ブログ AI と CAD、そして次世代のエンジニアリング

AI と CAD、そして次世代のエンジニアリング

2026年3月31日

Steve is PTC’s Creo Product Marketing Director. In this role, Steve is focused on communicating the competitive advantages of PTC’s award-winning Creo, Creo Elements/Direct and Mathcad solutions. His career spans the aerospace, consumer appliances, and consumer electronics industries.

Steve is a certified Lean Six Sigma Black Belt and holds degrees in Mechanical Engineering from Purdue University and Business Administration from UCLA.

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何十年もの間、CAD は設計イノベーションのバックボーンとして機能してきました。しかし今日、私たちは新たなフェーズに突入しています。それは、人工知能 (AI) が CAD を強化するだけでなく、設計者と CAD システムの関わり方そのものを変えようとしているフェーズです。

CAD における AI 活用は、もはや実験的な機能や遠い未来の夢物語ではありません。AI は今この瞬間に、実用的かつ目に見える形で生産性を向上させています。それと同時に、より高度に連携された、インテリジェントなエンジニアリングの未来を築く土台にもなっているのです。

今 AI が普及している理由と、その重要性

今この時機に AI が CAD に本格的に統合されたのは、偶然ではありません。いくつかの要因が重なり合って生じた、必然的な結果です。

第一の要因は、大規模言語モデル (LLM)、クラウドインフラ、計算能力の進歩により、AI の能力が劇的に拡大したこと。第二の要因として、3D モデルの作成と活用が、AI にとって価値あるデジタル情報源になったことが挙げられます。この情報源には形状データだけでなく、多くの場合は設計意図や製品製造情報 (PMI) も含まれるからです(多くの企業が 3D モデルを後工程である製造やサービス工程でも活用しようとモデルベースの取り組みを推進し続けていますが、その多くはまだ試行錯誤の段階です)。

一方、製造業は製品の複雑化、市場投入までの期間短縮への厳しいプレッシャー、深刻な人材不足に直面し、設計者はより少ないリソースでより多くの成果を出すことを求められています。そこで AI が、チームの専門知識の拡張、ベストプラクティスの徹底、創造的あるいは戦略的な価値を生まない作業の排除に役立つ、実用的な方法として登場したのです。

インテリジェントオートメーション: 見落とされがちな基礎

CAD における AI について、最も重要でありながらも誤解されがちな点の 1 つは、「AI はゼロから始まるわけではない」ということです。

PTC の CAD セグメント担当ディビジョナルバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーである Brian Thompson は、この点について重要な見解を示しています。生成 AI が話題になるずっと前から、主な CAD システムはインテリジェントオートメーションを通じて設計の知識を組み込んできました。設計意図の参照、ユーザー定義フィーチャー、モデルベース定義 (MBD)、規格準拠チェックといったルールベースの機能は長年にわたり、反復作業を削減し、一貫性を担保する役割を地道に果たしてきたのです。

もしお使いの CAD システムにこのようなルールベースの機能が備わっているなら、その機能はこれまで以上に重要になります。というのも、AI は構造に依存するからです。AI が設計者を確実に支援できるのは、高品質で意味的に完全なデータがあってこそです。ここから、最も効果的な AI 戦略とは、実績のある CAD ジオメトリエンジンやシミュレーションエンジンを AI に置き換えることではなく、これらに AI エージェントを直接接続することだといえます。数十年にわたって蓄積されてきた設計の厳密なルールを無視するのではなく、最大限に活用するのです。

PTC の Creo におけるインテリジェントオートメーションの実例については、以下の動画をご確認ください。

 

 

 

ジェネレーティブデザインと生成 AI: 異なる強みを組み合わせ、より大きな効果を

市場ではジェネレーティブデザインと生成 AI が混同されていますが、これらは異なる問題を解決するものであることを、ここで明確にしておきましょう。

ジェネレーティブデザインは、物理法則に基づきます。拘束、荷重、材料、製造方法などの条件を用いて、最適化された形状を探索します。「これらの性能目標を満たす最適な構造はどのようなものか?」などの質問に答えるのが得意です。

一方、生成 AI は、対話と自動化に優れています。設計意図の解釈、自然言語による要求の処理への変換、セットアップ作業の自動化や、設計上の課題が生じた際には状況に応じたガイダンスを設計者に提供します。

