今回は、国内 3D CAD の普及率とともに 3D 設計へ移行できない理由、2D CAD と 3D CAD の使い分けや CAD 統一の必要性について紹介します。記事の最後で Creo のお客様導入事例もご紹介しておりますので、ご興味ある方はぜひ最後までご覧ください。
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3D 設計へ移行できない理由とは?
日本の製造業においては、2D CAD を運用したものづくりが根強く残っています。ここでは最新のデータではないものの、2020年度ものづくり白書を参考に 2D CAD が使われ続けている理由について見ていきましょう。
国内における 3D CAD 普及率
2020年度ものづくり白書によると、 3D CAD を活用した3D 設計を実施している企業は全体の2割弱しかありません。2次元 CAD を運用して設計している企業と、そもそも設計に関してはデータ化していない企業を合わせると、全体の約4割を占めます。(注1
3D CADの普及率(設計方法)
協力企業への設計指示の方法も見てみると、今も図面で行っている企業の割合は、半数以上を占めているのです。
協力企業への設計指示の方法
資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019年12月)
出典:2020年度ものづくり白書(2.設計力強化戦略)|経済産業省
日本のものづくりの現場では 3D CAD の普及、活用の遅れだけでなく、設計情報のデータ化さえも進んでいない状況と言えるでしょう。
2D CAD が使われ続けている3つの理由
3D 設計には数多くのメリットがあることが、CAD ユーザーの間ですでに認識されています。しかしながら白書データが示す通り、依然として日本の機械設計の現場では「設計手法は 2D/図面 」が主流です。
2D データや図面で設計指示している理由
資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019年12月
出典:2020年度ものづくり白書(2.設計力強化戦略)|経済産業省
なぜ日本の機械設計の現場では、2次元 CAD が使われ続けているのでしょうか?ここでは、2D CAD が残る理由を3つ紹介します。
「CAD +紙図面」という2次元図面文化が定着している
2D CAD はハードウェアやソフトウェアのコストも低く、操作も比較的簡単で、部品の加工や組立てに必要な情報を線画で示せることから多くの企業で導入されてきました。2D CAD で作成した図面は、取引先の調達部門で見積りの際に使われたり、発注した内容と現物を照合する現品票も兼ねていたりしています。2次元図面文化が定着しているので、XY 方向で製図する「慣れ」を手放し、Z 方向も加えて検討することへの抵抗感もあり、2D CAD が残っているのです。
3D データでやり取りする相手がいない
外注先等への図面情報の受渡しを、2次元データで行うケースが多くあります。 依頼元から送られてくるデータが2次元の図面であることも、2D CAD の運用を続けている大きな理由です。契約上の縛りがあり、3D データ の使用が認められないケースもあるでしょう。自社が 3D CAD で設計したくても、そもそも 3D データでやり取りする相手先企業がいないことがあるのです。自社の設計・製造工程においても、製造・検査作業の現場は 3D データのやり取りに対応していないことがあります。
「ヒト モノ カネ」の問題を解決しづらい
3D CAD 運用を軌道に乗せるまでの「ヒト モノ カネ」の問題がネックになり、重たい腰を上げられないケースも多くあります。3D CAD を使いこなせるスキル保有者がいないという企業も多いでしょう。3D CAD ソフトウェアのライセンス費用や、その利用に適した耐久性・安定性を備えたワークステーションも、2D CAD と比べると高価です。
2D CAD と 3D CAD の使い分け
世界の製造業のトレンドを見ると、バーチャル・エンジニアリング (VE) が進められている状況です。VE では「設計・製造・解析の各データを同期させて一体に検討する」ことから、設計情報の受渡しも 3D データで行う必要があります。(注2
しかし 2D CAD にも利点があるために、それぞれの利点を活かしながら、ケースに応じて使い分けていく必要があるでしょう。ここでは、2D CAD と 3D CAD の使い分けについて紹介します。
