生産性を高めると同時に問題解決プロセスを改善しています。産業機器メーカーの Bretting 社は、Vuforia Expert Capture を使用して業務とサービスの手順書を作成し、ドキュメント作成時間とトレーニング時間を 50% 削減しました。また、石油とガスの処理機器を製造している Howden 社は、IoT を利用した複合現実を導入し、顧客が自分で機器を修理できるようにすることで、計画外ダウンタイムの発生を防紙止しています。これらの事例を読み、AR 導入前と導入後の状態を比較するとともに、これらの企業がさまざまな障害をどのように克服したかをご確認ください。"Vuforia Studio によって社内の迅速性が向上し、必要な機能をより短期間で開発、提供できるようになりました。また、拡張性も予想以上に優れており、これまで以上に効率的にコンテンツを米国空軍に提供できます"
Vectrona 社、CEO、Joe Gelardi 氏
ステップ 5:
ユーザーエクスペリエンスを重視する
ユーザーエクスペリエンス (UX) は、製造環境の内外を問わず AR の最重要事項です。作業員が効率的に作業できるよう支援するのはもちろん、AR のユーザーエクスペリエンスは直感的で、わかりやすく、簡単に再現できることが条件となります。AR のユーザーエクスペリエンスはユースケースおよび対象ユーザーによって異なりますが、ユーザーの意図を反映した体験を設計し、テストと開発の早い段階から頻繁にユーザーに関与してもらうことが重要です。PTC University が提供する開発コースと、Microsoft 社、Apple 社、Google 社などの大手テクノロジー企業の AR スタイルガイドを使用することで、価値実現までの期間を短縮する実績のある UX 設計により、AR プロジェクトをスムーズに開始できます。
ハードウェアが体験に与える影響を考慮する
AR コンテンツの設計対象がウェアラブルヘッドセットなのか、モバイルデバイスなのか、あるいはタブレッド端末なのかによって、外観、使いやすさ、従業員にとってアクセスのしやすさなどが異なります。人間の脳は情報の 80% ~ 90% を視覚から得ています3。拡張現実 (AR)、支援現実、複合現実、仮想現実は視覚に訴える没入型のテクノロジーです。最適な体験を提供するために、ユーザーは目の前に何が映し出されることを望んでいるかを考慮する必要があります。また、各デバイスの諸条件であるコスト、ユーザビリティ、製品ロードマップ、普及状況なども、AR 導入の障害または促進要因となる可能性があるため、考慮する必要があります。企業の時間とコストを節約する AR コンテンツを作成するには、そのコンテンツを対象ユーザーがいつ、どのように利用し、どのような作業を行うのかを確実に理解する必要があります。使用するハードウェアとコンテンツ作成ソフトウェアに互換性があれば、音声コマンドや視線追跡など、デバイス独自のすべての機能を利用できます。Vuforia Studio、Vuforia Engine などの AR コンテンツ作成ソリューションはさまざまな OS とデバイスをサポートしているため、ハードウェアの選択肢が大きく広がります。
ユーザー中心の設計を心がける
AR コンテンツは、必要な作業とその実施方法を現場のユーザーに明確に伝えられなければなりません。事前にユースケースを適切に文書化して、詳細なストーリーボードを作成します。さらに、実際のユーザーを対象にテストを実施し、そこで得たフィードバックに基づいて内容を改善してください。"「まず、エンドユーザーのエクスペリエンスを第一に考えます。シンプルでわかりやすく、ユーザーの業務に関連していなければなりません」
PTC、拡張現実 (AR) 製品担当 EVP、マイク・キャンベル (Mike Campbell)
コンテンツを AR プロジェクトの中心に据える
適切な専門知識を持つ適切な人材を投入すれば、適切な AR コンテンツをスムーズに作成できます。コンテンツ作成者には、プロセスエンジニアリング、テクニカルドキュメント、トレーニング、製品開発、R&D の各チームなど、その分野に最も詳しい専門家を選定してください。これらの製品およびワークフローの専門家とローコードの AR オーサリングツールを組み合わせることで、プログラマーを雇用する必要がなくなり、価値実現までの時間を短縮できます。Vuforia Studio などの AR ソリューションを使用すれば、既存の CAD、2D/3D モデル、エンジニアリングのデータを利用できるため、新しいコンテンツを作成する際にゼロから始める必要がありません。AR パイロットの目的が物理的な製品のデジタルツインを視覚化することである場合は、コンテンツの作成に必要な製品情報と、その情報が企業内のどこに保存されているかを確認します。製品設計とそれに対応する AR コンテンツは時間とともに変わるため、予想される製品アップデートを現在のコンテンツに組み込むことを検討してください。
