Christine Schulze is an experienced PR expert and author. She has been supporting technology companies in the IT/software, electronics and energy sectors for decades. After studying linguistics and literature, she worked in various agencies before founding her own communications agency in 2020.
樹脂流動解析とは、製品の金型を作る前に「樹脂が問題なく流れるか」「どこに不良が起きそうか」を PC 上でシミュレーションする技術です。設計の初期段階でヒケやウェルドラインといった成形不良の原因を取り除けるため、後工程での手戻りを大幅に減らし、開発コストの削減と品質向上を実現します。
本記事では、3D CAD ソフトウェア「Creo」のインターフェース上で、設計変更を行いながら手軽に樹脂流動解析を実行できる拡張機能「Creo Mold Analysis (CMA)」についてご紹介します。具体的な操作手順も丁寧にご説明していますので、ぜひご一読ください。
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なぜ今、設計者に樹脂流動解析が必要なのか?
設計現場で頻発する「手戻り」と「コスト増」という課題
樹脂製品の設計現場では、下記のような課題が頻繁に発生します。
・試作品でヒケ(凹み)やウェルドライン(合流線)が発生した
・後工程の金型部門から「この肉厚では樹脂が最後まで充填されない(ショートショット)」と指摘された
・ベテラン設計者の勘と経験に頼っており、若手がなかなか育たない
これらの問題は、試作金型の修正にかかる多額のコストや、開発スケジュールの遅延に直結します。これまで、こうしたリスクは「作ってみなければわからない」ものとして、ある程度受け入れざるを得ませんでした。
勘や経験を「データ」で裏付けるシミュレーション技術
樹脂流動解析を活用すれば、こうした成形不良が「どこで」「なぜ」発生するのかを、設計の初期段階で正確に予測できます。
このようなシミュレーション技術は一般的に CAE (Computer Aided Engineering) と呼ばれ、特に設計者が主体となって行う CAE は「設計者 CAE」として注目されています。勘や経験だけに頼るのではなく、樹脂の充填時間、圧力、温度分布といった客観的なデータに基づいて、問題のない最適な設計を導き出すことが可能になります。
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樹脂流動解析を活用することで、以下のような大きなメリットが生まれます。
・手戻りの削減:後工程からの差し戻しを未然に防ぎ、設計プロセスを効率化します。
・コスト削減:物理的な試作品の作成回数を最小限に抑え、金型の修正費用を削減します。
・開発期間の短縮:設計のフロントローディング(前倒し)により、開発全体のリードタイムを短縮します。
・品質の向上と安定化:データに基づいた設計により、製品の品質を安定させ、市場での競争力を高めます。
これまで、こうした解析は専門家が高価な専用ソフトを使って行うのが一般的でした。しかし、その常識を覆し、設計者自身が使い慣れた 3D CAD のインターフェース上で手軽に実行できるソリューションがあります。
それが、次にご紹介する「Creo Mold Analysis (CMA)」です。
Creo Mold Analysis (CMA) とは
Creo の拡張機能の一つに、樹脂流動解析用の「Creo Mold Analysis (CMA)」があります。この拡張機能では、製品設計における精密な射出成形シミュレーションが可能です。3D CAD と一体化したこの CAD 解析機能は、設計部品の検証や成形品の最適化の一部を担い、樹脂流動解析の精度向上に貢献します。具体的には、樹脂材料の定義から、ゲートの定義、条件の定義、解析計算、結果表示まで一通り行うことが可能です。
Creo Mold Analysis の具体的な操作手順
ここからは、使い慣れた Creo 上で、強力な設計 CAE 機能である CMA をいかに簡単に操作できるか、4 つのステップで解説します。
操作手順①材料の定義
