ブログ 3次元設計における構想設計の考え方と活用方法

3次元設計における構想設計の考え方と活用方法

2025年7月11日 Creo お問い合わせ 無償試用版はこちら

CAD ビジネスディベロップメントマネージャー

Creo Parametric(Pro/ENGINEE R含む)歴 18 年
PTC の設計ソリューションで実現できることやメリットをお客様に伝え、3 次元データを活用したデジタルツインや AR といった更なる設計環境を使っていただき喜んでいただく事が使命。

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※本ブログは、Creo Chapter Webinarシリーズを記事化したものです。

①3次元設計

1.しっかり3次元設計できていますか?

今回は、3次元設計における構想設計の考え方と活用方法について紹介します。 現在、しっかりと3次元設計を行えていると思いますか?このように質問すると、よく返ってくる回答として「3次元CADで設計しているから、3次元設計はできている」といったものがあります。確かに、3次元で設計し、図面も作成し、その図面をもとに製品がしっかりと作られていると思うかもしれません。

また、干渉チェックを行い、機構検討なども実施しているという話もよく聞きます。しかし、これらは果たして「3次元設計を行っていること」になるのでしょうか?それとも、3次元CADを活用しているという話に過ぎないのでしょうか?

2.“3次元設計ができている”ということ

PTCでは、3次元設計ができているとは以下の3つが実現できていることだと考えています。

1つ目は、思考作業を3D、つまり3次元で行っていることです。
2つ目は、最新の状態が常に3Dデータであることです。
3つ目は、3Dデータを徹底的に活用することです。

3.試行錯誤を3Dで行う事とは?

試行錯誤を3Dで行うというのは、具体的にどういうことかを考えてみましょう。私の知っているお客様の中でも時々あるのですが、設計はどこから始まりますか?という質問に対して、最初にポンチ絵を描くケースや、手書きでアイデアを固めるケースがあります。また、最初は二次元CADで構想設計を始め、その後3次元に移行するお客様もいらっしゃいます。あるいは、製品には数値情報が非常に重要で、エクセルなどで計算を行い、その数値が固まってから3次元設計を行うお客様もいます。

こうしたお客様は、3次元ではないツールを使って構想設計を行い、アイデアが固まった段階で3次元モデルを作成します。3D CADを清書するような場所という形で使われることもあります。この場合、設計には必ず修正が発生します。修正がゼロになることは絶対にないため、修正内容をポンチ絵や2次元CAD、エクセルで行い、その内容を3次元モデルに反映させる必要があります。

しかし、修正が多いと「この修正は3次元モデルにきちんと反映されたか?」と不安になることがあります。これが問題となるのです。試行錯誤を3Dで行うというのは、3Dで始め、3Dモデルの中で様々な検討を進めることです。形状だけでなく、数値情報も重要な要素となります。もし数値情報が大事な場合は、3Dモデルとエクセルなどの計算情報をリンクさせたり、埋め込んだりすることができます。そのため、中心となるのは3Dで、計算式を活用することが重要です。

この検討内容を煮詰めていくことで、最終的に3次元データが完成します。もし設計変更が発生しても、このモデルを修正すれば、その内容は自動的に3次元モデルに反映されるので、抜けや漏れが発生しません。試行錯誤を行う際には、3Dで進めることで、情報の途切れがなく、100%渡すことができる環境を作ることができます。

4.最新状態が常に3Dデータであることとは?

次に、最新状態が常に3Dデータであるということについて考えてみましょう。皆さんも、3次元CADを使って設計を行い、そこから2次元図面を作成し、その図面をもとに実際にものづくりが行われる場面が多いのではないでしょうか。しかし、突発的な修正が発生した場合、3Dモデルだけではなく、2D図面の修正が先に行われ、その後でモデルを修正することがよくあります。

時間がない場合、図面修正が先に行われ、モデルの修正が後回しにされることがあります。しかし、図面が直った後に必ずモデルも修正されるのであれば問題ありませんが、実際にはモデルの修正が後回しになりがちです。その結果、モデルが信頼できなくなることがあるのです。最終的には、図面の方が正しいと考えられることもあります。

こうした環境では、3次元モデルの価値が損なわれてしまいます。設計変更が発生した場合でも、時間がなくても必ず3Dモデルを修正し、最新状態を保つことが大切です。現在の3次元CADでは、3Dモデルが変更されれば図面も自動的に更新されるため、モデルと図面の整合性が保たれます。そのため、3Dモデルを信頼でき、そこから生成された図面も確実に修正されていることを確認できます。

5.3Dデータをとことん活用することとは?

