【基礎編】幾何公差とは?定義や種類・記号の意味について

執筆者: 芸林 盾
12/14/2022

読み込み時間: 10min

幾何公差とは何か

幾何公差は、測定の観点でサイズ公差(寸法公差)と比較すると分かり易いでしょう。サイズ公差は、ある点から点の距離です。それに対して、幾何公差はジオメトリ自体の許容範囲を示しています。そのため、サイズ公差のみでは、意図しない形状でも検査に合格する場合がありますが、幾何公差は測定方法が特定されるため、意図通りの品質が担保できます。

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最近では 3D アノテーション付きモデル (3DA) を作成する際に、幾何公差が使われます。ジオメトリに直接指示する相性の良さだけではなく、寸法と比べアノテーションの数を減らすことができます。

ISO・JIS による定義

JIS B 0021:1998 の幾何公差の定義は以下のように規定されています。

4-1. 形体に指示した幾何公差は、その中に形体が含まれる公差域を定義する。
4-2. 形体とは表面、穴、溝、ねじ山、面取り部分又は輪郭のような加工物の特定の特性の部分であり、これらの形体は、現実に存在しているもの(例えば、円筒の外側表面)又は派生したもの(例えば、軸線又は中心平面)である。
(出典:日本産業標準調査会 JISリスト

つまり、CAD 的に考えるとモデルを構成する面、または面の集合が実在する形、そしてデータム平面や軸などから派生したものを形体とし、それらの公差域を定義するものです。
ISOは、ISO 1101 で幾何公差が定義されています。JIS は、できるだけ ISO の定義に合わせていますが、ISO 1101 の最新版は 2017 で、JIS と大きく乖離しています。企業によっては、幾何公差は ISO に準拠するところも出てきています。(現在、JIS の改訂を準備中)
また、米国で使われている幾何公差は、ASME Y14.5 で規定されています。


幾何公差とサイズ公差(寸法公差)との違い

「寸法公差」の方がしっくりくる方も多いと思いますが、2016 年に発行された JIS B 0420 によって幾何公差と併用を考えて「サイズ公差」へ名称変更したものです。「サイズ公差」は、長さなどの大きさを規制し、幾何公差は、形体や姿勢、位置、振れなどを規制します。そのため、どちらかを図面に書くのではなく併用します。


幾何公差の種類

幾何公差の種類を分けると、「形体」「姿勢」「位置」「振れ」に分けられ、それぞれ以下があります。

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単独形体

幾何公差の種類は、単独形体と関連形体に分かれます。単独形体とは、その形状自体に指定するもので、上記の表の「形体」が、それにあたります。関連形体は、他との関係性を指定するもので、「姿勢」「位置」「振れ」が、それにあたります。
上記の表の「データム指示」を見てもらうと、単独形体である「形状」の部分がすべて「否」になっているのが分かるかと思います。他の形体と関連付けることなくその単体で決まります。
よく使われる平面度は、平行な 2 つの平面で挟んだ時の距離 (t) が指定した公差内に入っているか、で決まります。他の形体との関係性は問われませんので、斜めになっていてもそれが二平面の距離が指定した公差内に入っていれば問題ありません。平面度は滑らかさを表現しており、データムとして指定された形体や他の幾何公差などと一緒に使う場合がほとんどです。

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同じように円筒度は、2 つの同軸の円筒で挟んだ時の距離が指定した公差内に入っているかになります。円筒度の場合も、他の形体と関連付けをしないので、形体自体の軸にも関連付きません。そのため、円筒度の場合公差値に対して “φ” を入れたくなると思いますが、これは間違いです。

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関連形体性

関連形体は、他の形体との関係により決まるものになります。上記の表の「データム指示」を見てもらうと、関連形体である「姿勢」「位置」「振れ」の部分で「要」になっていますが、このデータム指示により他の形体と関連付けを行います。
まずは、「姿勢公差」ですが、これは指定されたデータムに対しての姿勢、直角なのか平行なのか等を規制します。例えば、別の部品が組み付いたりする場合、測定の基準になるようなデータムと平行ではないと、その組み付いた部品が傾き、組立公差に影響が出る場合などに有効な幾何公差の種類です。平行度や直角度、傾斜度は理解しやすいと思います。線/面の輪郭度ですが、線の輪郭度の場合は公差域の円、面の輪郭度の場合は公差域の球を動かした際にできる包絡線、または包絡面によって規制されるとイメージすると分かりやすいと思います。輪郭度は、曲面だけではなく、平面などにも適用でき、非常に汎用性が高い幾何公差になっており、指示のない形体に普通輪郭度として指定する場合もあります。
「位置公差」は、まさにその位置を特定します。よく使われる位置度は、理論的に正しい寸法(Theoretically Exact Dimension, TED 寸法)を使用し、位置を指定します。穴位置の指定によく使われ φ を付ける事により、その穴の軸と同軸の二円筒により規制されます。φ を入れないと、指示されたデータムと平行または垂直となる直線方向の規制となり、意味が変わりますので、注意が必要です。また、上記の表を見ると、この位置度だけ関連形体の中でデータム指示に要と否の両方が書かれています。データムを指示しなくて良い場合は、例えば、複数ある穴の穴間ピッチに対する規制などの場合です。

