今年の 4 月末に Creo 9.0 がリリースされました。Creo 4.0 から毎年のリリースが続いています。今回のリリースの特徴は、ユーザーからの要望をふんだんに取り込んだことです。ユーザーが自由に機能要望を上げることができる PTC Community の中の Ideas から多くの要望が取り入れられました。そのため、ユーザーに役に立つ機能が満載です。また、ジェネレーティブデザインやリアルタイム解析などの最新技術もユーザーの要望による機能改善がなされています。
ではまず始めに、日々 Creo を使われているユーザーが便利に感じる機能から紹介していきます。比較的大きな機能改善として、サーフェス分割があります。解析モードではサーフェスを分割できましたが、モデルモードの中で可能になりました。これにより、例えば、ある面の一部のみ色を変えたい、モデリング的に別の面であって欲しい、ジェネレーティブデザインなどの解析用途に利用できます。また、3DA での用途も多く考えられ、その部分だけ表面仕上げが違うなど製造要件が入れられます。分割せずにその領域だけ、と言う場合は従来からある領域指定フィーチャを使う事が可能ですので、場合によって使い分けることができるようになっています。また、このサーフェス分割ですが、やはり元に戻したい、と言う専用フィーチャもあります。そして PTC Community からのアイデアが入ったものが、スケッチ関連で 2 件、アセンブリで 4 件、パターンで 1 件、穴フィーチャで 2 件と数多く含まれています。パターンは大規模アセンブリ対応、アセンブリはエラーを回避する方法など、目立ちはしないですが、痒い所に手が届く機能になっていると思います。また、皆さんがよく使うラウンド形状作成に関しても改善されたのはうれしいところです。
個人的にもうれしかったのがマネキン機能の改善です。なんとマネキンのサイズを変更できるようになりました。かなり細かく設定することができ、自分の体形を作ろうと思いましたが、太ももの太さなど分からなかったので、そのままになっています。カスタマイズしたマネキンを「名前を付けて保存」することで、会社が基準としている体形を使うことができます。特にうれしいのは、マネキンの姿勢の修正です。マネキンを動かそうと思うと、かなりの鍛錬が必要で、簡単に糸の絡まったマリオネット状態になります。これが今回、3D ドラッガーが導入され、非常に簡単に思い通りの姿勢を作ることができます。右クリックからロックや、ロック解除などもできます。さらにマネキンのツリーもものすごく使いやすくなっています。また視野についてですが、いままでは視野の円錐形状が表示されるだけでしたが、新しく「解析」タブに追加された「視野」より、実際に見える範囲のジオメトリの作成が可能になりました。例えば、車からフロントウィンドウを見るとして、ルームミラーが視界を邪魔している部分があるとします。この場合、「視野」を使うと、ウィンドウの投影からそのルームミラー部分を除外したジオメトリを作成できます。この機能は、特にマネキンを配置せず、目の位置にデータム点があれば、作ることができます。人が使うような製品のチェックを事前に正確な形で行うことが可能となりました。
意外に思われるかもしれませんが、2 次元図面の改善も行っています。Creo 8.0 では長年の懸案であった図面スケッチが一新され、使っていただいた方からは非常に高評価を頂いています。Creo 9.0 ではハッチングの扱いが向上しています。断面のハッチングを選択するとリボン UI が表示され、様々な操作が可能です。また、ハッチングギャラリーが作られ、そこからが選択しやすくなっただけではなく、ハッチングツリーが出ることで、ISO に対応したハッチングを選択できます。その中にも使いたいものがない、というユーザーには、ハッチングデザイナーと言う機能で、自分のハッチングを作成することができるようになっています。また、シンボルも改善されています。ハッチングと同じようにギャラリーが使えるようになることや、可変テキストとして入っていた文字や数字をそのシンボルのパラメータとすることができるようになりました。このパラメータを下流工程でそのまま利用することで、様々な自動化が図れるようになりますし、3DA を実施するには必要な機能です。
そして解析にも力が入っています。リアルタイム解析である Creo Simulation Live には、マルチフィジックスに対応しました。熱膨張による応力などを見ることができます。これをたった数秒で確認できるのはうれしい限りです。また、Creo 9.0.1.0 にはなりますが、接触も対応予定です。また、Creo 7.0 からでてきたジェネレーティブデザインですが、今回は固有値による最適化が導入されました。以前から要望が強かった機能です。今後は、伝熱、そしてそれらを合わせたマルチフィジックスも予定されています。それ以外にも、最適化の目標が従来は体積や重量でしたが、今回は安全率をターゲットにすることができるようになり、最適化の幅が広がりました。それ以外にも Creo Ansys Simulation や Creo Flow Analysis などの解析も大幅に進化しており、解析駆動型設計へ突き進んでいます。
これら以外にも、3D プリンター、製造、ECAD 連携等々多くの機能が追加されています。ぜひ Creo 9.0 をインストールして試してください。さらにヘルプも分かりやすくなり、主要な新機能には動画が付いているので、こちらを参照するのも良いと思います。Creo はこれからも一層進化していきますので、今後ともご期待ください。