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CreoのマルチCAD対応

2025年7月4日 Creo お問い合わせ 無償試用版はこちら

製品技術事業部 CAD 技術本部
シニア テクニカルスペシャリスト

大学で機械工学を専攻後、国内メーカーで設計業務に携わり、2007 年に PTC 入社。CAD 製品を中心にプリ/ポストセールス活動、コンサルティング活動を担当。

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①UNITE TECHNOLOGY

1.UNITE TECHNOLOGYとは

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一般的に、他社製CADで作成されたモデルをCreo Parametricに取り込んで作業する場合、STEPやIGESなどの中間ファイルを使用されているお客様も多いかと存じます。しかし、これらの中間ファイルを使用すると、いくつかの問題が発生する可能性があります。

例えば、データの変換作業が必要になったり、ファイル管理が複雑になったりします。また、オリジナルのCADファイルとそれに紐づく中間ファイルのペアを管理しなければならないという問題も発生します。

比較的小規模なモデルで一度だけ相手に渡すだけで済む場合はまだ良いのですが、部品点数が多いと中間ファイルへの変換だけで時間がかかり大変です。さらに、何度もファイルをやり取りする必要がある場合は、ファイルの数が膨大になり管理しきれなくなることがあります。場合によっては、間違ったファイルを相手に渡してしまうという話も聞かれます。

このような煩雑な作業をできる限り減らし、マルチCAD環境でもあたかもCreo Parametricのネイティブデータのみで作業しているかのように作業を効率化するための様々な機能を提供しております。このシームレスなアプローチをユナイトテクノロジーと呼んでいます。

ユナイトテクノロジーで提供する機能は、具体的にはこのスライドに記載のとおりです。インポート、オープン、自動更新、そして名前を付けて保存の4つがあります。

まず、インポートとオープンについてご紹介します。この2つは、既にCreo Parametricに他社CADデータを取り込む機能ですが、いくつかの違いがあります。対応しているCADの種類はスライドに記載のとおりです。

インポートは、SolidWorks、CATIA、NX、Inventor、Solid Edge、Creo Elements/Direct Modelingの6つに対応しています。オープンは、このインポートで対応する6つのうち、Solid Edgeを除く5つのCADに対応しております。オープンは、取り込むことによって生成されるファイルを最小限に抑える仕組みがあります。

2.他CADデータの取り込み

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先ほどご説明したとおり、インポートとオープンはどちらも他社CADのネイティブデータを読み込みます。

まずインポートの場合です。ファイルの開くコマンドのダイアログの一部を表示しています。開くコマンドのうち、この「開く」ボタンのプルダウンメニューから「インポート」を選択します。インポートを選択してファイルを開くと、モデルが取り込まれます。取り込んだ後、モデルを保存すると、これらのモデルはCreo Parametricのファイル形式であるASM(アセンブリファイル)やPRT(パーツファイル)として保存されます。

または、インポートをすると、元の拡張子のファイルとCreo Parametricの拡張子のファイルが両方生成されることになります。これにより、ファイルの数が増えてしまいます。これを改善しているのがオープン機能です。

開くボタンのプルダウンメニューの中に「開く」という選択肢があります。これを選択した場合はオープンでファイルが開かれます。「開く」を選択するとお話ししましたが、プルダウンメニューのデフォルトは「開く」ですので、ここのオプションを何も指定しないでファイルを開くとオープンとしてファイルが読み込まれることになります。

これがオープンで取り込んだモデルのモデルツリーの表示です。インポートとオープンの違いの1つ目は、モデルツリーのアイコンです。アイコンは開いているファイル形式に応じて変化します。そのため、アセンブリの中からどのモデルをオープンで取り込んだのか、またどれをCreo Parametricで作成したのかを、モデルツリーから簡単に識別することができます。

2つ目の違いは、保存したときの振る舞いです。オープンの場合、何も編集されていないモデルは保存してもCreo Parametricのファイル形式(ASMやPRT)は作成されません。このため、インポートと比較して管理するファイルの数が少なくなります。これがオープン機能のメリットです。インポートとオープンはどちらもデータを取り込む機能ですが、オープンはより操作を簡単にするための工夫がされているという違いがあります。

3.オープン・オンデマンド変換

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他社CADのモデルデータがあり、そのアセンブリデータをオープンで取り込んで編集した場合、ファイルを保存すると、関連する部品と親アセンブリがパラメトリックのファイル形式で保存されます。編集の影響を受けない部品やアセンブリは、保存されません。例えば、SolidWorksのアイコンが表示されている部品アセンブリは保存されません。このように、モデルを取り込み編集して保存した際、管理すべきファイル数を減らす工夫がされています。