そして、3Dデータを徹底的に活用するということは、3Dモデルから図面を作成し、解析を行い、設計作業を進めるだけではありません。例えば、後工程では、部品を削るための加工パスを作成したり、反則資料を作成したり、組み立て指示書を作成したりします。このように、3次元データは設計だけでなく、会社全体で活用することが求められます。

つまり、3次元データを本当に使い込むことで、設計から製造、組み立てに至るまで、すべての工程で活用できるようになります。これにより、業務の効率化が図られ、精度が高まるとともに、全体の生産性も向上します。

6.3次元設計における3つの重要なコンセプト

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3次元設計をしっかり行うということは、試行錯誤を3Dで行うことです。そして、最新状態が常に3Dデータで管理される環境を作ることが重要です。また、出来上がった3Dデータは後工程までしっかりと活用していくことが求められます。

試行錯誤を3Dで行うことが、今日のメインテーマであり、構想設計における3次元設計の重要なポイントとなります。最新状態が常に3Dデータであることが、3D製品開発環境の基盤となり、3Dデータを徹底的に活用することがデジタルスレッドの実現に繋がります。

これらの3つのコンセプトは、最近PTCがお客様に提案している内容でもありますが、最も重要なのは、しっかりとした3次元データを作成するという構想設計の部分になってきますので、今日はその部分に注力してお話ししていきたいと思います。

7.構想設計とは

では、構想設計とは一体何をするのでしょうか?おそらく皆さんの方がよくご存知かと思いますが、私なりに調べてみました。構想設計とは、設計の基礎となる仕様、例えば意匠や構造、性能、費用などを決定するプロセスのことです。この段階で、製品の品質やコストの大部分、約80%が決まると言われています。つまり、非常に重要なステージだと言えるでしょう。

逆に、構想設計が適切に行われないと、その製品は最終的に良いものにはならないということです。構想設計がいかに重要か、皆様は経験を通じてしっかりと理解しているのではないかと思います。

8.2次元CADと3次元CADの構想設計の違い

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では、2次元CADと3次元CADでの構想設計にはどのような違いがあるのでしょうか?実際、設計者が考えること自体はそれほど変わりません。製品の仕様をしっかりと構想情報に落とし込むことが重要です。ただし、出力の方法が異なります。

2次元CADでは、線や座標、文字、数値などを使って構想図を作成します。一方、3次元CADでは、サーフェスデータや3次元情報を用いて構想モデルを作成します。この構想モデルと構想図の違いは、2次元と3次元の差にありますが、特に重要なのは、構想モデルではその情報を後のサブアセンブリや部品にリンクさせて、きちんと引き継ぐことができる点です。これが2次元では決してできないことです。

構想設計を行い、その情報をしっかりと部品図などにリンクさせて渡していくことが、3次元モデルでは可能になります。2次元では、このような連携ができませんが、3次元ではその情報の引き継ぎが容易にできるため、設計の効率が大きく向上します。

9.3次元CADの構想設計のメリット

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では、これをPTCのソリューションであるCreoで行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか?まず、構想情報を作成し、その情報からサブアセンブリや部品を作成します。これらのサブアセンブリや部品がまとめられて、最終的な製品情報となります。 設計には必ず設計変更が伴うことは先ほどお話ししました。設計変更が発生した場合、この構想モデルを修正します。すると、その情報がサブアセンブリや部品に伝わり、最終的な製品形状が修正されます。これが、たとえ100回に1回、あるいは1000回に1回でも発生する場合でも重要です。もし構想モデルを変更した際に、例えば穴の位置を変更したはずが、その変更が反映されていないといったことが起きると、設計者はその設計情報のリンクを信用できなくなってしまいます。そうすると、設計者は毎回不安を感じて、変更を確認し直さなければならなくなります。

