サプライヤーとの迅速なコラボレーションを実現するサプライチェーン管理の 5 つのメリット
執筆者: Carlos Melgarejo
3/8/2022 読み込み時間 : 5:30 min

現代のメーカーは、競争力を維持し新製品を市場に投入するために、ますますサプライヤーとの迅速なコラボレーションを活用する必要性が高まっています。原材料の不足、高まる顧客の需要、加速するイノベーションという困難に満ちた環境の中で新製品導入 (NPI) プロセスを成功させるには、サプライチェーン全体で効果的なコミュニケーションが必要です。 

大手メーカーとそのサプライヤーネットワークは、プロセスの効率を向上させ、品質を改善し、新製品導入 (NPI) を促進するための取り組みを続けています。PLM システムと連携した技術情報をシームレスに共有できるデジタルプロセスおよびソリューションは、このような継続的な取り組みの基盤となります。 

PTC は、戦略的なサプライチェーン管理によってイノベーションを促進する方法について詳しく知るために、Anark 社の CTO である Scott Collins 氏にインタビューを実施しました。Anark 社は、PLM システム上に構築されたインテリジェントなサプライヤーコラボレーションを促進するためのツールをメーカーに提供しています。今回のインタビューでは、サプライヤーコラボレーションにおけるトレンド、サプライヤーとのコミュニケーションを強化することで得られるさまざまなメリット、適切な技術が果たす役割について話を伺いました。

Scott さん、お忙しい中、時間を割いていただきありがとうございます。サプライヤーコラボレーションを実現するサプライチェーン管理のメリットについて教えていただけますか? 

現在製造業が直面している問題は、製造業を取り巻く状況はめまぐるしく変化していることです。その変化の要因は、サプライチェーンが受けるプレッシャー、規制の変更、競争の激化、顧客の需要の変化などさまざまです。サプライチェーン管理を改善することで、それぞれの環境で受けるプレッシャーに迅速かつ効果的に対応できるようになります。サプライヤーコラボレーションのメリットは、早期段階からサプライヤー登録(RFx プロセス)から生産、納品に至るまで、すべてのプロセスにもたらされます。

エンジニアリングのエラー率の削減に取り組んでいる場合も、コンカレント設計プロセスへの対応の効率向上を目指している場合も、技術的なエンジニアリングデータを共有すれば、共同設計を促進し、生産前の計画を向上させ、実装をスムーズに進めることができます。ただし、このプロセスの中で企業の知的財産を保護することも重要であり、セキュリティは、現代の迅速なサプライヤー・コラボレーション・プロセスを実現するための核心となります。製造業は、データを簡単に共有できる一方で、トレーサビリティとセキュリティ制御を強化できる適切な技術を必要としています。 

企業がサプライヤー・コラボレーション・プロセスをどのように変革したか、また得られたメリットとともに企業の事例を、紹介していただけますか?

はい。ある電力機器 OEM のお客様は、明確な目標をもってサプライヤーとのコミュニケーションとコラボレーションの効率を向上させたいと希望されました。このお客様は、モデルベースの設計プロセスに移行するために、サプライヤーのパフォーマンスとコミュニケーションの改善を支援してくれるパートナーを必要としていました。  

INCOSE は、モデルベースのエンジニアリングを「取得のライフサイクル全体で、機能、システム、製品の要件、分析、設計、実装、検証を含む技術的ベースラインの重要な要素としてモデルを使用する設計アプローチ」と定義しています。 

実際のところ、モデルベースのアプローチにより、関連するすべての製品製造情報 (PMI) をプロセスの早期段階でサプライヤーと共有できます。調達担当者、サプライヤーマネージャー、サプライヤーは、設計部門が PLM に保存しているものと同じテクニカル BOM やビジュアルデータを参照し、コラボレーションできます。企業の PLM システムと直接連携することで、全てのサプライヤーが確実に最新バージョンを使用し、正しい技術定義によって調達、設計、製造を促進できるようになります。

この電力機器メーカーは当社とパートナーシップを組み、まず 3D の PDF をサプライヤーに提供しました。その後すぐに、当社のブラウザベースのソリューションを採用し、ドキュメントベースの共有がもたらす課題を解決しました。同社は、サプライチェーン全体で改善が見られました。たとえば、サプライヤー登録の所要時間の短縮、より明確なサプライヤー情報の提供、また従来であればコストのかかるスクラップや手戻りの原因となっていたエラー率の削減などです。 

主要なパフォーマンス指標について教えていただけますか?

迅速なサプライヤー・コラボレーション・プロセスのメリットを獲得するには、ビジュアル Web コンテンツを共有する能力が必要です。これは、Web ベースのテクニカルデータパッケージ (TDP) とも呼ばれるものです。同社は、モデルベース定義 (MBD)、PLM BOM データ、製品製造情報 (PMI)、その他のサポート技術文書など、複数の技術的データタイプを確実にサポートするソリューションを必要としていました。このソリューションにより、社内外の特定のユーザーが、PLM システムから直接 Web ベースのサプライヤーコラボレーションポータルに公開された情報に安全にアクセスできるようになりました。 

社内の関係者は、ビジネスのさまざまな部分で重要なメリットがあることを強調していますが、特筆すべきはエンジニアリングエラー率が 40% 削減したことでした。 

それは素晴らしい!サプライヤーコラボレーションの改善を検討している企業は、プログラムの設計と技術の選択を行う際にどのような要素を考慮する必要がありますか?

