CAD(キャド)とは?初心者向けに基礎知識や CAD の種類、CAM・CAE との違いを紹介

  • 7/14/2022
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CAD(キャド)とは

CAD は、「Computer Aided Design」の略称であり、日本語に訳せば「コンピュータ支援設計」です。国内外ともに略称で「キャド」と呼びます。

上記のような日本語訳にはなるものの、CAD はおおむね、「コンピュータを用いて製図設計を行うために用いる、寸法定義ができる作図ソフトウェア」全般のことをいいます。かつて紙に手描きしていた手間のかかる設計製図を、コンピュータ上で効率よく行えるように支援するといった意図です。

今日の 3D CAD の原型となるシステムは既に、メインフレームコンピュータが活躍していた 1970 年代から存在しました。その後、1980 年代には商用 CAD ソフトウェアが登場。パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション(今日の PTC Inc.)が設立され、CAD の「Pro/ENGINEER」が誕生したのもその頃でした。さらにその後、1990 年代以降、パーソナルコンピュータ(パソコン)やインターネットが普及していく中で、業界で CAD が急速に普及していきます。

この半世紀で、かつて大手企業のメインフレームコンピュータで使用するような高級システムが、個人が使用する端末で使用できるシステムへと変わりました。

そうした歴史の中で、手描きで行われていた設計・製図は、次第に CAD へ置き換えられていきました。コンピュータと CAD の進化により、たった半世紀ほどで、建築・建設や設計の設計製図の作業は大きく様変わりし、設計対象が複雑化した今、CAD は業務に欠かせないソフトウェアとなりました。

2D CAD とは何か

2D は「2 次元」の意味であり、点と線による図形で設計物などを平面的に表現することを示します。直線や点、図形を描画し、修正や削除などを繰り返しながら、寸法値を入力して作図していきます。2D CAD で描画した図は一般的な画像と異なり、寸法の概念を持っており、数値制御による作図ができます。

3D CAD とは何か

3D は「3 次元」の意味であり、立体(3D データ)で設計物などを表現することです。「スケッチ」と呼ばれる 2D 作図を基準にして高さや奥行きを定義し、さらに形状追加や修正を繰り返しながら立体を定義していきます。また、スケッチや立体は数値で精密に制御可能です。

なお、アニメーションやゲームのグラフィック制作で用いる 3D CG ソフトウェアでも 3D データを制作可能ですが、3D CAD がそれと大きく異なる点は、立体が寸法やスケールの概念を持ち、数値制御可能であることです。


2D CAD と 3D CAD の違いは?

2D CAD と 3D CAD は、単純には設計物を平面的に表すか、立体的に表すかの違いですが、作図の考え方や設計物の捉え方が少し異なります。

2D CAD では設計物を全て平面的に表すことから、設計物の形状や仕様を詳細にわたり、丁寧に理解、あるいは説明しやすくなっています。一方で、複数の図や注記を手掛かりに設計物を正しく表現する、あるいは設計物を理解するためには、ある程度の習熟が必要です。

3D CAD は、設計物の形状を直感的に、「見たまま」で理解することが可能であり、特に複雑な設計物を表現するための作業を大幅に効率化できる他、平面で描かれる設計図を見慣れていない人でも形状を理解しやすくなります。ただし、細部や隠れた形状の見落としや、スケール感覚の狂いが生じやすいといった難点もあります。


CAM や CAE との違い

「CAM」や「CAE」は、CAD と字面がよく似ていますが、役割が異なります。まず、CAM は「キャム」と呼ばれ、「Computer Aided Manufacturing」、日本語では「コンピュータ支援製造」の意味です。工場の切削加工機などで部品加工する際の工具の動きを数値制御するプログラム(NC データ)を作成するためのソフトウェアを指します。そのデータ生成には、CAD のデータの一部を用いることがあります。

「CAE」は、「シーエーイー」と呼ばれ、「Computer-Aided Engineering」、日本語では「CAE コンピュータ支援エンジニアリング」です。こちらは、工学的な解析を行うソフトウェアを指します。建設や機械の設計製造では、設計物の強度を計算する構造解析や、設計物内の流体の挙動を計算する流体解析の CAE が活躍しています。CAE のデータは、3D CAD で作成した 3D データを利用・変換して作成することがよくあります。


CAD 自体の違いや特徴

CAD は、建築・建設や製造業における、さまざまな工学分野の設計で用いられます。どの分野の CAD も基本的な機能はほぼ同じですが、業界や分野ごとに設計製図の規格やルールがあり、設計の進め方もそれぞれであることから、CAD の使用方法や細かい機能なども少しずつ異なります。PTC などソフトウェアベンダーは、CAD としての汎用機能にプラスして、業界や分野に特化したソフトウェアを開発しています。

製造業向け CAD とは?