下流工程への指示には 2D CAD が必要な場合も
2次元図面は、2D CAD を運用している下流工程への「指示書」として役立ちます。例えば、現合と指定している図面は、3D モデル上では表現しづらいために2次元図面を使うことになるでしょう。その場限りの加工指示・注記追加が必要なケースでは、3D モデルから変換した2D 図面に図示や注記を追記した上で、外注先へ手渡すこともあります。
設計の省力化、効率化には 3D CAD を活用
設計の省力化、効率化を実現するには、データの連携性が必要です。2D CADで作成した場合、印刷した紙図面に重要な設計要件を書き入れることがありますが、手書きの情報は最新のデジタル技術での活用が困難です。一方、3D CAD を使用すればデータの連携性を高め、ひいては VE を実現できるのです。 例えば、3D CAD ならアセンブリ構成をそのまま BOM として使用したり、形状によるコスト計算を自動化したりできます。3D CAD データの中でも、「3DA モデル(3D Annotated models、モデルベースの定義のこと)」は、特に有用です。3D の形状モデルに、幾何公差や寸法、注記といった製品製造情報(PMI 情報)を付加したものであり、データの一貫性を保つ上で重要な役割を果たします。
革新的で競争力のある製品デザインには 3D CAD が必須
ハイエンドの 3D CAD なら、高度な設計を要求される自動車、航空機、重工業などの分野でも、革新的で競争力のある製品を効率的に設計可能です。Creo であれば、寸法拘束条件で設計を最適化できるほか、拡張現実、リアルタイム シミュレーション、ジェネレーティブ デザインなど強力な実証済みの機能を使えます。
最新テクノロジーを搭載したソフトウェアが提供する選択肢から、設計者は入力するだけで 3D 設計モデルをスピーディに生成できるのです。その結果、コスト削減、反復処理の迅速な実施や製品品質の改善が可能になり、目まぐるしく変化する製品開発の分野で競争優位性を確立できるでしょう。
トップダウン設計には支援機能のある 3D CAD を選択
部品数の多い複雑な設計には、トップダウン設計が適しています。トップダウン設計には、パラメトリック 3D CAD の使用が良いでしょう。パラメトリック 3D CAD なら、構想設計の情報はそれ以下のサブユニットや部品に自動的に連携されます。形状や寸法などをパラメータとし、このパラメータを1つ調整すると、残りのモデルも自動的に更新されるのです。構想設計に修正が発生した際には、設計変更時間の大幅な削減につながるとして 3D CAD の主流となっています 。
特に Creo は、トップダウン設計を機能として搭載しています。正確な情報を連携し、それらを管理する「スケルトン機能」「コピージオメトリ機能」「参照制御機能」を実装し、設計品質を高めるプロセスを推進しているのです。
複数の CAD システムを運用する体制のデメリット
すでに 3D CAD で設計を行なっている企業の多くは、単一ではなく複数 CAD 環境を運用していることが多く見受けられます。複数 CAD を運用する環境は、データ管理上、非常に混沌とした状況ですが、製品設計サプライチェーンの中でよくある状況です。
製品ごとに設計文化が異なる大手製造メーカーでは、それぞれの選定方針や使い方のもと、3D CAD を導入・運用しているケースがあるでしょう。サーフェシング機能に強みのある CAD システムは、工業デザイナーに好まれています。過去の企業買収の名残りで、複数の CAD システムをエンジニアリング部門内で運用しているケースもあるでしょう。取引先やベンダーが、自社とは異なる 3D CAD を使っているケースも実際によくあります。
しかしながら、CAD が混在する運用体制を放置しておくと、問題が多いことを押さえておきましょう。ここでは、ものづくりの現場で CAD を複数運用するデメリットについて紹介します。
トレーニングコストの増加
スキル習得にかかるトレーニングコストの増加を招く点は、デメリットといえます。3D CAD の基本的な操作はごく一部で似通っているものの、GUI は全く別物です。操作方法や使い勝手も大きく異なることから、部署異動があった際には、新たなツールをすぐに使いこなせないという課題に直面します。新たな業務を覚えながら、新しい 3D CAD の操作に慣れるトレーニングにリソースを割くのは、設計者にとって負担が大きいものです。また教育研修を管轄する事業部側も、各部門にトレーニング体制や資料を整える必要が出てくるなど、業務の無駄が発生しやすくなります。
