パッケージングメーカー向けの産業用コネクティビティ
インダストリー 4.0 の時代における企業は、自社の位置づけをデジタル面から再検討する必要があります。製造、機械、物流、営業の分野に新しいネットワーキングオプションが生まれたことで多数のメリットがもたらされましたが、課題もあります。一貫性をもってプロセスを計画、開始、導入しなければならず、そのために多額の投資や新しいパートナーの開発が必要になることも珍しくありません。新しいコネクティビティとその導入を扱うプロバイダーは多数存在し、それぞれが優れたソフトウェアとサービスを提供しています。企業として変化に適切に対応するためには、優れたプロジェクト管理に、適切な目標と生産的なパートナーシップを組み合わせる必要があります。
未来に備えるパッケージングメーカー
Greiner Packaging 社は、革新的なプラスチックパッケージングを専門とするオーストリアの企業です。Greiner Packaging 社は、デジタル面での変化への取り組みを成功させました。このグローバル企業は、4 つの部門から構成され、世界中の 130 カ所の拠点で約 10,800 人を採用している Greiner AG に属しています。Greiner AG は 150 年以上前の 1868 年に設立され、それ以来ずっと 100 パーセントの家族経営を続けています。その一部門である Grainer Packaging 社は 30 カ所以上に及ぶ拠点で年間 6 億 7,000 万ユーロの売上を達成しており、ほとんどの事業所がヨーロッパにあります。しかし、食品や食品以外の分野のプラスチックパッケージングやプラスチック部品は米国、メキシコ、インドでも製造されています。Nestlé 社や Danone 社、各自動車メーカーといった世界中の主要な顧客が、「from idea to finished product(アイデアから最終製品まで)」というモットーに従った、開発、設計、製造、デコレーションに関する高度な専門知識の恩恵を受けています。製品と市場の多様性に、世界中の 19 カ国に広がるネットワークが組み合わさり、Greiner Packaging 社の継続的な成長の土台を支えています。
Andreas Kurzmann 氏は Greiner Packaging 社の海外担当 IT マネージャーであり、約 15 年間在籍しています。運用技術 (OT) 領域を担当するKurzmann 氏は、情報処理と、すべての工場に展開されている技術サービスおよび機能の標準を定義しています。Kurzmann 氏のリーダーシップの下で inray 社および Kepware と連携することで、標準化を介して世界中の工場の品質要件を改善し、後々は生産性の向上を目指していました。
Greiner Packaging 社の目標は、可能な限り多数の機械をつなぎ合わせ、互いにリンクさせることでした。これにより、データを読み出し、新しい品質パラメータを開発することで、効率性、そして最終的には生産性を向上させることができます。しかしこのパッケージングメーカーは、工場内の機械のメーカーがそれぞれ異なることから、大きな課題に直面していました。これらの機械は世界中のほかの企業や製品でも使用されており、Greiner Packaging 社の製造プロセス専用のものではありません。機械データの評価や、データの形式または使用目的に関しては、機械のメーカーとその顧客の間にある程度の違いがあります。「メーカーの状況もよく分かります。当社が機械をコピーして製造し、自社のプロセスを改善しようとしているのではないかと懸念しているメーカーもあります」と Kurzmann 氏は説明します。Greiner Packaging 社は、製造キャパシティと品質を高めるために、新しいソフトウェアの力を借りて自社のプロセス向けに機械を最適化したいと望んでいます。その目的は仕事を減らすことではなく、製造プロセスを最適化し、自動化を強化することでエラーの発生を抑え、長期的にヨーロッパ内の事業所と仕事を確保することです。このような背景があっても、機械メーカーとの協力体制を築くことは困難になりがちであると、Kurzmann 氏は続けます。しかし、良好で協力的なパートナーシップは常に重要です。
試用版から熱狂的なファンへ
産業用ソフトウェアのスペシャリスト企業である inray 社と Kepware は、さまざまな機械をリンクさせて多様なプロトコルとデータを読み出すソリューションを提供しています。