製造業向けの CAD は、2D も 3D も、構想設計から詳細設計(部品設計)を行い、部品加工や組み立てを行う現場へ設計物の詳細を示した図面を渡すことを前提として作られています。3D データも、設計の後工程である機械加工へ受け渡しやすいデータ形式が採用されています。

3D CAD でほとんどの設計を行おうとも、設計物の 3D データが存在しようとも、国内外関わらず、部品加工においては加工設備の都合から 2D 図面が必要である場合が今も多くあります。そのため、Creo など製造業向けの 3D CAD には 2D の図面作成機能を標準搭載することが多くあります。

建築設計向け CAD とは?

製造業と建築・建設業界は製図の規格やルールが異なるため、2D CAD については、その業務に特化した機能を備えることになります。

建築・建設業界の 3D 設計は、「BIM (Building Information Modeling)」という言葉がよく使われます。BIM は、作成する 3D データに対して、寸法や空間の情報の他、コストや工程の情報や建材や素材など属性を結び付けて、建築物の設計から施工までのワークフローを取りまとめるシステムで、建築・建設業界で広まってきています。BIM は、大小さまざまの複数の業者が絡み合って設計・施工を進めるプロセスに特化しています。それを背景に、建築設計で用いる 3D CAD も、BIM で用いるための 3D データを作成するための機能といった立ち位置になってきています。なお、建築設計においても、BIM が普及してきている現時点において 2D CAD で描く設計図面が必要です。


CAD を活用するメリット

製造業でも建築・建設業でも、現在、技術や設計が高度化し、かつ短納期化していることから、手描き中心の設計製図での業務遂行は非常に難しくなっています。そのため手描きの図面作成を行う現場は非常に減ってきています。

複雑な製図作業の時短と効率化、設計品質向上が望めること

2D CAD を用いれば、数字入力により正確に設計物の形状を描画できるため、人が 1 つひとつ定規で測りながら手描きで製図をするより、はるかに作業が捗ることになります。さらに 3D CAD を用いると、形状が複雑になるほど、部品点数が多くなるほど、作業効率向上の効果は高くなります。3D データで設計を進めれば、部品同士の干渉も自動チェック可能です。

複雑で高度な設計製図を短時間で行うためには、CAD でできる限り手作業を自動化し、手数を減らすことは必須です。それが、ヒューマンエラーを減らし、設計品質を高めることへつながります。

設計変更に柔軟に対応して修正ができること

手描きであれば、設計に変更があった場合は、ごく小さな変更であれば寸法に取り消し線をいれ数字を描く、大きな修正となれば描きなおすといったことが必要です。2D CAD であれば、設計変更の際の寸法や形状の修正についても、線や形状を複写したり削除したりしながらできるため、手描きよりははるかに楽になります。さらに 3D CAD であれば、3D 形状を直すことで、2D の図面もその変更に追従するように自動修正する機能も備えているため、さらに設計変更へ対応しやすくなります。BIM も、3D CAD と同様に、設計変更に柔軟に対応しやすいワークフローを構築できます。

データ管理や情報共有がしやすく、ペーパレス化が可能

2D CAD にしても 3D CAD にしても、図面データをデジタル化できるため、ペーパレス化や情報共有に活用することは可能です。

しかし、2D CAD のデータは線画と寸法データ中心であるため情報量は限界があり、かつアウトプットは紙の設計図面の置き換えでしかないため、設計に直接関与しない営業や企画担当部門で、人によって設計図面が読めない場合の理解が難しいものです。一方、3D CAD よるデータなら立体の形状であるため、他部門との情報共有が格段にしやすくなります。

さらに、3D データには材料や工程の情報まで紐づけられます。そのため、3D データであれば、解析・シミュレーションや部品加工、カタログの挿絵制作など幅広い活用が可能になります。


3D CAD のデータの「サーフェス」「ソリッド」「ポリゴン」とは

3D CAD が扱う 3D データにはさまざまな形式があります。大きく、「サーフェス」「ソリッド」「ポリゴン」の 3 つに分類が可能です。また、3D CAD の種類により、それぞれのモデル形式の取り扱いに得意・不得意があります。