接続している機器のステータスとパフォーマンスデータを監視できる IoT ソリューションを企業内にすでに導入している場合は、そのデータを AR コンテンツのリソースと見なすこともできます。特に、PTC の ThingWorx などの産業 IoT ソリューションを介してそれらのデータに容易にアクセスできる場合は、このアプローチを検討してみる価値があります。ユーザーがそれらのデータを利用することで、機器の組み立て、操作、メンテナンスを容易に実行できるようになる場合は、AR パイロット自体でなくとも、今後の生産ソリューションに与える影響を考慮する必要があります。
ステップ 6:
結果を測定する
情報収集を終え、AR プログラムの計画と開発が完了したら、できるだけ早く導入して、結果の測定を開始しましょう。最初に設定した重要指標に基づいて AR 導入前のベースラインを収集することで、AR 導入の成果をビジネス価値に直接結び付け、長期にわたって進捗を把握できるようになります。AR の導入に成功しているすべての企業には、測定可能な成果目標を設定しているという共通点があります。これらの企業に倣って短期的なチェックポイントを設定し、確実に進展していることを確認しながらプロジェクトを進めましょう。そうすることでチームや関係者の士気が高まり、プロジェクトへの批判が弱まります。
関係者との成功の共有
進捗状況を企業内で共有し、成果目標を達成できたことを公表するときは、AR プロジェクトを進めるなかで最も喜ばしい瞬間です。価値を証明する定量的な結果は反論の余地がないため、スポンサーや関係者に測定結果を定期的に知らせてください。注目度の高いアップデートについては、KPI を使用してその価値を明確に示します。これらの KPI は経営幹部と話し合う際のたたき台にもなります。AR プログラムを全社規模で導入するときは、これらの数値が強力な説得材料となります。
「構築前に、現在の状態を測定しておくことが重要です。プロジェクトの開始前に測定基準を設定しておけば、導入後に ROI の向上を証明できます」
AR for Enterprise Alliance (AREA) 社、エグゼクティブディレクター、Mark Sage 氏
導入を開始する
今日では、AR ソリューションを手頃な価格で導入または拡張できるようになりましたが、新しいテクノロジーや革新的な手法は反発を招くこともあります。ここで紹介したガイドラインに従って AR パイロットを構築すれば、企業の時間とコストを大幅に節約しながら、懐疑的な関係者を支持者に変えることができます。競合会社はすでに AR テストを開始し、デジタルトランスフォーメーション (DX) を推進しています。離職率が高い、ベテラン作業員が不足している、プロセスでエラーが発生しやすい、競争力を高めたいといった課題を抱えている場合は、ぜひ AR の導入をご検討ください。
成功を支援する PTC のリソース
企業向けの拡張現実 (AR) の導入に関心をお持ちの場合は、3D データと IoT データを使用して、没入型の AR コンテンツを効率的に作成する方法 (Vuforia Studio)、AR を活用した作業指示やトレーニングを迅速かつ容易に作成する方法(Vuforia Expert Capture および Vuforia Instruct)、現在のリモート環境を拡張する方法 (Vuforia Chalk) をご確認ください。Vuforia Studio の作成者用学習パスを使用して魅力的な AR コンテンツを作成する方法を、PTC University で学ぶこともできます。
確実に成功するための 次のステップをお考えでしたら、PTC のサクセスマネジメントプログラムをぜひご利用ください。このプログラムでは、トレーニング、専門家グループによる支援、ビジネス成果を向上させる革新的なサービスなど、投資効果を最大限に高めるために必要な専任サポートを提供します。
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