製品技術事業部 CAD 技術本部
シニア テクニカルスペシャリスト
大学で機械工学を専攻後、国内メーカーで設計業務に携わり、2007 年に PTC 入社。CAD 製品を中心にプリ/ポストセールス活動、コンサルティング活動を担当。
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Learn More※本ブログは、Creo Chapter Webinar シリーズの内容をもとに編集・再構成しています。
「取引先から受け取った CAD データが開けない…」
「STEP や IGES などの中間ファイルに変換する作業だけで、一日が終わってしまう…」
「データ変換時に形状が壊れてしまい、修正に膨大な時間がかかっている…」
製造業の設計現場において、このような CAD データの互換性に関する悩みは、多くの設計者が抱える共通の課題ではないでしょうか。特に、複数の企業が連携して一つの製品を開発する現代のモノづくりにおいて、異なる CAD システム間のデータ交換は避けて通れません。CATIA、SolidWorks、NX、Inventorといった 3D CAD はもちろん、古くからの設計資産である AutoCAD の dwg ファイルなど、扱うデータは多岐にわたります。
この「CAD データ変換」という非生産的な作業に、貴重な設計者の時間が奪われ、本来注力すべき創造的な業務を圧迫しているのが現状です。もし、他社製の CAD データを、あたかも自社の CAD データのように直接、簡単に、そして正確に取り扱えるとしたら、設計プロセスはどれほど効率化されるでしょうか?
本記事では、PTC が提供する 3D CAD ソフトウェア「Creo Parametric」が、この根深い課題をどのように解決するのかを徹底解説します。その鍵となるのが、マルチ CAD 環境でのシームレスなデータ連携を実現する「Unite Technology」です。他社 CAD データとのやり取りや中間ファイル管理に悩む設計者の方、複数 CAD の運用に課題を抱える管理者の方、そして Creo の導入を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
3D CAD Creo の詳細はこちら
具体的な解決策をご紹介する前に、まずは多くの設計現場を悩ませる「CAD データ変換」の課題を整理してみましょう。
他社 CAD とデータをやり取りする際、一般的に STEP や IGES といった中間ファイル形式が用いられます。しかし、部品点数の多い大規模なアセンブリの場合、この変換作業だけで多くの時間を要します。さらに、設計変更が発生するたびに再度変換が必要となり、オリジナルデータと中間ファイルのバージョン管理が煩雑化。「間違った古いデータを送ってしまった」といったヒューマンエラーの原因にもなります。
中間ファイルへの変換プロセスでは、元の CAD が持つフィーチャー情報(設計履歴)が失われ、単なる「形状の塊」になってしまいます。さらに悪いことに、面の欠落や形状の破損が発生することも少なくありません。壊れたデータを修正する「ヒーリング」作業は非常に手間がかかり、設計の手戻りを引き起こします。
フィーチャー情報が失われたデータは、なぜその形状になったのかという「設計意図」が分かりません。そのため、寸法を変更したり、一部の形状を修正したりといった作業が非常に困難になります。結果として、ゼロから設計し直した方が早い、という本末転倒な事態に陥ることもあります。
これらの課題は、設計のリードタイムを長期化させ、製品の品質低下やコスト増に直結する深刻な問題です。Creo の「Unite Technology」は、まさにこの問題に正面から向き合い、解決するために開発されました。
Unite Technology は、マルチ CAD 環境における設計作業を効率化するための、Creo Parametric に搭載された一連の機能群の総称です。その核心は、「他社 CAD のネイティブデータを中間ファイルなしで直接扱える」という点にあります。
Creo がどのようにマルチ CAD 環境全体の課題を解決するのか、そのコンセプトや全体像については、以下のページでも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
▲Creo の Unite Technology は主要な他社 CAD に幅広く対応
中間ファイルに起因する前述の課題を根本から解消し、あたかも Creo のネイティブデータのみで作業しているかのような、シームレスな設計環境を提供します。Unite Technology が提供する主な機能は、以下の4つです。
特に強力なのが「オープン」と「自動更新」です。これらの機能が具体的にどのように設計作業を変えるのか、操作イメージを交えながら詳しく見ていきましょう。