ここでPTCのCreoの優れた点は、このリンクが勝手に外れることはないということです。構想情報から繋がった情報は、部品の末端にまで確実に伝わります。そのため、設計変更が発生した場合でも、100%その情報が部品にまで反映されます。これは、PTCのCreo Parametric機能が保証しているものであり、構想モデルを変更した際に、設計変更が確実に反映されることが保証されます。これにより、設計者は安心して作業を進めることができるのです。

このようなメリットが、Creoの強みであり、設計変更時にも信頼できる作業環境を提供していると言えるでしょう。

10.構想モデル

では、これが実際にどのように機能するのか。

こちらに構想モデルがあります。構想モデルは重要な情報を持っており、これは鉄板を圧延する圧延ローラーの機械設計です。もともとは1800の鉄板を圧延する設計でしたが、それを2000に変更しました。

構想モデルを変更したので、それに連携する部品や形状、位置が自動的に反映されることが確認できます。構想モデルから、下位のサブアセンブリや部品がリンクされて設計が進むことによって、設計変更や仕様変更が自動で対応できるようになります。その結果、修正作業が非常に速く行えるようになります。

もし構想設計が変更された後、すべてのリンクがなければ、手動でどこが変わったかを確認し、変更を加えなければなりません。これを分かりやすく管理する必要があり、漏れが発生するとミスにつながる可能性があります。このようなミスを防ぐためにも、構想モデルから下位の部品までしっかりとリンクしていることが重要です。

②3次元設計における一般的な構想設計の流れ

1.3次元設計における一般的な構想設計の流れとは?

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3次元設計における一般的な構想設計の流れについてお話しします。これは、普段皆さんが自然に行っている設計プロセスだと思いますので、私が詳細に説明しなくても、イメージはつかめるのではないかと思います。

いきなり部品の細かな部分を考えるわけではありません。まずは、その製品の仕様や大きさ、重さなどの概略を考えます。その製品を設計するにあたって重要な要素を上流から考え、それを基にしてサブアセンブリや部品などの詳細を決定していきます。こうして、上から下に流れるように設計が進んでいくのが、一般的な構想設計の流れです。この流れは、皆さんが普段行っている設計の流れにも合致しているのではないかと思います。

2.それ以外の3次元設計における構想設計の流れとは?

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一方で、別のタイプの構想設計の流れも考えられます。例えば、下から始めて部品の形状を決め、それを組み合わせて製品形状を作り上げるような方法です。これは、レゴブロックで大きな作品を作るようなイメージに近いかもしれません。部品の形状やサブユニットの形が決まった後、それを組み合わせて設計するというプロセスです。このように、下から上に流れる設計もありますが、一般的な構想設計は上から下に進むものです。

今日は、一般的な構想設計の流れに沿ってお話を進めていきます。

3.板金部品に対するフレキシブルモデリング

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また、この一般設計を行う際のCreoのメリットについてお話しします。Creoで3次元設計を行うと、設計の仕様情報をしっかりと蓄積することができます。その蓄積した情報から、各ユニットに必要な情報を渡すことができるため、例えば、ユニットAはAさんが設計し、ユニットBはBさんが設計するといった形で、チーム設計が非常にスムーズに行えます。

構想情報がまとまると、その情報を修正することで、下位の部品にもその修正内容が自動的に反映されます。これにより、設計変更に迅速に対応できるようになります。Creoであれば、リンクが勝手に外れたり、連携が崩れたりすることはありません。このように、作業のパフォーマンスが向上するのが大きなメリットです。

③3次元設計における構想設計に必要な機能

1.3次元設計における構想設計に必要な3つの機能

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また、3次元設計における構想設計に必要な機能についてお話しします。3次元設計で構想設計ができると、そこから詳細設計に進むことができます。こうした手法を用いて設計を進めているお客様も多いかと思いますが、Creoのもう一つのメリットは、構想設計に必要な機能をしっかりと備えている点です。

Creoには、構想設計の機能がCADの機能として組み込まれており、Creo Parametricを使用することで、これをフルに活用できます。これは他の3次元CADにはないメリットの一つです。