次に、編集操作についてご説明します。取り込んだモデルは、フィーチャーが存在しない塊の状態です。このモデルを編集する方法はいくつかあります。まず、形状を追加したり削除したりする場合ですが、パラメトリックのコマンド(例えば押し出しなど)を使えないため、別の方法で行うことが可能です。

次に、既存の形を編集したい場合です。フィーチャーが存在しないため、フィーチャーの定義を編集して形を変更することができません。このような場合、2つのツールを使用できます。1つ目はフィーチャー認識ツールです。これは、パラメトリックのワイルドファイアー時代から存在する機能です。2つ目は、フィーチャー認識ツールによる形状編集です。指定した形状をシステムが自動で認識し、その形状に対してフィーチャーを後付けで作成することができます。必要な部位に対してこの機能を使い、形状の編集を行う際にフィーチャーを定義編集することができます。

4.フレキシブルモデリング

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最後に3つ目の機能として、フレキシブルモデリングがあります。フレキシブルモデリングとは、存在するフィーチャーを編集するのではなく、ジオメトリの情報のみでモデルを編集する方法です。

例えば、緑色にハイライトされているこの面を編集したい、あるいは移動したいとします。移動したい場合は、まず編集したい面を選択し、次にどのような編集を行うのか、編集方法のコマンドを選択します。

下には様々な編集コマンドが表示されますが、例えばこの場合は「移動」コマンドをクリックします。この時、もし選択した面にR面などが付いている場合、移動に影響するR面も自動的に編集対象としてシステムが認識します。

次に移動コマンドの場合、面や稜線を選択して移動したい方向を指定します。ここで平面を選択すると、その面の法線方向に矢印が表示され、それが移動方向になります。続いて、この矢印をドラッグするか、または数値を入力して移動距離を指定します。これがフレキシブルモデリングの基本的な操作方法です。

あるいは、編集したい面を選択し、編集方法(ここでは移動)を選択、最後に各コマンド個別のオプションを選んで操作するという流れになります。これにより、取り込んだモデルのようにフィーチャーが存在しない塊のモデルに対しても、柔軟な編集操作が行えます。

このフレキシブルモデリングのメニューは下部に表示されていますが、多種多様な編集方法があります。

5.モデルの編集方法

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先ほどご説明した移動コマンドには、いくつかのオプションを選択できます。例えば、テーパーがついた上側の面を動かす際に、テーパーを維持したまま移動するのか、または直径を維持したまま押し出すように移動するのか、といったことをユーザーが指定できます。

次に「代用」コマンドです。これは移動させたい面(例えば緑色の面)を選択した後、その基準となる面を選ぶことで、選択した面を基準面に整列させるといった編集方法が可能です。または「除去」機能は、選択した面を削除する機能です。これらは一部ではありますが、様々な編集方法をご用意しております。

今、操作のイメージをご紹介しましたが、ご説明した通り、最初に面を選択するところから操作が始まります。しかし、例えば編集したい形状が複数の面で構成されている場合もあります。図にある削除したい面や突起形状を見ると、いくつもの面で構成されています。

その場合、それらの面全てを選択しなければなりません。しかし、そういった場合のために、複数面を選択するための選択ツールもご用意しています。例えば、マウスで画面を四角く囲んで、囲まれた中の面を全て一括で選択することや、または穴やくぼみ、突起形状を構成する複数面をシステムが自動で識別して一括選択することも可能です。

こちらにありますが、設計意図を付与することも可能です。例えば、現在表示しているモデルはエンジンのフィン形状です。このフィンを構成する面を選んだ後に「パターン認識」コマンドを実行すると、パターン形状を後付けで認識させることができます。認識させた後はパターン編集コマンドが使えるようになるため、フィン形状の一つを編集して他のフィンに派生させたり、パターンのピッチ距離を修正することでフィンの間隔を編集したりできます。

他にも対称や、ラウンド面取りといった機能があります。ラウンド面取りは、指定した面に後付けでラウンドフィーチャーや面取りフィーチャーを付ける機能です。このように、様々な機能をご用意しております。

6.Creo Collaboration Extension

この機能をご利用いただくにはオプションライセンスが必要です。オプションライセンスはここに記載のとおり5種類あり、他社CADの種類によってライセンスが異なります。

現在販売しているCreo Parametricのサブスクリプションライセンスは5種類ありますが、その全てにSolidWorksとAutodesk Inventor用のライセンスが含まれています。サブスクリプションライセンスをご利用のお客様は、追加でご購入いただくことなくSolidWorksおよびInventorのオプション機能をお使いいただけます。