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最後の「振れ公差」ですが、こちらは回転体に使われる幾何公差です。円周振れは、形体が回転したときに円周方向(断面)を規制します。全振れは、回転させたときの円筒面全体を規制します。円筒度との違いは、軸で合わせるのか、回転した表面で合わせるのか、の差です。あまり無いと思いますが、楕円の場合、円筒度は軸で見るので公差内であっても、振れ公差では回転している表面になるので、公差内ではなくなる場合も考えられます。


幾何公差のメリットと必要性

幾何公差を使用する大きなメリットは「正確性」だと言えます。寸法が点と点の距離であることを考えると、幾何公差がどれだけ正確に形状を表現できるかは、明らかです。設計意図を汲み取って製造してくれる日本の場合はサイズ公差のみでも高い正確性の製造をしますが、海外の場合は(正確ではない)図面通りに製造されてきて、もめた事がある方もいるのではないでしょうか? また、3DA モデルと、とても相性が良いのもメリットです。まず、寸法などのアノテーションの数を減らすことができ、作業効率を上げることができます。ある調査では、2D 図面の寸法などのアノテーションと幾何公差化したアノテーションを比較すると、5 割から 7 割削減できる製品もあるようです。また、正確であるため、3D モデルとの相性もよく、自動化や他システムとの連携を用意に行なえます。


幾何公差の記入ルールについて

幾何公差の枠には左から、幾何特性の記号、公差値、(必要であれば)データムを記入します。公差域が円や円筒であれば φ、球であれば Sφ を公差値の前に付けます。共通公差域である CZ や突出公差域Ⓟなども、公差位置と同じ枠内に記入します。ⓂやⓁの実態状態ですが、こちらは公差付き形体に対する場合は公差値の枠へ、データムに対する場合はデータムの枠へ記入します。1 つの形体に対して複数の幾何公差を指示することができますが、姿勢公差は、位置公差よりも厳しい値でなくてはいけません。位置で指示した公差値よりも大きい場合は、姿勢を指示する意味がないからです。

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また、公差値の引出線位置でも意味が変わってきます。例えば、直線寸法の寸法線と同一線上にある場合その中心、寸法線とずれている場合は、その寸法補助線が出ている形体に対して指示します。

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具体例と優先順位

複数のデータムを基準とする場合、どのデータムが優先されるべきでしょうか。測定する際の事を考えると、とても分かりやすいと思います。例えば、穴位置を測るとき、まず台の上に配置しますが、これが第一優先のデータムになります。その次に当てる部分が第二優先となります。ちなみにデータムですが、製品側のデータムを「データム形体」、そのデータム形体と合わせ測定する台を「実用データム形体」と言います。単に「データム」と言う場合は、理想的な状態(例えば、完全な平面)を指します。

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業務の効率化は PTC

幾何公差は便利な反面、ちょっとしたミスで違う意味に取られてしまう場合もあります。自信がない場合、資料を確認、またはエキスパートに聞く場合もあると思います。PTC は、規格に合致した幾何公差を 3D 上で作成するためのツール「GD&T Advisor」を提供しています。このツールでは、規制したい形体を選択すると、その形体で可能な幾何公差のみ指定できるだけではなく、単純ミスを防ぎ、データム指示など多くの部分を自動化します。そして、3DA に必要なセマンティック情報も追加し、手動で作成した幾何公差が規格と合っているかを検図できる機能も備えており、サイズ公差から幾何公差へのスムーズな移行を支援します。3D 上の幾何公差を、2D 図面で使用することもできます。


まとめ

すでに海外では幾何公差が標準になっています。日本でも、3DA 化を行うために、今まで幾何公差を活用してなかった業界でも使用が進むことが確実です。そして、ずいぶん長い間更新されていなかった幾何公差の規格である JIS B 0021 が更新のための作業が行われています。この JIS の更新は、幾何公差への移行を行う絶好のタイミングです。ぜひ、3DA や DTPD (Digital Technical Product Documentation) を進める上でも、幾何公差への移行をご検討ください。


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ご参考

  • 【ブログ】Creo の公差解析は こちら
  • 【YouTube】いまさら聞けないシリーズ 「幾何公差」は こちら
  • 【YouTube】Creo ブラザーズ Presents 「クリオの部屋」は こちら
  • DX を加速させる 3D CADソリューション: 日本語特設ページは こちら
Tags: CAD Creo 航空宇宙・防衛 自動車 電子・& ハイテク 産業機器 ヘルスケア デジタル スレッド デジタルトランスフォーメーション (DX) インダストリー 4.0 設備効率の向上 運用コストの削減

執筆者について

芸林 盾

ビジネスデベロップメント
ディレクター

1998 年 PTC ジャパンに入社。アプリケーションエンジニアからテクニカルマーケティング、また Pro/ENGINEER Wildfire(現 Creo)の開発にも従事。入社以来、現在も CAD 関連で活動し、新製品/新バージョンの紹介や、主に設計に対して新しい提案活動を行っている。