この 2 つのアプローチを組み合わせることで、それぞれのメリットが増大します。AI は解析条件の設定や代替案の検討、結果の解釈にかかる労力を大幅に削減でき、物理法則に基づくソルバー(計算機)は、その結果の正確性や製造性、信頼性を担保できるからです。

 

最新の CAD プラットフォームで真の価値を実現

これは理論上の話ではありません。実際に、最新の CAD プラットフォームでは AI がすでに目に見える成果をもたらしています。

AI を活用した機能拡張により、今ではシミュレーションのワークフローが迅速化し、従来は手作業だったセットアップ手順が自動化され、設計プロセスの初期段階にマルチフィジックス解析を組み込めるようになりました。このような進化は、接触条件の自動作成、熱およびマルチフィジックスの最適化、AI 支援によるジェネレーティブデザインなどの機能により、設計ミスの削減、反復サイクルの短縮、設計品質の向上を実現しています。

エレクトロニクス、自動車、航空宇宙など、熱挙動や構造性能、システム間の相互作用が極めて重要な分野では、このような機能が迅速な開発と製品品質の向上に直結しています。

非創造的なエンジニアリング作業の排除

AI による最も直接的なメリットの 1 つは、「非創造的なエンジニアリングの労力」を削減できることです。設計者はパラメーター定義、関連性の管理、ドキュメント作成、セットアップに伴うトラブル対応といった反復作業にあまりに多くの時間を費やしています。これらは不可欠な作業ではあるものの、製品の差別化やイノベーションの促進にはつながりません。

AI は、このような作業の多くを自動化することで手作業による労力を 30% から 50% も削減できます。またエラー率の低減と迅速な業務習熟にも寄与します。その結果として生じるのは、設計者の削減ではなく、設計者が本来の力を発揮できる環境です。つまり、設計者はシステム全体を俯瞰して考え、シミュレーションに基づく意思決定を行い、部門を越えたコラボレーションを促進することに、より多くの時間を割けるようになるのです。

企業ごとに異なる導入への道すじ

すべての企業が同じ方法で AI を導入するわけではありません。

大企業は多くの場合、長年蓄積されたデータ資産や成熟したプロセス、専任の IT 部門を有しています。そのため、複雑な製品ポートフォリオ全体で標準化を徹底できるような、カスタマイズされたエージェント型の AI ソリューションを構築できます。対照的に、中規模企業は大規模なカスタマイズを行わずに迅速に価値を引き出せる、既成の AI 機能を優先する傾向があります。

いずれの場合も、共通して鍵となるのは柔軟性です。まずは実用的なユースケースから始めて AI の価値を証明し、企業の受け入れ態勢に合わせたペースで拡大していくことが重要です。

設計支援からエージェント型のエンジニアリングへ

将来を見据えると、CAD における AI は、支援型のツールから、連携されたエージェント型のシステムへの進化の途上にあります。

短期的には対話型インターフェースによって CAD をより簡単に操作できるようになり、自然な対話を通じて UI 操作による作業の多くが自動化されていくでしょう。さらに長期的には、AI エージェントがデジタルスレッド全体のワークフローを調整するようになります。つまり、要件、設計変更、シミュレーション、製造性チェック、ドキュメント作成を、一連のインテリジェントなプロセスとして統合するということです。

この進化の中でも、設計者が中心な役割を担い続けることに変わりはありません。AI は人間の創造性と判断力を増幅させるものであり、これらに取って代わるものではないからです。

前進に向けた現実的な道すじ

企業がまだ AI の導入に慎重な場合、まずは小規模な範囲から始めて、測定可能な成果を出すことに注力しましょう。既存の自動化機能を活用してデータ基盤を強化しながら、そこで得られた成果を次のステップへの指針にしてください。

CAD と AI に関する重要な結論として、Brian Thompson は次のように述べています。「AI は、既存の構造を根底から覆す非連続な変化ではなく、複利的に積み重なる優位性そのものです。それは現在すでに成果をもたらし、この先何年にもわたって成果を出し続けるという類のものなのです」

トピック 人工知能 (AI) ジェネレーティブデザイン
Steve Boyle

Steve is PTC’s Creo Product Marketing Director. In this role, Steve is focused on communicating the competitive advantages of PTC’s award-winning Creo, Creo Elements/Direct and Mathcad solutions. His career spans the aerospace, consumer appliances, and consumer electronics industries.

Steve is a certified Lean Six Sigma Black Belt and holds degrees in Mechanical Engineering from Purdue University and Business Administration from UCLA.

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