残りの3つ、CATIA V4/V5とNXのライセンスは、T4やT5と呼ばれるサブスクリプションライセンスに含まれています。T4あるいはT5をお持ちでないお客様は、オプションライセンスのみを個別に購入することも可能です。

次に、このオプションライセンスで何ができるのかについてお話しします。1つは「自動更新」、2つ目は「名前を付けて保存」です。

7.自動更新

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他社CADのデータを取り込み、Creo Parametricで設計検討を進めます。検討の結果、必要に応じて取り込んだモデルの編集を行います。Creo Parametricで作業を進めている間に、他社CADでも並行して設計作業が進むようなプロセスでは、頻繁に問題となるのがモデルの更新です。

もし他社CAD上で設計が進み、モデルの形状が変更された場合、Creo Parametricの設計者は、これまで検討してきた古いモデルを一旦破棄し、更新された新しいモデルを取り込み直す作業が必要となります。これは無駄な作業の発生につながります。

しかし、自動更新機能を使用すると、これまで検討してきた古いモデルに対して差分形状だけを取り込むことができます。これにより、これまで行ってきた検討作業を無駄にすることなく、効率よく並行して設計作業を進めることが可能になります。

8.名前を付けて保存

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2つ目の機能は「名前を付けて保存」です。これは、Creo Parametric上で開いているモデルを、他社CADファイル形式で保存する機能です。

9.追加ライセンスについて

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このコラボレーションエクステンションのうち、InventorとCATIA V4の2つは自動更新機能のみであり、「名前を付けて保存」機能は利用できませんのでご注意ください。名前を付けて保存できるCADとして3つ記載されていますが、V4とInventorは含まれません。

弊社のCADであるCreo Elements/Direct Modelingについて補足します。Elements/Direct Modelingのモデルもネイティブファイル形式でCreo Parametricに取り込み、自動更新をすることができます。この時、更新機能を利用するためにCollaboration Extensionのオプションライセンスを別途購入する必要はありません。これは標準機能で可能です。

もう一点、「名前を付けて保存」については、Creo Elements/Directは搭載されていません。Elements/Directのファイル形式でParametricから保存することはできません。しかし、赤字で記載のとおり、Elements/DirectはParametricのファイル形式であるASMやPRTを読み込むことができるため、Elements/Directのファイル形式で保存しなくても、Parametricで保存されたモデルを確認することが可能です。

実際に操作します。現在、Creo Parametricの画面を開いていますが、ここで新たにアセンブリデータを少し開いてみます。このようなモデルを開きました。続いて、他社CADのモデルデータを追加します。CATIA V5のアセンブリを開いてみます。先ほどご説明したとおり、開く際のデフォルトは「開く」、つまり「オープン」です。必要であれば「インポート」を選ぶこともできますが、今回はオープンでCATIA V5モデルを追加しました。高速条件も問題なく設定できます。このようにCATIAモデルが追加されました。

続いてSolidWorksのアセンブリもオープンで追加します。これも高速設定に問題はありません。このようにしてSolidWorksモデルも追加し、アセンブリを作成しました。ここでモデルツリーを見ていただくと、アイコンが異なることがわかります。Parametricのモデルは皆様ご存知のアイコンで表示され、CATIAモデルはCATIAのアイコン、SolidWorksモデルはSolidWorksのアイコンで表示されます。このようにCADごとにアイコンが変わるため、どのCADから取り込まれたのかを素早く確認することができます。

では次に、アセンブリを確認してみます。確認すると、このグレーの部品上に軸の形状がありますが、その下の緑色の部品の軸と少しずれています。どれくらいずれているのか、測定コマンドを使って確認したいと思います。軸の中心を2つ選択して計測すると、2.5mmずれていることが分かりました。この2.5mmという数値をコピーしておきます。

次にこのずれを修正するため、このグレーの部品(SolidWorksの部品)を先ほどご説明したフレキシブルモデリングで編集したいと思います。まず、この部品をアクティブ化し、フレキシブルモデリングタブでコマンドをクリックすると、メッセージが表示されます。これは、この部品が他社CADから取り込まれたモデルですが、本当に編集するのかを尋ねています。編集するため「OK」を選択します。

