- 分離されているツールや手動で統合されたツールを使用することで、透明性が低下
- ソースコードに至るまでの要件のトレーサビリティの確保
- 米国食品医薬品局 (FDA) によるコンプライアンス監査用に包括的なドキュメントをエクスポートすることに問題があり、多大な労力が必要
このお客様事例では、医療テクノロジーのグローバルリーダーである Medtronic 社のニューロモデュレーション部門が Codebeamer を導入し、以前のソフトウェアエコシステムでは効果的に対応できなかった問題をどのように解決したかを紹介します。ニューロモデュレーション部門は旧式のシステムから最先端のソリューションやプロセスへの移行に着手し、Codebeamer を導入したことで、規制の厳しい医療業界のコンプライアンスを支えるプロセスを構築しながら、アジャイル方式を拡張するというビジョンを効率的に実現しました。ニューロモデュレーション部門はこれまでのプロセスを一新し、Codebeamer を活用してこの変革を促進しています。
Medtronic 社について
Medtronic 社は、アイルランドのダブリンに本社を置き、ミネソタ州フリドリーにオペレーション本部を構える世界最大の独立医療テクノロジー企業です。1949 年に設立され、不整脈の治療に電気刺激をいち早く取り入れた 1 社であり、現在はパーキンソン病、心不全、ダウン症、肥満、慢性疼痛、糖尿病などさまざまな慢性疾患のためのハイテクデバイスと治療法を開発、製造するまでに至っています。2015 年の収益は 200 億ドルを超え、グローバルな医療機器ソリューション企業として 155 カ国以上に進出し、世界中で 8 万 5,000 人以上の従業員を擁しています。「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」というミッションのもと、Medtronic 社は複数の事業部門を展開しています。ニューロモデュレーション部門は 2 番目に古く、3 番目に大きな部門であり、2014 年の収益は 19 億ドルで、全体の 11% を占めます。
ニューロモデュレーション部門は 2015 年 4 月、ツールの評価、選定、購入プロセスにおいて、50 名のレビュー担当者と 200 名のアプリケーションライフサイクル管理 (ALM) 担当者に Codebeamer を導入し、ほどなく、同じ部門の開発者 250 名全員と 50 名のレビュー担当者にも拡大しました。ニューロモデュレーション部門で患者ケアソフトウェア担当ディレクターを務める Sarb Singh-Kaur 氏は、各種ヘルスソフトウェア製品の開発、研究開発、イノベーション、モバイル、クラウド、データサイエンスのインフラ開発を統括しています。
Codebeamer によって得られる効果はこれらの業務の和よりも大きい、と Sarb Singh-Kaur 氏は感じています。
先見の明のあるソフトウェアエグゼクティブが率いるニューロモデュレーション部門は、拡張性の高いアジャイル処理に、最先端のアプリケーションライフサイクル管理 (ALM) ソリューションである Codebeamer の高度な機能を組み合わせたフレームワークを開発しました。これにより、世界最大の医療テクノロジー企業は俊敏性、ソフトウェアの変革と開発の速度、製品の品質において競争の先頭に立ち続けています。
ALM で開発に関する問題を解消
Codebeamer を導入する前のニューロモデュレーション部門では、複雑なソフトウェアエコシステムを利用して ALM とアジャイルのニーズを管理していました。Jira、VersionOne、PTC Integrity、SharePoint、IBM Rational RequisitePro、ClearCase、GitHub、さらにいくつかの社内ツールが併用されていました。
ニューロモデュレーション部門はこれらのソフトウェアプラットフォームの機能に満足していましたが、このように多数のスタンドアロンソリューションを統合するのは困難な作業でした。分離されているツールや手動で統合されたツールを使用することで、透明性が低下していました。また、ソースコードまで一貫して要件のトレーサビリティを確保し、コンプライアンス監査用に FDA に提出しなければならない包括的なドキュメントをエクスポートすることに問題がありました。
そのため、ニューロモデュレーション部門は、250 人のすべての開発者を含むさまざまな関係者が共同作業できるように、ALM とアジャイルソフトウェア開発を統合して拡張性の高い環境で同時に実装するためのツールを探し始めました。
問題点の診断
