多くのエンジニアにとってモノのインターネット (IoT) は経験のない技術ですが、それでもやはり、このムーブメントの核となる複雑なシステムを設計し検証するには、ベスト プラクティスの適用が不可欠です。ここでは、モデルやシステムのシミュレーションを利用して早期に問題を特定し修正する方法と、完成品が当初の要件を満たし、期待どおりに機能することを検証する方法について説明します。
関係者の賛同を得る
IoT システムをモデル化することで、プロトタイプの製作前にスマート製品をシミュレートする新たな機会が生まれ、マッシュアップ、アプリケーション、データ接続をテストしてから、ソフトウェアやセンサーを構築できるようになります。IoT システムのモデルを作成して視覚的にシミュレートするのは、関係者が設計案や問題点を理解し、解決策について合意するために役立ちます。
ある製造メーカーが Windchill Modeler で電気トラックを設計したとします。モデルは、トラックの部品、コンテキスト、トラックが提供するサービスをデジタルに表現したものです。モデルには、エンジン、バッテリー、その他の主要なシステム コンポーネントに関連した機能、物理特性、アルゴリズムも表現されています。
Windchill Modeler SySim では、モデルのウォークスルーを示すシミュレーションを作成できます。たとえば、ニューヨーク市内の予定されたルート上の道を走り回るトラックのシミュレーションを作成できます。このシミュレーションでトラックを加速させたりブレーキをかけたりして、どれだけのエネルギーが使用され、どれだけのエネルギーがバッテリーに残るのかを関係者に見せることができます。また、トラックのスピードも確認できるようにすれば、航続距離を特定できます。路上でのタイヤ性能などの機能に焦点を絞ることもできます。つまり、基盤となるモデルのあらゆる視覚表現を確認できます。
このようなシミュレーションは、システムが期待どおりに機能しているかどうかを関係者が的確に判定するための助けとなります。たとえば、トラックが数マイル走っただけでエネルギー残量がゼロになることが、シミュレーションによってわかります。チームは、こうした情報に基づいてシステムを再設計してから、次の作業へと進むことができます。
また、シミュレーションにより、エンジニアは、IoT アプリケーションのインタフェースを検証できます。シミュレーションで得られたデータ (トラックの場所や速度など) を ThingWorx のクラウドへ送って、ダッシュボードのインタフェースに表示することができます。そうすることで、エンジニアは、実際の IoT アプリケーションのユーザー インタフェースにどのようなデータが表示されるのかを確認してから、コードやプロトタイプの作成に着手できます。
実際のパフォーマンスの検証
プロトタイプまたは製品が完成したら、実際のセンサーのデータを最初のシミュレーションにフィードバックし、システムが期待どおりに機能していることを検証します。収集したデータを最初のモデルと比較することで、実際のパフォーマンスと当初の推定や分析との比較を行います。
実際のデータと初期の設計を比較してパフォーマンスベースの解析を行うことで、製造メーカーは、製品が期待どおりに機能しているかどうかを確認し、将来の設計のために、デジタル モデルが現実を正確に表現しているかどうかを判断できます。モデルが基準に達していない場合、エンジニアはモデルを調整して再度シミュレーションを実行することができます。
この電気トラックの場合、データを比較した結果、モデルに何らかの欠陥が見つかるかもしれません。エンジニアは、トラクション コントロールの最小トルクの設定を下げる一方で、インタフェースに表示される環境要因に湿度を追加することなどを決定できます。こうしたことは、モデルと製品の両方の継続的な改善に役立ちます。
このクローズループ型のアプローチにはさまざまなメリットがあります。組織は、エンジニアリング ライフサイクルの非常に早い段階で製品をシミュレートし、IoT システムの設計に対する関係者の賛同を確実に得ることができます。また、実際の製品データに基づいて、将来のシミュレーションと実際の製品を改善することも可能になります。