1. 3 次元モデルと 2 次元図面
本来 2 元図面の役割とは情報伝達です。設計者から作り手に対してどのようなものを作ってほしいのか?正しい情報を伝達するために存在しています。3 次元 CAD が世に出てきて既に 40 年以上の時間が経ちますが、3 次元設計を行っていても未だこの情報伝達を 2 次元図面で行うということは(特に日本国内は)大きく変わっていません。これは 2 次元図面で情報を伝達し、モノづくりをするための手法が確立されていて成熟しているからだと思います。ただ、この 2 次元図面中心のモノづくりの成熟は既に限界点にきており、更なるモノづくりの効率化を考えた場合打ち手はほとんど残っていません。
そこで昨今、様々な製造業は 2 次元図面中心の環境では越えられない更なる効率化を目指して 3 次元モデル中心の環境を実現すべく取り組んでいます。
お客様から多くお聞きするのが「うちの環境で図面レス化するのは難しい」「3 次元モデルだけでは製造現場のメンバーが製造できない」といった声です。おっしゃる通り、今までのモノづくりの環境を急に変えることは容易ではありません。
しかし、「3 次元モデル中心の環境」とは「2 次元図面をなくす」こととすべてイコールではありません。
急に 2 次元図面をなくして3 次元モデルだけでモノづくりをする環境に変えることは難しいこと(もちろん将来的に 2 次元図面をなくすことがその企業にとって効果的なことであるならば長期的な方向性として目指すべきだと思います)ですが、2 次元図面でモノづくりを行う環境であっても実施すべき「3 次元モデル中心の環境」のための一歩があります。
2. 置き去りの 3 次元モデル
すでに日本国内でも多くの企業が 3 次元 CAD を活用して開発しています。しかし、最終的には 2 次元図面が中心の環境も少なくはありません。
特に出図後、実際に製造フェーズに入った後は 2 次元図面がメインになっています。出図後に 2 次元図面で情報伝達が行われること自体は問題ではありませんが、出図後に 3 次元モデルが置き去りになってしまう事象が問題なのです。
比較的わかりやすい例を挙げると「突発的な設計変更」です。このような設計変更が発生した際、皆様の環境で何を修正しますか?もちろん、設計の中心は 3 次元モデルですからまず 3 次元モデルを修正すべきですが、急いでいるため、時間がないため等の理由で、まずは 2 次元図面のみを修正して対応する場面も見受けられます。この修正が後で間違いなく 3 次元モデルにも反映されるのであれば良いのですが、このような変更が数回発生すると3次元モデルに反映したか否かが定かでなくなり、途端に 3 次元モデルの最新性が疑わしくなります。そうなると信頼できる情報は 2 次元図面のみとなってしまい、3 次元モデルは置き去りです。
もし、この 3 次元モデルを次回流用したくとも 3 次元データの信頼性が低くて使えない、もしくは使うために細心のチェックを余儀なくされます。
3. 3 次元モデルを置き去りにさせない工夫
世の中様々な 3 次元 CAD が存在しますが、近年の、特に「パラメトリックフィーチャーベース」を謳っている CAD であれば 3 次元モデルとリンクした 2 次元図面を作成できます。3 次元モデルと 2 次元図面がリンクしていますので 3 次元モデルを修正すれば自動的に 2 次元図面も修正され、どちらも最新状態が担保できます。
- 3 次元モデルと 2 次元図面は常にリンクさせる
- 設計変更があった際は必ず 3 次元モデルを修正する(2 次元図面は自動更新)
この状態でデータ運用すれば、下記の方法で 3 次元モデルが常に最新の信頼できるデータとして運用できます。すなわち 3 次元モデルを中心に運用して問題ない環境ができるのです。
3 次元 CAD の中には 3 次元モデルと 2 次元図面のリンクを切ることができるものもあります。リンクを切ることで図面のみの共有ができたり、図面の操作が軽くなったりと、いくつかのメリットがあることは理解しますが、これを容認する限り、永遠に「3 次元モデル中心の環境」を実現することはできません。信頼性が低い置き去りの 3 次元モデルが増えていくだけです。
4. Creo Parametricの 3 次元モデルと 2 次元図面の良い関係
さて、ここまで「3 次元モデル中心の環境」に必要な手始めに取り組む話をしましたが、この取り組みにおいて PTC の Creo Parametric の強みは何でしょうか?
まず、Creo Parametric が他の 3 次元 CAD と異なる大きな特徴として「シングルデータベース」があります。これは Creo Parametric の開発コンセプトですが、概要を説明すると、設計に使用された 3 次元データのみが単一データとして保持され、そこから派生したデータ(2 次元図面、加工パス、組立指示、解析結果等)は 3 次元モデルがその様式で見えているだけでデータは一つしか存在しません。
今回のブログに関連して説明すると、2 次元図面は 3 次元モデルが 2 次元図面に見えているだけの情報なのです。
したがって、Creo Parametric の場合、3 次元モデルと 2 次元図面は一心同体であり、関係を切りたくとも切ることができません。
このことからも、今までお話してきた「3 次元モデル中心の環境」への一歩を踏み出すために非常に向いている 3 次元 CAD であると言えます。
5. さいごに
MBD (Model Based Definition) やMBE (Model Based Enterprise) 等、3 次元情報を正とした取り組みやソリューションが活発に世に出てきていることで 3 次元モデルの重要性が再認識されていると思います。
今後は国内でも今までの 2 次元図面の存在の見直しや 3 次元モデルを活用した取り組みが益々盛んになるでしょう。
しかし、一足飛びに 2 次元図面をなくして 3 次元情報のみでモノづくりをするという事は難しく、そのための準備と、目標設定が必要です。
もし、現在の環境が「置き去りの 3 次元モデル」の状況であれば、まずは常に 3 次元モデルが最新情報に保たれており正しい 3次元データを運用できている、そのような環境から 3 次元データ正を始めてみませんか?
お問い合わせ
この記事を読まれて、詳しい説明のご希望やご質問がございましたら、下記へお問い合わせください。
https://www.ptc.com/ja/contact-us
ご参考
- DX を加速させる 3D CADソリューション: 日本語特設ページは こちら
- 【YouTube】Creo ブラザーズ Presents 「クリオの部屋」は こちら
Tags:
- CAD
- Creo
- Thingworx 開発者
- 航空宇宙・防衛
- 自動車
- 電子・& ハイテク
- 産業機器
- ヘルスケア
- デジタル スレッド
- デジタルトランスフォーメーション (DX)
執筆者について
古賀 奨
CAD ビジネスディベロップメントマネージャー
Creo Parametric(Pro/ENGINEE R含む)歴 18 年
PTC の設計ソリューションで実現できることやメリットをお客様に伝え、3 次元データを活用したデジタルツインや AR といった更なる設計環境を使っていただき喜んでいただく事が使命。