Creo では、他社 CAD データを読み込む際に、「インポート」と「オープン」の2つの方法を選択できます。
今回は、ファイル管理のメリットが大きい「オープン」機能を使ってみましょう。Creo のアセンブリファイルに、CATIA V5 と SolidWorks のアセンブリデータを追加します。ファイルを開くダイアログでそれぞれのネイティブデータを選択するだけ。中間ファイルへの変換作業は一切不要です。
取り込まれたモデルは、モデルツリー上でそれぞれの CAD アイコンと共に表示されます。これにより、どの部品がどの CAD で作成されたデータなのかを一目で直感的に識別できます。これは、複数 CAD のデータを扱う上で非常に便利な機能です。
アセンブリを確認すると、SolidWorks で作成された部品(グレー)と、Creoで作成された部品(緑)の位置が2.5mmずれていることがわかりました。このずれを修正します。
▲編集が必要になった部品のみ Creo 形式に変換されるオンデマンド変換
通常、フィーチャー履歴のないインポートデータ(塊のデータ)を編集するのは困難です。しかし、Creoには「フレキシブルモデリング」という強力なダイレクトモデリング機能が搭載されています。これにより、履歴の有無にかかわらず、形状を直接、直感的に編集できます。
▲フィーチャー履歴がなくても形状を直接編集できるフレキシブルモデリング
操作は非常にシンプルです。
このように、まるで粘土をこねるかのように、フィーチャー情報がない他社CAD のデータでも、設計意図に合わせて柔軟かつ簡単に形状を修正することが可能です。
本記事でご紹介したフレキシブルモデリング(ダイレクトモデリング)のように、Creo には設計プロセスを劇的に改善する機能が数多く搭載されています。
ジェネレーティブデザインやマルチボディデザインなど、Creo が提供する17の主要なメリットと機能を1冊にまとめた eBook をご用意しました。ご興味のある方は、ぜひダウンロードしてご覧ください。
PTCの3D CAD「Creo」が提供する 17 のメリットや機能について紹介します。
詳細はこちらフレキシブルモデリングは、単なる形状変更だけではありません。形状から「設計意図」を読み取り、フィーチャーとして後付けすることも可能です。
ブレーキディスク部品にある複数の穴を例に考えてみましょう。これらの穴は、インポートされた時点ではただの穴(塊)です。
穴を構成する面を一つ選択します。
フレキシブルモデリングの「パターン」コマンドを実行します。
すると、Creo が他の同様の穴を自動で認識し、これらを一つの「パターンフィーチャー」として後付けで定義します。
この後付けされたパターンを利用して、ボルト部品を一つ配置し、パターンフィーチャーに沿って一括で全ての穴に配置するといった高度な設計作業が可能になります。他社 CAD のデータであっても、Creo の強力な機能を最大限に活用できるのです。
ここまでの作業は、Creo Parametric の標準機能で実現できます。しかし、実際の設計現場では、自社で検討を進めている間に、取引先でも並行して設計変更が進むという状況が頻繁に発生します。
「やっとの思いで設計を終えたのに、取引先から『形状が変わったので、新しいデータでやり直してください』と言われ、愕然とした…」という経験はないでしょうか?
この絶望的な手戻りをなくすのが、オプションライセンス(※)で提供される「Creo Collaboration Extension」の「自動更新」機能です。
※SolidWorks と Inventor 用の Collaboration Extension は、Creo のサブスクリプションライセンスに標準で含まれています。
先ほどの設計作業中に、SolidWorks 側でブレーキディスクの形状が変更されたとします。取引先から変更後の新しい SolidWorks ファイルが送られてきました。
従来であれば、古いデータでの作業は破棄し、新しいデータで再度アセンブリの組み付けや編集、パターンの作成などをやり直す必要がありました。しかし、自動更新機能を使えば、作業は驚くほど簡単です。
必要な作業は、受け取った新しい SolidWorks ファイルを、古いファイルに上書き保存するだけ。
▲ファイルを上書きするだけで、変更箇所が自動で更新される
その後、Creo でアセンブリファイルを開くと、なんとブレーキディスクの形状が新しいものに自動で更新されています。さらに重要なのは、先ほどフレキシブルモデリングで後付けしたパターンフィーチャーや、それを利用して配置したボルト部品はすべて維持されたまま、形状の差分だけが賢く取り込まれている点です。
これにより、設計変更による手戻り作業は劇的に削減され、並行設計のプロセスを滞りなく、効率的に進めることができます。
▲Creoのデータを他社CAD形式で保存し、双方向の連携を実現
