PTC が開発した 3D CAD ソフトウェア Pro/ENGINEER(Pro/E) は、現在 Creo Parametric へ進化しました。本記事では、PTC の歴史、CAD ソフトウェアの変遷、Creo ParametricとPro/ENGINEERの違い について詳しく解説します。
Creoについて詳しく知りたい方は、
こちらもご覧ください。
PTCの歴史
「PTC」という社名は、旧社名の Parametric Technology Corporation の頭文字から取っており、Pro/ENGINEER(現 Creo)の思想がそのまま社名になっています。
旧ソビエト連邦の数学者であったサミュエル・ガイスバーグはアメリカに亡命し Parametric Technology Corporation(現 PTC)を設立しました。そして 1987 年に PTC がリリースした Pro/ENGINEER は、パラメトリック、フィーチャ―ベース、アソシエイティビティの 3 つの特長を掲げ、瞬く間に 3D CAD の市場を席捲しました。ちなみに、PTCジャパン(当時は“日本パラメトリックテクノロジー株式会社”)は、PTC設立から7年後の1992年3月13日に設立され、2025年時点で33歳になります。
Creo ParametricとPro/ENGINEERの違い
実は、Pro/ENGINEERが PTC の唯一の CAD ではありません。いくつかの CAD を所有していました。以下、皆さんがご存じと思われるものからご存じでないものまでリストします。
Pro/ENGINEER(読み方: プロ エンジニア。以後、Pro/E とします)
記念すべきバージョン 1 の動画を こちら (社外YouTube)から見ることができます。
この動画の 7 分 25 秒にでてくるコマンド名に「Oops」と言うのがあります。日本語に訳すと「おっと、まずい。。」のような感じです。当時は頻繁に固まっていたと思われます。当初、Pro/E は半年に 1 回の頻度でリリースされていました。都市伝説ですが、偶数バージョンが良いとお客様の間では噂になっていました。Pro/E は Release 1 から Release 20 まであり、その後は名前の表記が変わり Pro/E 2000i、2000i²、2001 と続きます。そして、Wildfire シリーズが始まり、1.0 から 5.0 まであり、Wildfire 5.0 が途中で Creo Elements/Pro 5.0 と名前が変わり、Creo Parametric(読み方:クリオ パラメトリック。”クレオ”は誤り)になりました。Pro/E Release 1 から通して、最新の Creo 8.0 は 36 番目のバージョンです(2021 年 5 月時点)。私は、Pro/ENGINEER Release 18 の頃に入社し、Wildfire のプロジェクトメンバーとして米国 Boston で開発に携わっていました。
PTCにおける 他のCAD製品
Pro/Jr.(読み方: プロ ジュニア)
私もインストールメディアの CD-ROM ジャケット(DVD ではなく)しか見たことがありません。当時は価格が高かった Pro/ENGINEER の代理店専用廉価版です。1995 年にリリースされ、その後、Pro/MODELER、PT/Modeler と名前を変えています。
Pro/DESKTOP(読み方: プロ デスクトップ)


元々は、後述の CADDS 5 を持っていた Computervision 社の DesignWave というパラソリッドベースの CAD でした。なんと、この CAD を PTC は無料で使えるようにしました。当時は、ユーザによって Pro/DESKTOP の WEB サイトが作られるなど、一部で結構な人気を博していました。その時に大きくなり始めていたあるミッドレンジ 3D CAD が、3D 市場を取る前にばらまこうという戦略でしたが、方針転換があり今となっては幻の CAD になりました。
CADDS 5(読み方: キャッズ ファイブ)


PTC が 1998 年に買収した Computervision 社が持っていた CAD です。Pro/E が出てくるまではかなり有名な CAD で、CATIA や Unigraphics(現 NX)と肩を並べるほどでした。CADDS 5 はサーフェスやモデリングの機能が非常に強く、造船や金型の曲面作成で大いに活躍していました。CADDS 5 のヘビーユーザーは「トーラス形状からなんでもできる」とおっしゃっていました。なお現在も、販売中です!ちなみに Computervision 社には他の CAD もあり、Medusa (2D) は、売却されましたが、その技術は Creo Schematics に引き継がれています。
そのほかに DIMENSION III と言うワイヤーフレーム 3D CAD がありました。DIMENSION III は、Calma 社の CAD で 1989 年に Comutervision 社に買収されました。3 次元のワイヤーフレーム CAD で DDM("Design、Drafting、Manufacturing"の略)と呼ばれていました。
Creo Elements/Direct(読み方: クリオ エレメンツ ダイレクト)
これは旧 CoCreate 製品です。こちらも Creo Parametric に負けないぐらい長い歴史のある CAD で、以前は「がちがちなパラメトリックの Pro/E」と「完全に自由な CoCreate」が対比されることがよくありました。それだけに、会社が合併したときの衝撃は一入でした。この合併によって Creo Elements/Direct の機能を Creo Parametric に移植したのが Flexible Modeling です。
Onshape(読み方: オンシェイプ)

一番最近 PTC 製品になった完全 SaaS 型の製品です。CAD であり、PDM であり、コミュニケーションツールでもあるという、全く新しい驚きのコンセプトで提供されています。マーケットの反応も上々です。他の CAD にも良い影響がありそうです。
CDRS(読み方: シーディーアールエス)
こちらは、CAD と言ってもサーフェス CAD です。1995 年に Evans & Sutherland 社から CAD を持っている部門を買収しました。PTC になり、Pro/Designer として単体で発売していました。この CAD の痕跡は、ISDX (Interactive Surface Design Extension) として、Creo に完全統合されています。
ICEM Surf(読み方: アイセム サーフ)
こちらもサーフェス CAD ですが、自動車業界でも使われていた Class A と言われる滑らかなサーフェスを作ることができる CAD です。Control Data Systems 社から ICEM Surf を買い取りました。そのため今でも ICEM からのデータを取り込むことができます。その後、この会社は Dassault に買収され、いまでも Dassault の一部門として存在しています。
Creo Direct(読み方: クリオ ダイレクト)
ダイレクトモデリング専用の CADです。と言っても、中身は Creo Parametric で、パラメトリック機能が見えないようにしてある CAD です。そのため、Creo Parametric に持ってくると、どのような履歴になっているか見ることができます。そのコンセプトとして、解析用モデルの簡略化や製造モデルへの修正などの用途と考えて開発されました。
私の記憶と、調べられる限り、PTC が所有している、もしくは過去に所有していた CAD を挙げてみました。色々な CAD がありましたが、それらのエッセンスが今の CAD に生きていると思うと感慨深いところがあります。ぜひその痕跡を感じてもらえれば、筆を起こした甲斐があります。
Creo お客様導入事例
【導入事例】
・UD trucks 社 | 3D データで、意思決定を迅速化
・シンクロン 社|過去データの継承と採番・BOM作成など業務効率アップを実現
・パナソニック 社|照明設計をCreoに統一。データ共有の質を向上
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