構想設計に必要な機能としては、まず、製品の基本情報をしっかりと計画する機能が必要です。その計画された情報を、製品設計情報としてサブアセンブリや部品に確実に伝達する機能も必要です。また、伝達後にその情報がどの要素に伝達されているのかを確認し、必要なリンクが正しく維持されているかを制御する機能も重要です。もしリンクに問題があれば、それを修正する必要があります。

PTCとしては、この3つの機能が構想設計を行うために必要だと考えています。

④Creoが持つ構想設計の機能

1.Advanced Assembly Extension (AAX)

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PTCのCreoが持つ構想設計の機能についてですが、主に「Advanced Assembly Extension(AAX)」というオプションモジュールが提供されています。このオプションモジュールは単体で購入することもできますし、パッケージとして購入することも可能です。パッケージの一例として、T2パッケージがあり、その中にはAAXの構想設計機能が含まれています。

AAXには5つのオプションモジュールが含まれており、これらは以下の通りです:

  1. Pro/ASSEMBLY
  2. Pro/NOTEBOOK
  3. Pro/PROGRAM
  4. Pro/Process for Assemblies
  5. Pro/Web.Link

2.Pro/ASSEMBLYに含まれる機能

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構想設計に関連する主な機能は、名前にもある通り「Pro/ASSEMBLY」です。Pro/ASSEMBLYは構想設計を行うための機能として重要な役割を果たします。大きく分けて7つの機能が含まれていますが、今日はその中から「スケルトン機能」「コピージオメトリ」「参照制御」「グローバル参照ビューワ」の4つの機能についてお話ししたいと思います。

⑤スケルトン機能<計画>

1.スケルトンとは?

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まず、スケルトン機能についてお話しします。先ほど、構想設計を3次元CADで行うためには、計画、伝達、確認、制御という3つの機能が必要だとお話ししましたが、スケルトン機能はその「計画」を行うための機能です。

スケルトン機能とは、設計の重要な情報を蓄積し、設計の基盤となる特別なデータを作成できる機能です。このスケルトンモデルには、サイズ、形状、位置、インターフェースなど、構想設計に必要な情報を詰め込むことができます。

2.スケルトンの特徴

このスケルトンは、部品と同じパートですが、特別な扱いを受けるシステムです。これは単なる部品ではなく、構想設計を行うための部品であることを明確にしています。したがって、どのタイミングで作成しても、アセンブリツリーの一番上に配置され、アイコンも特別なスケルトンアイコンになります。これにより、一目で部品ではなくスケルトンであることが確認できます。

とはいえ、スケルトン内では普通にモデリングに必要な形状を作成できます。データとしては、サーフェスやソリッドなどが使用でき、形状作成に制限はありません。ただし、スケルトンで作成したソリッドは、重量計算などには含まれません。また、Windchillにインポートする際には、BOM(部品表)は作成されません。

スケルトンは構想設計の情報を管理するためのものです。後で説明する参照制御機能とも関連しますが、スケルトンで設計を行うと、参照はスケルトンからしか取り込めません。設計者が誤って他の参照を取ってしまうことを防ぐために、スケルトンからのみ参照を取る設定が可能です。このような設定により、不正な参照を防止できます。

3.スケルトンを使用したデモ(ポンチ絵)

では、スケルトンを使ったデモを行ってみたいと思います。少し汚いポンチ絵で申し訳ありませんが、イメージをつかんでいただければと思います。今回は、部品が4つの小さなおもちゃの車を作成するシナリオです。

3次元設計を行う際に、ポンチ絵から始めてはいけないという話を先ほどしましたが、今回はこのポンチ絵を基にして、今から作成するモデルのイメージを持っていただけると良いと思います。

ポンチ絵には、ボディ、ボトム、フロントホイール、リアホイールの4つの部品が描かれています。それぞれの部品は、大体の大きさを考えて設計することになります。

4.スケルトンを使用したデモ(イメージ)

それでは、このスケルトンに落とし込んだイメージをご覧いただきます。そうすると、データム平面、データム座標、スケッチなど、さまざまなフィーチャーで構成されていることが確認できます。