その協力関係が構築されたのは、約 4 年前、Kurzmann 氏がドイツで行われた inray 社の最新ソフトウェアソリューションの発表会に招待されたときでした。その第一印象は確信できるものでした。inray 社の OPC Router ソフトウェアの試用版をインストールしてみたところ、何の問題もなく動作しました。協力関係は最初からスムーズでしたが、この IT マネージャーが特に感銘を受けたのは、その迅速な対応と優れたアドバイスでした。Kurzmann 氏にとって、それまで IT 分野で経験した中で最高のパートナーシップとカスタマーサービスでした。「いつでもサービス部門に連絡でき、常に業務を継続できました。テストを続け、素晴らしいサポートを受けることができました。当初は、当社が『唯一の』デモ顧客であったにもかかわらず、です」inray 社のインダストリー 4.0 ソフトウェアである OPC Router は Greiner Packagings 社の本社にインストールされ、データの配布と各種システムの接続のための一元的な通信プラットフォームとして利用されています。
Kurzmann 氏が各機械をさまざまな工場に接続するために選んだのは、業界をリードするコネクティビティプラットフォームの ThingWorx Kepware Server でした。PTC Inc. を親会社とするソフトウェア開発企業の Kepware は米国のポートランドを拠点としています。Kepware はまずデモバージョンを利用できるようにしましたが、テスト期間中もオーストリアの Greiner Packaging 社に直接プログラマーとプロジェクトマネージャーを派遣し、2 カ所の工場でドライバーをプログラムしました。機械がテストされ、このパッケージングメーカーはまだ市場に出回っていない最新ソフトウェアバージョンを独占的に評価できました。そしこの独自のサービスはすべて無料でした。
約 500 台の機械とのシームレスな接続
メーカーの異なる機械をできるだけ数多くつなぎ合わせるという目標を掲げ、ThingWorx Kepware Server の Manufacturing Suite を導入するという最終決断が下されました。このソリューションにより、読み取りと書き込みのトランザクションを含め、さまざまな製造装置に接続できるようになります。デモバージョンのテストを成功させた Greiner Packaging 社は、Manufacturing Suite の 1 年ライセンスを購入し、合計 3 カ所の工場に展開しました。これが成功したため、Kurzmann 氏はほかの国にも Kepware のソフトウェアを導入するという決定を下しました。
もちろん Kurzmann 氏は事前に inray 社と Kepware をほかの OPC サーバーと比較検討したうえで、これらのスペシャリスト 2 社を選びました。その決め手となったのは、トレーニングに必要な労力の少なさ、非常にシンプルなインストール、機械間の接続の分かりやすさでした。OPC Router は inray 社が一元的にインストールし、各工場では Kepware サーバーを導入して、各機械にサーバーをリンクさせています。Kepware、inray 社、Greiner Packaging 社のパートナーシップは見事に機能した、と Kurzmann 氏は胸を張ります。この IT マネージャーは、その連携がどう進んだかについて、こう説明してくれました。「Kepware は 11 か所の工場の約 500 台の機械に接続され、データを取得したら SQL プロトコルを介して本社の OPC Router に取り込みます。OPC Router はデータを受け取ると、独自の SAP データベースで実行される MES で読み取り可能な状態にするのです」
かつてはオーストリアの旧式の PDA システムでデータを収集し、一晩かけて評価していたものが、現在では送信がリアルタイムかつ 24 時間体制で行われるようになりました。OPC Router が変換する前のデータの取得にかかる時間は 1~2 秒で、1 日に合計約 1.2 GB のデータが転送されています。その大きなメリットは、もう翌日まで結果を待たずに済むということです。機械から送られる情報に対して毎秒クエリーが実行され、最終的には SAP MES に格納されます。後になってエラーが見つかっても、エラーの原因を非常に的確に特定できます。常時、いくつの機械サイクルが、またどの指示が現在リアルタイムで実行されているかをモニタリングできるのです。サイクル時間を微調整することで、キャパシティの変動、機械の故障、メンテナンスに柔軟に対応できます。さらに、モニタリングにより、現在どの機械が接続されているのか、また即座に対応できる計画外ダウンタイムが発生しているかも特定できます。
まずは標準化、続けて最適化