「アプリケーション」タブにある「モールド解析」を選択し、「材料」をクリックして開きます。
5,000 種類を超える材料データが収録されており、その中から解析したい材料の種類(タイプおよび生産者)もしくはグレード名を選択します。
材料の詳細情報は、「樹脂特性」タブに切り替えて、物理的特性、機械的特性、粘度、PVT といった項目で確認できます。また、材料ライブラリに含まれていない材料も、カスタム材料として定義して利用できます。
操作手順②ゲートの定義
ゲートの定義には、自動ゲート作成と手動ゲート作成があります。
1. 自動ゲート作成
上部メニューの「ゲート」をクリックし、「自動ゲート作成」を選択します。ゲート直径 (mm) やゲート数を指定して計算を行うと、適切と思われる箇所にゲートが自動で作成されます。設計時にどこにゲートを設定するのが適切かを検討する際に活用可能です。
2. 手動ゲートの作成と編集
自動で作成したゲートの位置が適切でない場合は、手動でゲートを削除します。
上部メニューの「ゲート」をクリックし、「ゲート」を選択すると、現在作成されているゲートの一覧が表示されます。ここから削除するゲートを選択して削除できます。
別の位置に新しいゲートを追加する場合は、手動で作成することもできます。
まず、ゲート一覧ウィンドウの「追加」を選択し、ゲートを追加する面をクリックします。このとき、1 点ゲート、2 点ゲート、3 点ゲートなどを作成できます。次に、ゲートの直径を指定すると、ゲートが追加されます。
金型設計の場合でも、適切なゲート位置について取引先と調整する際に CMA を活用できます。
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Creo で実現する金型設計のリードタイム短縮とコスト削減:CAD/CAM連携や設計変更にも強い自動化の秘訣
操作手順③解析計算と結果表示
上部メニューの「解析」をクリックし、解析計算の設定ウィンドウを開きます。
ここでは、プロセス条件(充填時間や溶融温度、モールド温度など)やオプション(最大冷却時間の計算の有無、ヒケの計算の有無など)、解析精度に影響するメッシュ要素サイズを設定することが可能です。
計算を開始すると、途中経過が表示されます。計算が終わると、上部のメニューから成形性や充填時間、気泡(ボイド)など、結果を閲覧したい項目を選択できるようになります。
解析計算結果の項目:射出成形シミュレーションで何がわかるか
確認できる項目は下記のとおりです。
・充填時間
・成形性
・気泡(ボイド)
・ウェルドライン
・圧力分布
・温度分布、肉厚中心温度、バルク温度(加重平均温度)
・最大せん断率、最大せん断応力
・固化層比率
・速度ベクトル
・容積収縮(体積収縮)
・ゲートの寄与度
・スプルー力と時間のプロット、流速と時間のプロット
・ヒケ
・最大冷却時間
※「ヒケ」と「最大冷却時間」は、計算時にオプションで設定している場合のみ閲覧可能です。
充填時間
充填時間の項目では、ゲート(樹脂の入り口)から金型内の各部分まで樹脂が到達するのにかかる時間が示されます。赤色に近いほど充填時間が短く(0.005 秒)、青色に近づくほど充填時間が長い(0.300 秒)ことがわかります。
成形性
成形性は、製品を問題なく成形できるかどうか(成形のしやすさ)を総合的に評価したものです。緑色は成形性が高く、問題なく充填できる可能性が高いと評価された部分です。一方で、赤色は成形性が低く、何らかの成形不良が発生するリスクが非常に高い部分となっています。
解析結果によっては、ショートショットのような射出成形特有の成形不良が赤色で表示されることがあります。ショートショットとは、金型の中に溶かした樹脂を流し込む際に、樹脂が金型の隅々まで完全に行き渡る前に冷えて固まってしまい、製品の一部が欠けてしまう現象のことです。
気泡(ボイド)
気泡(ボイド)とは、成形品の内部にできる空洞のことです。特に厚みのある部分で、表面が先に冷えて固まった後、内部の樹脂が冷えて収縮する(体積が小さくなる)際に発生しやすくなります。解析結果では、気泡(ボイド)の発生が予測される箇所が水色の点で示されます。
ウェルドライン
ウェルドラインとは、金型の中で、複数のゲートから流れてきた樹脂、あるいは穴などを迂回した樹脂が合流する部分にできる、細い線状の跡のことです。合流する時点で樹脂の温度が下がっていると、樹脂同士が完全に一体化せず、このウェルドラインが発生します。解析結果では、ウェルドラインの発生が予測される箇所が水色の線や点で示されます。
