医療機器企業が製品ライフサイクル全体にわたってリスクとメリットのバランスを最適化するための方法
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各調査会社が、2025 年にはスマート・コネクティッド・プロダクトのデバイスが 500 億台に達し、その経済効果が 6 兆ドルに上ると推測しています。それを受け、医療機器企業は革新的な製品を迅速に市場に投入することに注力しています。しかし、医療機器企業はそれと同時に、業界のさまざまな標準や規制に準拠する必要もあります。ユーザーに危険が及ぶのを防ぐためです。たとえば ISO 9001、ISO 13485、FDA 21 CRF Part 820、EU MDR などです。

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医療機器の開発では、リスクに慎重に対処しなければなりません。問題があると、故障や負傷だけでなく、死につながることもあります。2001 年以降、有害事象の報告件数は大幅に増加しており、インシデントの増加率は業界の成長率を大きく上回っています。業界調査のデータからは、リコールのおよそ 3 分の 1 は設計の不備に起因していることがわかっています。またおよそ 4 分の 1 は製造の問題です。こうしたエラーは、医療機器製品のライフサイクルを管理して、リリース前にリコールの原因を特定できるようにすることの重要性を示しています。

医療機器企業は、ガイドラインに従って製品やサービスの安全性と有効性を確保する必要があります。しかし機器メーカーは多くの場合、高品質な製品を迅速に市場に投入することと、規制に準拠することは両立できないと考えているようです。McKinsey は、今後はリスクを明確化して低減し、うまく対処できる機器メーカーが生き残り、発展すると推定しています。医療機器企業が製品ライフサイクル全体で品質と信頼性に重点を置けば、47 5,000 万ドルから 60 億ドルの経済的利益が得られる可能性があります。

リスク分析を製品開発プロセスに組み込む

多くの企業は、新製品のプランニングを進める際は製品要件から着手します。たとえば、どのような製品を開発するか、派生品なのか、競合製品はあるか、プロセスを効率化したり新しい自動マシンを導入したりするためには、これまでの教訓をどう生かせばいいか、といった問題に対処します。それと同時に、製品に伴うリスクを明確化することも大事です。

製品のリスクは次の 3 種類に大別できます。

  • 機能
  • 設計
  • プロセス

サプライヤーの部品、製品、部品表 (BOM) が複雑化しているため、組織は総合的にリスクに対処しなければなりません。重要なのは、設計ソフトウェア、エンジニアリング部品、製造、サプライ チェーン、サービスなど、プロセス全体に分散しているリスクの発生源を統合することです。

数百万ドルの損失が発生するリコールを防ぐ

The Impact of Medical Device Recalls and How to Avoid Them

製造企業はこれまで、製品設計の品質管理の一環として、うまくリスクに対処することができていませんでした。設計制御をドキュメント中心のプロセスで処理すると、製品ライフサイクル全体で故障のリスクが高まります。ドキュメントは複雑な製品の表現方法としては不十分なためです。多くの場合、ドキュメントは特定時点での製品の設計情報の一部分しか表現できません。変更内容の復元力も欠けています。  

複雑な医療製品の開発では、設計関連のさまざまな意思決定を無数に下す必要があります。これらの意思決定は、デジタルの CAD 設計ファイル内にすべて組み込まれています。これらのファイルは製品開発のサイクル全体を通じて何度も何度も改変されます。しかし、設計関連のドキュメントに取り込まれるのは現在の設計の近似でしかありません。ドキュメント内に取り込まれていない設計情報は、品質管理のチェックポイントや規制機関への書類の提出時に失われます。それが大きく不要なリスクの発生源になっているのです。

この問題は、ドキュメント中心から製品中心のコンプライアンス手法に転換することで解決できます。医療機器メーカーは、製品設計と品質管理の両方にデジタル製品定義 (DPD) を導入することでこれを実現できます。DPDでは、単一のリポジトリで、複製ではなく実際の製品データを参照します。唯一の正しいデータ ソースが確立され、実際の設計の部品や部品表 (BOM) を製品ライフサイクル全体で管理できるようになります。正確な BOM 情報を必要なときに参照することも可能になります。

医療機器企業が製品中心の手法を採り入れれば、関連システム全体に変更内容が自動的に反映され、すべての関連スタッフがそうしたデータを利用できるようになります。これにより、品質管理を製品の開発プロセス内に組み込むことができます。設計や品質管理関連の分断された要素を、手動で同期化する必要もなくなります。

3D モデルを基に制御特性や検証要件を定義することで、製品の品質が高まります。また、重複データや不完全なデータに伴うミスを減らし、製造プロセスの初期段階で問題を特定することも可能です。

製品中心の手法を採り入れて適切な PLM システムを利用することで、設計から製造までのライフサイクル全体に変更を簡単に反映できるようになります。

 

将来に備えて現代のリスクに対処する

医療機器メーカーはモノのインターネット (IoT) 技術のことも考慮しなければなりません。IoT 技術を活用すれば、スマート コネクティッド プロダクトを介して、稼働中の製品やプロセスに関する情報を収集できます。製造企業はその情報を生かすことで、リモートから機器を再起動し、サービス コストを大幅に低減しながら顧客満足度を高められるなど、医療機器の革新的なサービスを提供できるようになります。

このことも、製造企業がリスク管理を製品、プロセス、サプライ チェーン内に組み込む必要がある理由と言えます。製品関連のデータを紙に取り込むと、問題の本当の原因を特定するのに余計な時間がかかってしまいます。しかしデジタル製品定義を利用すれば、設計から製造まで、現場の製品の動作とデジタル定義を連結することができます。これにより、簡単に現場の製品の故障を特定し、即座に問題を解決できます。リスク低減の根拠を FDA に提出するプロセスも簡略化できます。

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Tags: Windchill コネクティッドデバイス 製品ライフサイクル管理 (PLM) ヘルスケア
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