スケッチでは、横から見た形や寸法が入っています。また、上から見たときには、幅や厚さなどの寸法がわかります。スケルトンは、ソリッドをはじめとするさまざまな形状を持つことができますが、基本的にはデータム座標やデータム平面軸などで構成されることが多いです。わかりやすくするために、今日はデータムカーブも使っています。

しかし、スケルトンが持つ寸法は部品には引き継がれません。もしスケルトンが部品の寸法も持ってしまうと、二重寸法になってしまいます。これでは、スケルトンが持っている情報が多すぎて、部品が形を持っていても寸法を持っていないという状態になり、情報が不完全になります。

そのため、スケルトンは構想設計に必要な情報を持つためのものです。この中に入れる情報は、構想設計の理論に基づいて整理されます。

⑥コピージオメトリ<伝達>

1.コピージオメトリとは?

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スケルトンが作成できましたので、次は「伝達」の部分です。計画、伝達、確認、制御の中で、2番目の「伝達」に関する話になります。ここでは、コピージオメトリ機能が活用されます。

コピージオメトリは、スケルトンからサブアセンブリ、あるいは直接部品に必要な情報を伝達するための機能です。この機能を使用することで、スケルトンから他の要素へ必要な情報を効率的に譲渡することができます。

2.パブリッシュジオメトリとは?

では、スケルトンを使って設計を進めていきたいと思いますが、今回は「パブリッシュジオメトリ」機能をご紹介します。スケルトンが作成できた後、今からボディ、ボトム、フロントホイール、リアホイールという4つの部品を作成していきます。これは非常にシンプルな形状なので、チーム設計では少し難しく感じるかもしれませんが、仮にこれを4人で分担して設計するとしましょう。具体的には、ボディを設計する人、ボトムを設計する人、前のホイールを設計する人、後ろのホイールを設計する人がいるわけです。それぞれがこの情報を使って設計を進めるために、必要な情報を譲渡する方法があります。

その方法が「パブリッシュジオメトリ」です。これからボディを設計する人に、スケルトンの情報を使ってもらうために、必要な情報をパッケージ化していきます。たとえば、横から見たときのカーブや、データの平面、軸などの情報をわかりやすく名前をつけて表示し、ボディに関連する情報として整理します。こうして、ボディを設計する担当者がスケルトンの情報を受け取り、それを基に設計を進めることができます。

今日は4つの部品を作成するため、実際にはボディ用、ボトム用、フロントホイール用、リアホイール用の4つの「ジオメトリパブリッシュパッケージ」を作成します。各担当者は、このパッケージを使用して、それぞれの部品設計に落とし込んでいきます。

3.パブリッシュジオメトリ機能を使用した設計

次に、各部品に落とし込んでいきたいと思います。最終的に、どのように部品が構成されるのかをイメージしていただければと思います。4つの部品で構成されたおもちゃの車が完成します。今、見ていただいているのは、アセンブリの全体像で、そこにスケルトンの構想設計情報があり、その下に4つの部品がぶら下がる形になります。

その後、パブリッシュジオメトリというパッケージを作成した後、ボディの設計者がどのように設計を進めていくのか、そのプロセスを見ていただきたいと思います。

最初は何もない状態で、座標と3つのデータ平面しか存在しません。その状態から、コピージオメトリ機能を使ってスケルトンから必要な情報を取り込み、部品の位置を合わせていきます。形状を選ぶ際には、オンマウスをすると、「ここはボディ用」「ここはボトム用」「ここはリアホイール用」など、パッケージ単位で選択できるようになります。

ボディを選択すると、基本的にはパブリッシュジオメトリ、パッケージ化された形状だけが選択可能になります。今、ボディ用のパブリッシュジオメトリを選択すると、その塊が一つのフィーチャーとして取り込まれます。スケルトンから、ボディを設計するために必要な形状を選択していくことができるのですが、非常に面倒です。しかし、パブリッシュジオメトリのパッケージ機能を使うと、必要な情報をまとめて取り込むことができます。

スケルトンから必要な情報を取り込んだ後、例えば押し出しでボディの基礎となる形状を作成し、そこからシェルを抜いたり、手の形状をカットしたりしてボディ部品を作成します。このように、スケルトンから各部品に情報を譲渡し、コピージオメトリ機能を使ってデータを渡していきます。構想設計の情報と各部品の情報が連携しているため、設計変更に対して正確に対応できます。