操作手順④解析結果レポート
解析結果のレポートを作成しておくことで、シミュレーションソフトを開くことなく、結果を閲覧できます。ファイル形式は、PowerPoint もしくは HTML を選択可能です。後工程との共有や設計の振り返りに活用でき、設計のナレッジとして蓄積できます。
まとめ:CMA で「設計者 CAE」を実現
本記事では、設計現場が抱える手戻りやコスト増といった課題を解決する樹脂流動解析と、それを Creo 上で手軽に実現する「Creo Mold Analysis (CMA)」の基本的な使い方をご紹介しました。
これまで専門家の領域だった解析を、設計者自身が使い慣れた 3D CAD のインターフェースでシームレスに行えるのが CMA の最大の強みです。これこそ、本来あるべき「設計者 CAE」の姿と言えるでしょう。設計変更のたびにデータを変換する手間をかけずに、高速なトライ&エラーを繰り返すことで、勘や経験をデータで裏付け、設計の初期段階で品質を最大限に高めることができます。
「試作品を作ってみないとわからない」という不安から解放され、自信を持って設計を進めたい設計者の方も、チーム全体の開発プロセスを革新し、コスト削減と競争力強化を実現したい管理職の方も、CMA はその実現を強力に後押しします。
よくあるご質問 (Q&A)
Q: 解析の専門知識がない設計者でも使えますか?
A: はい、お使いいただけます。CMA は設計者が使い慣れた Creo のインターフェースに完全に統合されており、直感的な操作で解析を実行できるよう設計されています。本記事でご紹介した手順で、専門家でなくても精度の高い樹脂流動解析が可能です。
Q: ほかの専用解析ソフトとの違いは何ですか?
A: ほかの専用解析ソフトや 3D CAD ソフトと比較して、Creo Mold Analysis (CMA) には主に以下の 3 つの大きな違いがあります。
1. 圧倒的な解析スピード
一般的な解析ソフトでは結果が出るまでに数時間かかることも珍しくありませんが、CMA はわずか数分でシミュレーションが完了することがほとんどです。これにより、設計者はストレスなく何度も条件を変えてトライ&エラーを繰り返せます。
2. 設計と解析のシームレスな連携
Creo という単一のプラットフォームで設計 (CAD) から解析 (CAE) までが完結します。これにより、下記のようなメリットが生まれます。
・データ変換が不要:中間ファイルへの出力や別ソフトでの読み込みといった、従来の解析で必要だった手間が一切ありません。
・リアルタイムな設計変更:設計変更を行うと、その結果がすぐに解析モデルに反映されるため、開発サイクルを劇的に高速化できます。
3. 優れたコスト効率と工数削減
CMA は、設計者自身が手軽に解析を行える「設計者 CAE」を実現し、組織全体に大きなメリットをもたらします。
・追加投資の抑制:CAD とは別に、高価な解析専門ソフトウェアを追加で購入する必要がありません。
・後工程の工数削減:設計の初期段階で成形不良を解消できるため、後工程である解析部門や製造部門での手戻りや修正工数を大幅に削減できます。
Q: 導入までにかかる費用や期間はどれくらいですか?
A: Creo Mold Analysis は Creo の拡張機能のため、費用や導入期間はお客様のご契約状況によって異なります。お客様の現在の環境や解決したい課題に合わせて最適なプランをご提案いたしますので、ぜひこちらからお問い合わせください。
Q: Creo Mold Analysis (CMA) はどのライセンスに含まれていますか?
A: Creo Mold Analysis (CMA) は、Creo Design パッケージの上位グレードに含まれる拡張機能です。現在ご契約中のパッケージからのアップグレードや、最適なライセンスのご選定については、下記の記事で最新のパッケージ構成を詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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詳細はこちら参考動画:「3D CAD ソフト Creo の使い方」シリーズ
本記事の元となった動画「Creo の樹脂流動解析 | 3D CAD ソフト Creo の使い方」では、ご紹介した機能を実際の操作画面とともにより詳しく解説しています。テキストだけでは伝わりにくい機能の操作感などを、ぜひ動画でご確認ください。