新時代の「仕事」と「キャリア」... それらを支えるデジタルテクノロジー

執筆者: 後藤 智
  • 4/1/2021
  • 読み込み時間 : 6min
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新年度を迎え、新たなチャレンジに取り組む人々が多いと思いますが、世の中の情勢をみると、今までとはまったく異なる生活様式や働き方を模索しなければならない時代となっています。特に、この 1 年半においての一番の変化は従業員の働く環境の「分散化」ではないでしょうか。人々は、互いに直接対面する機会を失い、物理的にバラバラな環境で仕事をしています。改めて人と人とのかかわり方、人間性、人中心であることの価値など、対人コミュニケーションについて考えさせられる機会が増えました。いわゆる、リモート環境でテレワークしながら、時間と距離を超えたリアルタイムコラボレーションを行っていかなければならないという課題です。決められた時間に出勤し、与えられたデスクに座り、予定の作業を粛々と進めるといった環境とは異なる状況で仕事をしている人も多くなりました。すると、社会人として働くことの心境も変化してきます。つまり、毎日の活動が「仕事」なのか「キャリア」なのかという自らへの問いです。
企業の社員の一員として「仕事」をしているという意識と、日々の活動はむしろ自らの「キャリア」を形成するための行為であるという意識の 2 つの視点が対等に芽生えてくるのではないでしょうか。「仕事」となれば、与えられたことに対して代価をいただく、いわゆる生活の糧であり、自分が生きていくためのまたは家族を養っていくための重要な営みです。一方、「キャリア」という視点に重きをおくと、単に「仕事」をこなす毎日だけでなく、自分は「ある分野を極める」というプロ意識を抱くことがあります。

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仕事を通して、日々の努力や研鑽が自らをステップアップしていく、まさにキャリア形成ということです。ただし、在宅テレワークとなれば、どこまでが自分のプライベートでどこまでが仕事なのか、その境目が曖昧になることもあるでしょう。ライフワークバランスについても、今まで以上に意識するようになります。これからは単に仕事をしているというよりも「プロとしてキャリアを積んでいるんだ」と考えるべき時代が到来しています。

さて、こういう新たな時代にキャリア志向で働く私たちにとって、役に立つ道具は何でしょうか。例えば、業務で使う資料がすべてクラウド上で管理されていると、テレワークの実現が容易になります。手作業で行っていた煩雑な紙文書の管理をデジタル化し、効率良くファイル管理してくれるアプリは便利な道具です。このようなデジタルテクノロジーが、今まで以上に私たちの働き方に大きな価値をもたらす道具となるでしょう。そして、私たち一人ひとりは、プロとして極めるべき仕事に専念すべきです。デジタルテクノロジーが自分の相棒として、自分自身のキャリア形成を支援し、結果として自分が会社の業績に貢献していくことになります。
ただし、一人ひとりの作業環境に注目すると、さまざまな制約条件があります。企業は従業員に在宅勤務を奨励していても、実際には物理的に現場で作業しなければならない従業員が大多数です。世界中の労働力の 75% は、そのような現場従事者であると言われています。デジタルテクノロジーは、在宅勤務者にとっては都合のいい道具ですが、大多数の人々はデジタルの恩恵を受けられない状況でもあります。例えば、現場の QC サークルも、在宅勤務者と現場作業員がオンライン Web 会議システムで実施する場合、従来の対面式と異なり、お互いの意思疎通に戸惑いを感じることは少なくありません。また、企業によってはビデオ通話が許可されず音声のみで議論せざるをえない実態もあります。話し手が聞き手に影響を与えているのは、その大部分が非言語的(ノンバーバル)な要素で、二者間の対話では言葉によって伝えられるメッセージは全体の 35% に過ぎないと言われています。五感のすべてを総動員できないオンライン Web 会議では、相手に自分の意見を伝えることは容易なことではありません。デジタルテクノロジーの活用は、今後の働く人たちの武器になることは間違いないですが、このように多様化した労働環境の中で、お互いがうまく一緒に働いていくようにするには、まだまだ課題があることも否定できません。