では、スケルトンを変更してみましょう。いくつか寸法を変更します。例えば、ボディの屋根の位置やフロントの位置、高さを変更します。現在、スケルトンで変更しているのは高さで、150から180に変更します。こうすると、作成した部品とスケルトンに整合性が保たれていることが確認できると思います。

少し見づらいので、データも消してみます。このように、スケルトンの情報が部品に確実に連携され、計算を再実行すると、部品の形状がスケルトンの変更に合わせて正確に変更されます。これにより、設計変更に対して非常に精度高く対応できることが確認できるかと思います。

⑦参照制御<確認&制御>

1.参照制御とは?

最後に「確認」と「制御」についてお話しします。ここでは、参照制御とグローバル参照ビューアの機能が活用されます。これは、計画・伝達・確認・制御の中で、3つ目の「確認・制御」に該当します。

参照制御機能を使うと、設計者がどこから参照を取るべきかをルール付けすることができます。例えば、「スケルトンからしか参照を取ってはいけない」と設定することで、設計者は他の部品から参照を取ろうとしても、エラーが発生し、接触できません。これにより、誤った参照が付けられることを防ぎます。このように、ルールをしっかり守る環境で設計を進めることができます。ただし、設計者の意見も考慮しつつ、設定を行う必要があるかと思います。過度に厳しくすると設計が難しくなる可能性もあるため、バランスが重要です。

次に、グローバル参照ビューアについてですが、この機能を使うと、部品がどの親部品を持っているか、またはどこから参照を取っているか、さらに自分がどの子部品を持っているか、どこに関連しているかを確認することができます。これにより、関連する情報を正確に把握することができ、設計を進める上で非常に役立ちます。 もし関連が誤っている場合は、グローバル参照ビューアを使ってその関連を切り離すことも可能です。このように、参照情報を管理し、誤ったリンクを排除することができます。

2.グローバル参照ビューアを使用した関連確認

次に、グローバル参照ビューアを使用して、設計してきたボディがどのような関連を持っているのかを確認してみましょう。参照ビューアを開くと、以下のように表示されます。自分自身の親はスケルトンのみで、スケルトンの座標とボディに関連するパブリッシュジオメトリの2つにリンクしています。

また、自分自身の子供はトップアセンブリで、ボディという部品がないと存在できない構造になっています。つまり、アセンブリが子供で、親はスケルトンという形になります。このように、非常にシンプルな参照関係が確認できると思います。

⑧まとめ

1.3次元設計における構想設計の考え方と活用方法

3次元設計における構想設計の考え方と活用方法を紹介しました。3次元CADで構想設計を行うことは、構想設計から詳細設計までを一貫してつなげることです。そのためには、必ず構想モデルを作成する必要があります。Creoであれば、スケルトンを使って構想モデルを作成することができます。これにより、設計の統合が進み、修正に対するミスを減らすことができ、信頼できる3次元データを作成できます。

信頼できる3次元データがあれば、それを後工程でも安心して使用することができ、デジタルスレッドにも繋がります。このように、構想設計は3次元設計における重要なステップです。

構想設計には、計画、伝達、確認&制御という3つの機能が必要です。これらを支えるのがCreoの機能です。スケルトン機能を使うことで、製品の基本情報をしっかりと計画できます。また、コピージオメトリ機能を使うことで、スケルトンで作成した設計情報をサブアセンブリや部品に確実に伝達することができます。これらのリンクは意図的に設定されているため、システムが勝手に外れることはありません。

さらに、リンクがどのように伝達されているかを確認するために、参照制御やグローバル参照ビューアの機能を活用できます。これにより、どの情報がどのコンポーネントや部品に伝達されているかを確認することができ、設計の整合性を確保できます。

今日は、3次元設計における構想設計の考え方と必要な機能、さらにCreo Parametricを使うことで得られる特典についてお話ししました。これで得た情報が役立つかもしれませんし、もし皆さんがまだ知らない情報があれば、ぜひ今後の使用を検討していただければと思います。特に、Creoの構想設計機能は非常に充実しており、強力ですので、今後お客様に提案する際にはぜひご活用ください。

⑨Q&A

Q: 普通の部品を使ってスケルトンのようなことをしていますが、スケルトン機能を使うと何かメリットがあるのでしょうか?