ソースコードまでの要件のトレーサビリティはニューロモデュレーション部門が直面していた重要な問題ですが、数あるうちの 1 つにすぎません。彼らが解決しなければならなかった本質的な問題と、Codebeamer による対処方法を以下にまとめました。
使用されている個別のソフトウェアツールの数が原因で、ライフサイクルに沿った複数の種類の作業項目の関連付けや多対多関係の処理が困難でした。
Codebeamer は完全に統合された単一のリポジトリアーキテクチャーを備えているため、製品ライフサイクル全体を通じて、プロジェクト間も含めてすべての作業項目を参照できます。Codebeamer の構成データベースは、カスタムデータモデルと多対多参照に対応します。
作業項目の参照は重要な問題であり、トレーサビリティを確保して実証するには多大な手作業と注意深いモニタリングが必要でした。
Codebeamer では、あらゆる種類の作業項目を参照できるだけでなく、トレーサビリティブラウザーを介して、これらの関連付けに関する包括的な概要をフィルタリングおよびエクスポートできます。
複数のツールにまたがる可能性のあるプロセスを管理し、ライフサイクル全体でプロセスの可視性と透明性を確保することは、途方もない作業でした。ニューロモデュレーション部門は、単一の画面 (SPOG) によるプロセス管理とモニタリングを必要としていました。
ビジネスプロセス管理 (BPM) 機能を備えた Codebeamer のワークフローエンジンを使用することで、プロセス管理と完全な可視性を確保できます。プロジェクトやツールをまたいでワークフローを柔軟に構成することができ、プロセスが自動的に視覚化されるため、ライフサイクルのあらゆる面で透明性が確保されます。
ツール間でリポジトリが共有されていない状況では、ドキュメントの管理は面倒な作業でした。コラボレーションに対応する方法でドキュメントを保存し、バージョン管理を実行して、すべての変更を追跡することはほぼ不可能でした。
Codebeamer のドキュメント管理機能により、ニューロモデュレーション部門の負担が大幅に軽減されました。ドキュメントは共有リポジトリに保存され、権限を持つすべてのユーザーがアクセス可能です。詳細な監査証跡が記録され、完全にバージョン管理されます。
ドキュメントを用いて知識やハウツーを共有するプロセスが非常に不便だったため、中央ナレッジベースを設置し社内でハウツーを共有するための効率的な方法が必要でした。
Codebeamer のウィキ機能により、ニューロモデュレーション部門はコラボレーションを強化し、ナレッジベースの共有とバージョン管理が可能になったほか、プラグインやウィジェットによるインタラクティブなダッシュボードを作成できるようになりました。
医療ソフトウェアの開発には厳格な業界標準が適用されるため、包括的なベースラインを作成することが基本的な要件となります。開発ライフサイクルで使用される各種ツールを網羅するベースラインの作成は、非現実的でストレスがたまるプロセスでした。
Codebeamer では中央リポジトリに完全に統合されるため、ベースライン作成は数秒で完了し、ニューロモデュレーション部門は時間と労力を大幅に削減できるようになりました。
ニューロモデュレーション部門は、テスト駆動型開発を行っています。テストケースの開発と実行、ユニットテストやシステムレベルの検証テストの実行、ソフトウェアコードに対する追跡テストの実行などの能力が欠かせません。
Codebeamer のテスト管理機能により、ニューロモデュレーション部門は手動または自動テストを計画、管理、実行し、ビジネス目標からリリースまでのテストを管理できるようになりました。テスト結果と適切な統計データが Codebeamer で管理され、レポートが生成されます。
Codebeamer を導入する前は、プロセス、トレーサビリティ、アクセス制御に関するレポートや、各種ツールに関する詳細かつ透明性の高いドキュメントを監査用に作成する場合、複雑な作業が必要でした。
Codebeamer ではプロセスのあらゆる面で透明性が確保され、自動ドキュメント化やレポートのカスタマイズ機能により、レポートドキュメントの作成にかかる時間と労力が大幅に削減されました。
ニューロモデュレーション部門では旧式のスタンドアロンツールが十分に統合(データ転送)されておらず、DevOps 導入の妨げとなっていました。
ニューロモデュレーション部門は、Codebeamer に組み込まれている DevOps 機能を、既存のツールの一部に拡張しました。アプリケーションプログラミングインターフェース (API) を介してデータの抽出と関連付けが簡単になり、ALM ソリューションと DevOps 戦略の統合が実現しました。