サプライヤーコラボレーションの改善は当然のこととなりつつありますが、サプライチェーンで技術コンテンツの IP を共有する際に企業が考慮すべき要素は多数あります。リスクや検討ポイントは大きく 3 つに分けられます。

  • IP セキュリティの問題: もっとも重要な検討ポイントの 1 つが IP セキュリティの問題です。たとえば、リリース日前にデータを競合企業または市場のその他の関係者に公開することや、機密エンジニアリングデータの共有方法と使用方法を制御できなくなる場合があります。 
  • バージョン管理: 製造業では、サプライヤー、パートナー、委託メーカーと共有するデータが最新の正しいバージョンであることを保証する、リリースのバージョン管理を提供するソリューションが必要です。
  • 利用しやすく最適化されたアクセスとコラボレーションの提供: これらのソリューションは、あらゆるモバイルまたはデスクトップデバイスに適応可能で、共同設計または現場で使用できる複雑な技術情報を共有し、共同設計や現場のリアルタイムなイノベーションを実現できるものでなければなりません。 

つまり、企業に必要なのは、3D CAD などの設計データタイプを確実にサポートし、自社の PLM と統合でき、セキュリティとバージョン管理に対応したメカニズムが組み込まれていて、あらゆるデバイスにコンテンツを柔軟に配信できるツールです。 

総体的に見て、サプライヤー・コラボレーション・ソリューションを導入することで、メーカーはどのようなメリットを得ることができると期待できますか?

サプライヤーのエコシステムとコミュニケーションを強化すると、企業全体で多大なメリットを得ることができます。ベストプラクティスと適切な技術プラットフォームを導入する企業には、複数のメリットがもたらされます。特に重要なものをいくつかご紹介します。

  1. エラー率、スクラップ、手戻りの削減: OEM が最初に得られるメリットの 1 つは、エラー率の削減と製品品質の向上です。すべてのサプライチェーンパートナーと正しい技術情報を共有することで、解釈ミス、バージョン管理の問題、非ビジュアルデータを介した情報の解釈に費やす時間を削減できます。サプライヤーは共有された技術データからすべての製品、承認されたメーカーやベンダー、標準要件を直ちに把握し、現場の作業員は品質と測定のフィードバックを迅速に提供できます。全てのチームが同一の正しい技術コンテンツに基づいて作業するようになります。結果的に、それまでは廃棄や手戻りを余儀なくされていた部品の製造コストを大幅に削減でき、納期のリスクが低減されます。 

  2. コンカレント設計のサポート: 設計が製造部門に引き渡される前にサプライヤー登録を開始できます。これにより、調達担当者とサプライヤーは、設計が製造部門に引き渡された時点で生産を開始できる状態になります。RFI、RFP、RFQ の各プロセスを、設計完了作業と並行して実施できます。サプライヤーが要件をより深く把握できるため、OEM はサプライヤーによる入札額の水増しの削減を期待できます。これは、本来であれば収益に影響を及ぼしていたコストです。

  3. セキュリティとデータアクセスの向上: 設計データを共有する場合、重要な IP を共有することになります。ファイルレスの Web コンテンツとは、データが表示されたことを記録するファイルがないということです。安全で追跡可能な監査証跡により、誰が自分のデータにアクセスし、そのデータがどのように使用され共有されるかを把握できます。アクセス権の付与、無効化、トラブルシューティングなど、アクセス制御機能を自在にコントロールできるため、悪意のあるユーザーの手に渡る危険性が大幅に減少します。また、重要な IP に動的なウォーターマークを設定することで、さらに抑止力が強まります。このようなセキュリティおよびアクセスツールにより、確信を持って簡単に連携できるようになります。

  4. リスクの特定と生産の遅延の根絶: 早期段階から頻繁に情報を共有することで、サプライチェーンのあらゆる構成要素をより明確に把握できます。早期段階の RFx から納品まで、リスクや生産遅延が実際に発生する前に特定し、連携して解決することが重要です。 

  5. 洞察を活用した調達チームの支援: サプライチェーンと調達のリーダーは、調達の早期段階からサプライヤーの情報を明確に伝え、社内の調達チームの取り組みとサプライヤーの販売を連携させます。調達チームが部品を購入する際に、技術要件とサプライヤーが提供した詳細情報を比較し、最初から緊密な連携を確保できます。

まとめ

製造業を取り巻く状況がかつてないほどめまぐるしく変化するなかで、サプライチェーン管理がもたらす多数のメリットの 1 つにコラボレーションと最適化の改善があります。Anark 社が提供しているようなソリューションを採用することで、製造業はコラボレーションを改善するモデルベースの設計プロセスを導入できます。コラボレーションを強化すれば、エラーの削減、コストの管理、新製品の市場投入期間の短縮をスムーズに実現できます。

コラボレーションと最適化のためのサプライチェーン管理のメリットをご確認ください。

 

 
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Tags: 製品ライフサイクル管理 (PLM) Windchill
執筆者について Carlos Melgarejo Carlos is a Sr. Content Marketing Specialist for PTC’s PLM technology. He comes from a broadcast journalism background where he developed a love for writing and visual storytelling. He is also passionate about developing creative content and communications, having received a Master’s degree in Marketing. He enjoys the outdoors, the beach, exercising, riding his motorcycle and car restoration.