A: 実は、Creoも昔のプロエンジニアという時代には、スケルトン機能が存在していませんでした。当時は、普通の部品を構想設計用の部品として使用し、それを「マップ」と呼んでいました。構想設計のためにそれを使って設計していたのですが、普通の部品を使用する場合、システムはそれが部品なのか構想設計用の部品なのかを判断できませんでした。そのため、かなり手動で処理する必要がありました。例えば、「これは構想設計用の部品なので、干渉チェックに入れないでください」とか、「重量計算に入れないでください」といったように、手動でハンドリングしなければならなかったのです。

しかし、今日説明したように、スケルトン機能を使用すると、Creoはそれが構想設計用の部品であることを自動的に認識します。そのため、干渉チェックでわざわざ除外する手間や、マニュアルで操作する必要がなくなります。これにより、間違いを防ぎ、手間を減らすことができると考えています。

Q: Windchillなしでフォルダ管理のみでAAXで構想設計やチーム設計は可能でしょうか?また、その場合の課題や問題点は何ですか?

A: Windchillなしでフォルダ管理のみで構想設計やチーム設計は可能かというと、基本的には問題ありません。構想設計自体はWindchillなしでも問題なく行えます。しかし、Windchillを使用するとデータ管理に非常に多くの利点があるため、部品の数が多く、複雑な設計の場合にはWindchillを使用する方が便利になります。

構想設計の流れはフォルダ管理でうまくいくこともありますが、大量の部品を管理する場合には、Windchillを使った方が管理しやすく、効率的です。Windchillなしでも構想設計は可能ですが、配達制御ができないと、設計変更に対する追跡が難しくなるため、何が変更されたのかが不明瞭になることがあります。そのため、Windchillを使った方がさらに便利だと感じます。

総合的に考えると、構想設計自体はWindchillなしでも問題ありませんが、設計変更や管理の面ではWindchillを使用することをお勧めします。

Q: AAXが必要な範囲はどこからでしょうか?スケルトンモデルの作成にはAAXが必要だと思いますが、それ以外の操作はどうでしょうか?具体的には、スケルトンモデルを参照して部品を作成・編集することについてはどうでしょうか?

A: 今日紹介したコピージオメトリ機能がこの場合に必要になります。例えば、部品をゼロから作成し、その部品が出来上がった後に、コピージオメトリを使ってスケルトンからサブアセンブリや部品に必要な情報を取り込むことができます。しかし、この過程でAAXが必要になります。必要な情報を取り込む際、部品のモデリングやサブアセンブリの操作が行われるため、AAXを使うことで効率的に進められます。ただし、AAXを使用しなくても設計作業は可能ですが、機能をフルに活用するためには必要になります。

Q: スケルトンを共有することもできますが、パブリッシュジオメトリを使用する方が有効でしょうか?その場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?

A: パブリッシュジオメトリを使用しないと参照できないというルールが一つできると思います。しかし、そうすると、スケルトン内でも使用して良い部分と使用してはいけない部分が出てくると思います。そのため、パブリッシュジオメトリ機能を活用して、使って良い部分と使ってはいけない部分を明確に区別することが一つの特典だと考えます。このように、パブリッシュジオメトリを使う方が有効であると感じます。

また、パブリッシュジオメトリを使うことで、必要な情報を過不足なく簡単に管理できる点も特典の一つです。ただし、先に作成しておく手間はかかるため、最初は少し苦労するかもしれませんが、その分後で楽になるというイメージです。

Q: 車のボディパートだけをデータとして渡す際に、スケルトンとの関係が切れることになると思いますが、その場合はどうすればよいでしょうか?

A: もし、スケルトンとの関係が切れてはいけないのであれば、ボディパートとスケルトンパートはワンセットで扱う必要があります。そのため、ワンセットでお渡しすることが求められます。ただし、形状だけを渡すのであれば、状況に応じて関係を維持するか、またはスケルトンを渡さない相手には、最初にスケルトンを渡し、その後編集して受け取ってもらうこともできます。

Q: 昔のマニュアルにはレイアウトとの連携があったように記憶していますが、今も同じでしょうか?