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日本企業では、現場で対人コミュニケーションをとりつつ、実際の機械の前で人が作業しながら、人と機械があたかも会話をしながら、顧客満足度の高い良品をつくることを強みとしてきました。しかし、その強みを発揮しづらい状況となったいま、たとえ人や機械が遠隔地であっても、ものづくりやサービスを維持するためには、デジタルテクノロジーの助けが必要です。そして、私たちが必要とする情報を、デジタル形式のデータとして毎日、毎時間、毎分、毎秒、集めてくれる道具であり、データ分析してくれて、人の役に立つ知識データベースとなり、私たちの生活や仕事をより良くしてくれるでしょう。さらに、人に成り代わって、コンピュータシステムがすべての情報の履歴を管理してくれると「いつ誰がどのデータにアクセスして、誰が取り出して誰が修正したのか」、「誰と誰が協働作業しながら修正し、最終バージョンの資料がどれなのか」が瞬時に分かるようになります。つまり、すべての変更内容が、すべてリアルタイムのオンライン環境で実現できることは大きな価値です。

ところで、人々は様々なソフトウェアアプリケーションを使いますが、そのアプリを使いたいときに使いたいものだけ使えるよう、ジャストインタイムに提供すると、どういう価値があるでしょうか。言い換えれば、自分のパソコンの中に、使うアプリをわざわざインストールせず、ある意味レンタルサービスのように使用するわけです。これは、サブスクリプションという利用形態です。デジタルテクノロジーは日々進化し続けているので、利用するアプリは常に最新でハイパフォーマンスを発揮していて欲しいものです。今後は、こういうサブスクリプション型のサービスを提供する企業が、どんどん登場してくると思います。アプリを利用するユーザ企業側は、アプリの技術的な内部構造を深く理解する必要がなくなります。そして、企業は本来取り組むべき技術革新や顧客との関係構築など、ビジネス価値の高い活動に注力することができるようになります。従来は、複雑なアルゴリズムを理解しながら膨大なコンピュータプログラミングをしなければなりませんでした。しかし、今後はコンピュータの詳細設定は、ユーザ側で行う必要が無くなってきます。また、企業の業務プロセスに目を向ければ、さまざまな人たちがさまざまな場所で、企業の枠を越えて融合しながら、最終成果物を完成させます。まさに、共創型ものづくりの世界があります。それはメンバーの意見を収集し、改善を繰り返しながらより良い品質のモノをつくっていくボトムアップのアプローチであり、一方、経営者視点で部門や社員に対して意思決定を下すというトップダウンなアプロ―チとの融合です。これはどんなビジネスでも、どんな時代、どんな社会情勢になっても変わらない 1 つの業務オペレーションの本質的な姿です。デジタルテクノロジーとは、このような企業間コラボレーションと意思決定を支える業務インフラの役割を担っていくものとして極めて重要な役割を果たすことになります。

私たちは、この 1 年以上にわたり、一人ひとりが健康や安全でいられることの大切さについて、大いに考えされられました。常に健康でいるということ、元気でいるということ、病気にならないということが、ビジネス活動の原動力です。これから 3 年、5 年、10 年と、未来に向けて私たちは、自らのキャリアを自らで形成していくことでしょう。つまり、一人ひとりが真のプロフェッショナルとなることです。そのために、デジタルテクノロジーが常に私たちの健康や安全面を支援してくれて、人材や機械が世界中のどこにいても、最適な組み合わせで最大のパフォーマンスを発揮してくれることを願ってやみません。

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執筆者について

後藤 智

ビジネスディベロップメント
ディレクターフェロー
経営学修士(MBA)

デジタルトランスフォーメーション (DX) に関するエグゼクティブアドバイザー。PTC ジャパン株式会社 ディレクターフェロー。早稲田大学IPS・北九州コンソーシアム 理事。ボンド大学ビジネススクールにて MBA 取得。日本経営工学会より「IoT 時代の PLM システムに求める技術要件とそのビジネス価値に関する考察と提言」で2016 年度の経営システム賞を受賞。