(本ブログは、Convergence Data 社の Richard Turner 社長との共同執筆です。)
多くの企業が、PLM システム内に重複データが存在することによる影響を見落としています。ある調査によると、設計者は作業時間の 36% を価値を生み出さない作業に使い、その約 4 分の 1 を情報の検索に費やしているといいます。効果的なデータ分類を行わないかぎり、設計者は部品の検索、重複した部品の作成、部門を越えたコラボレーションやレポート作成のための共通言語の確立に、貴重な時間と労力を割くことになります。分類戦略の優先度を高めることで、非効率を削減し、チームワークと生産性の向上を促進し、最終的にはチームがイノベーションに注力するための時間を確保できます。
サプライチェーンの混乱、予想以上の材料費の高騰、労働力不足、製品の複雑性などの面でも、効果的な部品とデータの分類戦略の策定は重要です。製品開発プロセスに部品とデータの分類を組み込むことで、コストや部品の在庫を最適化し、製造とサービスを考慮して設計を簡略化できます。
部品とデータの分類とは、製品、部品、書類を整理して、検索の効率性と生産性を促進するプロセスです。効果的な分類戦略は、以下の要素から構成されます。
部品の分類戦略から大きな価値を得られることは確かですが、数百万個に及ぶ部品を分類し、そのプロセスの中で組織全体の関係者を取りまとめる作業はとても困難です。このような場合、段階的な取り組みが効果的なソリューションとなります。私たちの経験では、成功している企業は部品とデータの分類を汎用部品から開始し、時間をかけて特殊部品へと範囲を広げていきます。
ベストプラクティスに従い、最新の PLM ソリューションを活用すれば、分類戦略の策定に伴う負担を軽減できます。ここでは、基本的な導入ステップをご紹介します。
部品分類の初期の段階でガバナンス戦略を確立することで、部品分類戦略の長期的な成功をサポートします。ガバナンス戦略は、新製品導入 (NPI) プロセスにおいて、新規部品の作成を管理するための枠組みを提供し、時間とともに進化します。正式な部品ガバナンス戦略を設定することで、重複部品を削減し、部品再利用の取り組みを効果的に開始するための枠組みを構築できます。ガバナンス戦略の最初の目標は、分類管理者を割り当てることです。
分類管理者やライブラリアンなど、新規部品の作成を担当する役割の新設を検討してください。このアプローチにより、システムを完全に把握している人物が企業内で一元的に対応できる体制が確保できます。堅実な部品再利用プログラムで成功している企業の多くは、この役割を担う人材を採用しています。この担当者は検索とレポート作成に関して貴重な特定分野の専門家 (SME) の役割を果たすだけでなく、業界、顧客、幅広いビジネス環境のニーズの変化に応じて戦略を確実に進化させるうえでも重要な役割を果たします。
分類法の定義 - データの組織構造 - の定義が次のステップです。優れた分類法を定義すれば、簡単に部品を検索できるようになり、設計者はソリューションの設計という本来の職務に集中できます。最も効果的な情報構造は可能なかぎり合理化されているものです。組織構造が複雑すぎる場合、エンドユーザーにとって本当にで使いやすいデータとは言えないかもしれません。この目標を念頭に置き、開始する前に自社のレポートと検索のニーズを明確に定義します。多くの企業は、このプロセスにおいてまず汎用部品に焦点を当て、時間をかけて社内外の特殊部品にも対応範囲を広げていきます。
分類法を確立するために、企業はどのような手順を踏むのでしょうか?重要なのは合意の形成です。企業が直面する課題の 1 つは、合意された業界標準が存在しないことです。そのため、企業はファスナーや電子部品などの汎用部品向けにそれぞれ部分的なソリューションを特定し、それをベースにしてさらに独自の分類構造を定めていきます。たとえば、HomeDepot.com で網戸を探している場合、企業側で作成した構造の分岐(ハードウェア製品 -> 窓関連製品 -> 網戸)をたどって検索し、そこからさらにサイズや素材などを追加して結果を絞り込みます。この方法は、Home Depot の顧客にとっても有効です。設計やサプライチェーンのコミュニティのニーズを把握している専門家のグループを結成することが重要です。この専門家たちが協力して提案された分類構造を確認し、全員にとって最適になるよう改良を加えます。
基盤となる分類構造を特定できたら、属性の詳細を追加してデータを拡張します。たとえば、機械のねじは PLM 内で単純に「ねじ」として一覧表示されるわけではありません。在庫内の各部品には、ねじ山、ねじ頭のタイプ、長さ、素材、仕上げ、特定の製品の優先部品のステータスなどの情報が含まれています。より詳細な情報があれば、設計者は必要な部品を簡単に見つけられ、すでに存在する部品を再設計してしまうリスクを最小限に抑えることが可能です。分類構造と検索/レポートのニーズの概要を定める際に、データ抽出の鍵となる属性を特定する必要があります。
このプロセスでは、ステージング環境を技術的な作業環境として使用できます。ステージング領域では検索と分析を実行できるため、構造内で情報を検索するための詳細なテストを実行し、時間をかけて改良していくことができます。また、ステージング領域を使用して、2 つの組織の分類システムの統合などの複雑なプロジェクトを容易に完了することもできます。
データ分類戦略は、基本的な部品の属性を超えて、ビジネス上の重要な意思決定を促進する詳細情報も取得できます。購買およびサプライチェーン向けの重要な属性と分類法を連携させることで、設計者はより多くの情報を入手できます。属性データには使用されている材料、材料の在庫、サプライヤーの分類などの領域を含めることが可能です。たとえば、特定の持続可能性要件に準拠する必要がある製品の代替部品を探している場合、サプライヤーの分類を利用して確実にその条件を満たす代替品を見つけることができます。
構造が定まり、属性の取り込みが完了した後は、データを合理化して幅広い範囲で使用できるように準備することが重要です。
第一の目標が、可能なかぎり多くの部品を再利用することによるコスト削減の場合であれ、チームで同時に共同作業を行う能力の向上の場合であれ、部品とデータの分類戦略は、効率的な部品管理を実現するための一元的な情報源となります。戦略の策定は必ずしも難しいことではありません。ベストプラクティスに従い、専門のサービスプロバイダーと連携し、現代の優れた PLM ソリューションに付属するツールを活用することで、負担を軽減し、重要なメリットを短期間で入手できます。
部品を分類し、部品管理を改善するその他の方法については、部品の分類と重複部品の回避をご確認ください。
Convergence Data 社について
Convergence Data 社は PTC のパートナー企業です。Convergence Data 社は、社内データが整備されていないメーカーに情報を系統的かつ効率的に整理するためのソリューションを提供し、信頼を得ています。Convergence Data 社の専門分野は以下のとおりです。
Convergence Data 社は、航空宇宙および防衛、家電、HVAC、自動車、エレクトロニクス、産業機械製造、油田サービスなど、さまざまな業界の顧客のデータ管理を支援しています。Convergence Data 社の概要とデータバリュー分析 (DVA) の詳細については、www.convergencedata.com を参照してください。
部品の分類がもたらす価値の定量化