続いて、編集したい形状として軸の一部面を選択します。今日編集したい面は複数あるので、先ほどご説明した自動選択ツールを使用します。面を1つ選択してから、フレキシブルモデリングタブの左上部分にある自動選択コマンドを使用します。例えば「ボス形状」にカーソルを合わせると、選択した面を含む形状をシステムが自動認識する機能です。

続いて上にある穴の形状も追加し、この緑色の面を編集面として選択しました。次は編集方法として「移動」をクリックします。エッジを使用して移動方向を指定し、移動距離として先ほど確認した2.5mmを入力してコマンドを実行します。移動したことで軸のずれが解消されていることが確認できます。

では続けて、もう一つ別の操作パターン定義を行ってみましょう。現在ご覧いただいている円形のブレーキディスク部品を見ると、一定間隔で穴が開いています。この穴をパターン化したいので、まずこの部品をアクティブ化します。次に、穴形状を1つ選択し、フレキシブルモデリングの中から「パターン」を実行します。すると、存在する穴を後付けのパターンとしてシステムが自動認識します。

では次に、この穴にボルト部品を追加配置してみたいと思います。少し余談になりますが、ボルト部品などを配置する際に、拘束条件を付ける面が決まっていることも多いかと存じます。その場合は「コンポーネントインタフェース」という機能を使って、配置時にボルト部品の面を選択する手間を省くことができます。

今回はあらかじめコンポーネントインタフェースを定義しているので、ボルトの部品を定義し、相手側の面を選択するだけで配置します。穴面と平面の2つの面を選択するだけでボルト部品が配置できました。

ボルトを1つ配置しましたが、全ての穴に配置したいので、ここで先ほど認識させた後付けパターンを利用します。モデルツリーからボルト部品を選択し、パターン化コマンドを実行することで、パターンの全ての穴にボルトが配置されました。このように、様々なCADデータを取り込み、設計検討を行った操作イメージをご覧いただきました。

これで終了ですので、ファイルを保存して閉じ、非表示にします。ちなみに、今ご紹介した内容は全てParametricの標準機能で可能です。

次は並行設計のイメージです。並行設計なので、同じタイミングでSolidWorks側でも設計検討が進んでいるというイメージです。結果として、Parametricで検討が終了したタイミングで、SolidWorksのモデルが変更されたという通知が来たとします。

変更後のモデルが3つ届いた場合、どのような操作をするのかについて説明します。まず、届いたSolidWorksの新バージョンのファイルをコピーします。続いて、先ほどParametricで保存した検討済みのモデルがあるフォルダに貼り付けます。ここには古いバージョンの同じ名前のファイルが存在するため、ここで「ファイルを置き換える」という上書き保存を実施します。必要な作業はこれだけです。

では変更された結果を確認してみましょう。Parametricで検討して保存した先ほどのアセンブリを開きます。そうすると、このブレーキディスクの形状が更新されていることがわかります。様々な穴が開いています。この部品には後付けパターン認識を行い、それを利用してボルトを配置しましたが、それらの情報は残ったまま差分形状だけが取り込まれています。つまり、並行設計によってモデルが更新されても、古いモデルで行った作業は無駄にはならないということをご理解いただけたかと存じます。これが先ほどご説明したオプションの自動更新機能です。

10.Windchillとの連携

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これまでCreo Parametric単体での操作イメージをご紹介してきましたが、マルチCAD対応の一連の操作は当然ながらWindchillでも運用が可能です。

具体的なイメージは、こちらのスライドに記載のとおりです。他社CADデータをWorkgroup Manager(ワークグループマネージャー)を使用してWindchillに取り込みます。

このようにWindchillに取り込んだ他社CADデータとCreo Parametricのデータを、Parametricで開いて必要に応じてフレキシブルモデリングなどを用いて編集し、結果をWindchillに保存します。もし隣接する設計によって他社CADデータが更新され、そのデータがWindchillに保存されると、通知センターからCADが更新された旨の通知が届きます。それに応じて、他社CADモデルを更新することが可能です。

②板金部分の取り扱い

1.板金に変換・板金コマンド

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次に、よくご質問をいただく板金モデルの取り扱いについて簡単に説明します。他社CADデータの板金モデルを取り込んだ場合、板金部品ではなくソリッド部品として取り込まれるため、曲げ、リップ、コーナー、肉厚といった情報が欠落し、板金モデルとして編集や展開ができないという問題がありました。