サーフェス

サーフェスモデルは、形状の表面だけで構成されており、体積の概念がありません。要は、ペーパークラフトのようなもので、中身が空であるデータです。複数の曲面をつなぎ合わせて 3D モデルを作成します。自由曲面を多く含んだ形状をした製品、複雑な形状を取り扱う金型設計などで用いられます。

ソリッド

3D CAD でメジャーなのが、ソリッドモデルです。サーフェスモデルとは異なり、形状の表面データと併せ、体積の概念を伴います。つまり、「中身が詰まっているデータ」ということです。そのため、部品の重さや重心の計算を行うことが可能です。さらに、部品同士の干渉チェックも行えます。なお、サーフェスモデルをソリッドモデルへ変換することが可能です。

ポリゴン

ポリゴンモデルは、細やかな多角形を組み合わせて生成するデータです。この小さな多角形は、ソリッドではなく面のデータの集合です。ポリゴンは 3D CG が起源であり、3D CAD のデータが起源であるソリッドモデルとはデータ構造が大きく異なります。ソリッドモデルを中心に取り扱う 3D CAD を設計に使うにはデータ変換処理が必要です。


CAD を活用できるシーンは?

CAD は今や、設計作業のパートナーといえるツールです。ここでは、設計製造の 3D CAD を中心とし、代表的な活用シーンについて説明します。

1. 設計図の作成、図面作成

設計製造においては、大まかには、構想設計(製品全体の構想)、詳細設計(部品設計)、出図(図面作成)、試作、量産というプロセスを踏みます。CAD の作業は、主に概念設計から出図までです。

3D CAD を導入している企業で、量産製品の場合では、まず構想設計を 2D CAD もしくは 3D CAD の 2D 作図機能で製品全体の構想を決めます。その後、詳細設計として細部の部品設計をする段階で 3D CAD を使い、さらに部品形状が固まれば、2D で製図を進めるという流れが多く見られます。

2. デザインの作成

デザイン(意匠)性が高い製品を造る場合は、設計に入る前にプロダクトデザイナーが検討する場合が多くあります。デザインについていえば、今も手描きの人が多くいます。また、3D CAD よりは 3D CG ツールがよく使われてきました。デザインが固まると、設計者はそのデザイン画を見ながら 3D CAD で設計を進めていくことになります。

ソリッドの 3D CAD をプロダクトデザイナーも使い、設計に直接データを渡す、あるいは連携して検討を進める現場もあります。

3. 解析・シミュレーション

3D CAD のデータは、解析(シミュレーション)で活用することが可能です。3D CAD のデータを変換し、CAE に渡して解析をすることが多いです。3D CAD 自身にも CAE 機能が組み込まれていることが多く、CAD で設計を進めながら強度計算などを行えるようになっています。

4. 3D プリンター用のデータ作成

3D CAD で設計したデータは、3D プリンターで出力(造形)することができます。例えば設計室内に、3D CAD と併せ、3D プリンターもあれば、設計検証のための試作品を外注製作することなく、気軽に素早く行えるようになります。

しかし、3D プリンターで主流のデータ形式は、ポリゴンモデルの一種である「STL データ」であるため、注意が必要です。3D CAD で設計した形状を 3D プリンターで出力するためには、ソリッドモデルを STL に変換する必要があります。

5. 工作機械のデータ作成

CAD のデータは、2D か 3D かにかかわらず、CAM のプログラム作成に利用することが可能です。切削加工機の中には、3D データを直接取り込んで CAM のプログラムを自動生成できるものもあります。3D CAD と直接連携できる CAM もあり、その場合では 3D CAD の中の CAM 機能で加工シミュレーションも行えます。


3D モデルの作成方法

3D モデル作成は、3D CAD や 3D CG ソフトウェアを用いて行います。ここでは、ソリッドの 3D モデル作成の手順や注意点について説明します。

3D CAD では、スケッチという 2 次元作図機能で閉じた図形を線で描画し、それを立体形状として押し出す作業を繰り返しながら、形状を作りあげます。押し出す方法は、数値入力や、スケッチの図形や 3D モデルの面を直接ドラッグする方法などがあります。形状を押し出すのではなく、穴を開けたい、切り出したい場合もスケッチ機能で閉じた図形を描き、押し出すことで可能です。

製造業の部品設計で多用する、部品の角の面取り(チャンファーともいう)や丸みつけ(ラウンド、もしくはフィレットともいう)は、任意の淵を選択することで簡単に行えます。また、軸対称に形状を複写する、同じ形状を一直線に等間隔に並べるといったことも可能です。他にも、複雑な形状を作成しやすくするためのさまざまな機能を備えています。