インダストリー 4.0 と業界のデジタル化は、口にするのは簡単ですが、複雑なプロセスです。このグローバル企業は、工場内に、射出成形や深絞りなどの多様な製造テクノロジー、そしてプリント、ラベル付け、スリーブ付け、モールド内ラベル付けなどの各種デコレーションテクノロジーを導入しています。Kepware は Greiner Packaging 社と共同で、射出成形機の通信規格を開発しました。これは現在 EUROMAP 63 ドライバーとして、ほかのユーザーにも利用されています。EUROMAP 63 ドライバーは現在の OPC 通信テクノロジーを利用して直接 EUROMAP デバイスに接続し、自動ラインおよび独立デバイスから収集される情報のための安全なチャネルを提供します。こうして EUROMAP 63 ドライバーが機械を OPC UA アーキテクチャー、そしてインダストリー 4.0 環境に組み込みます。ThingWorx Kepware Server の別のプラグインを介して射出成形機のデータをさまざまな用途に利用でき、OPC サーバー機能により任意の数のクライアントアプリケーションでデータに対してクエリーの実行やデータの利用ができます。
課題は、製造業務スタッフがソフトウェアと IT 担当者の両方と連携しなければならないことです。製造業務スタッフは故障や誤動作を主観的に捉えることが多く、モニタリングはあまり精密とは言えません。特にシフト業務の中では、機械が故障した理由の特定は困難です。しかし、重視しているのは、仕事の削減ではなく、最新のテクノロジーによる事業所の保護です。Kurzmann 氏は次のように説明します。「機械を操作するスタッフ、モニタリングを監督するスタッフ、機械とその機能や特長についての知識を備えたスタッフは常に必要です。ソフトウェアではできませんから」最初にデータを標準化してから、あらゆる場所の品質要件を改善することが重要です。デジタル化を全体的に推進するには、統一性のあるパラメータを作成する必要があります。ソフトウェアを介したデータ評価は、機械とプロセスの長期的な改善に役立ちます。
Greiner Packaging 社が製造のデジタル化によって目指しているもう 1 つの価値は、新しい KPI の計算です。新しいソフトウェアを使用することで、システム全体の効率性を示す OEE を読み取り、改善できます。このパッケージングメーカーは将来的に、最適化プロセスの一環として同じ品質標準を世界全体で導入したいと考えています。つまり、同じ製品をオーストリアだけでなくメキシコでも製造できるようになる、ということです。従業員が持つノウハウと KPI の最新の評価がソフトウェアに取り込まれ、そのソフトウェアを使用するすべての国と工場に標準および知識として伝達されます。
競合企業でも高い評価
この海外担当 IT マネージャー自身は inray 社と Kepware との連携を決断しましたが、それを社内で実現するのも簡単でした。特に EUROMAP 63 ドライバーの共同開発は、Greiner Packaging 社に大きなメリットをもたらしました。このドライバーを使用すると、OPC クライアントアプリケーションと無数のユーザー定義アプリケーションで、多数の射出成形機(Greiner Packaging 社にとって重要なもの)への信頼性の高い接続を確立できます。
Greiner Packaging 社の質の高いソフトウェアソリューションと優れたサービスはすでに、産業化に精通したほかのユーザーから評価されていました。Kurzmann 氏は、競合企業や大企業が inray 社と Kepware のソリューションを活用していたため、自分の決定に確信を持っていました。
inray 社と Kepware の多様なライセンス形態も、Greiner Packaging 社にとって魅力の 1 つです。「まずソフトウェアをリースしてテストした後、メンテナンス契約付きで購入することができるため、無駄なく投資することができます」と Kurzmann 氏。この IT マネージャーは、まだデジタル化に直面しているほかの企業に、次のようなアドバイスをしてくれました。「新しいソフトウェアについては、常にテストする機会を持つべきです。サポートは非常に役立ち、インストールは直感的で、大規模なトレーニングは不要でした。」Kurzmann 氏は今でも両方のプロバイダーと定期的に連絡を取っており、パートナーシップに基づく素晴らしいビジネス関係を構築できました。そして現在、未来に向けた新しいプロジェクトを計画しているところです。
著者:Jana Neumann、IT ジャーナリスト
詳細はこちら: https://www.opc-router.de/
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