しかし、マルチCAD対応として、板金部品も問題なく取り扱えるように機能が強化されています。具体的な操作の流れは、こちらのスライドの通りです。

まず手順1として「板金に変換」を行います。この「板金に変換」コマンドですが、以前のCreo Parametricは肉厚が一定ではないモデルを板金部品に変換することができませんでした。しかし、Creo 5.0から、肉厚が一定でなくても変換ができるように機能が強化されています。

例えば、こちらの図に示すように、肉厚が一定ではないソリッドモデルがあります。ここに突起形状が2つありますが、これも肉抜きされていないため、肉厚が厚い状態です。このようなモデルでも「板金に変換」を行うことで、一定肉厚の板金モデルに変更できます。

具体的には、右側の図に示すように、変換したい肉厚の面を1つ選択し、その面に対して変換したい面を随時追加選択していきます。そうすると、追加選択した面も最初の面と同じ肉厚になるように、システムがモデルを自動的に編集します。例えば、突起形状も選択してコマンドを実行すると、一定肉厚になるようにして板金モデルに変換できるというイメージです。

次に編集です。板金部品に変換しましたので、Creo Parametricの板金コマンドを使って、曲げ、穴あけ、絞りといったものを追加する操作も当然可能です。

2.取り込んだモデルの編集

既存の形状を編集したい場合には、先ほどご説明したフレキシブルモデリングが利用できます。ソリッドモデルの場合、フレキシブルモデリングのコマンドが利用可能です。

3.板金部品に対するフレキシブルモデリング

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板金部品の場合は、これらのコマンドに加えて、板金に特化したコマンドも追加されます。例えば、「プルウォール」や「自動編集」といったコマンドがあります。

これらは、編集したい面を選択すると、関連するベンドを含みながら、一定の肉厚を保持しつつ面の移動や曲げ角度の変更といった操作を行うことができます。さらに、取り込んだモデルに曲げ割れ止めやコーナーリリーフといった形状がある場合は、それらを認識させ、かつ編集コマンドを使用してリリーフの種類を変更するといった操作もできるようになりました。

4.ベンドやリップの交換・板金フィーチャーの追加や展開

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続いて左下、3つ目の手順です。必要に応じてベンドやリップを変換する操作を行います。例えば、取り込んだモデルがピン角のモデルや、ギャップのないモデルであった場合、板金コマンドの「変換」機能を使ってベンドやリップを追加することができます。

最後には、展開して確認するというイメージです。このように、外部から取り込んだ板金モデルも自由に編集できるよう機能強化されています。

5.情報の受け渡し

次に、どのような情報が受け渡されるのかという質問もよく受けます。CADモデルはソリッド形状だけでなく、例えばサーフェス、キルト、カーブといったジオメトリ情報、色、透明度、アノテーション、属性などの情報、あるいはマルチボディなど、形状だけでなく様々な情報が含まれています。

一般的に、他社CADのネイティブデータ形式は、IGESやSTEPなどの中間ファイルよりも多くの情報を取り込むことができます。よくある問題として、モデルを取り込む際に面が欠落したり、モデルが破損したりすることがあります。そのような取り込んだモデルの品質に関する問題は、モデルの作成方法などに依存するケースも多いため、一概には言えません。しかし、一般的には中間ファイルよりもネイティブデータファイル形式の方がモデルを破損するケースが少ないため、高品質なデータ交換が可能になります。これまで中間ファイルを使って取り込んでいた際に、モデルの修復が必要になった経験がある方は、ぜひインポート・オープンをお試しください。

次に、インポート・オープンでどのような情報が渡るのかについて説明します。これについてはヘルプに記載があります。上部の青文字の「データ交換インタフェース」「データ交換フォーマットに関する作業」の部分には、様々なCADファイル形式についてそれぞれ何が渡るのかが記載されています。

例えば、左下にSolidWorksに関する記載を載せましたが、モデルの色、プロパティ、ソリッド、カーブ、キルトなど、何が受け渡されるのかを確認できます。他にも下部の青文字、「データ交換」「Creo Unite」「非Creo部品とアセンブリ」には、マルチボディ、仮想構成部品、内部構成部品といったものの取り込み方が記載されています。ぜひ、これらの情報もご確認ください。

③まとめ

1. 対応バージョン

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次に、対応バージョンについてご紹介します。

こちらはCreo 11.0で対応している他社CADの各バージョンをまとめたものです。黒字で記載しているのは、今年の4月にリリースされたCreo 11.0.0で対応しているバージョンです。

赤字で記載している3つの項目は、今年の7月にリリースされた11.0.1.0で追加された情報です。例えば、インポートとオープンの箇所にある2つの赤字項目は、11.0.1.0でそれぞれ記載の3つのバージョンに対応しています。