ニューロモデュレーション部門が開発する製品は多くの規制の対象であり、FDA Part 11 は電子署名の使用を規定しています。複数のソフトウェアソリューションを使用する旧式の環境では、適切なプロセスとアクセス制御を実行することが困難でした。
Codebeamer の高度な機能により、アクセスとプロセス制御をきめ細かく管理できるようになりました。FDA Title 21 CFT Part 11 に準拠した電子署名は、ライフサイクルのどの時点でも要求されるように構成できます。また、IEC 62304 医療向け事前構成テンプレートを利用して、ほかの規格にも対応できます。ニューロモデュレーション部門はカスタムワークフローを作成し、ALM システムの機能を社内プロセスのニーズに合わせてカスタマイズできるようにしました。
医療のコンプライアンス要件
医療機器を開発する Medtronic 社では、ニューロモデュレーション部門の製品がさまざまな規格や規制の対象になっています。したがって、コンプライアンスの確保は重要な要件です。Medtronic 社は ALM ソリューションを評価する際にこの点を考慮し、特別な機能設定が不要で、適応性が高くカスタム構成可能な Codebeamer であればコンプライアンスに適切に対応できることを確認しました。
ニューロモデュレーション部門の製品が対象となる規格は、次のとおりです。
- IEC 62304: 医療機器ソフトウェア - ライフサイクルプロセス
- IEC 82304: ヘルスソフトウェア
- ANSI/AAMI HE75: ヒューマンファクター
- AAMI TIR45: 医療機器ソフトウェア開発におけるアジャイルプラクティスの使用に関するガイダンス
- IEC 60601-1: 医療電気機器
- ISO 13485: 医療機器 - 品質管理システム
- ISO 14971: 医療機器 - リスクマネジメントの医療機器への適用
- FDA Title 21 CFR Part 11 およびその他の FDA 規制
上記の規制へのコンプライアンスを確保するには、柔軟に構成可能なカスタムワークフローのもとで、完全に制御されたプロセス、完全なトレーサビリティ、包括的なドキュメント化を実行し、モニタリングする必要があります。評価の結果、Codebeamer の機能でこれらの要件をすべて適切に満たせることがわかりました。
Codebeamer の IEC 62304 医療向け事前構成テンプレートは、医療機器ソフトウェアのさまざまな規格へのコンプライアンスに対応します。ニューロモデュレーション部門もほとんどのユーザーと同様に、ニーズに合わせて ALM ワークフローをカスタマイズし、Codebeamer のプロセス制御機能と BPM 機能、リスク管理、品質保証、テスト機能、FDA に準拠した電子署名を活用しています。
こうして、ニューロモデュレーション部門は、Codebeamer をフル構成し、固有のコンプライアンスニーズに対応できるようになりました。Codebeamer の自動ドキュメント化機能とカスタム構成可能なレポート作成機能により、検証監査でコンプライアンスを証明するために必要な労力が大幅に軽減されました。Codebeamer では、使用した開発プロセスに関するレポートを簡単かつ効率的に取得できます。
ニューロモデュレーション部門が ALM ソリューションの選定と評価を行う際に検討した側面や基準のうち、コンプライアンス関連はほんのひと握りだったというのも、状況をふまえればごく自然なことです。
ALM の評価基準
ニューロモデュレーション部門は、2014 年 9 月にツール評価プロセスを開始しました。旧式から最先端の開発プロセスに移行するという Sarb Singh-Kaur 氏のビジョンを実現するには、完全に統合された、堅牢かつ柔軟なクラウドホスト型 ALM ソリューションが必要でした。適切なソフトウェアプラットフォーム探しは、評価基準を定めることから始まりました。
第一に、ニューロモデュレーション部門は、きわめて高い可視性を備え、要件を簡単に行き来できる使いやすいソリューションを探していました。強力なコア機能(要件管理、ソースコード管理、品質保証、テスト機能)と同じくらい重要だったのが、コンプライアンスに対応するためのトレーサビリティと柔軟な構成オプションでした。ドキュメント管理機能も大きな評価対象ポイントです。
最後は、もちろんコストです。Codebeamer の総所有コスト (TCO) は妥当と判断されました。PTC の ALM ソリューションと統合することで、高度な機能を設定不要ですぐに使用でき、追加のプラグインやその他のソフトウェアをインストールし、メンテナンスする際のコストやストレスを回避できます。ニューロモデュレーション部門では、Codebeamer で提供される基本的なトレーニングは価格が手頃で、量も質も十分だと評価しましたが、より高度なトレーニングオプションが必要であるとの見解を示しました。