CAD を選ぶ時のポイント 4 選

ここでは、CAD を選ぶ時の 4 つのポイントについて解説します。CAD としての基本機能はどのソフトウェアでもほぼ同じです。しかし、取り扱いが得意なデータや処理、CAD 周辺の機能などが少しずつ異なっています。ソフトウェアの選定においては、自社で設計している製品や設計の進め方や、設計製造で使用している他のシステムとの相性と併せ、設計の発注先や加工パートナーとのやり取りで必要なデータ形式なども考慮します。

CAD の機能(主流なモデリング手法)

同じソリッド系の 3D CAD でもモデリングの手法は、大きく「ヒストリーモデリング」と「ノンヒストリーモデリング」の 2 手法に分かれます。ヒストリーモデリングは形状を積み上げていきながら、形状作成履歴や各部位を設計根拠に紐づけしながらモデリングしていく手法です。一方、ノンヒストリーモデリングは、モデル作成履歴にとらわれず、思うがままに形状を作りあげる手法です。どちらの手法が優れているかは一概に語れず、自社の製品設計の進め方により選定するのがよいとされます。

CAD の価格

CAD は、ハイレベルな機能が実装され、システムの規模が大きくなればなるほど、価格が高くなる傾向です。CAD 選定においてはコストも重要な要素ですが、「安ければよい」ということもありません。コストを重視しすぎると、実務で必要な機能や性能が不足し、導入後に社内で活用されず、投資対効果が十分発揮できないといったことも起こり得ます。

また、ライセンス体系は、従来の買い切りライセンスの他、最近はサブスクリプションを採用するソフトウェアベンダーもあります。自社での導入計画や、CAD での業務量の傾向などに応じて、いずれがよいか検討します。

カスタマイズ性

CAE や他の自社システムとの連携、あるいは設計の標準化や自動化を図ることなどを検討している際は、CAD 側のプログラム構造やカスタマイズ対応について、ソフトウェアベンダーに確認する必要があります。CAD のカスタマイズを行う場合、自社に対応可能な人材がおらず知見がない、あるいは大掛かりになる場合は、ソフトウェアベンダーや SIer の手を借りることになります。

拡張子や対応するユーザーインターフェース

CAD は、採用する現場での使い勝手が重視されます。CAD は 1 人が使うよりは、組織で使う方がより高い導入効果を得られます。そのため、ユーザー個人の経験やスキルに左右されない、操作習得がしやすいよう、ソフトウェアベンダー各社は直感的で覚えやすい GUI の開発に積極的です。

また、3D CAD は、設計において複数の顧客やパートナーとやり取りが多い場合、設計データのインポートやエクスポートの機能や、自分が使用している 3D CAD 以外のソフトウェアのネイティブなデータ(特定のソフトウェア専用の拡張子)の取り込みにどの程度対応しているかも考慮する必要があります。


PTC の CAD ソフト

Creo

Creo は、複数の手法から選べる 3D CAD の他、CAE による解析、AR、CAM や 3D プリンター出力など製造支援機能など、幅広いラインアップを備えた 3D 設計システムであり、ユーザーの設計事情に合ったソフトウェアが選定可能です。

部品にかかる強度に基づき AI が最適な形状を導くジェネレ―ティブデザインや、複数の現象を組み合わせて解析するマルチフィジックス解析、モデルベース定義 (MBD)、エルゴノミクス(人間工学)設計など、業界最先端の技術も実装しています。

Creo: https://www.ptc.com/ja/products/creo

Onshape

Onshape はソフトウェアの演算処理やデータ格納などの一切をクラウドで行う、Web ブラウザベースの設計業務向け 3D CAD です。データベースや製図機能も包含しています。端末にソフトウェアをインストールする必要がなく、かつ従量課金で使用することが可能です。Web ブラウザベースであることから、コロナ禍のリモートワークでの採用が増えています。

Onshape: https://www.ptc.com/en/products/onshape


まとめ

今日の CAD は製造業と建築・建設業の設計業務において必須のツールです。中でも、3D CAD は、さまざまなプロセスとの連携に活用できることから、設計だけではなく、設計・製造全体での生産性の向上や相乗効果が望めます。さらには、将来も社会や市場の進化に追従していくことも可能でしょう。

国内では今後、少子高齢化による働き手の減少が加速していくといわれます。CAD の最新技術などデジタル技術を積極的に利用し、製造業の未来を支える人材の育成や活用へ取り組んで、国内産業を活性していかなければなりません。


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