IoT をクラウド上に実装する利点

執筆者: 豊福 泰斗
  • 4/28/2020
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工場内における生産状況のモニタリングや監視制御のIoT では工場内ネットワーク上にサーバを置いて運用している事例が多く聞かれる。その理由としては「工場のネットワークがクローズだから」や「生産情報を外に出すわけにはいかない」などがあげられる。しかし最近ではIoT の実行環境をクラウド上に構築するケースが増えている。

クラウド上でIoT を実行する利点と考慮するべき点について記述する。

IoT 環境をクラウドで実施する理由の中で最も聞かれるものは「各工場の状況をグローバルで取りまとめて可視化するため」である。
本社から各拠点の情報を出来るだけリアルタイムに見たいという要望は強い。もちろんこれまでもERP や会計上の情報はグローバルで集められ、経営判断や決算情報として使用されてきた。また、これらを様々な軸で分析するためにBI ツールが使用されている。
しかし、昨今の急激なオペレーションの変化対応力が求められる状況では、リアルタイムにより近く、知りたいレベルまでブレイクダウンできる仕組みが必要になる。例えば、急激な需要の変化が発生して製品ラインを転換しなければならない場合や、災害時にどの拠点で事業を継続できるかということを報告より早く知るための手段が求められる。
こういった状況に対応する仕組みを自社のインフラで構築することはスピードや運用性、コストから効率的ではない。

続いて、IoT プロジェクトの特性もクラウドの採用を促進している。
単なる「可視化」であれば個々の設備機器やライン単位で既に実施されているものも多い。しかし、IoT として監視し、制御し、自律化させるという展開を考える場合、誰が(何人が)どのような情報を(どのような画面を)見たいのか、制御にはどのような情報が必要なのか、など検討事項や取捨選択が発生する。システム面から見ると、どのようなサイジングをすればいいかを早い段階で予測するのが難しい。さらに予知保全のための機械学習のプラットフォームが必要になったり、画像解析の機能の追加が求められた際に迅速にそれらを実行するインフラを用意するのは容易ではない。
ちなみに、余談だが我々が設備機器のどの情報を可視化したいかを現場にヒアリングすると十中八九「全部見たい」と回答をいただく。どの情報が必要か、その段階では判断しきれないのでこのような回答になるのだと思われる。つまり、実際に画面が出来て、それで業務を行ってみないと本当に必要な情報が分からないのである。項目を一つ二つ増減させるだけならインフラに影響はないかもしれないが、ラインや工場単位で予測できない要素が発生する状況を想定しておくべきなのである。

もう一つIoT プロジェクトに良くみられるパターンがある。
IoT プロジェクトを複数工場で同時に進めることはあまり無い。モデル工場の特定のラインや特定の設備機器を対象にトライアルを行い、そこでどのような情報をどのような方法で取得し、どのように表現(可視化)するかを確立する。それが出来たら次々と対象ラインを拡張し、他の工場にも展開していくパターンである。
この際にもスピードが求められる。手法が確立しているのであれば出来るだけ早く他の工場でも取り組みを始めたいが、その際にシステムの環境構築から始めるのでは時間がもったいない。環境の準備やモデル工場からの展開が容易なクラウドでスピード感を持って進めるべきだろう。

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これらが、IoT 環境をクラウド上で構築する利点である。スピードと拡張、展開の容易さがポイントである。

最後に考慮するべき点だが、二つある。
一つ目はどの範囲をクラウド化するのかということである。
IoT 環境をクラウド上で構築する利点を説明してきたが、すべてのIoT 環境をクラウド化しなければならないわけではない。設備機器との物理的な距離が近い方が遅延が少なくデータを収集できるし、工場ネットワーク内に構築する必要がある場合はそれに従わなければならない。しかし、書いてきたとおり、それらの情報が工場内に閉じていていいのかは、制限からではなく業務を変革していく上で必要かどうかで判断するべきである。技術的には工場内の他の情報を漏らさずに必要な情報だけをクラウドに上げる方法はある。

もう一つの考慮ポイントはクラウド化が難しい条件についてである。
物理的にネットワークが引けない場所でのクラウドの使用が難しいのは当然だが、各国の規制によりクラウドの使用時に条件がついており、その条件がクリアできない場合も使用は難しい。クラウドの提供企業はこれらの規制や制度に詳しいので、確認しておく方が安全だ。

クラウドは今や特定の業務だけに使用されるインフラではない。これらを使用することで得られるメリットは大きい。弊社でもクラウドでのIoT 環境の実装例や案件が増えている。具体的な取り組みを検討されているのであれば、是非ご相談いただきたい。

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執筆者について

豊福 泰斗

製品技術事業部 プラットフォーム技術本部
プリンシパル・テクニカル・スペシャリスト

アプリケーションビジネス20年、プリセールス業11年、IoT歴4年。
PTCには2018年4月に入社し、IoT / AR製品のプリセールスを担当。
主にプロモーション、パートナー様のビジネスのサポートを担当。

IoT をクラウド上に実装する利点
IoT の実行環境はこれまで自社ネットワーク上のサーバに構築されることが多かったが、最近ではクラウドを活用したケースが増えてきている。IoT の実行環境やIoT アプリケーションをクラウド上に構築する利点と考慮するべき点を考察する。