【オンデマンド配信開始】カールスバーグ登壇 Web セミナーと Q&A ご紹介

執筆者: 山田 篤伸
  • 11/5/2020
  • 読み込み時間 : 9min
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製造現場の見える化、この取り組みは多くの製造業で実施されています。既にシステムを稼働させ効果を実感しているケースもあれば、なかなか思うようにプロジェクトが進まなかったり、効果を出せずに停滞してしまったりしているケースもあるかと思います。

今回、PTC では世界 25 工場に月 1 工場のペースでファクトリー IoT を実装し、飲料生産ラインの効率向上、リアルタイムモニタリングを実現されているカールスバーグ社をお招きして、その実現方法、効果、今後の取り組みをお聞きする Web セミナーを開催しました。ファクトリー IoT の導入や目指すべき姿に課題をお持ちの方への解決のヒントになったのではないかと思います。

本セミナーには多くのお客様にご参加いただき厚く御礼申し上げます。

今回はこちらの Web セミナーのオンデマンド配信が決まりましたので、そのお知らせと、開催時に頂きました多岐にわたるご質問と回答を共有させていただく記事です。

Web セミナー「カールスバーグ登壇 製造現場における見える化のその先へ」オンデマンド配信

以下に Web セミナー内でいただいたご質問とそれに対するカールスバーグ社と PTC の回答をご紹介します。
なお、質問は適宜一般化し、回答はカールスバーグ社 のVictor Glukhov(ビクトル・グルコフ)氏の回答を PTC ジャパンにて翻訳したものと、PTC 山田が回答したものを掲載しました。


質問: 導入にあたり、投資対効果をどのように見積もりましたか。また。見積もるためのコツなどがあれば教えてください。

回答: ソリューションの導入に特化した計算はしていません。この手のツールは改善を加速させるだけで、それだけで改善をもたらすものではありません。そのため、ビジネスケース / ROI は、このツールを適用した醸造所のオペレーションパフォーマンス (OEE) の改善に基づいています。
例えば、OEE が 65% から 70% になると 5% の効果を生み出すことができます。これを投資対効果としてみました。
システム構築、ライセンス、導入、設定などは SIer に依頼しましたが、規格対応に関しては社内リソースを活用したため、トータルコストとしては非常に低いと感じました。


質問: 世界 20 カ国のリアルタイムの稼働状況が見えるようになった最大のメリットは何でしょうか。集めたデータを用いて何を実現し、効果は何で、またその効果を得ている人はだれでしょうか。

回答: ソリューション導入の主な目的は、誰かが中央管理塔で 20 サイトのパフォーマンスをリアルタイムで監視できるようにすることではありませんでした。以前は手動でパフォーマンスを追跡するプロセスを持っていた醸造所が、より正確でリアルタイムにパフォーマンスを追跡するために自動化することが主な目的 / 利点です。
また、実装の良い「副作用」として、世界中からのデータ収集が一元化されたことにより、グループレベルでのベンチマークやレポート作成が可能になりました。


質問: システムを導入されて、工場現場のオペレーターの評判はどうでしょうか。

回答: 基本的には好評でした。当初はソリューションがまだ安定しておらず、いくつかの障害がありましたが、主要な不具合はすべて解決されました。


質問: 工場の情報全てを収集していますか。それとも可視化で必要な情報のみ収集していますか。
また、スキャンタイムとデータを保持する期間をどのように決めましたか。

回答: 情報については、パッケージラインのパフォーマンスを追跡するために必要な情報のみを収集しています。スキャン時間は約 5 秒で、可視化の更新は 30 秒です。
秒ごとのマシンステータスとカウンター値のフルデータを 3 カ月間保存し、残りのデータはアーカイブに保管しています。
この間隔はアプリケーションの性能テストをもとに決定しました。


質問: 実際に運用してきて「より深くデータを見たい」や「新たにこういうデータも見たい」という要望は出てきていますか。またその対応は全工場で一斉に変更するのでしょうか。

回答: 当初は、投資を最小限に抑えるため、パッケージラインの OEE を計算するために必要なデータ=フィラー(ビールを充填する設備)の状態とカウンター+パレタイザーのカウンターのみを収集することで合意していました。
しかしその後、フィラーの状態とカウンター+パレタイザーのカウンターの合計値が欲しいという工場も出てきました。また一部の工場からフルラインのマシンデータをシステムに接続して欲しいとの要望もありました。
今後は、構成を拡張し、10 台のマシンが稼働するラインも 2 台のマシンが稼働するラインもデータの収集を開始していきます。これにより、プラントはデータの透明性で次のレベルに到達することができ、当社のソリューションはこのタイプの拡張をインクリメンタルステップとしてサポートします。