データ共有が非効率
データ共有時に、CAD データの互換性において問題が生じがちな点もデメリットです。異なるデータフォーマットが混在している状況は、共有や活用時に非効率が生まれる原因となりえます。異なる 3D CAD 環境におけるデータのやり取りには、 IGES、STEP 等の中間ファイルやマルチ CAD 機能が便利ですが、100% 変換が保証されるとは限りません。
部分的に情報が欠如したり、モデルデータの作成履歴が消えたりと、設計意図が損なわれるリスクが高いのです。他の CAD で作成した 3D データファイルのインポートや変換、修正、あるいは再作成の手間を省くためには、「1つのシステムに統一 / 統合」しておく必要があるでしょう。
また複数の CAD システムを運用していると PLM(製品ライフサイクル管理)システムと連携する手間や追加コストもかかります。
知的財産の管理ミスが発生するリスクの増大
設計データ、計算、モデルなどは、製品の成功の決定要因となる非常に重要な知的財産です。複数の CAD システムに保存すると、知的財産の管理が複雑になります。コラボレーションが損なわれ効率が低下するだけでなく、トラブルを誘発しやすくなるのです。再処理やデータ変換、人為的ミスが引き金となり、設計者は想定外の窮地に陥る可能性が高まるでしょう。
単一の CAD 環境を構築するメリット
製造業のデジタルトランスフォーメーションを推進する上で、複数 CAD から単一の CAD システムに統合することは重要な要素です。共通の CAD システムを構築してこそ、単一のデジタルスレッドが設計・製造において適切に機能します。
共通の CAD システムの構築、及びモデルベース定義 (MBD) を導入することで、コストを大幅に削減しながら、品質や競争力の飛躍的な向上が可能です。部門を超えた一気通貫なデータ連携は、品質保証体制の強化と生産性向上の両立が可能です。
ここでは、複数 CAD 環境から脱却し、1つの CAD システムに統合するメリットについて見ていきましょう。
コラボレーション強化による生産性と創造性の向上
コラボレーション強化は、VE の実現に不可欠です。統合された CAD プラットフォームは、ものづくりの関係者が製品開発に参加するコラボレーションの場を提供します。シームレスなチームワークを促進し、同期的・一体的な検討が可能になることから、生産性と創造性を向上させるのです。
共通の言語を使用することで、設計チームは設計意図の共有、前提条件の確認などが容易になるでしょう。設計者がどの CAD システムに精通しているかを考慮することなく、設計プロジェクトの割り当ても最適化できるようになります。また PLM システムと連携しさらなるコラボレーションや業務効率化を図る際にも安価かつスピーディに導入が可能です。
手戻りの最小化と市場投入までの期間短縮
CAD 統合により、データの一貫性が確保されます。その結果、データ変換やレガシーデータの再作成といった工程は不要になり、手戻りも削減されるのです。チーム間で簡単にアイデアを共有できるようになるほか、繰り返し修正作業を行わずに済むことから、市場投入までの期間を大幅に短縮できるでしょう。
エラーのないプロセスによる製品品質の向上
単一のプラットフォームを構築することで、データ変換およびモデルの再作成の際に発生しがちな人為的ミスによるエラーを低減できます。その結果、高品質な設計とともに、効率的な設計・製造プロセスを定着させ、製品品質の向上につなげられるのです。
充実したサポートとトレーニングの提供
統一された CAD 環境は、より充実したサポートとトレーニングの機会を設計チームにもたらします。リソースを1つの CAD システムに集中できるようになるので、設計者は革新的な設計という本来の業務に注力できるでしょう。
予算の最適化
運用する CAD システムを統合することは、複数の CAD システムの運用にかかっていた経費を削減し、予算の最適化につながります。統一された CAD 環境を構築すれば、サブスクリプションと永久ライセンスのメンテナンス契約も一元管理できるようになり、業務効率化につながります。
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