宅配ロボット「CarriRo® Deli」の品質の早期作り込みを設計、そして解析で支えるCreo

自動運転とADAS(先進運転システム)技術に強みを持つロボット専業企業の株式会社ZMP(以下、ZMP)。同社が今、宅配・運送業界が直面する深刻な「人材不足」という社会問題の解決に向けて開発を進めているのが宅配ロボット「CarriRo Deli」だ。実用化に向けたさらなる品質向上、安全性の追求にハイエンド3D CAD/CAM/CAEソリューション「Creo」がフル活用されている。

宅配・運送業の人材不足を解消する自律移動ロボット

ZMPは現在、「ヒトとモノの移動を自由にし、楽しく便利なライフスタイルを創造する」ことをミッションに掲げ、2001年の創業以来、得意とする自律移動ロボットと導入サービスの開発を手掛けている。そんな同社がモノの移動を自由にする製品ブランドとして展開するのが「CarriRo®」シリーズであり、深刻な人材不足に直面する宅配・運送業と利用者とのラストワンマイルを埋める宅配ロボットサービスとして開発を進めているのが「CarriRo Deli(キャリロ デリ)」だ。

「昨今、全国で700万人以上といわれる買い物弱者の方や、ECサイトの普及に伴い、配達や再配達の手間が急激に増加しており、人材不足に悩む宅配・運送業は深刻な状況に陥っています。この社会問題に対し、われわれZMPが得意とするロボット技術、自動運転技術などが役立てられないかと考え、開発したのがCarriRo Deliです」と、同社 ロボテク開発部 メカニカルエンジニアの伊澤 章氏は開発の意義を語る。

自動車レベルの品質、安全要求に応える「Creo」

CarriRo Deliは、荷物を収納するボックスを搭載した4輪走行の自律移動ロボットで、ユーザーおよび店舗用のアプリケーション(以下、アプリ)、ITサービスをパッケージ化して提供することを想定している。荷物収納用のボックスは用途に応じて別タイプのものと変更可能で、フロントとリアに外部とのコミュニケーションを実現するLEDパネルを搭載し、ロボットの意思を周囲に伝えることができる。また、2D/3D LiDAR(Light Detection and Ranging)を複数搭載することで高精度なセンシングを行い、周辺環境を正確に認識しながらの高度な宅配サービスを実現する。2019年度に実施した、慶應義塾大学とコンビニエンスストア大手のローソンとの実証実験では、キャンパス内にいる学生がスマートフォン用アプリを介して注文した商品を、店舗スタッフがCarriRo Deliのボックスに入れ、自律走行で学生のもとまで配達するという一連のサービス内容の検証が行われた。

「現在はキャンパスのような私有地での実証実験にとどまっていますが、今国を挙げて進めている法制度が整備されれば、将来的には歩道や公道を走ることになります。そのため、自動車と同等レベルの品質や安全性を追求しなければならないと考えています」と伊澤氏。この厳しい要求に応え、CarriRo Deliの高度な開発に役立てられているのがハイエンド3D CAD/CAM/CAEソリューションの「Creo」である。

CarriRo Deliの全ての設計において Creoが活用され、ボディー部の樹脂および板金関連だけでも100点以上ものパーツが設計されている。ZMPは創業以来、メカ設計分野で Creoの前身ブランドである「Pro/ENGINEER(Pro/E)」を活用し、多くの製品開発プロジェクトで Creoを用いてきた。そんな中、約2年前に同社に中途入社した伊澤氏はこれまで「CATIA」や「SOLIDWORKS」などの商用3D CADのほか、2D CADをメインに扱ってきたという。そのため、当初は Creoの操作に不安を抱えていたそうだが、「非常に直感的で分かりやすいインターフェースのおかげで、迷うことなくすぐに使い始めることができました。他の3D CADを操作したことのある方であれば、わずかなトレーニングで戸惑うことなく移行できると思います」と伊澤氏。

また、他の3D CADで苦労した経験のあったサーフェスモデリングについても「Creoを使用してみてその印象がガラリと変わりました。CarriRo Deliの設計においても自由曲面を含む複雑な表面形状のデザインを難なく進めることができました。どのような機能もとにかく直感的で分かりやすいの一言に尽きますね」(伊澤氏)。

正解に早く近づけるために設計者CAEを推進するZMP

そして、伊澤氏がその活用に大きな期待を寄せているのがシミュレーション(解析)機能だ。現在、同社では Creoのシミュレーション機能「Creo Simulate」を活用した設計者CAEの活動にも関心を示し、取り組みを加速しようとしている。

Creo Simulateは、構造解析、熱解析、振動解析を行うためのソリューションであり、有限要素解析(FEA)に必要な全ての機能が備わっている。 Creoの3D CAD機能と同様に直感的で分かりやすいインターフェースが特長で、どのような設計者でも基本的なシミュレーションを容易に実行できる。また、スタンドアロンのアプリケーションとしての利用だけでなく、拡張機能として Creoの3D CAD環境からシームレスに連携可能なため、モデリングと解析の反復がスピーディーに行え、製品開発の初期段階における品質の早期作り込みに貢献する。

「現在、構造解析を中心にシミュレーションを活用していますが、将来的には熱解析、振動解析にも取り組んでいく必要があると考えています。CarriRo Deliは歩道や公道を走ることを想定しているため、さまざまな外部環境の影響を考慮しなければなりません。そういう意味で振動解析は非常に興味があります。また、自律移動ロボットは筐体内部に熱がこもるためシミュレーションによる熱解析を事前に行うことが重要です」と伊澤氏はシミュレーションの活用、設計者CAEの実践に大きな期待を寄せる。

さらに、今後のチャレンジとして、伊澤氏は3D CADでの構想設計を掲げる。「カムやリンクが多数使われている複雑なメカになると、2次元で構想やレイアウトを考える方が早いため、どうしても2次元で検討した設計を基に、後から3D CADでモデリングするという流れになってしまいます。結局、これだと二度手間になってしまうため、始めから3D CAD上で構想設計できるようにメカ設計業務の3次元推進もしっかりと取り組んでいきたいと考えています」(伊澤氏)

近年、製品の開発期間はますます短くなり、早期市場投入が当然になりつつある。そのため、ミスや手戻りの削減、さらには試作や試験の回数低減も避けては通れない。こうした傾向はイノベーティブなモノづくりで特に顕著であり、CarriRo Deliの開発はまさにその代表例ともいえる。 Creoによる設計者CAE、3次元推進に取り組むZMPの挑戦はまだ始まったばかりだ。CarriRo Deliがわれわれの生活の中に溶け込み、当たり前のように活用される日が待ち遠しい。 

株式会社ZMP

https://www.zmp.co.jp/
所在地:東京文京区
設立:2001年
資本金:144,742万円
事業内容:自動運転車両プラットフォームRoboCarシリーズとステレオカメラRoboVisionなどの各種センサー、物流支援ロボットCarriRoと宅配ロボットCarriRo Deliの開発・販売、自動運転コンピュータIZACを活用した自律移動技術の適用サービスや走行テスト・データ取得および解析サービスを提供するロボットベンチャー企業

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