代替 ALM ソリューションの検討
ニューロモデュレーション部門が評価対象のソフトウェアソリューションとして選んだのは、Atlassian Jira、Jama、Polarion ALM、PTC Integrity、VersionOne、Rally、そして Codebeamer です。
全般的に、競合のソリューションにはアジャイル機能が不足していました。VersionOne はアジャイルの観点から満足できるとみなされた唯一のツールでしたが、要件管理を適切に実行するには追加のツールが必要でした。Jira、Jama、Rally は完全な統合機能を備えておらず、プラグインなどの追加要素をインストールする必要があったため、採用が見送られました。PTC Integrity は実際のアジャイルをサポートしておらず、ニューロモデュレーション部門は重すぎると判断しました。また、ユーザーインターフェイスが貧弱で、広範なカスタマイズが必要という問題もありました。Polarion の欠点はドキュメント中心のビューであり、ニューロモデュレーション部門は「Word ドキュメントのために最適化されたソリューションでは」と感じたといいます。
Codebeamer が高く評価されたのは、複雑な設備管理機能、完全なトレーサビリティ、高度なテスト機能、ALM とコンプライアンスに関するベストプラクティスです。さまざまなオブジェクトタイプにカスタムトラッカーを構成し、すべての作業項目間の関係を作成するという機能は、ニューロモデュレーション部門にとってなくてはならないものです。これらの関係をトレーサビリティブラウザーで表示し、ドキュメントやレポートをエクスポートすることで、コンプライアンスが大幅に促進されます。ニューロモデュレーション部門はこれを重要なメリットとし、Codebeamer の購入を決断するに至りました。
導入と展開のプロセス
2015 年 4 月に購入が決まると、ニューロモデュレーション部門は 2 週間足らずで Codebeamer を導入しました。Codebeamer の技術者 2 名が Medtronic 社の本社を訪問し、技術的な展開(構成とトレーナー研修)を 1 週間集中的に行った結果、ニューロモデュレーション部門はすぐに Codebeamer の機能に慣れることができました。
ニューロモデュレーション部門は API と Codebeamer のインポート機能により、従来のツールからデータを移動し、新しい ALM ソフトウェアをテストサーバーに配置して、移行を実行しました。主なツールの検証を 4 週間で終えたのち、部門全員が Codebeamer を使い始め、その使いやすさに驚いたということです。
Codebeamer で実現されるメリットと価値
ニューロモデュレーション部門は、トラッカー、プロジェクト、役割、ワークフローを構成し、新たな社内プロセスを確立しました。プロセスの変更に Codebeamer が大きく関わっています。Codebeamer は、世界最大の医療テクノロジー企業の一部門を旧式のソリューションから最先端のプロセスへと移行させ、革新的なモバイルおよびクラウドソフトウェア医療システムの効率的な生産を大幅に促進しました。
複雑なツールに対する投資では、ROI の計算は困難です。新しいソリューションが組織にどのような機能やプロセスの向上をもたらすかで測るしかありません。Codebeamer がもたらす現実的な価値について尋ねたところ、ニューロモデュレーション部門は次のように答えました。
- 予測可能性、確立されたソフトウェア開発プロセスの遵守とそれに対する高いトレーサビリティ
- ソフトウェアポートフォリオ管理
- 規制要件へのコンプライアンス
- 完全な透明性
- プロジェクト管理の向上
全体として、従来のプロセスを最先端のプロセスに置き換えてイノベーションを実現し、価値を高めるという Sarb Singh-Kaur 氏の野心的かつ先進的な目標を、Codebeamer の堅牢な機能が適切にサポートしました。ニューロモデュレーション部門は、新たな ALM ソリューションの導入後、迅速に稼働を開始し、ほぼ瞬時に価値を実現できました。Codebeamer により、世界中の多くの医療機器および組み込みソフトウェア開発チームが直面している問題がわずか数週間で解決されました。
最初の 200 個の ALM ライセンスが導入されてほどなく、ニューロモデュレーション部門は 50 個のライセンスを追加購入しました。2016 年 3 月現在、Medtronic 社の他部門が Codebeamer を使用することでどのようなメリットが得られるかを調査しています。