質問: クラウド上で運用する際のセキュリティ対策はどのようにされていますか。

回答: 当社のクラウドインフラは Microsoft Azure なので、ほとんどの対策は Microsoft 社から提供されているものを利用しています。
また、クラウド基盤のパッチ適用やメンテナンスは社内の IT 部門が行っています。ThingWorx や Kepware はデータ連携を http ベースでおこなっているため、最新の IT 環境に適応していると思います。


質問: 体制構築と予算確保はどのように実施しましたか。

回答: 重要なのは、Excellence チーム(プロジェクトオーナー、価値を享受するオーナー)を明確にすることです。
Excellence チームが中央にいて、各工場にチームがいます。
アプリケーション周りの話は本社側の Excellence チームがきめて予算を確保しました。各工場での予算は各工場で承認しました。


質問: 今後の展望について教えてください。

回答: MES に関して、一部の工場ではフルバージョンの MES を導入していますが、それを置き換える予定はありません。フルバージョンの MES を導入していない工場(約 27 工場と中国など)には IoT 導入を拡大していく予定です。
クラウドで集中管理できるシステムなので、単一のプラットフォーム上ですべてのものが動いている状態です。変更を加えるとすべての工場のシステムに反映できるので展開は早く進むと思います。

データに関しては、情報が集まっているのでデータの分析・解析を進めています。例えば、フィラーがストップした場合、その理由は何か、他の設備はどういう状態だったか分析し、原因を追及しています。

また、トラッキング&トレースの仕組みを考えています。ビールができ、パレットに積み、ラベルを貼るのですが、ラベルに材料や製造年月日などの情報が入ります。今はマスターデータとの接続がないので、半自動になっているのですが、マスターデータと接続して、ラベルを作成し、ラベル貼りを自動化したいと考えています。

また、遠隔支援として、タブレット端末にアプリをインストールし、ラインの作業員に指示をだすことも検討中です。


質問: 今回のプロジェクトでうれしかったこと、大変だったこと、最大の教訓はなんですか。

回答: プロジェクトが始まり、多くの工場に展開する仕組みになることがわかっていたので、テンプレート化してそれを全工場に展開しようとしました。1 つのテンプレートがあれば全工場に展開できることをわかってもらうために 2 つの工場に同時進行で展開しました。実際に生データが見えたときが一番 Happy なタイミングでした。

難しかったことは、2 つ目の工場に展開する際にかなりの抵抗にあったことです。そこは比較的小規模な工場で、自分たちで作ったシステムを使っていました。我々が作ったシステムを使うことに、最初は抵抗があり、サポートもしてくれませんでした。戦争状態とまではいかなくてもかなりの抵抗にあい、その情報が多くの人に知れ渡りました。最終的におさまりまましたが、大変でした。

教訓は 2 つです。
新しいシステムを導入するので、ユーザーのトレーニングに時間をかけたほうがよかったと思いました。ユーザーはそれぞれの場所で異なるので、定着するまでしっかりみてあげる必要があります。導入して終わり、というのではなく時々状況を確認する必要があると思います。
技術面では、複数の工場に展開するので状況も違いますし、時差もあり、情報の流れにも遅延があります。設備から PLC を介して Kepware Server に流れて、そこから Cloud にアップされるのですが、リアルタイムで実行しようとするとどうしても遅延があります。PTC で検討しているのであれば、PTC の担当者に確認するか SIer に確認することをお薦めします。


質問: 展望の質問でも MES の話がありましたが、MES システムと ThingWorx の使い分けはどのように実施していますか。また、MES システムはグローバル統一の仕組みを導入していますか。

回答: カールスバーグでは、MES は統合されていません。また、MES が導入されていない工場もあります。こうした工場ではフルスペックの MES は必要とされていないことから、MES をあらたに導入するのではなく、ThingWorx で必要な機能だけを実装した代替 MES を導入しています。MES は生産指示などに使われますが、ThingWorx は指示系ではなく、データを MES の有無や違いを吸収して統一的に見せるために使用されます。


(以下は、PTC 山田が回答)
質問: マシンの停止に関するイベント情報はどのように定義していますか。(例えば「AI 学習により停止理由を自動的に定義」や「オペレーターが手動で停止理由を入力」など)

回答: マシンの停止に関するイベント情報を取得する方法は大別して二つあります。 1 つめの方法は、PLC からの情報の更新が途絶えたり起動処理実施の情報が入力されたりした際に停止もしくは再開したと判断する方法です。
もう 1 つは、オペレーターが手動で停止理由を入力する方法です。ThingWorx で可視化の仕組みをカスタムで作成した場合も、Factory Insight As A Service を利用した場合も、どちらの方法も利用できます。

AI 学習による停止理由の自動判断はカールスバーグ社もそうですが、PTC のお客様で実装しているところはないと思われます。機械学習を含む AI の利用用途は、将来の停止を予測して対処する予測保守が多いように思います。


質問: PLCはどこのメーカーでも対応可能でしょうか。また、パソコン制御、基盤制御の装置では使用できませんか。

回答: 装置から情報を取得するには 2 つの方法があります。1 つめは ThingWorx Kepware Server を使うことです。ThingWorx Kepware Server が対応する PLC の一覧は下記にあります。

