現在、航空機の未消化受注による世界的な バックログ(受注残) は17,000機を超え、過去最高水準に達しています。同様にミサイルシステムや造船分野でも バックログは歴史的な高水準にあります。需要は業界の現行生産能力を大幅に上回っており、新規受注のペースは既存オーダーの納入を上回る状況が続いています。
受注が堅調であること自体は市場からの信頼を示すものですが、納期どおりに引き渡せず、受注を確実に売上へ転換できない状況は財務面とレピュテーションの両面で大きなリスクをもたらします。さらに競合各社が生産加速に向けて新たな手法や技術を急速に取り入れるなか、従来型のシステムやプロセスに依存する組織は明確な不利を抱えることになります。
バックログは需要の証か、それとも遅延の兆候か
バックログ(受注残)は一見すると大きな負担に見えますが、必ずしも問題そのものではありません。むしろ市場の需要が強いことを示す指標です。ただし、その価値が実現されるのは受注が確実に履行され、売上へと転換されたときに限られます。つまり課題は実行にあるのです。サプライチェーンの混乱や人材不足、分断された従来型システムの影響で通常のスケジュールが数年規模に及ぶ状況下では、数百件にのぼるバックログは莫大な潜在収益を抱えたまま固定化されキャッシュフローを圧迫し、次のイノベーションを妨げます。 一方で受注の履行サイクルを短縮し、生産率を高めることができれば収益化のスピードが加速するだけでなく、より多く受注し、より多くの製品を提供できる生産能力の拡張にもつながります。
行動しないことがもたらす真のコスト
生産プロセスの近代化を先送りすることは、決してコスト削減策ではありません。高い代償を伴う明確な選択であり、財務諸表から現場のオペレーションに至るまで組織全体に影響を及ぼします。
行動を起こさないことの影響は単なる生産遅延にとどまりません。品質低下、俊敏性の欠如、利益率の低下といった課題は広範囲に波及し、その負の影響は今後数十年にわたって組織に残り続けます。
品質の問題
バックログ(受注残)の長期化や度重なる納期遅延は単に収益に影響するだけではなく、信頼を徐々に損ないます。信頼性と精度が重視されるこの業界において遅延や品質問題は企業ブランドを短期間で傷つけかねません。 こうした評判低下は時間の経過とともに製品の高度化への対応や生産拡大を難しくし、最終的には新規ビジネスの獲得にも影響します。競争の激しい市場では評判は売上と同じく重要であり、行動を起こさないことの影響を最も受けやすい資産です。
バックログは収益化の障壁となる
行動を取らないことによる最も直接的な影響は財務面に表れます。バックログ(受注残)は将来の収益が確約されている状態を示しますが、航空機や防衛システムが実際に納入されるまでは、その収益はあくまで理論上のものに過ぎません。航空宇宙・防衛(A&D)のような資本集約型産業ではキャッシュフローの停滞がイノベーションを抑制し、戦略的投資の余地を狭め、財務基盤を弱体化させます。受注残を効率的に収益へ転換することは、健全な利益率を維持し株主の期待に応えるうえで不可欠です。
契約喪失と受注キャンセル
バックログ(受注残)が増加し、履行までのスケジュールが遅延する状況では組織が直面するリスクは収益の先送りに留まりません。ビジネスそのものを失う可能性も高まります。航空宇宙・防衛(A&D)分野では契約に厳格な納期や性能マイルストーンが盛り込まれることが一般的です。これらの約束を果たせない場合、違約金の発生や契約条件の再交渉、さらには契約解除に至ることもあります。
特に政府機関や大手の民間顧客はより高い信頼性と俊敏性を示す競合企業へと発注先を切り替える可能性があります。キャンセルされた受注は単なる売上損失を意味するだけでなく、将来の機会をも失わせます。顧客は最終的に納期を守り大規模に供給できるパートナーを選ぶためです。
生産加速に向けた新たなアプローチ
この複雑な環境を乗り切るためには、航空宇宙・防衛(A&D)メーカーは分断されたチームをつなぎ、複雑なプロセスを効率化するエンタープライズソリューションを採用する必要があります。生産を加速する鍵はコラボレーションを強化し、データの連続性を高め、より俊敏な製造アプローチを可能にする一貫したデジタル基盤を構築することにあります。
シームレスなコラボレーションとチェンジマネジメントの実現
サプライチェーンの混乱や人材不足、そしてエンジニアリングと製造の間に生じる連携不足は生産スピードを阻む最大の要因として指摘されています。強固でオープンな製品ライフサイクル管理(PLM)システムは組織内でサイロ化されがちな領域を統合し、すべての製品データに対して単一で信頼できる情報源を提供することでこの課題を解消します。
PLMを活用することでチームが逐次順番に作業するのではなく、同時に作業できるようになり、シームレスなコラボレーションを実現します。これによりチェンジマネジメントが効率化され、製造やサプライヤー課題の解決も迅速に進み、開発プロセス全体の同期性が高まります。
製造を見据えた設計
効率的な生産の基盤は設計段階にあります。CADやPLMのような中核技術は“Design for Manufacturability(製造性考慮設計)”を実践するうえで欠かせない存在です。これは設計プロセスの早期から製造面の要件を取り込み不適合の発生を防ぎ、初回から正しく設計することを目的としています。 PLMと高度なシミュレーションやモデリングツールを統合することでエンジニアは設計が製造準備性を満たしているかを検証し、潜在的なリスクを早期に特定し、後工程で発生する高コストなエラーや手戻りを抑えることができます。 このプロセスで重要になるのが、設計部品表(eBOM)を製造部品表(mBOM)へと変換する作業です。これにより設計部門と製造部門の間で製品定義が確実に整合し、手作業による再作業を減らし、コラボレーションを向上させ、コンセプト段階から製造現場への移行がスムーズになります。こうした先回りのアプローチこそが開発サイクルの短縮と市場投入までの時間短縮を実現する鍵となります。
エンタープライズ全体をつなぐデータ統合による全体最適
PLMは重要な機能ですが、Enterprise resource planning(ERP)やManufacturing Execution System(MES)を含むより大きな仕組みの一部でもあります。航空宇宙・防衛(A&D)組織が自社オペレーションを全体的に把握するにはこれらエンタープライズシステムの統合が不可欠です。 エンジニアリング、製造、ビジネスプロセスを安全なデジタルスレッドでつなぐことで組織内に存在する分断を解消し、データの連続性を高め、企業全体でリアルタイムのコラボレーションを実現できます。 このシームレスな統合により製品データ、リソース計画、生産状況が常に整合し、エラーの削減や市場投入までの時間短縮につながります。
航空宇宙・防衛産業は日々スピードを増しています。現状維持を続けることによるリスク――収益機会の損失、評判の低下、市場シェアの縮小――はもはや無視できるものではありません。PLMを中心に据えたアプローチを採用することでコラボレーションを促進し、データの連続性を高め、生産プロセスを近代化し、バックログ(受注残)を解消しながら市場の需要に応えることができます。
PTCのPLMソリューションは技術者だけでなく非技術者も重要な情報へアクセスし、適切な判断を行い市場の変化へ迅速に対応することを可能にします。それにより効率、品質、そして持続的な競争優位が実現されます。 もはや「変革すべきかどうか」が問われているのではありません。いまのままの状態で、これ以上待つ余裕が組織にあるのかどうかが問われています。
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