Creo での検討結果を、今度は相手先の CAD ユーザーにフィードバックする必要がある場合も安心です。Collaboration Extension の「名前を付けて保存」機能を使えば、Creo で作成・編集したデータを CATIA V5 や NX、SolidWorks のネイティブファイル形式で保存できます。
これにより、双方向のスムーズなデータ交換が実現し、快適なコラボレーション設計環境を構築できます。
▲Windchill との連携で、全社的なマルチ CAD データ管理を実現
ここまでの操作は Creo Parametric 単体でも強力ですが、データ管理基盤である PLM システム「Windchill」と連携することで、その効果はさらに高まります。他社 CAD データを Windchill 上で一元管理し、バージョン管理や変更通知を自動化することで、より大規模で複雑なプロジェクトにおいても、セキュアで統制の取れたマルチ CAD 運用が可能になります。
他社 CAD データの中でも、特に取り扱いが難しいとされてきたのが「板金部品」です。中間ファイルに変換すると、曲げや肉厚といった板金特有の情報が失われ、単なるソリッド部品になってしまうため、展開したり、板金として編集したりすることができませんでした。
Creo では、この板金部品のマルチ CAD 対応も大幅に強化されています。
肉厚が一定でないインポートデータでも、基準面を指定するだけで一定肉厚の板金モデルへ変換できます。
板金に特化したフレキシブルモデリングコマンド(プルウォール、ベンド編集など)を使い、肉厚を保ったまま壁を移動させたり、リリーフ形状を編集したりといった高度な操作が可能です。
このように、従来は諦めていた他社 CAD の板金データも、Creo なら自由に編集し、設計資産として有効活用できます。
「ネイティブデータを取り込めるのは分かったが、どこまでの情報が渡されるのか?」「データ破損のリスクは本当に少ないのか?」という疑問をお持ちの方もいるでしょう。
一般的に、ネイティブデータ形式は、STEP や IGES といった中間ファイルよりもはるかに多くの情報(ジオメトリ、色、属性、PMI:製品製造情報など)を含んでいます。そのため、情報の欠落が少なく、高品質なデータ交換が可能です。モデルの作成方法にもよりますが、ネイティブデータの直接インポート・オープンは、中間ファイルで頻発していたモデル破損のリスクを大幅に低減させます。
具体的にどのフォーマットで、ソリッド、サーフェイス、PMI(製品製造情報)、属性といった情報がどこまで交換可能かについては、以下の Creo 公式ヘルプページに詳細なリストが公開されています。ご自身の環境で必要な情報がやり取りできるか、ぜひご確認ください。
【Creo ヘルプセンター】インタフェースの使用可能性について
A: いいえ、表示されません。IGES や STAP ファイルで取り込んだ場合と同様に、フィーチャー履歴のない「塊」の状態で取り込まれます。しかし、本記事でご紹介した「フレキシブルモデリング」を使えば、履歴がなくても問題なく編集が可能です。
A: はい、残ります。移動や削除といったフレキシブルモデリングの操作は、一つのフィーチャーとしてモデルツリーに記録されます。そのため、後からその編集フィーチャーを修正したり、元に戻したりすることも可能です。
A: はい、ございます。Creo には「インポートデータドクター」という強力な修正機能があり、サーフェイス間の隙間を埋めたり、面を貼り直したりしてソリッド化を試みることができます。また、STEP で破損するデータでも、可能であれば元のネイティブデータを提供してもらい、Creo の「オープン」や「インポート」で開くことで、高品質に取り込めるケースが多くあります。
A: はい、取得できます。フィーチャー認識ツールで穴形状などを認識させると、Creo のフィーチャーが後付けで作成されます。その際、穴の直径や深さといった寸法値も自動で認識され、寸法として付与されます。
この記事を読んで、Creo のマルチ CAD 対応力にご興味をお持ちいただけたでしょうか。日々の設計業務におけるデータ変換のストレスを解消し、より効率的かつ創造的な設計環境を手に入れるための第一歩を、ぜひ踏み出してみてください。
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詳細はこちらCreo の導入によって設計業務の効率化に成功した事例や実際に導入した企業の声を知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。
【導入事例】
本ブログで解説した機能は、こちらの動画にてさらに詳しく説明しております。実際に Creo の操作画面もお見せしながらお話ししていますので、ご興味のある方はこちらもご覧ください。