ThingWorx Kepware Server ドライバーリスト

対応ドライバーを ThingWorx Kepware Server がもたない場合、装置の情報を収集してリアルタイムに ThingWorx に送信するエッジ側機能を開発することになります。ネットワーク接続の確立や ThingWorx のネイティブプロトコルの使用など、複雑な部分は ThingWorx Client SDK と呼ばれるライブラリがすべて面倒をみますので、短期間でエッジ側の実装が可能です。ライブラリは C および Java で提供されます。また、ライブラリによる開発ではなく、ThingWorx Edge Micro Server とよばれるエージェントプログラムを Windows もしくは Linux に導入し、データ収集と送信を担わせることもできます。ThingWorx Edge Micro Server は JavaScript でスクリプティングできます。


質問: 装置の故障予測をどのように実施しているのでしょうか。AI を使用しているのでしょうか。

回答: 装置の故障予測を行うには、オプション製品の ThingWorx Analytics と組み合わせます。ThingWorx Analytics は教師付きの機械学習エンジンで、ThingWorx が正規化(モデル化)したうえで保存している時系列データを使い、将来の状態を予測できます。


質問: 可視化の開発時間を短縮するための具体的な対策をおしえてください。

回答: 可視化の開発時間を短縮するためには、下記の取り組みを行うか、もしくは機能を利用します。

  • 統一的なデータモデルを作り、アプリケーション開発者が装置の個別の事情に煩わされないようにする。
  • 開発生産性が高く、優秀なプログラマーが比較的安価で利用しやすいプログラミング言語を使う。C よりは Java、Java よりは JavaScript。GO などの新しい高級言語はプログラマーの単価が高い傾向となる。
  • フレームワークなどの作り込みはなるべく避け、包括的な機能を備えるパッケージ製品を使う。
  • プログラミング量が少ないパッケージを選ぶ。プログラミング量がすくなければ、維持・修正も容易。
とくに、機器のつなぎ込みに時間をかけないこと、そしてセキュリティやデータ保存、イベント処理などの下回りの仕組みの作成などに時間を費やさないことが大切だと思います。


質問: 横展開に 75% の会社が悩んでいるとのことでしたが、ThingWorx、Kepware を導入した企業の場合、どの程度この課題が改善されているのでしょうか。

回答: 多くのお客様との会話の中で PTC が「横展開できない」原因のいくつかを認識して解決策をご用意したのがつい最近のことですので、具体的な改善割合は今後の調査の結果を待たなければなりません。最近、米国で Factory Insight As A Service の実装が増えてきていますので、近いうちにどの程度課題が改善されたかをお伝えできると思います。ただ、Factory Insight As A Service はゼロからいきなり生み出されたわけではなく、その背後にかなりの数のお客様先での PTC の実装経験を基にして作られています。その経験からすると、ThingWorx でモデル化を適切に実施している場合は、仕組みの実装方法が原因で横展開できないという状況はかなりの割合で避けられていると思います。

横展開できない理由にはそのほかに工場側に適切な人材がいないであるとか、工場長の理解が得られないなど、システムよりもヒトに依存するものも数多くあると思います。そうした理由に対しては残念ながら ThingWorx では解決できません。


質問: 紹介のあったテンプレートは、どれくらいの種類が用意されていますか。種類も分かるとありがたいです。

回答: 現在提供しているのは以下の 2 つです。

  • Realtime Production Performance Monitoring: 生産状況の可視化
  • Asset Monitoring and Utilization: 装置状態の可視化
11 月中旬に下記をリリース予定です。
  • Connected Work Cell: 生産手順の指示・記録
その後、現在のロードマップでは追加で 10 本程度のテンプレートをリリースする見込みです。これらのテンプレートはすべて Factory Insight As A Service の基盤となる統一のデータモデルの上で動作します。


まとめ

多くのかつ多岐にわたるご質問をいただき、みなさまがファクトリー IoT に関して大変ご興味をもたれていることをあらためて実感しました。
PTC ではこれからもみなさまからのご要望に応え、成果を出すお手伝いをさせていただきたいと考えています。

この記事を読まれて、詳しい説明のご希望やご質問がございましたら、下記へお問い合わせください。
https://www.ptc.com/ja/contact-us
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執筆者について

山田 篤伸

製品技術事業部
プラットフォーム技術本部
本部長 執行役員

2012年、PTCジャパンに入社。サービスライフサイクル管理(SLM)ソリューションの日本での事業開発担当として、自動車、重工業、ハイテク業界を中心に、製造業のサービス事業化(Servitization)を推進するための啓蒙活動やアセスメントなどを幅広く手がける。
2016年以降、ThingWorx や Vuforia などのPTC が買収した IoT / AR 製品群を用いたソリューション事業の新規展開を担当。