「名前を付けて保存」のCATIA V5については、11.0.0.0と11.0.1.0とで対応バージョンが異なります。

2.マルチCAD対応まとめ

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最後にまとめです。

1つ目は、他社CADのデータをCreo Parametricで開く際、IGESやSTEPなどの中間ファイルを使用することなく、直接ネイティブデータ形式で取り込むことができる点です。

2つ目は、他社CADデータを取り込む際、保存しても編集しなければ新たにファイルは作成されません。また、編集した場合でも、編集の影響を受ける部品やアセンブリのみが保存されるため、管理するファイルを最小限に抑える工夫がされています。

3つ目は、取り込んだモデルはフィーチャーのない塊の状態ですが、フレキシブルモデリングの編集機能を使用することで簡単に編集が可能です。

4つ目は、並行設計で頻繁に発生するモデルの更新において、これまでは検討中の作業が無駄になることもありましたが、差分形状だけを取り込む機能があるため、検討中の作業が無駄になりません。

最後に、検討中の他社CADデータを元の形式で保存できます。これにより、必要に応じて検討結果を他社CADと共有するといったコラボレーションを実現します。

④Q&A

Q: 他のCADのデータをインポートする際に、PMIの情報は含まれますか?

A: はい、資料でご説明した通り、データ交換フォーマットに関する作業では、どの情報が渡るのかを確認できます。基本的に、PMI(製品製造情報)の情報を含む6つのデータがインポートされます。詳細については、CADソフトごとのヘルプを参照いただき、具体的な内容を確認していただければと思います。

Q: 他のCADのデータをオープンで取り込んだ場合、モデルツリー内はどのような表示になりますか?他のCADで作成された履歴の情報は表示されますか?

A: はい、そこについては、IGESやSTAPファイルで取り込んだ場合と同じで、フィーチャーは全く存在せず、塊の状態で取り込まれます。

Q: フレキシブルモデリングで編集した場合、編集履歴は残るのでしょうか?

A: はい、フレキシブルモデリングで操作を行った結果、例えば移動や代用、削除を行った場合、その結果はフィーチャーとして残ります。必要に応じて、元の状態に戻すことも可能です。編集もできます。

Q: 他のCADのモデルを更新した場合、図面のテーブルやパラメーターなどはどのように動きますか?

A: 他のCADのモデルを取り込んだ場合、最初に取り込んだモデルはフィーチャーが存在しない塊の状態になります。例えば、他社CADで変更された情報については、パラメトリックで取り込んだ際、図面のテーブルには更新されませんが、パラメトリック側で行った作業については図面のテーブルで更新されます。モデルが更新されると、差分形状は塊のままでテーブルには反映されません。

また、PMI(製品製造情報)の情報については、他のCADで定義された問題や材質の情報が渡されることがあります。その情報を図面のテーブルに追加している場合、更新後もそれが反映されることになります。

Q: 社外で作成されたSTEPファイルをインポートすると、ソリッドではなくサーフェスになる場合が多いです。このようなデータをソリッドに変換する機能はありますか?

A: はい、STEPファイルをインポートした際に、インポートフィーチャーを使用することで、サーフェスデータを修正することができます。パラメトリック環境では、インポートしたデータの編集機能を使って、面を貼り直すなどの修正が可能です。もし隙間が空いていてソリッドに変換できない場合は、その隙間を埋める修正作業ができます。

さらに、インポートやオープンのプロセスを活用することで、変換効率を改善できます。例えば、STEPファイルで壊れたデータをインポート・オープンで処理すると、変換の精度が向上することがあります。これを試してみることで、より正確な変換が可能となります。また、インポートデータの修正機能「インポートデータドクター」を活用することも有効です。

Q: フィーチャー認識ツールでは寸法値まで取得できるのでしょうか?

A: はい、フィーチャー認識ツールでは、例えば穴やボスの形状を認識することができます。穴を認識するためのコマンドを使用すると、塊の状態である穴形状を選択し、その形状にフィーチャーが付与されます。その際、穴の直径などの寸法値も自動的に認識され、寸法として後付けで追加される仕組みになっています。

武田 俊作

製品技術事業部 CAD 技術本部
シニア テクニカルスペシャリスト

大学で機械工学を専攻後、国内メーカーで設計業務に携わり、2007 年に PTC 入社。CAD 製品を中心にプリ/ポストセールス活動、コンサルティング活動を担当。

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