A: 現在もレイアウト機能は存在しています。レイアウトは、仕様書を作成し、その仕様書と3次元モデルを連携させる機能です。これはAAXの機能の一つで、例えば寸法を変更する際に「この寸法だけを変更してください」というような仕様書をまとめたい場合に便利です。このレイアウト機能を使用することで、管理がしやすくなります。もし興味がある方が多ければ、どこかで紹介してみたいと思います。

Q: 製品の中で可動範囲を持っている部品がありますが、スケルトンでそれをどのように扱うのがふさわしいでしょうか?

A: 今回は単純なスケルトンを紹介しましたが、実はスケルトンには「運動スケルトン」という機能もあります。今日お見せしたような構想設計を行う際に、このモーションスケルトンを使うことで、可動式範囲を持つ部分にも対応できます。構想設計の段階で、例えば「この形とこの形はどう動くか?」といった可動範囲を持つ部分にジョイントを追加し、可動範囲を構想モデルに組み込んで設計することができます。

モーションスケルトンを活用すれば、構想設計の段階から稼働情報を含む設計が可能になります。これにより、より正確な可動範囲や動作を反映した設計ができるようになると思います。

Q: 循環参照を防ぐことができる手段がありましたら教えてください。

A: 例えば、スケルトンからしか参照を取らないように設定することや、サブアセンブリ内では参照を使えるが、他のアセンブリからは参照を取らないように制御することができます。これにより、間違った参照を防ぎ、循環参照が起きるリスクを減らせます。

もし配管設計ができない場合は、まず配管アセンブリを作成し、その中で必要な形状や座標、ポートの位置を定義します。その後、アセンブリからコピーして、閉じた空間内で配管設計を行う方法を取ります。これにより、アセンブリ外部から参照が発生せず、循環参照を防ぐことができます。

Q: エクスポート時にスケルトンモデルはどのように出力されるのでしょうか?独自の機能を使うことで、別の形式に変換しても同等の情報を渡すことは可能でしょうか?例えば、STEPや他社のCADのネイティブフォーマットで出力する場合、スケルトンモデルはデータに含まれないのでしょうか?

A: 選択して外に出力すると、通常の部品として扱われるようになると思います。確かに、私も同じように考えていますが、最終的には確認が必要です。出力するかどうかは、出したいか出したくないかで選択することになると思います。出力した場合、スケルトンは普通の部品扱いになるはずです。

Q: スケルトンを含んだアセンブリの構成部品の一部のみをWindchillにインポートするとゴーストファイルは出ますか?

A: スケルトンがないので出てしまいますね。Creoの世界では連携が必要です。 この場合、構成部品の一部とスケルトンをセットでインポートしていただければ、問題なく進められると思います。

Q: Creo7で新たに導入されたマルチボディ機能を活用することで、スケルトン内でより詳細な部品モデルの検討が可能になると考えています。このような運用事例にはどのようなものがありますか?

A: マルチボディを使った構想設計は、実はCreo7以降で可能になりました。AAXの方が上位の機能が多く、できることも多いですが、部品数量が数百点レベルであれば、マルチボディを活用して構想設計を行うことが可能だと考えています。

実際に、Creo7を使ってマルチボディを活用した構想設計を行っているお客様もいらっしゃいます。この方法を採用することで、部品数が多くても柔軟に対応できる場合があります。

Q: 3DAを実施したいと思っているのですが、スケルトンとは相性が悪いように感じます。この場合、どのように対応すればよいでしょうか?

A: 説明した通り、スケルトンは構想設計において必要最低限の情報を持つのが適切だと思います。部品が本来持つべき情報をスケルトンが持ってしまうと、部品が持つべき情報が不足することになります。その結果、アノテーションを行う際に、マニュアル作業が増えることになります。

もし、その情報は部品が持つべき情報であり、部品のアノテーションとして適切であれば、スケルトンではなく部品にその情報を持たせる必要があります。そのため、スケルトンと部品の情報の切り分けが重要だと考えます。

古賀 奨

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